
たくさんの個性が集まった、“全人類”に届けたい物語――劇場アニメ『この本を盗む者は』御倉深冬役・片岡凜さん×真白役・田牧そらさんインタビュー|手を繋いで、壁ドンして……互いに助け合った声優初挑戦の収録秘話
深緑野分先生の人気小説を原作とする劇場アニメ『この本を盗む者は』が、2025年12月26日(金)より公開中。
書物の街・読長町に住む本嫌いの高校生・御倉深冬。ある日、曾祖父が創立した巨大な書庫「御倉館」の本が盗まれたことで、突然物語の世界に飲み込まれてしまいます。町を救うため、深冬は不思議な少女・真白とともに本泥棒を捕まえる旅へ。すべての呪いが解けるとき、あなたは奪われた真実と出会う——。
主演は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』や日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』で注目を集める片岡凜さん。共演に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『カメラ、はじめてもいいですか?』などで知られる田牧そらさんを迎え、謎解き冒険ファンタジーを華やかに彩ります。
本稿では片岡さん、田牧さんの対談をお届け。おふたりの言葉から、作品が持つ魅力を読み解いていきます。
想像力によって、無限に広がる“本の世界”
ーー本作は“本の世界”を舞台とした謎解き冒険ファンタジーとなっています。おふたりにとって「本」や「読書」はどのような存在でしょうか?
御倉深冬役・片岡凜さん(以下、片岡):幼い頃から本が好きで、今でもお世話になっています。文字だけの世界だからこそ無限に想像が広がって、全く違う世界へ行ける。電車に乗っている時も、スマートフォンより本を読んでいることが多いと思います。
真白役・田牧そらさん(以下、田牧):私も読書が大好きです。登場人物の見た目や性格を自分なりに解釈して、「現実世界だとこういう人かな?」と考えたり、台詞を自分の言い方で読んでみたり。そういった経験は今のお芝居に繋がっている気がします。
ーーそんなお二人から見て、深緑野分先生による原作小説はどのような印象でしたか?
片岡:色々な本の世界を冒険していくのですが、想像させられるシーンが多いですよね。
田牧:本当に!
片岡:そうですよね。「空の上に柱があって、そこに大きな猫がいる」とか。「一体どういう絵になるのだろう?」とイメージを膨らませながら読み進めました。自分なりの情景を思い描きながら読むことができて、そこがすごく面白かったです。
田牧:私も全く同じ感想です。色々な“本の世界”が出てくる中で、「この場面はどうなっているのだろう」とワクワクしながら読んだ記憶があります。私自身、ずっと「“本の世界”に入ってみたい」と思っていたので、その夢を叶えてくれた作品でもあります。
片岡:一人ひとりのキャラクターの個性も鮮やかですよね。全体を通して、自分が純粋に好きなものや好きなこと、人に対する温かい気持ちを改めて思い返せる内容だと思います。
ーー物語の中では、テイストの異なる“本の世界”が複数登場します。
片岡:特に印象的だったのは、探偵のリッキー・マクロイが登場する『BLACK BOOK』の世界です。個人的にリッキーのキャラクターが大好きで!
ーーどの辺りが刺さったのでしょうか?
片岡:男臭くて、少しキザなところでしょうか(笑)。普段からサスペンスや探偵ものをよく読むので、できることなら、自分でリッキー役を演じてみたいです。
田牧:私も『BLACK BOOK』の世界が一番好きです。現実では体験できないアクションや、探偵が登場するような世界観には惹かれます。
多くの人たちと作り上げるキャラクター
ーー演じるキャラクターの人物像やご自身との共通点をお聞かせください。
片岡:深冬はちょっとツンツンしていて、人と一線を引いて生きている子です。作中で世界を冒険している感覚は自分自身と通じるものを感じました。
田牧:私が演じる真白は、最初は謎めいた女の子なんですけど、徐々に人間性が垣間見えてきます。深冬に甘える可愛らしい一面もあれば、逆に引っ張っていくような格好いい一面も持っていて。
私と似ている点は……そうですね、真白は本の知識がすごく豊富なんです。私も何かに夢中になると、とことん調べてしまうタイプなので、そこは重なる部分があると思っています。
ーーおふたりとも声優初挑戦になりますが、もともと声のお仕事に興味はありましたか?
