TVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』大ヒット御礼！原作者・鏡貴也さん、山本天志監督、蜂屋誠一プロデューサー座談会[中編]

　この夏に放送スタートしたTVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』が大ヒットオンエア中！

　アニメの人気の秘密に迫るため、当サイトでは原作の鏡貴也さん、TVアニメ監督の山本天志さん、アニメプロデューサーの蜂屋誠一さんを迎えた座談会を行いました。その模様を3回に分けてお送りします。

　中編の今回はアニメの魅力、キャスト決定の秘話や収録現場の様子、またアニメ化するにあたって“挑戦”したことについて語っていただきました。

●アニメ『いつ天』のテーマは「愛」

――この作品をアニメ化しようと思った理由、魅力を教えていただけますか？

蜂屋誠一プロデューサー（蜂屋P）：いろいろな魅力はありますが、ひと言で言えば「愛」。大兎とヒメア、他のキャラの関係性を考えた時、人を愛することってどういうことだろうと改めて考えさせられたんです。「愛」はアニメのテーマの定番ではあるけど、この作品で「愛」を描いたら他のアニメと違うものになるんじゃないかと。バラバラで個性豊かなキャラ達が物語を通じて繋がっていくところもおもしろくて。今のアニメにありがちなドライだったり、記号的じゃない、ウェットな部分をやれるんじゃないかと思いました。

――アニメ化の際に監督が心がけたことや苦労されたことは？

山本天志監督（以下山本監督）：何よりもまず榎宮さんのイラストをアニメで動かすことがマストのハードルで。お話作りに関しては脚本家陣が強力なので引っ張っていただいて、僕はビジュアルを頑張ろうと。

蜂屋P：キャラデザインが固まるまではプレッシャーでしたよね。特に色設定は。企画が始まって1年くらいは「この色で行きましょう」と決まるまでは苦労されたと思います。

――先生が実際に動く映像をご覧になった時の感想をお聞かせください。

鏡貴也先生（以下鏡先生）：まずPV映像を見たのが最初で、担当さんからデータで送ってもらったんですけど、なかなか開けなくて。別にソフトが必要だったり、結局、3日後に見られた時には感動しました（笑）。まだセリフが入ってなかったけど、映像がすごくきれいで。女の子もかわいいなと。イメージ通りの映像になっていました。

●最後まで決まらなかったヒロイン、ヒメアの声

――キャストはどのように決まったんでしょうか？

蜂屋P：オーディションを行いましたが、ヒメアだけ最後まで決まらなくて。ヒメアの中にはバール・スクラや幸福ヒメアなどがいて、更にかわいい時と凄味を効かす時のギャップ、大兎に接する時とその他の人に対する時の顔も違って、多様な演技を求められるキャラなんです。だから大変で。男性陣は割とスムーズに決まりましたね。大兎役の立花慎之介さん、月光役の中村悠一さんも。

山本監督：先にCDドラマが出ていて、その評判が良かったので、まず声で皆さんに納得してもらわなきゃいけないという高い壁がありました。

蜂屋P：ちなみに日向役の福山潤さんだけ、CDドラマと同じキャスティングなのはなぜですかとよく聞かれますが、TVアニメのためにオーディションし直して決まった結果です。女性キャストに関しては美雷役の野水伊織さんは監督が決めました。あと遥役の美名さんも。幼なじみ声だと。「こんな幼なじみがいたらたまらん」って。

山本監督：確かに言いました（笑）。

蜂屋P：ヒメアだけは決まらなくて、何度もオーディションをやりました。

山本監督：自分の中にあるイメージの声と合わなくて。最終的にとっておきの方にお願いしてオーディションに来てもらったら「この声だ！」と。

――それが高本めぐみさんだったんですね。先生はキャラの発する声を聴いてどう感じられましたか？

鏡先生：良かったです。イメージと違うということもなく、皆さん上手だなと思いました。真剣に取り組んでいただいて、女の子はかわいく、男性はかっこよく。

山本監督：中村さん、カッコイイですよね。

鏡先生：はい。声優さんが決まるたびにキャサリンさんが大興奮状態で電話をかけてくるんです。「そうですか。よかったですね」と言うと、「先生の作品ですよ！」となぜか怒られて。でも、すごく高いテンションで来られて、それ以上で返すのって難しいじゃないですか（笑）。キャサリンさんが喜んでいるなら間違いないと思ったし、実際に見てもよかったです。

