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『青春ブタ野郎』サンタクロース編:上田麗奈×岩中睦樹インタビュー

『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』岩見沢寧々役・上田麗奈さん×福山拓海役・岩中睦樹さん対談|拓海の告白の熱量を受けて生まれた寧々の2回の「なんで……?」に込められたニュアンス

 

拓海の告白の熱量を受けて生まれた寧々の「なんで……?」に込められたニュアンス

──拓海というキャラクターについてもお聞かせください。

岩中:愛されるバカなんだけど凄く真っすぐな芯があって、元気でちょっと甘え上手なところがある男の子という印象を最初に受けました。そこから寧々が拓海を好きになった理由にもありましたけれど、最終的な僕の印象は隅っこでポツンとしている子に話しかけに行って友達になれたりだとか、そういう一面のあるカッコいい男の子に落ち着きましたね。

女の子にモテるかモテないかは別として、なんだかんだで彼女はいそうなタイプですよね。拓海みたいな人が現実にもいそうだなって印象も受けましたし、演じる上では飾らないようにはしていました。

 

 

──序盤は咲太の大学での友人としての登場が多かったかと思います。そこからミニスカサンタこと寧々と関係の深いキャラクターであると明らかになり……かなりの重要キャラクターとなっていきました。心境的にはいかがでしたか?

岩中:オーディションの時から最終話の台詞が原稿に入っていたので、絶対にどこかで山場があることは把握していました。ちょこちょこ登場シーンがありつつ「いつ来るんだ?」と思っていたら、終盤にドカンと大きく取り上げられたので驚きました。

「俺は寧々を好きになったんだ。寧々のままの寧々を!」っていう台詞も実はオーディションの時からあったのですが、そのシーンがあるのは最終回でした。やっとその収録の機会が来た時に、オーディションの通りに演じた方が良いのかな? とも思いつつ、ひとりでお芝居する訳ではないので、上田さんや石川さん、山根さんがいる中で掛け合いをしました。

その場での化学反応じゃないですけれど、ここまでの拓海は寧々のことが見えていなかったし、忘れてしまったというか、認識できなくなっていたじゃないですか。だからこそ、そこでやっと寧々と掛け合うことになって拓海の感情が爆発した感じがありましたね。あのシーンはちゃんと演じることができて嬉しかったです!

──寧々側からしてもようやくの拓海との掛け合いかと思います。上田さんはこのシーンについていかがでしたか?

上田:拓海が凄い熱量だったので、私もオーディションでやったニュアンスとはかなり違う感じになりました。オーディションの時の最後のシーンは、「拓海で我慢する」と言うところまでずっと泣いているお芝居だったと思います。

だからまず、リハVを見て「泣いてない!?」と驚きました。もし私だったら、あの状況で咲太がかけた「愛されてるんですから」なんていう今凄く欲している言葉を言われたら、ブワっと泣いてしまう。だからきっと寧々も泣いちゃうだろうなと思ったのですが、この子は泣かないんだ、強い子だなって感じたことを覚えています。

掛け合いの中での拓海の「付き合ってください」という告白が、寧々のことが大好きなんだっていう気持ちが伝わってくるような熱量だったので、あんなに真っすぐにそんなことを言われたら嬉しくなると同時に、その嬉しい気持ちを抑えたくなるだろうなと思ったんです。その後の寧々の台詞は、オーディションもテストも本番も、全然違ったニュアンスになっていった記憶がありますね。

テストの時は自暴自棄な寧々が強く出たのですが、本番では拓海に付き合ってくださいと言われた後期待と不安が強くなりました。「こんなみっともない私のどこが好きだって言えるのよ!」なんて拓海を試すようなことを聞いてましたけれど、これをやるってことは拓海のことがそれだけ好きなんですよね。

 

 
岩中:ここで寧々が言う「なんで……?」っていう台詞が僕は好きなんです。拓海が付き合ってくださいと告白した後に一度目はボソっと言って、二度目は強めに聞いてくる。そこから寧々の期待とかそういう想いを感じられたので、僕はこの2回の「なんで……?」に込められたニュアンスが本当に好きだし、演じていて自分でも震えました。

上田:本当ですか!? 良かった! でも、私は拓海の寧々への告白が凄い熱量だったからこそ、このニュアンスになったのだと思っています。逆に、私が震えた案件で言うとビックリマークなんです。

──というと?

