
清浦夏実が盟友・北川勝利とのタッグで描く、人と人の縁が結ぶ日常の音楽――TVアニメ『綺麗にしてもらえますか。』EDテーマ「若葉のころ」インタビュー
20周年へ向けて——今の自分の代表作を作りたい
──今回、久々のアニメタイアップとなりましたが、改めてアニメに寄り添った楽曲を歌うこと・作ることの醍醐味について聞いてみたいです。
清浦:作品からもらえる刺激で歌詞を書いたり歌ったりするのは、人と何かを生み出す作業に似ているんですよね。交換日記のような楽しさがあって。そこに絵がついて映像になった時の喜びはひとしおですし、いろんな方が関わるアニメの一部になれる喜びもあります。あとはその作品を大切にしてくださる方が、楽曲も一緒にずっと聴いてくださったり。まあ楽曲だけ独り歩きすることも稀にありますけど。自分がそのアニメを離れたとしても楽曲を一生歌い続けるという覚悟も必要ですし、一生大事にしたいと思えるものを作らなくてはいけない。そういうやりがいを感じます。
──ちなみに、過去に歌ったアニメタイアップ曲で、今でも長く愛されていることを強く感じる曲はありますか?
清浦:その意味で言うと「旅の途中」(『狼と香辛料』OPテーマ)は、多分、私の楽曲の中で一番聴かれていると思います。作品も人気ですし、サブスクでも何百万回も再生されていて、歌っている私が置いていかれている感覚があって(笑)。それは嬉しくもあり、悔しくもあるんですよね。他の楽曲も等しく大切に作っているから、自分の活動と乖離して、楽曲だけが独り歩きしている状況に対して、悔しい思いが当時はすごくあって。でも今となっては、自分を生かしてくれている一つだと思えますし、十数年経っても同じ曲をライブで歌い続けられるのは貴重なことだと感じています。今の目標は「今の自分の力で代表作を作ること」です。過去の曲も大切ですけど、今、自分が提示できるものは何かを示していきたい。「若葉のころ」も大好きな一曲になったので、ぜひ多くの方に聴いていただきたいです。
──「若葉のころ」のMVについても伺いたいのですが、実在のクリーニング屋さんを舞台にした映像になっていますね。
清浦:実写版『綺麗にしてもらえますか。』です(笑)。今回はドキュメンタリー風にしようという話になり、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会さんの協力も得て、3軒のお店で撮影しました。社会科見学みたいで面白かったです。実際に私がバンド時代に着ていたステージ衣装を持って行って、シミを取っていただいたりもして。多分一生着ることはないけど、思い出のあるものなので、捨てられなくて「どうしよう?」と思っていたんですけど、また着たいなと前向きになれました。きっと金目さんにクリーニングを頼むお客さんはこういう気持ちなんだろうな、という体験もできましたし、職人の手仕事の見事さを目の当たりにして、本当に尊敬しました。思い出を新しくしてもらえたような経験でした。
──映像に登場するクリーニング店も三者三様で面白いですね。
清浦:そうなんです。私の衣裳のシミを取ってくださったのは、ウエディングドレスとかのハイブランドに特化したお店で、他にも杉並で家族経営されているお店、そして宮内庁御用達の100年近く続くお店を見学させていただいて。100年続くお店では、6キロくらいある昔ながらのアイロンで作業されていて、本当に面白かったです。
──そしてシングルジャケットとブックレットは、作品の舞台である熱海で撮影されたそうですね。熱海には馴染みが?
