
春アニメ『ガンバレ!中村くん!!』音楽担当・辻田絢菜さん&音楽プロデューサー・川﨑 龍さんインタビュー|中村くんは鍵盤ハーモニカ、広瀬くんはフルートといったようにキャラクターごとにイメージ楽器を設定しています
キャラクターごとにイメージ楽器を設定しています
──フィルムスコアリングで制作されたということですが、全体的な音楽の方向性やメインで使った楽器の特徴などについて教えてください。
辻田:最初はアニメのPVで使う曲の発注がきたんです。そのときは四つ打ちだったり、エレクトロニクス的な要素が入っていたりしてもいいかもという計画でした。そこから時間が経って本編の音楽を制作するとなったとき、私が得意としているアコースティックな楽器を使う方向性でいくことになったんです。
──方向性が変わったのはどのような理由が?
辻田:シリーズとしての全体像が固まったことで、コミカルなところもあるのですが、そっちではなく最終話にフォーカスして作っていくという計画になりました。第12話・第13話は弦楽器を入れた音楽にしようというお話もあり、改めて全体としてアコースティック方向でとなりました。
──なるほど。
辻田:さらに付け足すと、アコースティックというとそもそも弦楽器は使いがちなのですが、時に不必要に豪華になり過ぎるんですよね。本作は関係性が徐々に変わっていく物語なので、改めて豪華な音楽は終盤のほうにとっておき、基本は質感を重視したシンプルなサウンドを目指して、逆算する形でバランスをとりながら音楽制作がスタートしたと記憶しています。
また、打ち合わせのときには梅木(葵)監督から「中村くんの気持ちを追体験できるようなもの、音楽で支えるような感じを」というリクエストがあり、岩浪さんからは「かわいい、嫌な感じがないような」という言葉をもらいました。
川﨑:面白いのは、辻田さんという作家のグラデーションみたいなものが出ているところ。最初のほうの“80年代のシティポップみたいな雰囲気に少し馴染むような音楽を作るモード”と、“最終話の中村くんと広瀬くんとの関係性にフォーカスした繊細な音楽を表現するモード”では、かなり差があるんですよ。
辻田:最初のポップな雰囲気の音楽のモードと、最終話近くで流れる音楽のモードはだいぶ異なるかもしれないですね。
川﨑:でも、決してちぐはぐではないんですよね。それには意味があると思っていて。というのは、最初は友達になれるかどうかも分からないというコメディみたいな話だったところから、本当にのっぴきならないところまで接近して悩むところまで物語がひろがっていくじゃないですか。結果的ではありますが、そのニュアンスの広さも含めて、今回の劇伴では表現出来ているのではないかと思っています。岩浪監督は、そこまで見えていて発注されていたそうで、本当に恐るべしです!
辻田:あとは、アコースティック楽器がきちんと生音だったり、学校で使うような鍵盤ハーモニカやリコーダーといった楽器を使ったりすることで、等身大の学生感を感じられるような表現にしています。
川﨑:実はキャラクターごとにイメージ楽器を設定していて。中村くんは鍵盤ハーモニカやリコーダーで、メロディも中村くんのテーマというのがあります。
辻田:最初のPVで流れているのが中村くんのテーマで、そこで使っているフレーズを中村くんに関連する音楽ではぜんぶ使っています。そのほか、広瀬くんはフルートで、川村さんはオーボエ、青木山さんはダルシマーみたいなちょっと怪しい音が出せる民族楽器、松村くんはフレットレスベースで、謎バトルが始まったときに松村くんのメロディが展開します。
第12話はAパートからこれまでと明らかにテイストが違うと感じてもらえる
──おふたりがアニメの劇伴を制作するうえで大事にしていていること、大切だと思ったことを教えてください。
辻田:音楽はキャラクターに感情移入しやすくなったり、映像のスピード感を出す手助けになったりするのかなと感じています。本作に関わってみて、例えば「悲しい」という感情ひとつとっても、その中にある寂しさ、苦しさ、焦り、諦めきれない気持ち、といった機微を表現することにとてもやりがいを感じました。同時に、一作曲家としては、音楽だけ聞いたときにも成立しているものが作れたらと日々思っていて。本作の曲も、音楽作品として一曲ずつ聞いてもらえたら嬉しいです。
川﨑:先ほどお話したように、アニメの劇伴には求められるフォーマットや機能があると思っています。僕が劇伴制作に関わるときは、それをちゃんと満たしていながら、その人の音楽でなきゃ出せないエッセンスをうまく盛り込むっていうのを裏テーマにしていまして。本作も、辻田さんが担当してなかったらこうはならないっていうエッセンスを生かせればと思いながら、劇伴制作に関わっていました。
──最後に、ぜひここを見てほしい、聞いてほしいっていうポイントを教えてください。
辻田:最後まで見終わったときに「中村くんは絶対幸せになる」と確信が持てるような、すてきなアニメーションです。このまま最後まで、物語をいっしょに楽しみましょう。音楽的には、第12話はAパートからこれまでと明らかにテイストが違うと感じてもらえるものになっています。言葉とはうらはらな諦めきれない複雑な想いを、音楽で表現しているので、改めて音楽も合わせて中村くんの心情を感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
また、各キャラのテーマメロディやテーマ楽器といった音楽的設定も本当にたくさん盛り込んでいるため、何度も見て聞き込んでいただくほど色々な発見があると思います。これからもガンバレ中村くんを末長く楽しんでいただけたら幸いです。
川﨑:各担当の方が映像をこだわって作っていらっしゃいますし、音楽もしっかりコストをかけて、思いを込めて作っています。これだけ多くのスタッフの想いが詰まったフィルム。ファンの方が求めていた作品になっていたら嬉しいですね。終わったときには寂しさと同時に、登場人物みんなが幸せになって欲しいと願える、すばらしい作品に関わらせていただけたことに、感謝しています。
[文・M.TOKU]
作品情報
あらすじ
主人公・中村男久斗はどこにでもいる内気な男子高校生。
友人ゼロの彼の前に現れたのは、クラスメイトの広瀬愛貴。
何だこの気持ちは…!?
まだ会話もしたことがないのに、広瀬をみると毎日ドキドキがとまらない…!!
内気な男子高校生・中村くんの広瀬への“片想いをめぐる妄想と暴走”をどこか懐かしい80~90'sタッチでコミカルに表現し、高い人気を博す、春泥による王道BLラブコメディ「ガンバレ!中村くん!!」のTVアニメーション化が決定!
キャスト
(C)Nakamura-kun!! Animation Project


































