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劇場版『ガルパン』ミリタリー生コメンタリー付き上映会レポート

2度目の廃校の危機、その理由は風紀委員をグレさせるため!? 『ガールズ&パンツァー 劇場版』ミリタリー生コメンタリー付き上映会レポ

 2016年5月6日(金)、新宿バルト9にて5月27日にBlu-ray&DVDの発売を控えた、『ガールズ&パンツァー 劇場版』の上映会イベント「ミリタリー生コメンタリー付き上映会」が行われました。

 昨年11月より上映が開始し、現在も超ロングラン上映中の劇場版『ガルパン』。キャラクターの可愛らしさや、簡潔かつ魅力的なストーリーなどで、既存ファンだけに収まらず、大きな人気を集めています。しかし、もちろんその魅力はそれだけではありません。登場する戦車や、車両、航空機などの乗り物に、一度見るだけでは気づかないかもしれない小物や、キャラクターのセリフなど、細かな軍事要素へのこだわりに関しても高い評価を得ています。今回のイベントでは、そんな劇場版の軍事要素にかかわる専門家たちが新宿バルト9に集いました。

 メンバーは司会の杉山潔プロデューサーに、考証・スーパーバイザーの鈴木貴昭さん、軍事評論家の岡部いさくさん、イタリア軍研究家の吉川和篤さん、ミリタリー監修の田村尚也さん、フィンランド軍研究家の齋木伸生さん、C-5M スーパーギャラクシーの監修を務めた二宮茂幸さんというかなり濃いメンツです。そんな、劇場版にかかわる、ミリタリーのオールスターが、劇場版本編を見ながら、時にファンにもわかりやすく、時にファンは置いてけぼりにする勢いで、軽快なトークで生コメンタリーを行ってくれました。

▲司会を務めた杉山潔プロデューサー

▲司会を務めた杉山潔プロデューサー

■自己紹介から見どころが! 齋木伸生さんがカンテレ演奏と"あの帽子"を披露!

▲カンテレの演奏を披露するフィンランド軍研究家/齋木伸生さん

▲カンテレの演奏を披露するフィンランド軍研究家/齋木伸生さん

 まず登壇者から、簡単な自己紹介が行われたのですが、齋木さんは、ここでカンテレによる演奏と、新しい帽子を披露。その帽子はなんと、ミカとおそろいのチューリップハット! イベントはこれからかと思いきや、自己紹介の時点で、すでにネタが仕込まれていました。

 いざイベントが始まり、杉山プロデューサーから「2時間、果たしてしゃべることが無いのか、それとも時間が足りないのか」というセリフが出ると、すぐさま鈴木さんから「絶対足りないですよ、ひとり20分もしゃべれないじゃないですか。杉山さんと吉川さんだけで3時間くらいしゃべるのに、どうすればいいんですか!?」という素早い反論が。劇場版の上映時間をフルに使うということで、トークイベントとしてはなかなかの長丁場なはずですが、このメンバーにとっては全く問題ないようです!

 劇場版の上映が始まると、すぐさま「3分ちょっとでわかる!!ガールズ&パンツァー」はプレスコであるといった、あまり触れることのない、制作サイドの小ネタが挟まれます。物語冒頭のゴルフ場での戦闘では、このゴルフ場が大洗に実在する大洗ゴルフ倶楽部というゴルフ場であり、取材に行ったときのエピソードや、ダージリンたちが立てこもったバンカーが実際に戦車が入れそうなほど、とても深いことで有名なバンカーであるといった説明がありました。

 大洗女子学園が進行するシーンでは、齋木さんから「あまり統一感のない編隊がいいんですよね。個人的には大洗の人気はここからきてるんじゃないかと思います」とコメントすると、 杉山プロデューサーから「実際に考えたら整備補給はどうするんだって話になりますけどね」とリアルな突っ込みが。しかし、ここで齋木さんは、「フィンランド軍が実際にできているんだからできますよ」と、隙の無い切り返し! とはいえ大洗の戦車はかなり特殊な取り合わせ。鈴木さんや吉川さんも加わり、運用の難しさについてのトークに花が咲き、序盤からミリタリートークが止まりません。

