
彼女たちの日々は、これからも続いていく──TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』最終話を上伊那ぼたん役・鈴代紗弓さん、砺波いぶき役・青山吉能さんが振り返る【連載インタビュー第12回】
お酒があるからこそ近づける距離と言葉
──改めて、本作は“お酒”がひとつの題材にある作品です。お酒がもたらすものについて考えたとき、哀愁とも少し違う、切なさも含めた魅力があるように感じました。おふたりは、その部分にどのように向き合ってきましたか?
青山:私は、ものすごくお酒に助けられてきた人生だったので、もう「ありがとう」でしかないですね(笑)。お酒っておいしいし、何より楽しいんです。そこがほかの飲み物とは違う部分だなと思っています。
みんなで同じ料理を食べるよりも、もっと共感できるものがお酒にはある気がしていて……「同じDNAが入る」といいますか、同じ家庭にいるような、そのとき家族になれるような感覚があります。
もちろん飲みすぎはよくないですが、私はお酒のおかげで普段だったら「これは言わないでおこう」と思うことも「実はこう思っていて……」と話せることがありました。腹を割った話ができるというお酒のパワーを以前から感じていたので、いぶきにはすごくシンパシーを感じていました。
また、ぼたんのように「お酒がなかったら、私たちの関係ってなんなの?」と感じてしまう部分もあると思うんです。でもそれって前提として、一緒にお酒を飲んで、それでようやくたどり着けた関係性の先にあるものですよね。だから、やっぱりお酒はあったほうがいい。人生にお酒はあったほうがいいし、必要だと思います。私自身の人生もそうなので。
──お酒があることで人との距離が近づいたり、普段は言えないことがこぼれたりするのも滋味深いのかなと。前提として適量が大事ではありますが……。
青山:もちろん「飲んでも飲まれるな」ではあるんですけどね(笑)。
「酒豪」と言うと文字通り豪快なイメージがあるのかもしれませんが、お酒が好きだからこそ「こんな楽しみ方もあるんだな」ということを『上伊那ぼたん』が表してくれた気がします。私自身は、どちらかというといぶきのような形で飲むことが多かったので「『お酒好き』にもいろいろな形があるんだよ」と伝えたいです。
──青山さんの事務所の先輩である江口拓也さんもマスター役でご出演されていましたが、江口さんもお酒好きで知られていて。
青山:江口さんも、もしかしたらこういう楽しみ方をされているときがあるもしれないですよね。
──5巻の帯に寄せられていたコメントが素敵でしたよね。
青山:「読むお酒」という。
鈴代:おしゃれな言い方! 本当に素敵だなあ。
青山:アニメでもご一緒できて嬉しかったです。
人生の時間を預けたくなる金曜の30分
──鈴代さんはお酒という題材については、どのように感じていましたか?
鈴代:私もお酒は好きなのですが、たくさん量を飲むというよりは面白そうだなと思った名前のものや、おすすめされたものを飲んでみるタイプで。弱くはない……くらいなんですけど、そう言うと「強いんだ」と言われるんですよね(笑)。そういうことではなくて、別にカッコつけたいわけでもなく、たしなむタイプだと思っています。
でも今、よぴちゃんの「お酒って楽しい」という話を聞きながら「確かに」と思いました。飲み物のジャンルとして「楽しい」と言えるのって、お酒ならではかもしれないですよね。「このあと、みんなでジュース飲もうぜ!」だとしっくりこない気がするといいますか。
やっぱり「お酒を飲もう」という場は特別だなって。お酒には楽しい部分もありますけど、同時に、楽しいからこそふとした瞬間に出るその人の本音や寂しさ、時には誰にも言えていなかった悲しい気持ちみたいなものが、ぽろっと出てくることもある。それを出せることもお酒の魅力だと思うんです。「お酒の力に任せて言うなよ」と思うこともあるかもしれないけれど、お酒があったから言えちゃったこともある。そこが、哀愁のような部分につながっているのかなと思います。『上伊那ぼたん』では、そこにすごく丁寧にフォーカスが当たっていましたよね。
──お酒がある場だからこそ、普段ならしまっておくような気持ちに関しても思い切れるのかなと。
鈴代:ときにお酒は、何かを伝えるための口実……と言うと言い過ぎかもしれませんが、その口実がいい方向に働くときもあれば、うまくいかないこともある。けれど、ひとつのきっかけとして、お酒を介することはすごく身近で、みんなが取れる手段でもあるので、そういう部分が自然に日常に馴染んでいるのが面白いなと思っていました。
キャラクター達が交わす会話・言葉は、すぐに過ぎ去ってしまいそうだけど、その一瞬を取りこぼさないように残しておきたいと思う作品なんです。9割は楽しい話をしていたけれど、ほんの一言、二言出た「おや?」と思う言葉をちゃんと覚えて帰るんだろうな、というか。楽しいだけじゃない部分をちゃんと拾っていけるように、感情として覚えていけるように演じたいと思っていました。
──ありがとうございます。最後に、視聴者の皆さん、そして原作ファンの皆さんにとって『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』がどのような作品として心に残り続けてほしいか、おふたりが想うことをお伺いできればと思います。
青山:改めて、砺波いぶきというキャラクターに出会えたことは、私にとって本当に財産だなと思っています。『上伊那ぼたん』は、原作からそうですが作品に身を委ねることができるんです。間(ま)だったり、空気だったり……そんなものも含めて、貴重な金曜の30分を皆さんと一緒に共有できたのかなと思っています。
最近は早送りや倍速視聴など、“ながら見”もしやすくなっていますが、本作は「この世界に入りたい」とより思える作品でもあったと思うんです。放送が終わってしまうと、そんな時間もなくなってしまうのかなと思うと、本当に不思議な感覚です。
鈴代:うんうん。
青山:でも配信もありますし、彼女たちの日々もまだまだ続いていきます。原作ではキャラクターも増えて、矢印もあらゆる方向に向かっていきますので、ぜひ読んでいただきたいです。これからも『上伊那ぼたん』に人生の時間を預ける一瞬が、皆様の中に残ってくれたらいいなと思っています。
鈴代:上伊那ぼたんを演じさせていただけて、本当に幸せでした。全12話を通して、登場するキャラクターたちの人間模様やドラマが、深く心に残ってくれていたら嬉しいなと思います。この作品を見たあとに、大切な誰かに会いたくなるような作品だなと思っていて。大切な時間を思い出したくなるような作品として届いていたら嬉しいです。
【文:逆井マリ インタビュー・編集:西澤駿太郎】
連載インタビューバックナンバー
『上伊那ぼたん、酔える姿は百合の花』作品情報

Onair
TOKYO MX、BS11、とちぎテレビ、群馬テレビ、テレ玉 ほかにて
4月10日(金)24時より放送開始
Streaming
ABEMAにて4月10日(金)24時より地上波同時・最速配信
ほか各配信プラットフォームにて順次配信
キャスト
上伊那ぼたん:鈴代紗弓
砺波いぶき:青山吉能
郡上かなで:寿美菜子
遊佐あかね:天海由梨奈
北杜やえか:富田美憂
張景嵐:河瀬茉希



