清浦:実は撮影の日が初熱海だったんです。作品の中で初めて知った街でしたが、実際に足を踏み入れたら、漫画の中で見た景色がそのままあって、聖地巡礼しながら撮影している気分でした。若い人も多くてすごく活気がありましたし、かわいい看板のスナックがたくさんあったりして。撮影の日は海や坂の上を慌ただしく歩き回ったので、次はプライベートでゆっくり訪れて、温泉に入りたいです。海鮮丼は食べられましたけど。
──金目さんもお風呂好きなのでぜひ。
清浦:地元のおばあちゃんと話したりして、ゆっくり過ごしたいですね(笑)。ブックレットはシングルなのに16ページもあって、とっても素敵なお写真を撮っていただいて、手元に置いておきたくなるような素敵な仕上がりになっているので、ぜひ手に取っていただきたいです。
──シングルのカップリング曲「僕等の未来」も北川さんと制作。こちらは北川さん節が炸裂した、煌びやかで高揚感のあるアップナンバーです。
清浦:表題曲がミドルテンポで穏やかなので、カップリングはどうしようかとなった時に、ディレクターさんと北川さんから「フライングドッグらしいことをやろうよ」と言われたんですよね。「フライングドッグの人たちでフライングドッグらしいことをやるってどういうこと?」と思ったんですけど(笑)、今回北川さんと制作するにあたって、個人的に北川さんの全お仕事を振り返っていたこともあって、なんか妙に納得してしまって。それで決まった楽曲テーマが「勝手にCLAMP作品のオープニングテーマを作る」でした(笑)。
──あはは(笑)。北川さんは実際に『ちょびっツ』のOPテーマ「Let Me Be With You」(ROUND TABLE featuring Nino)や『こばと。』のOPテーマ「マジックナンバー」(坂本真綾)を手掛けていますものね。
清浦:そう、それを書かせたら北川さんの右に出る者はいないわけじゃないですか。そんな「Mr.フライングドッグ」の北川さんが「フライングドッグらしいってこういうことでしょ?」ってドンピシャなものを返してくるメタ構造が面白くて。で、私も架空の作品とはいえ大型タイアップなので、実家から『カードキャプターさくら』のコミックを取り寄せて読み返したりして、腕を鳴らして歌詞の第一稿を書いたんですけど、北川さんから「ちょっと作品に寄せすぎ。これはなっちゃんの曲なんだから、もう少し自分に寄せていいよ」と言われて(笑)。それで軌道修正したのが今の「僕等の未来」です。
──そう言われてみたら「CLAMP作品のオープニングテーマ」らしさがあります。
清浦:そうなんです。すごくフライングドッグらしい曲ですけど、私が過去にフライングドッグにいた時はやっていなかった、初めて挑戦するようなスタイルで、バンドを経たからこそのダイナミックなボーカリゼーションが出せたと思います。
──歌詞に目を向けると、清浦さんの今の状況、ソロ活動を再開した今の気持ちにも重なる内容なのかなと思いました。歌い出しやサビにある“いつか君の元へ 辿り着けるように”というフレーズは、どんな思いを込めて書いたのでしょうか。
清浦:これからまた音楽活動を続けていくにあたって、志を高く持ちたい、自分の思い描く未来に進んでいきたいという気持ちが、より強くなっているんですよね。その今の前向きな気持ちが自然とサビに落とし込まれたのかなと思います。自分自身が今、前を向いているということなんでしょうね。「若葉のころ」が過去を振り返る曲なら、カップリングはこれからのことを描く曲、という対比にもなっています。
──この歌詞における“君”は、第三者ではなく、自分自身のことを指しているように感じたんですよね。かつての志を抱いた瞬間の自分、あるいは理想の場所に立っている自分とか。
清浦:うん、そうですね。これは初期衝動と言っていいのかもしれないですけど、今、本当にフレッシュな気持ちでいるんですよ。不思議なことに。20年近く歌を歌い続けて、まだこんな気持ちにさせてもらえること、なれることが本当に嬉しくて。今回のシングルには、すごく背中を押してもらえました。まだまだみずみずしい気持ちで歌っていきたいです。
──めちゃいいですね。しかもその気持ちを、アーティスト活動の原点であるフライングドッグへの復帰作で得られたというのも美しくて。
清浦:正直、レーベルの意味や存在意義は昔とは変わっていて、今はアーティストが自分でなんでもできる時代じゃないですか。アルバムを作るにしてもクラウドファンディングという方法があったりしますし。だけど、昔から関係性がある場所で大切にされながら音楽ができるのは、すごく良いことだと思いますし、まあ今後どうなるかはわからないですけど、これからも、過去も大切にしながら歌を歌っていきたい気持ちは変わらずあります。
──期待しています! 最後に、今月末からのシングル発売記念ツアーに向けての意気込みと、今後の予定について教えてください。
清浦:大阪・京都公演は大学時代からの15年来の友人とトリオ編成で、東京公演は北川さんはじめお馴染みのバンド編成でお届けします。長く積み上げてきた関係性から出る空気感を楽しんでいただきたいですし、「若葉のころ」も「僕等の未来」も披露します。すごくいい状態で歌えているので、みずみずしく、かつ脂の乗った今の私を見に来てほしいです。
今後やりたいことと言えば、私は2007年に「風さがし」でデビューしたので、来年はとうとう20周年が見えてきました。曲も溜まってきているので、それをアルバムという形に残せたらいいなと思っていて。その際にはまたインタビューしていただけるように、頑張ります!
[文・北野創]
楽曲情報
【発売日】2026年3月11日
【価格】1,430円(税込)
≪収録曲≫
M1.「若葉のころ」作詞:清浦夏実 / 作 編曲:北川勝利
M2.「僕等の未来」作詞:清浦夏実 / 作編曲:北川勝利
M3. 「若葉のころ」-Instrumental-
M4. 「僕等の未来」-Instrumental-
作品情報




























