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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

飛行クラブに入って“飛ぶ”ことを夢見るトンボ。プロペラ付き自転車の後ろにキキを乗せて、海岸の飛行船見物へと出かけた際、キキが初めて空を飛んだときの話を聞いて「僕も魔女の家に生まれればよかった」と嘆いていました。
キキが「私のは仕事だもん 楽しいことばかりじゃないわ」と呟くと、「才能を生かした仕事だろ ステキだよ」と称えます。年齢はキキと同じ13歳。飛ぶことに強い憧れを抱くトンボらしい台詞であり、少し自信をなくしていたキキにとって嬉しい言葉となったはずです。
町に来て早々に失敗してしまい、泊まる場所も見つけられず途方に暮れていたとき、キキはパン屋のおソノさんと出会います。困っていたおソノさんに、キキが声をかけて助けになったことが縁の始まりです。
この町の人たちは魔女が好きじゃないみたいと弱気になるキキに、おソノさんは「大きな町だからね いろんな人がいるさ。でも私はあんたが気に入ったよ」と明るく言葉をかけます。面倒見のいいおソノさんは、まだ泊まる場所が決まっていないキキに、空き部屋を提供して快く迎え入れてくれました。
トンボからパーティーの招待状を受け取ったキキが、黒い服しか持っていないとおソノさんに相談する場面。黒い装いにずっと不満だったキキに、おソノさんは「黒は女を美しく見せるんだから」とウインクしながら、素敵な装いとして肯定してくれるのです。この作品の影響で黒い服を着るようになった人も多いのではないでしょうか。
魔法の力が弱まってキキが落ち込んでいるとき、以前森で出会った画学生のウルスラが訪ねてきました。キキの落ち込んだ様子を見たウルスラは、彼女を自分の山小屋へと誘います。
キキをモデルにした絵を見て、「自分はこんなに美人じゃない」とキキは訴えかけますが、ウルスラは「あんたの顔いいよ この前よりずっといい顔してる」と告げます。落ち込んだり上手くいかないこともまた成長の過程。悩んでいるキキの姿に、ウルスラは自身の経験を重ねているのかもしれませんね。
魔法が弱くなったことで思い悩むキキに授けた言葉。魔法も絵も似てるとして「私もよく描けなくなるよ」と語るウルスラに、キキは「前は何も考えなくても飛べた」「今はどうやって飛べたのか分からなくなった」と打ち明けます。
するとウルスラは「そういう時はジタバタするしかないよ。描いて描いて描きまくる」「それでもダメなら描くのをやめる」と諭しました。散歩したり景色を見たり昼寝したり何もしないでいると、そのうち急に描きたくなるのだと。自分と同じような壁にぶつかった経験のあるウルスラの言葉が、キキの心に響きます。
キキくらいの時に絵描きになることを決めたというウルスラは、寝るのが惜しいくらい絵を描くのが楽しかったのに、ある日全然描けなくなったのだと話します。描いても描いても気に入らないのは、それまでの絵が誰かのマネだったから。
「苦しかった?」とキキに尋ねられたウルスラは、苦しいのは今も同じだと前置きしつつ「でもねその後少し 前より絵を描くってこと分かったみたい」と語っています。スランプに陥り自身と向き合うことで、新たな成長へと繋がるのです。
ウルスラと語り合ったキキは徐々に元気を取り戻し、そこで“魔女の血”の話に。「魔法って呪文を唱えるんじゃないんだね」と問うウルスラに、キキは「血で飛ぶんだって」と答えます。「魔女の血か……いいね 私そういうの好きよ」「魔女の血 絵描きの血 パン職人の血……」と続けるウルスラ。この神様か誰かがくれた力のおかげで苦労もすると語ります。
魔法が何かなんて考えたこともなかったし、修行なんて古くさいしきたりだと思っていたというキキ。ウルスラが来てくれて嬉しかったと、自分一人じゃただジタバタしていただけだと告げました。キキにとって魔法と向き合う良い機会になったようです。
ウルスラの言葉に元気をもらったキキは、依頼を受けて老婆の家へ。目の前に用意された箱を開けると、なんとも可愛らしいケーキが。そして老婆はキキにこう伝えます。
「それをキキという人に届けてほしいの。この前とってもお世話になったから そのお礼なのよ」「ついでにその子のお誕生日を聞いてきてくれるとうれしいんだけど……またケーキを焼けるでしょ?」
するとキキは「きっときっと その子もおばさまのお誕生日を知りたがるわ!」「プレゼントを考える楽しみができるから!」と嬉しさで涙ぐみながら答えます。老婆の焼いてくれたケーキは、キキにとって大きな励ましに。助けたり助けられたりする人の優しさ、人と人の繋がりに心温まる場面です。
様々な人たちとの出会いや絆、「お届け屋さん」として働くなかで失敗や挫折を経験しながら少しずつ成長していく逞しいキキの姿は、きっと観る人へのエールとなるはずです。
| 作品名 | 魔女の宅急便 |
|---|---|
| 放送形態 | 劇場版アニメ |
| シリーズ | スタジオジブリ |
| スケジュール | 1989年7月29日(土) 【TV放送】 2026年5月8日(金) 金曜ロードショーにて |
| キャスト | キキ、ウルスラ:高山みなみ ジジ:佐久間レイ コキリ:信沢三恵子 おソノ:戸田恵子 亭主:山寺宏一 トンボ:山口勝平 バーサ:関弘子 オキノ:三浦浩一 老婦人:加藤治子 |
| スタッフ | 監督:宮崎駿 プロデューサー・脚本:宮崎駿 音楽:久石譲 音楽演出:高畑勲 作画:大塚伸治 近藤勝也 近藤喜文 美術:大野広司 色彩設計:保田道世 |
| 主題歌 | 「ルージュの伝言」荒井由実 「やさしさに包まれたなら」荒井由実 |
| 公開開始年&季節 | 1989アニメ映画 |
