
“刃牙VS武蔵”ドリームマッチ、開戦ッッ!──声と肉体でぶつかり合う『刃牙道』の作り方|範馬刃牙役・島﨑信長さん×宮本武蔵役・内田直哉さん 対談インタビュー
強さに対してピュアな漢たち
──内田さんは、今回『刃牙道』で描かれる範馬刃牙をどのようなキャラクターだと捉えられましたか?
内田:純粋な……本当に純粋なボン(少年)だと思います。悪いことをするわけでもないですし、ただただ強さを求めて、強いものに向かっていく。それを探し続けている、という印象です。
最終的に新しい目的にたどり着くまでには長い時間がかかりますが、純粋に「強さ」を求めている存在だなと感じました。
──前作では(範馬)勇次郎との戦いを経て、ある種ひとつの到達点に立ったような印象もありました。演じる島﨑さんは、改めて『刃牙道』における範馬刃牙を、どのように捉えていますか?
島﨑:確かに、ある程度成熟したというか、完成とまでは言えないまでも、ひと区切りついたような印象はありますよね。
でも宮本武蔵という存在が登場したことで「全然まだまだだったんだな」と思わされる。武蔵と比べてしまうと、なおさらそう感じますね。
実際、話が進むにつれ刃牙のスタンスや言動がまた大きく変わっていきます。「まだこんなに成長の余地があったんだな」と、原作を知っていても改めて思いました。
やっぱり上には上がいる。そもそも生きてきた時代が違いますが、宮本武蔵という人間の佇まいや生き方は刃牙とは違う。ただの喧嘩ではなく、殺し合いの世界を生きてきた人間なので、考え方がまったく違うんですよね。
──私自身、原作を読んでいた当時、勇次郎との決着がついたあとに「次は武蔵」と聞いて、正直かなり驚いた記憶があります。
内田:とにかく凄い発想ですよね。
島﨑:武蔵の復活は科学技術とオカルト的な要素も重なっていて驚きました。
──武蔵と刃牙はどちらも「強者」という共通点がありますが、それ以外に似ている部分や対比的だと感じる部分はありますか?
島﨑:今日、直さんがおっしゃっていた「純粋」という言葉は、武蔵にも刃牙にも当てはまると思います。それは未熟という意味ではなくて、すごく正直で、素直だということ。かなり共通しているところかなと感じています。
内田:ふたりとも正直に生きていますよね。
島﨑:「強さ」に対しては、より真っ直ぐ。武蔵は特にそうで、直さんご本人もそういうところがあると思っています。誰かを「強い」と思ったら普通に「強い」って言いますから。「こいつは強い」「これはいい」っていうのを、当たり前のように言う。
内田:この作品に出てくるキャラクターって、そんな雰囲気がありますよね。
花山薫は特に印象的だったな。演じている江口を見ていても「なんだこれ、面白いな」って思うんですよ。
──内田さんのご興味を、そこまでかき立てるものとは何なのでしょう。
内田:スラっとした江口が芝居に入ると、“あの”花山になるのが面白い。リアリティがあるのともまたちょっと違って面白いんです。先輩たちが演じるキャラクターも同様ですが「演じている」というより、声の特徴がハッキリしているんですよ。
『刃牙』のキャラクターを演じている人はそれぞれの声に個性がある。もちろん皆さん上手で、その上「声の特徴」が強いんです。そんな中で、若い江口がどんな芝居をするのかと思っていたら、初っぱなからあんなに負担のかかる声を出していて。
江口自身、ああいう芝居をする機会は少ないと思うんです。だから最初ちょっとビックリして「大丈夫かな、無理してないかな」と思っていましたが、しっかりとやり遂げていましたからね。漢ですよ。
島﨑:やはり、特に先輩方は一声聞いて分かる特徴があるんですよね。50代の方は70代の方を見てそう言うし、30代の僕らが50代の方を見て「自分たちより、声そのものに特徴があるんだな」と感じたりもする。
その時々の流行もありますから、決して悪い意味ではなく、少しずつ……いわば薄くなっていく部分があるのかもしれません。
内田:出会う作品も、全然違ってきますからね。
島﨑:そうですよね。あと、昔の方のほうが「大人」なんですよね。役に求められている空気感も、より色気があったりして。
内田:時代的な違いもあるのかもしれないですね。だからそういう意味で言うと、あの中に江口が入っていることが興味深かった。「こいつ、どんな芝居するんだろう」と。あのメンバーの中にいきなり入って、最初にやるのがあれですからね。
──確かに。
内田:“本物”ばかりの中で、ですよ。普通だったら逃げ出しちゃうんじゃないかなって思いました。でも、それを堂々とやっている。堂々としてるかどうかは、実際のところは分からないですが(笑)、僕は花山によって、江口が可愛らしく見えるようになったんですよね。
──その瞬間を一緒に過ごしたからこそ。
内田:そうそう。それでいて別の作品に行くと、また全然違うことやってるんですよ。だから最近は「器用だなあ」って思いながら見ています。
──では最後に板垣先生が描いてきた『刃牙』という世界の魅力を教えてください。
内田:先のことは言えませんが、今回武蔵役として参加して、世界観がなんとなく分かった気がしています。言葉が通じなくても、わかり合える瞬間が描かれているんです。
でもそれはあくまで板垣先生の世界で描かれているものなので、何でもかんでも僕らが表現を担っていると思われるのもまた違う。基本的にはセリフを喋るだけ。そのセリフによって世界観が立ち上がって、受け取る側に委ねられるものなのかなと思います。
──島﨑さんはいかがでしょうか。
島﨑:やはり「かっこいい」と思ってしまう世界観が好きですね。めちゃくちゃではあるけれど、でも憧れちゃう。武蔵の存在もそうですが「これってかっこいいよね」「ちょっと憧れちゃうよね」って思わせてくれるような魅力が詰まっていると思います。
社会で生きていくほど、隠したり、表に出しづらくなってしまうようなものを、堂々とやっているといいますか。誰しも一度「自分がもし最強だったら、全部わがままを押し通したいよな」という想像をしたことがあると思うんです。そこを真正面から描いてくれるところが好きですね。
──作品を重ねるごとに、改めてその空気感を感じています。
島﨑:そうですね。作品としても刃牙としても、成長や変化は当然ありますが、根っこの「かっこよさ」はずっと変わらない。そこがぶれないから、憧れ続けられるんだと思います。笑いながら「いやいやいや!」ってツッコミつつも憧れてしまう。そこが圧倒的な魅力ですよね。
内田:ヤクザ映画を観終わって、劇場を出るときにガニ股になっちゃうみたいなね(笑)。
──確かに。私も何度も刃牙たちの真似をしていました(笑)。
島﨑:(笑)。そういう魅力があると思います。
【インタビュー・文:タイラ 撮影:MoA】

