■大洗マリンタワーを折る案もあった? 大洗町戦の裏話

▲考証・スーパーバイザー/鈴木貴昭さん

▲考証・スーパーバイザー/鈴木貴昭さん

 戦闘が大洗町に至ると、鈴木さんや、杉山プロデューサーから、大洗町の広範囲が埋立地であるといった大洗町の歴史に関するお話もあがります。舞台の歴史にまで言及されるのはガルパン特有のことかもしれません。さらに大洗町役場前での戦闘シーンになると、町役場が改装される予定があったので破壊にOKが出たという裏話も。さらに、大洗マリンタワーを破壊するという案もあったとのことですが、これについては、さすがに取りやめたようです。

 廃校の連絡を受けるシーンでは、杉山プロデューサーから、「大洗女子学園は、強くなるために戦うわけではないし、試合をするために戦っているわけでもない。なので、学校をもう一度守るという動機づけを与えた」という劇場版の物語に深くかかわる説明がありました。さらに、学校がなくなることによって起こる、生徒たちの反応を見せるシーンでもあるとのことです。鈴木さんから「水島監督は『風紀委員をヤンキー座りさせたい』といってました(笑)」という情報も。

▲イタリア軍研究家/吉川和篤さん

▲イタリア軍研究家/吉川和篤さん

 ボコミュージアムの話題になると、杉山プロデューサーや鈴木さんから出た、「本当にボコ好きですよね」というコメントに続き、吉川さんからは「かなり制作が押せ押せだったのもあって、ボコミュージアムのシーンは、絵コンテで見たときは、これいるのかなと。今となっては必要なシーンなんですが」という言葉も。ここでは、引き続いて劇場版全体の尺の話にもなり、かなり削るところは削ったというお話も出ました。鈴木さんと吉川さんから、「シナリオ見たらどう考えても3時間超えてましたよ」、「2時間の映画で戦車戦1時間半やってるんですもん」という制作裏話もあがりました。ちなみに、シーンを削る際は初めにボコミュージアムのシーンがあがったそうですが、監督自らどうしてもやりたいというお話があったとのこと。絵コンテも監督自ら手掛けているそうですよ。

■ミリタリーに次ぐミリタリートーク! 濃すぎるトークは最後まで止まりません!

▲C-5M スーパーギャラクシーの監修/二宮茂幸さん

▲C-5M スーパーギャラクシーの監修/二宮茂幸さん

 画面にC-5M スーパーギャラクシーが映るシーンでは、監修を務めた二宮さんからもお話がありつつ、C-5M スーパーギャラクシーに関する話題に。機内の配管や、モニターなどは3Dではなく作画で描かれているというお話になると、二宮さんから「資料はお渡ししましたがとても正確に描かれています」というお墨付きが。機内のモニターについては飛行時と飛行停止時で表示が違う、というかなり細かいこだわりについてのお話もあったので、Blu-ray&DVDが発売したら、実際に確かめてみるのも面白いかもしれません。さらに、中には「機体に描かれているサンダースのロゴも私がデザインしました。」というお話もあり、なんとなく見覚えのある、5号機までありそうなロゴは、二宮さんによるデザインだという意外な事実も判明しました。

▲ミリタリー監修/田村尚也さん

▲ミリタリー監修/田村尚也さん

 大学選抜戦にシーンが移っても、濃ゆい話は変わらず。田村さんから、作戦会議に使ったテントの資料をアメリカ軍のものを送ったら、監督からドイツ軍のものがいいと指定されたという、ほかのアニメではそうそうないであろうお話が多数飛び出しました。さらに、 大学選抜戦では、かなり大規模な戦闘だっただけに、戦車が予想以上に減らないということに悩まされたらしく、鈴木さんからの「1分に1両撃破すれば大丈夫! という声もあった」というコメントに対し、齋木さんから「それでも60分かかるじゃないですか」という冷静な突込みが入り会場が笑いに包まれる一幕も。

 さらに戦闘が進み、カール戦や継続高校の活躍シーンに移ります。やはり軍事の専門家が集っているだけあり、戦車戦の見方も一味違いました。吉川さんの、CV33には3人乗れないという話から始まり、田村さんからは「(ひっくり返ったCV33のエンジンは)本当は回らないんですよね」、齋木さんからも「車内の作り上、照準器と砲撃の操作は一人じゃ同時にできない」というお話などなど、ガルパン特有のカッコよさ、面白さ優先の描写に対する冷静な突込みが飛び交います。とはいえ、ここに集ったのはガルパンにかかわる方々。当然のように、それらすべてを笑い話として語る様子や、杉山プロデューサーのゆるい反論が、またも会場の笑いを誘います。

