
世界を席巻する色彩の奔流――映画『アメリと雨の物語』マイリス・ヴァラード、リアン=チョー・ハンの両監督が語る「2歳半の神様」が見つめた景色【インタビュー】
映画『アメリと雨の物語』が、2026年3月20日(金)より全国公開されます。
本作は、アニメ界のアカデミー賞といわれる「アニー賞」で主要7部門にノミネートされたほか、アヌシー国際アニメーション映画祭で観客賞を受賞。ゴールデングローブ賞にもノミネートされるなど、今世界で最も注目されるアニメーション映画のひとつです。
物語の舞台は1960年代の日本。外交官の家庭に生まれたベルギー人の女の子アメリは、2歳半まで周囲に全く反応を示さない状態でしたが、とあるきっかけから自分を「神」だと信じる“無敵の子供時代”に突入します。大好きな家政婦のニシオさんとの生活や、自分にぴったりな「雨(あめ)」という漢字との出会い。そして3歳の誕生日、彼女のすべてを変えてしまう出来事が訪れ……。
神戸生まれの作家アメリー・ノートンさんの自伝的小説を原作に、圧倒的な色彩と独創的な視点で描かれる本作。アニメイトタイムズでは、マイリス・ヴァラード、リアン=チョー・ハンの両監督に制作の舞台裏を伺いました。
19歳の頃から思い描いていた「神様」の姿
ーー本作はアメリー・ノートンさんの自伝的小説がベースになっていますが、最初にこの物語に注目された理由を伺えますか?
マイリス・ヴァラード監督(以下、マイリス): 以前『カラミティ』をリアンと一緒に制作していた時に、彼がこの本をプレゼントしてくれたんです。彼はこの作品に非常に情熱を持っていて、「どうしてもこれをアニメ化したいんだ」と熱く語っていました。
なので、ここからはリアンに語ってもらいましょう(笑)。
リアン=チョー・ハン監督(以下、リアン): (笑)。私がこの本に出会ったのは19歳の時でした。もう20年以上前になりますね。当時の私は、いわゆる純文学青年というわけではなく、日本のアニメやビデオゲームといったポップカルチャーに夢中になっていました。そんな中で出会ったこの物語に心を打たれたのです。
2歳半のベルギー人の女の子が日本で生まれ、自分のことを「神様」だと信じている。その独創的な視点、そして私が当時から大好きだった1960年代から70年代にかけての日本の姿、ニシオさんとアメリの切なく胸を打つ関係性に深く感動しました。
19歳の私は世間知らずでしたが、すでにアニメ化を夢見ていたんです。例えば、ビーチのシーンはまるでモーセのように、海を二つに割ろうとするイメージが頭に浮かび、「絶対にやらなきゃ」と。
ーーお二人は長い間、共に活動されているのでしょうか?
マイリス: リアンとはもう10年来の付き合いになります。二人ともパリのゴブラン校(Gobelins)という学校の出身で、キャリアの初期には『リトルプリンス 星の王子さまと私』などの作品で共にストーリーボード(絵コンテ)を手がけました。
その後、レミ・シャイエ監督のチームに加わり共作を重ねる中で、リアンとは非常に感性が近く、物の感じ方が似ていると改めて確信するようになったんです。
ーーその時期に、現在まで続く関係性ができていったのですね。
マイリス: ええ。アートディレクターのエディン・ノエルをはじめ、何年も刺激し合いながら一緒に歩んできた仲間たちは、私たちにとって“アーティスティック・ファミリー”と呼べる存在です。長い時間を共有する中で「私たちのやりたいこと」も明確になっていきました。それは内面的なアイデンティティの形成を、象徴的な比喩を散りばめた演出で描くこと。そして「死」や「喪失」といった、大人にとっても重いテーマを、あえて「子どもの目線の高さ」で語ること。原作にはまさにそうした要素が含まれていたので、私たちの制作哲学と見事に一致しました。




























