
長峯達也監督が8月20日に逝去|長峯監督が生んだアニメ『ONE PIECE』名演出……ルフィのギア5から『FILM Z』まで名作たちをご紹介
敵キャラなのに愛される「ゼファー」が生まれた『ONE PIECE FILM Z』
そして、記事の冒頭でも触れたように、長峯監督は映画『ONE PIECE FILM Z』の監督を務めたことでも知られています。
『FILM Z』は、筆者的にも数ある劇場版のなかで首位をあらそうほどお気に入りの、思い入れがあるワンピースムービー。
その魅力は、“これまでになかったワンピ映画”を体験できる点だと個人的には思っています。
本作でルフィの敵となるのは元海軍大将のゼファー。海賊どうしの熾烈バトルが描かれることが多い劇場版のなかで、本作ではルフィと元海軍の肩書きを持つゼファーが拳のみのガチンコ勝負をします。派手な大技を使わず殴り合うその泥臭さが、物語の決着に深みを増しているんです。
そして、本作はラストシーンも印象的。
劇場版といえば、次の冒険へ向けて明るく出航していく麦わらの一味で締まることが多いのですが、本作はかつてないほどビターな終わりを迎えます。直接的なネタバレは避けますが、涙を誘う荘厳な挿入歌の「海導」と、思わず海軍視点で感情移入してしまうクザン(青キジ)やボルサリーノ(黄猿)の切なさと苦さといったら……。
序盤〜中盤では少女の姿になってしまうナミやロビン、ルフィ、ゾロ、サンジの入浴シーンといったコミカルなパートや、何度も見返したくなる戦闘服へのかっこよすぎる変身シーンと麦わらの一味の絆といったお宝シーンも盛り込みつつ、最後にはほろ苦い余韻を残す大人な仕上がりがクセになる作品です。
さらに、大ボスであるゼファーが敵ながらとても魅力的なのもこの作品が愛される所以といえます。
海賊を憎みつつルフィをかたくなに「海賊王」と呼び続けるところ、部下や元部下たちからも慕われているところ、そして壮絶な半生。原作にはかかわらないキャラクターでありながら、その背景のつくりこみが丁寧で、心に残り続けるヒールなのです。
長峯監督自身もゼファーが大好きなあまり、原作者である尾田栄一郎先生からはあくまでルフィが主人公の物語であることを念押しされたというエピソードもあるほど。監督自ら愛して育ててきたキャラクターだからこそ、多くのファンに愛されたんですね。
そんなゼファー、じつはワンピースキャラを使って無双アクションを楽しめるゲーム『海賊無双4』に来年から追加キャラとして参戦予定。映画公開から10年以上が経つ現在も、その活躍は健在です。
筆者が長峯監督のもと生み出されたアニメ『ONE PIECE』にたくさんの思い出があるように、これまで監督の作品を観てきた多くのアニメファンそれぞれに、思い出深い大切な作品があることでしょう。ワクワクして、笑えて、泣けて、夢中になれる、素晴らしいアニメーションの数々をありがとうございました。
長峯監督のこれまでと、これからも残してくれた作品たちを愛し、楽しめることに感謝をこめて、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
[文/まりも]











