▲軍事評論家/岡部いさくさん

▲軍事評論家/岡部いさくさん

 ところ変わって、通称「水島監督夢の遊園地」色々とアトラクションがおかしい廃遊園地での戦闘です。この遊園地はロケハンが行われたらしいのですが、当日の天候が悪くほとんどアトラクションには乗れなかったというエピソードも鈴木さんから語られました。場面が観覧車のシーンを過ぎたあたりで、岡部さんから「今の一目散の移動シーン、どんどんチャーチルがおくれてくるよね」という、イギリス軍の専門家だからこその悲哀を感じるコメントが。

 市街風のセットで行われたⅢ号突撃砲の連続アンブッシュは、鈴木さんがやりたかったシーンだと語り、その願望はTVシリーズのころからあったそうで、「市街地迷彩をやりたくて、シュルツェンに自動販売機描きたいです。といってダメって言われました」という当時のエピソードも語られました。ちなみに同時進行で行われたウェスタン風のシーンは監督の趣味だそうです。

 ラスト付近の怒涛の戦闘シーンでは、「ローズヒップは何がしたかったの?」「ここに至るまで何両のCV33が沈んだか!」「スリップストリームよりワイヤーで引っ張ったほうが早くないか?」と、こちらも"怒涛"の突っ込みが飛び交います!

 そして、愛里寿と西住姉妹によるラストバトルがついに始まります。さすがにこのシーンでは、みなさん画面に見入り、解説が止まってしまう、なんてことはありません! 3人の戦闘内容にますます盛りあがりました。

 エンディングに映像が移っても、コメンタリーは続き、映る学校ごとに様々なコメントがあがっていましたが、ついにここで、劇場版の上映は終了となりました。初めに鈴木さんが言っていた、時間が足りないというお話の通り、上映中は常に話題が尽きず、会場の笑いも絶えないとても和やかな雰囲気での進行となりました。

 ガルパンに関するものはもちろん、純粋なミリタリートークなど、様々なお話が飛び出しましたが、どれもこれもそろって濃い内容のお話し尽くしの生コメンタリーとなりました。しかし、そこは鍛えられたガルパンファン! それら会話のすべてを楽しんで、終始笑いにあふれるイベントとなりました。


 コメンタリーに関しては、5月27日発売のBlu-ray特装限定版の特典としてミリタリーコメンタリーが収録されており、今回の濃い内容から考えて、こちらにも期待が高まります。今回の内容や、そちらに収録されるコメンタリーも参考に、Blu-ray&DVDで繰り返し本編を視聴して、細かなネタや、知らなかった軍事要素を確認してみるのも面白いかもしれません。ほかにもBlu-ray特装限定版では、水島監督などが出演したコメンタリーや、キャストによるコメンタリーも収録(キャストコメンタリーはDVDにも収録)されているので、そちらも楽しみに27日の発売を待ちましょう!

[取材・文・写真/由井野光]

■Blu-ray&DVD 5月27日発売!

【Blu-ray 特装限定版】
カラー/343分(本編約119分+映像特典224分)/DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(ステレオ)/AVC/BD50G×3枚
16:9・一部16:9/日本語字幕付(ON・OFF可能)/BCXA-1123/税抜価格:9,800円
 
【Blu-ray】
カラー/147分(本編約119分+映像特典約28分)/DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(ステレオ)/AVC/BD50G
16:9/日本語字幕付(ON・OFF可能)/BCXA-1122/税抜価格:7,800円
 
【DVD】
カラー/(予)147 分(本編約119分+映像特典約28分)/ドルビーデジタル(5.1ch・ステレオ)/片面2層/16:9(スクイーズ)/ビスタサイズ
日本語字幕付(ON・OFF可能)/BCBA-4768/税抜価格:6,800円

◆Blu-ray特装限定版特典

<映像特典>
新作OVA「愛里寿・ウォー!」(劇場版本編の後日談)
『3分ちょっとで分かる!!ガールズ&パンツァー』
ノンクレジットOP・ED☆『秋山優花里の戦車講座』
劇場特報・PV・CM集(蝶野正洋CM含む)
劇伴収録メイキング☆『プレミア前夜祭イベント記録』
『全国舞台挨拶ツアー記録』
『大洗あんこう祭2015 イベント記録』

