
「いきなり『俺の花嫁』と言われるわけですから、戸惑うしかないですよね(笑)」監督が感じた本作のポイント──TVアニメ『鬼の花嫁』連載インタビュー第13回 監督・大宮一仁さん
細部にこだわった作品づくり
──先ほどお部屋の話がありましたが、和風要素といえば着物もかなり豪華ですよね。
大宮:着物については、実際の呉服店(染と呉服 京や)に監修していただきました。柄によって意味が異なるため、高貴な人物が好むものや、キャラクターの性格、物語における役割を象徴する柄を取り入れています。
たとえば鬼山桜子の着物や帯には、雷を思わせるモチーフがあります。桜子が内側に秘めている感情の激しさや、苛烈さを表現したものだと伺いました。
東雲花梨の着物には蝶の意匠があしらわれ、黒百合と白百合も組み合わされています。花梨が持つ表と裏の顔を象徴するものですね。僕自身も、監修の方から説明を受けて、「こんなに意味が込められているのか」と驚きました(笑)。
物語だけでなく、衣装や背景の細部にもキャラクターを読み解くヒントがあります。見返す際には、そうした部分にも注目していただきたいです。
──音楽や音響面では、どのようなアプローチが取られたのでしょうか?
大宮:収録については、若林和弘音響監督が非常に経験豊富な方なので、かなりお任せしました。僕は座って見ているだけのような場面もありましたね(笑)。キャストの皆さんが本当に豪華で、決まった顔ぶれを見たときには、こちらが肝を冷やしたほどです。
音楽には、和風ファンタジーロマンスから想像するものとは少し異なる、現代的なアレンジも取り入れられています。僕は当初、弦楽器や和楽器を前面に出した、クラシカルで和の要素が強い音楽を想像していました。
ところが、なかには電子音を前面に出した、かなり現代的な楽曲もあって。「こういうアプローチもあるのか」と驚きましたし、若林さんとも「この曲はどの場面で使うといいでしょうか」と相談しながら組み立てていきました。
──キャストについてもお伺いしたいです。まずは、主人公である柚子を演じる早見沙織さんの印象を教えてください。
大宮:早見さんについては、僕自身が普通にファンなので、もう何も言うことがないです(笑)。本当に素晴らしい方でした。
作品に向き合う姿勢がプロフェッショナルですし、その場にいるだけで、共演者の皆さんを柔らかな空気で包んでくださる方です。収録現場もとてもいい雰囲気で、早見さんがいてくださってよかったと感じる場面は何度もありました。
早見さんご自身にも、柚子と同じように一本筋が通っている印象があります。ご自身の考えや大切にしているものを軸に持ちながら、それぞれの作品へ取り組まれている方なのだと思います。その軸があるからこそ、演技の幅や感情表現の豊かさにつながっているのではないでしょうか。
──玲夜役の梅原裕一郎さんはいかがでしたか?
大宮:非常にストイックな方でした。収録現場でご一緒した際、ずっと台本を抱えていらっしゃった姿が印象に残っています。
現場へ入るときにも台本を見ながら来られていて、事前に十分読み込んだうえで、さらに直前まで役を掘り下げている。作品が始まると、それ以外のことをすべて遮断するほどの勢いで、玲夜へ入り込んでいるように見えました。
こちらから気軽に話しかけられないほどの集中力でしたね(笑)。柚子以外のものが見えなくなる玲夜と、どこか通じる部分があるのかもしれません。
──花梨役の石見舞菜香さんについてもお聞かせください。
大宮:本当にぴったりでした。花梨は、本作のなかでも特に難しいキャラクターだと思います。
甘えん坊で意地悪で嫉妬深い。一方で、本人なりに背負っている重圧があり、姉に対する複雑な感情も抱えている。ただ、それらを本人は表には出さない。さまざまな感情を抱えた役なので、演じるのはかなり難しかったと思います。
そのなかで、石見さんは要求される感情をすべて芝居へ落とし込んでくださいました。収録でも迷いを見せることなく、すっと構えて演じてくださるタイプで、その表現力には驚かされました。
石見さんは以前、朗読劇で柚子を演じていたそうですね。柚子と花梨には表裏一体ともいえる部分があるので、両方を演じられたと聞いて、納得しました。
──アニメ第11話では、花梨の過去が掘り下げられました。制作にあたり、どのようなことを考えましたか?