片岡:声優という分野には以前から興味があったので、とても光栄に思っています。
田牧:私も声優のお仕事にはとても興味があって。以前、朗読のお仕事をさせていただいたときに、声で表現する楽しさを感じて「いつか声のお芝居をもっとやってみたい」と思っていたので、今回のお仕事は本当に嬉しかったです。
ーーそのときに感じた「声で表現する楽しさ」というのは?
田牧:人それぞれの解釈がある中で、自分なりに考えたことを声で表現できるという点に面白さを感じました。今回こういった経験をさせていただいたことで、自分の中でお芝居の引き出しが増えたように感じています。「こうしてみたら面白いかもしれない」「こうしたほうが良いかもしれない」と考えられるのも楽しいです。
ーー実写のお芝居とは異なる部分も多かったと思います。
片岡:実写では自然に出てくるものをそのままカメラに収めていただくので、その点は大きく違うと感じました。呼吸や語尾の強さなどの技術的なところも含めて、表現に取り入れなければいけないことも多かったです。台詞の時間が明確に決まっているからこそ、「限られた秒数の中で、いかに感情を上手く引き出して表現するか」に集中して取り組んでいた気がします。
ーーそのうえで深冬のキャラクター性も表現する必要がありますよね。
片岡:深冬はツンツンした性格だからこそ、アニメの映像や台本を読んだ際の第一印象を大切にしたかったんです。声のトーンについても、様々なバリエーションを考える必要があり、その点は新鮮でしたし、声の当て方をストレートで強くするように意識して演じました。
田牧:やっぱり普段のお芝居と違うのは、表情や動きで表現できない点です。真白は可愛くてかっこいい、すごく魅力的なキャラクターなので、この役を任せていただけることが嬉しい反面、プレッシャーも感じていました。何て言うんでしょう……原作の小説や絵もありますし、多くの方々と一緒にキャラクターを作り上げているという感覚があります。
ーー初登場時は無機質な印象ですが、犬の姿になってからは感情表現も豊かになっていきました。
田牧:監督からもご指導いただいたところです。最初は単調な感じで、台詞の抑揚や強弱をあまりつけず、どちらかと言うと機械的な話し方。物語が進んで感情の起伏を表現する場面では、呼吸や息遣いを意識しつつ、気持ちが声に乗るように心がけました。実写のお芝居では、息遣いを意識することはあまりないので、想像力を働かせながら声を入れていく作業がとても面白かったです。
ーーアフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?
片岡:お互いに声優は初めてだったので、とても柔らかい空気感を出していただいたと思います。「ここはこう聞こえるから、もう少しこうしてみて」「こういう感情の流れはどう?」とか。細かい部分まで丁寧に見てくださったからこそ、安心して演じることができたと感じています。
田牧:収録はほとんど二人きりでした。監督さんが私たちの声を聞いて感じたことを伝えに来てくださったり、その都度すり合わせたりしていたので、非常にやりやすかったです。自分の意見を伝えつつ、監督のお話も伺いながら話し合える場だったので、とても温かい雰囲気でした。
終盤の重要なシーンで、深冬にかける言葉を収録していたんですけど、「台詞と台詞の間に一度ブレス(息継ぎ)を入れてほしい」というディレクションがあったんです。その時は深く考えずにやってみたのですが、自分の中でぐっと熱が入るのを感じて、「息継ぎ一つで感情の乗り方がこんなに変わるのか」と非常に驚きました。その瞬間はかなり印象に残っています。






