上田:寧々のままの寧々が好きなんだと拓海から言われた後に「私のままの私ってなに!?」って言い返すんですが、その後に言葉にならない息が漏れるところがあるんです。私はそこがめちゃめちゃ好きです。

こんなに強く返されるんだっていう驚きと、なんて言ったらいいのかわからない言葉の詰まり方がリアルでライブ感がありました。掛け合いなので私も寧々として喋らないといけないのですが、俯瞰している私自身が「今の凄く良かった!」って興奮してしまいました。

岩中:言ってしまえば、あそこは拓海の「好きだ!付き合ってください!」からの寧々の「なんで……?」の繰り返しというか。そういうやりとりの積み重ねでどんどんテンションが高まっていく場面なので、演じていて楽しかったですよね。

上田:だから私も本当にスッキリしてしまったし、全部言い終わって本音もさらけ出した状態で「だから、とりあえず、今は拓海で我慢する」と言うところまで持っていけたと思っています。また、拓海は寧々にとって本当に甘えられる存在なんだなっていうのも改めて感じました。このお芝居の連鎖があったからこそ、テストと本番で全然違う……だけどどっちの寧々も寧々なんだと知れたし、演じていて凄く楽しかったなと思っています。

──この最後の掛け合いの部分はおふたりともかなりこだわって収録に臨まれたんですね。

岩中:ふたりとも第1話~第12話までのモヤモヤや忘れてしまっていたことが発散される場所なので、お芝居だとしてもここまでずっとキャラクターと一緒に日々を過ごしてきたような感覚が僕にはありました。その積み重ねからふたりとも感情が爆発した感じが印象的で。

上田:私もここが一番思い出深いです。他だと、拓海が「俺、寧々のことが好きだわ」って2回言うところも大好きです。収録の時色々なパターンを録ってましたよね。

 

 
岩中:それまで咲太と掛け合っていた時と同じような雰囲気と、寧々のことを思い出した今までの拓海が戻って来たバージョンとみたいに何回かやっていましたね。若干ぐでっと力の抜けるシーンだったのですが、そこまでは少しシリアスだったのに拓海が寧々のことを語っているシーンを思い出したりして、色々なパターンを録りました。

一度、ディレクションで同じ台詞を2回ともまったく同じように言ってくださいという指示があって、実際にその通りやってみたんです。そうしたら、最終的に「岩中さんが芸のない役者だと思われるのがちょっと嫌なので、やっぱり変えましょう」と言ってくださって。テストの時は1回目と変えてやっていたので、このエピソードは印象に残ってますね。

上田:どのテイクもコミカルなシーンに仕上がっていたのですが、最後に録ったおそらく使われているであろうテイクは、そこまでの収録での流れを汲んだうえでナチュラルに笑ってしまうような抜け感が絶妙でした。

あと、寧々が大好きな拓海が寧々のいないところでも「好きだ」って言ってくれているというのが何だか嬉しくて。「やったね寧々!」「良かったね!」という気持ちで見ていました。

岩中:自分が好きになった人から好きだと言われるなんて、余計嬉しいですよね。本当に相当な奇跡だし、凄いことだと思います。拓海には寧々のことを大事にして欲しいです。

──そんなふたりの再会が本当に最後の最後になっただけに、ここまでの拓海を寧々がどう見ていたのかも気になります。

上田:やっぱり拓海の話題になると揺れていましたね。後半で拓海との関係が明らかになったり、正体が霧島透子ではないことが判明するまでは、なるべく余裕な面持ちを崩さないようにと意識していました。けれど、本当に痛い部分を突かれると気持ちが揺れていたし、出てくる声の音色からもそれがわかってしまう。拓海のことに関しても、寧々にとって本当に触れてほしくない部分なんだなっていうのは感じていました。

自分が好きだからこそ相手にも好きでいて欲しい、自分のことをどうか忘れないでほしいっていう、そういう気持ちで拓海のことを見ていたんじゃないかなって。

岩中:だけど、自分自身のことはあんまり好きになれない……みたいなところもあったと思います。寧々はそういう切なさがあったキャラクターだったんじゃないかと。

 

おふたりが咲太に感じた印象や《大学生編》で印象に残った場面とは!?