鉄大兎（CV：立花慎之介）

サイトヒメア（CV：高本めぐみ）
制服バージョン

サイトヒメアメイン服バージョン

時雨遥（CV：美名）

●山本監督はここ一番のポイントになるセリフにこだわる

――アフレコは絵がある形でされているんですか？

蜂屋P：そうですね。全話分、絵を作ってから収録してます。

山本監督：たまに「すいません。ついてる絵が間違ってました」ということもありますけど（笑）。

――第1回の収録の最初に声優陣に対して作品を熱く語ったり、気合を入れる監督もいらっしゃいますが、山本監督は初回アフレコの時に何かおっしゃったんですか？

山本監督：音響監督の岩浪美和さんがいるので、そこは任せて（笑）。キャストの皆さんは原作を読み込んでくださって、「おもしろかったので、出演できて嬉しいです」とおっしゃってくださったのでやりやすかったです。

蜂屋P：山本監督は結構こだわられるほうですね。セリフの直しとか。各話で2、3つポイントになるセリフがあって、ここ一番のセリフではテイクを重ねることがよくありますね。その時、しゃべっている感情の持っていき方にすごくこだわられる方だなと。

●収録で自分の書いたセリフを読み上げられるのは照れくさい

――鏡先生は収録に立ち会っていらっしゃるんですか？

鏡先生：半分くらいは行ってますね。収録がスムーズなんですよね。

山本監督：学園ものの作品では珍しいかも。戦闘シーンもあるのに早いんです。特に男性キャストはほとんどNGなしですね。ニュアンスに関してちょっと変えてもらうことがあるくらいで。

――先生はキャストの方とお話しされたりするんですか？

鏡先生：したり、しなかったりしてます（笑）。声優さんともスタッフさんとも仲良くできていると思います。ピクチャードラマの泉ちゃんのエピソードで泣きましたと聞き、ちょっと照れくさかったです。現場ではいつも緊張していて、自分が書いたセリフが出てくると「わっ、僕のセリフが読み上げられてる」とすごく恥ずかしい気持ちになります（笑）。
最初は家で一人で書いていたものが、イラストになって、マンガになって、遂にはアニメになって、声も付いて、大声で読み上げられてる。何かジェットコースターに乗っている気分になります。

山本監督：先生が来てくださると僕らも助かりますね。

蜂屋P：先生がいらっしゃるとその場で直してくださるので（笑）。

鏡先生：次回予告も書いてたりしてます。でも13回（※TV放送12話＋原作小説第9巻に限定でDVDが同梱されるTV未放送エピソード1話分）って早いですね。ちょっと寂しさも感じたりします。収録が終わっても制作はまだまだ先があると思いますけど。

山本監督：そうですね。まだまだ、これからみたいな（笑）。

紅月光（CV：中村悠一）

安藤美雷[アンドゥのミライ]（CV：野水伊織）

黒守・フィリエル・優一（CV：諏訪部順一）

上／セルジュ・エントリオ（CV：岡本信彦）<br>下／ハスガ・エントリオ（CV：鈴村健一）

上／セルジュ・エントリオ（CV：岡本信彦）
下／ハスガ・エントリオ（CV：鈴村健一）

紅日向（CV：福山潤）

●アニメの次回予告の脚本の半分は鏡先生作!?

――今、先生が次回予告を書かれているというお話がありましたが、毎回そうなんですか？

蜂屋P：次回予告は基本的には森田さんが書かれていて、3～4つまとめてチェックに出すと、2つくらい先生が提案してくださって。

鏡先生：僕と森田さんで半分半分くらいでしょうか。森田さんので爆笑しちゃうとそのまま残したり、語尾を変えたり。

山本監督：「鏡先生が書いた次回予告は何話でしょう？」とクイズにしてもおもしろいかも。ファンの方ならわかるんでしょうね。

蜂屋P：先生は『ドラゴンマガジン』の特集でもよくキャラの掛け合いを書かれていて、非常に人気があるとお聞きしていたので、予告も近いテイストにしようかなと。ちなみに『いつ天』の次回予告は他の作品より長い30秒です。

鏡先生：あれって、後半どんどん掛け合いになっていくじゃないですか？　あれのガッツリしたのがDVDの特典のピクチャードラマで。僕が書き下して監督が絵をつけたものです。時間はどれくらいなんですか？