<音声特典>
DTS Headphone:X™(本編音声) ※普通のヘッドフォンを使い、5.1chの音場感を再現!
キャストコメンタリー <渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香>
☆スタッフコメンタリー <水島努(監督)、柳野啓一郎(3D監督)>
ミリタリーコメンタリー<鈴木貴昭(考証・スーパーバイザー)、岡部いさく(軍事評論家)、吉川和篤(ミリタリー監修)、田村尚也(ミリタリー監修)、斎木伸生(ミリタリー監修)、杉山 潔(プロデューサー)>

<特典>
CD・ボコのうた「おいらボコだぜ!」 歌:西住みほ(CV:渕上舞)、島田愛里寿(CV:竹達彩奈)
特製ブックレット(80P予定)
杉本功自選作監修正集(20P予定)
「Bandai Visual +」シリアルコード
☆スマホゲーム「ガールズ&パンツァー戦車道大作戦!」DL特典シリアルコード
☆イベントチケット優先販売申込券(8/28開催「第2次ハートフル・タンク・カーニバル」)
 出演:渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香、ChouCho(予定)

<他、仕様>
キャラクター原案・島田フミカネ描き下ろし収納BOX
☆キャラクター原案・島田フミカネ描き下ろしジャケット(本編DISC)
総作画監督・杉本功描き下ろしジャケット(映像特典DISC)
日本語字幕(ON/OFF可)

◆Blu-ray通常版&DVD共通特典

<映像特典>
新作OVA「愛里寿・ウォー!」(劇場版本編の後日談)
『3分ちょっとで分かる!!ガールズ&パンツァー』
ノンクレジットOP・ED

<音声特典>
キャストコメンタリー<渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香>
 
<他、仕様>
島田フミカネ描き下ろしジャケット
日本語字幕(ON/OFF可)

■劇場でも超ロングラン上映中!

【スタッフ】
監督:水島 努/脚本:吉田玲子/考証・スーパーバイザー:鈴木貴昭/キャラクター原案:島田フミカネ/キャラクターデザイン/総作画監督:杉本 功/
キャラクター原案協力:野上武志/ミリタリーワークス:伊藤岳史/プロップデザイン:竹上貴雄・小倉典子・牧内ももこ・鈴木勘太/
モデリング原案:原田啓至・Arkpilot/3D監督:柳野啓一郎/音響監督:岩浪美和/音響効果:小山恭生/音楽:浜口史郎/3DCGI:グラフィニカ/
アニメーション制作:アクタス/製作:「ガールズ&パンツァー劇場版」製作委員会/配給:ショウゲート


【キャスト】
西住 みほ:渕上 舞/武部 沙織:茅野 愛衣/五十鈴 華:尾崎 真実/秋山 優花里:中上育実/冷泉 麻子:井口裕香/
角谷 杏:福圓 美里/小山 柚子:高橋 美佳子/河嶋 桃:植田 佳奈/磯辺 典子:菊地 美香/近藤 妙子:吉岡 麻耶/河西 忍:桐村 まり/
佐々木 あけび:中村 桜/カエサル:仙台 エリ/エルヴィン:森谷 里美/左衛門佐:井上 優佳/おりょう:大橋 歩夕/澤 梓:竹内 仁美/
山郷 あゆみ:中里 望/丸山 紗希:小松 未可子/阪口 桂利奈:多田 このみ/宇津木 優季:山岡 ゆり/大野 あや:秋奈/園 みどり子:井澤 詩織/
ナカジマ:山本 希望/ねこにゃー:葉山 いくみ 他


【あらすじ】
 学校の存続を懸けた第63回戦車道全国高校生大会を優勝で終え、平穏な日常が戻ってきた大洗女子学園。ある日、大洗町でエキシビジョンマッチが
開催されることに。大洗女子学園と知波単学園の混成チームと対戦するのは、聖グロリアーナ女学院とプラウダ高校の混成チーム。今やすっかり
大洗町の人気者となった大洗女子学園戦車道チームに町民から熱い声援が送られた。
戦いを通じて友情が芽生えた選手たち。試合が終われば一緒に温泉に浸かり、お喋りに華が咲く。そんな時、生徒会長の角谷杏が「急用」で学園艦に
呼び戻される。いぶかしがる大洗女子のメンバーたち。果たして「急用」とは…?


>>『ガールズ&パンツァー』公式サイト
>>『ガールズ&パンツァー』公式Twitter

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