──おふたりの演じるキャラクターとよく接していた咲太というキャラクターにはどんな印象を持たれましたか?

岩中:僕の中での咲太は、ふっと力が抜けたような男の子という印象です。麻衣と掛け合ったりしているところを見ると凄く情熱的で愛に溢れた一面が見られますが、石川さんのお芝居もあいまって僕も肩の力を抜いて演じられたと思っています。

例えば第4話で合コンに行くからと緊張している拓海に、緊張しない方法として口を指で広げて「金沢文庫って言ってみ?」と咲太が言うやり取りがあったと思います。結局拓海はそんな咲太の弄りに引っかかって「金沢うんこ」と言ってしまうのですが、そういう掛け合いができる相手がいるって現実でもありがたいですし嬉しいところなんです。だから咲太との掛け合いはどれも好きだし印象に残っています。

上田:人のために一生懸命になれるけれど、それを自分のためだと言える人……でしょうか。同じようなことを麻衣さんが言っていたと思うのですが、本当にその通りの人だなって思うんです。誰かに手を差し伸べるなんて私は凄く勇気のいることだと思うのですが、その勇気を持っているし、手を伸ばしたからにはその責任を最後まで持つ気でいるというか。

麻衣さんとの関係性も、岩中さんがおっしゃった通り情熱的で落ち着きがありますし。「ふたりで幸せになるために一緒にいる」という話がありましたが、それが凄く大人っぽくて、素敵な関係性だなと思います。

寧々との掛け合いの中では、珍しく起伏を見せる瞬間もあったりして。石川さんのお芝居も相まって、そこに人間味を感じたりもしました。

 

 

──これまでの物語を振り返って気に入ったエピソードやキャラクターも教えてください。

岩中:割とどれもシリアスでしたけれど、紗良にフォーカスが当たった『マイスチューデント編』は好きでしたね。拓海の登場シーンもあまりなくそこまで関わっていないのですが、普通に視聴者目線で見ていたからこそ印象に残っています。

「私が好きになった人はみんな私を好きになってくれるのに……」みたいなことを言っていましたが、誰もが共感できずともそういう人はいるよな……みたいに思ったんです。だって、よっぽど自分に自信がないと、そういうことを考えたりしないじゃないですか。どうなんだろうとは思いつつ、人によってはそういう悩みがある人もいそうだなとか考えたり、そこが人間らしくて結構面白かったんです。

僕がそうだという話ではないのですが、好きだって言われたら自分も好きかもしれないと感じることがきっとどこかにはあると思うんです。紗良はある種の承認欲求のようなものが通じなかった時に「なんで?」みたいになっていて、面白いなこの子って思いました。

彼女自身も悪い子ではないのだけれど、小悪魔的というか。小原さんもかなりナチュラルで素敵なお芝居をされていましたし、こういう子が本当にいそうで印象に残ったのかなって。

惚れっぽい性格の人はきっと、ああいう子にちょっとでも何かを勘違いさせられると気になってしまうのかなって。そういう一面もリアル過ぎて面白かったです。

上田:今のお話を聞いていてなるほどってなりましたね。美東ちゃん(※美東美織)が確か他人のことよりも自分のことの方が好きなんだろうねって分析していたと思います。誰かを好きになるのではなく、誰かに好かれている自分が好きなんだって。ここで凄く紗良への解像度があがったのを覚えています。

岩中:美東はあれだけ砕けた感じなのに他人をしっかり見ている子ですよね。スマートフォンを持っていないのは今どき珍しいですけれども。

上田:どういうキャラクターなのかはまだ掴めていないですよね。凄く人当たりも良いし、他人に対する分析力も高い。誰も不快にさせないけれど、彼女自身のことはまだそんなに喋っていない気がしていて、ちょっとまだミステリアスなところがあるように感じます。

 

 

──上田さんは印象に残ったエピソードやキャラクターについて、いかがですか?