山本監督：10～15分くらいです。

鏡先生：更にその続きが小説になって、それも特典に付きます。あっ、今日、上げておきましたので。

蜂屋P：ありがとうございます（笑）。

――先生はそこまで動員されちゃうんですね。

鏡先生：担当さんが「やりますよね？　入れときましたから」と。「そうですか。わかりました」のやり取りが繰り返されているんです（笑）。

●限界のスピード感に挑戦！　1シーズンで2シーズン分のボリューム

――このアニメを見ていて思うのはやはりテンポの良さとスピード感で、本編が終わるまであっという間で気が付くとEDになっていて。

蜂屋P：TVアニメは2～3年前くらいから全体的にテンポが早くなってきて、ここ最近、ゆっくりになってきたかなと。そこで限界まで早くしてみようか、詰め込めるだけ詰め込んでみようと思って。苦難を乗り越えてキャラが一致団結するお話を描かなくてはいけなかったので、キャラをどんどん動かしていくため、1話から6話までで一通り共通体験をさせて、6話から仲良くなるのかなと思ったら、また新しいキャラが出てきて。前半と後半で2度おいしいみたいな。本当は2シーズンくらいに分けてやるところを1クールで一気に描いてます。

――でも説明不足になっていないので初めての方にも見やすくていいですね。

蜂屋P：ありがとうございます。でも、まだ原作でも明かされていない謎もあるんですよね。今、原作を読むと「ああ、そうだったのか！」とわかるところもあるので、ぜひ原作も読んでほしいです。最新刊は8巻ですよね？

鏡先生：はい。この8巻でかなり解明しているので、スタッフの方は8巻まで読んだ後に作りたかったんじゃないですか？

山本監督：それはありますね（笑）。打ち合わせの時に先生からポロっと物語の核心に迫る重要なエピソードが耳に入ってきて、「わっ、聞くんじゃなかった！」と。

鏡先生：出せない情報なのに知ってしまうと振り回されちゃいますよね。

山本監督：出しちゃいけないけど、ちら見せくらいはしたほうがいいかなと。

――原作が続いている作品の難しさでもありますね。

山本監督：はい。でも僕よりもシリーズ構成の森田繁さんが相当苦労されたと思います。

蜂屋P：実は短編のほうをアニメ化しようかという意見も最初にあって。でも、本編の各キャラがこう知り合って、共に戦って、仲良くなるお話をやらないとつながらないだろうと。そこで1～5話まで各キャラの出会いや共通経験を描いて、6話以降に本筋を追いつつ、キャラ同士の楽しいエピソードも描いて、また違う魅力を出すことにしました。1シーズンで2シーズン分やった感覚で、僕的には実験でした。

（後編に続く）

＜取材・文：永井和幸＞

第5話より

TVアニメ『いつか天魔の黒ウサギ』
テレ玉、チバテレビ、TOKYO MX、tvk、岐阜放送、三重テレビ、KBS京都、サンテレビ、TVQ九州放送でオンエア中！

DVD＆ブルーレイ『いつか天魔の黒ウサギ』第1巻
9月30日発売
ブルーレイ　7,980円（税込）
DVD限定版　6,930円（税込）
DVD通常版　5,880円（税込）
発売：角川書店

☆ブルーレイ＆DVD限定版　スペシャル特典☆
特典その(1)：「いつ天」お楽しみDVD
・見てから読むか、読んでから見るか！鏡貴也書き下ろし新作ストーリーを映像化したピクチャードラマ「宮阪高校生徒会室日誌」（約15分）。
同梱小冊子「宮阪高校生徒会“裏”日誌」掲載の書き下ろし小説と連動！
生徒会室で、なぜか水着選びを始めるヒメア、ミライ、泉。キャッキャウフフの生着替えの果てに、月光と大兎は…。　　　
（出演：立花慎之介、高本めぐみ、中村悠一、野水伊織、堀川千華ほか）

特典その(2)：原作イラスト　榎宮祐描き下ろし　全巻収納BOX
特典その(3)：ピクチャードラマと連動した鏡貴也書き下ろし小説掲載。小冊子「宮阪高校生徒会“裏”日誌」
特典その(4)：キャラクターデザイン　磯野智　描き下ろしイラスト使用ジャケット
特典その(5)：映像特典／ノンクレジットオープニング、ノンクレジットエンディング「空蟬」バージョン

『いつか天魔の黒ウサギ 9』DVD付限定版
12月初旬発売予定
3,990円（税込）
発売：富士見書房
※予約締切日は9月3日！

PSP版『いつか天魔の黒ウサギ』
11月23日発売予定
初回限定生産版　8,190円（税込）
通常版　6,090円（税込）
発売：角川ゲームズ

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