大宮:原作やコミカライズで触れられている要素をもとに、花梨がなぜ現在のような人物になったのかを広げて描いています。制作チームでも、「花梨はどうしてこうなってしまったのだろう」と、かなり話し合いました。
本作は王道のロマンスファンタジーですが、その背景には、人間とあやかしがどのような社会を築いてきたのか、両者が結ばれることにはどのような意味があるのかといった、考察できる要素がたくさんあります。
花梨と瑶太の関係についても、二人がこの先どのように生きていくのかと、スタッフの間で話題になりました。周囲から関係を否定されたとしても、あやかしの本能を考えると、簡単に別の相手と結ばれることはできないのではないか。花梨はその悲しみを抱えたまま生きていくのか、瑶太も同じなのかと。
あくまでいち読者としての妄想ですが、しがらみをすべて捨て、あやかしの一族から追われることになったとしても、瑶太には花梨と一緒に生きる道を選ぶ展開も見てみたいなと思いました。
──柚子と玲夜の出会いから始まる作品にちなみ、人生や仕事のなかで印象に残っている出会いを教えてください。
大宮:僕自身は、何か一つのドラマチックな出会いによって人生が大きく変わったというより、携わってきた作品や、そこで出会った方々から少しずつ刺激を受けてきた感覚があります。いろいろな作品との出会いが、ものづくりの糧になっていますね。
仕事以外では、町田にあるサブカルチャー系のバーへ通い始めたことが印象に残っています。アニメやゲーム、ボードゲームなどが好きな人たちが集まるお店で、そこで友人がたくさんできました。
当時は、仕事をして家に帰り、また仕事へ行くような生活をしていたので、「さすがに仕事だけの生活は嫌だな」と思って通い始めたんです。そこからイベントにも参加するようになり、いろいろな人と知り合いました。そこで受けた刺激が、結果的に仕事へつながることもありましたし、「あのお店へ行ってよかった!」と思える出会いです(笑)。
──最後に、最終話まで作品をご覧になった皆さんへメッセージをお願いします。
大宮:まずは最終話まで観ていただきありがとうございます。『鬼の花嫁』は、王道のラブロマンスですが、その周囲には、あやかしの社会や人間との関係、キャラクターが背負ってきたものなど、考察も捗るような要素がたくさんあります。
美術や音楽、着物の柄などにも、さまざまな意図が込められています。ぜひ一度だけでなく、細部に注目しながら見返してみてください。第11話の花梨の過去をはじめ、原作小説やコミカライズとは少し異なる、アニメならではの味わいも楽しんでいただけたらと思います。
『鬼の花嫁』作品情報
2026年7月4日(土)24:30~よりTOKYO MX/BS11ほか全国12局にて順次放送中!
dアニメストア・ABEMA・U-NEXT・アニメ放題にて地上波同時・最速配信!
その他プラットフォームでも順次配信開始
あらすじ
優れた能力と容姿を持つ“あやかし”は日本の中核を担っていた。
そんな絶大な権力を持つ“あやかし”は本能で運命の「花嫁」を見つけることができ、その「花嫁」に選ばれることは女性の憧れであり、名誉なことだった。
平凡な高校生・東雲柚子は、妖狐の花嫁である妹・花梨と比較され、家族にないがしろにされながら育ってきた。
ついに心が破れた日、柚子は偶然、類まれなる美貌を持つひとりの男性と出会う。
「見つけた、俺の花嫁」
彼の名は鬼龍院玲夜、“あやかし”の頂点に立つ鬼だった。
──この出会いから、柚子の運命が大きく動きだす。
キャスト
(C)クレハ・富樫じゅん・スターツ出版/「鬼の花嫁」製作委員会

