上田:『迷えるシンガー編』のづっきーが周りの声を聴きすぎて身動き取れなくなっちゃうみたいなのは凄く刺さりましたし、郁実(※赤城郁実)が友達のお母さんから「いい子だね」って何気なく言葉をかけられて、それからいい子でいようとしたという話が理解できるなって思ったんです。そういうつもりじゃない大人からの言葉が響く年頃って本当にあるので、幼少期とか特にそうだったなって自分を振り返ったりもして。

そういう年頃の時に受けた言葉をどうしてもネガティブに受け取ってしまって、ずっとトラウマとして残ってしまったりする。でも言った側はそんなつもりはないから、誰も悪くないんですけれどね。そういうものが残り続けるっていうのは一番共感したかもしれません。

──そういう体験をした方は結構おられそうですよね。では最後にまとめの質問です。寧々が霧島透子ではなかったということは、本物の霧島透子がまだ存在していることになるかと思います。まだ物語に謎が残っているということで、今後のアニメ『青ブタ』に期待してほしいことやファンのみなさんへのメッセージをお願いします。

上田:本当に『青ブタ』は色々な要素がある作品だなって思います。岩中さんもおっしゃっていましたけれど、こんなにもリアルに人の心を描いている中に思春期症候群というファンタジックな要素もあったりする。かと思いきやラブコメ要素もあるし、霧島透子の正体という謎もあって。

一体誰が本物の霧島透子なのか、そんなミステリー要素も含めて、この先も楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 
岩中:本当に色々な方に第2期《大学生編》をお届けできて幸せでした。これだけ大勢の原作ファンの方がいて、アニメからのファンの方もいる。そして、豪華な役者陣と制作陣が関わる凄い作品なので、新たに登場するキャラクターを演じるのは緊張していました。ですが、ファンの方もアフレコ現場も凄く温かい雰囲気だったので、肩の力を抜いてお芝居できましたし、楽しい作品として空気感とかを伝えられたかなって思っています。

原作はこの先もある訳なのですが、いったい誰が霧島透子なのか。新たに登場するキャラクターなのか、それとも既に咲太たちに関わっている誰かなのか。そのあたりの謎が描かれていってくれたら、出演者としても嬉しいです。拓海もまた出てきて欲しいですし。

上田:寧々と拓海がイチャイチャしているところが見たいですよね。

岩中:それめっちゃ見たい。拓海が寧々に怒られてるところとか見たい。

上田:見たい!

──尻に敷かれてそうですよね。

岩中:めっちゃ敷かれてそう(笑)。とまあ、この先の日々も続いていくと思いますので、その辺りもアニメーションで描いていただいて、それをまたファンのみなさんにお届けできたら嬉しいなって思ってます。

 
[文・胃の上心臓]

 

作品情報

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない

あらすじ

思春期症候群――
不安定な精神状態によって引き起こされると噂の不思議現象。

高校時代に様々な思春期症候群を発症した少女たちに出会ってきた“梓川咲太”も大学生になった。

国民的人気女優であり、恋人の“桜島麻衣”と共に金沢八景にある大学に進学した彼は、
校内で季節外れのミニスカサンタを見つけた。

驚いた。わたしのこと見えてるんだ。

どこかで聞いたような台詞。
思春期症候群をプレゼントしていると話すミニスカサンタは、咲太に告げる。

……わたしはね、霧島透子って言うの

SNSで流行する予知夢、正体不明のネットシンガー、ポルターガイスト、
謎めく現象と共に、心揺れる少女たちとの不可思議な物語が再び始まる。

思春期は終わらない――

キャスト

梓川咲太:石川界人
桜島麻衣:瀬戸麻沙美
広川卯月:雨宮天
赤城郁実:山根綺
姫路紗良:小原好美
美東美織:石見舞菜香
ミニスカサンタ:上田麗奈
古賀朋絵:東山奈央
双葉理央:種﨑敦美
豊浜のどか:内田真礼
梓川花楓:久保ユリカ
牧之原翔子:水瀬いのり

(C)2024 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project

 

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