
この作品を完結に導くことが目標だった。――傷の物語の完結編、映画『傷物語〈III冷血篇〉』神谷浩史さん、坂本真綾さんら声優陣が想うコト
昨年冬から3部作として展開してきた劇場アニメ『傷物語』の最終章〈III冷血篇〉が、いよいよ2017年1月6日(金)より全国の映画館で公開となりました。本稿では、その舞台挨拶が新宿バルト9で行われたので、その模様をお届けします。
ついに最終章を迎えた今回は、主人公・阿良々木暦役の神谷浩史さん、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード役の坂本真綾さんに加え、忍野メメ役の櫻井孝宏さんと羽川翼役の堀江由衣さんも登壇。それぞれに完結を迎える本作への想いを語ってくれました。
イベント開始の時間となると、神谷さんほかキャスト4名が舞台上に。ひと言あいさつを経て完結を迎えた今の心境を尋ねられた神谷さんは、当初『傷物語』の公開が予定されていた2012年になぞらえ、「ようやく僕らの、そしてみなさんの2012年が終わり、めでたく新年を迎えられたな」とコメント。会場の笑いを誘っていました。
坂本さんは、三部作のIとIIを見たときはアフレコ時に想像していたものよりも何倍も素晴らしいものになっていた語りました。今回も監督の尾石達也氏が命を削って作り上げているそうで、そのおかげでこうして大円団を迎えられたとも。
神谷さんが、肺が破れることを覚悟したシーンとは!?
司会からあえてひとつ印象的なシーンを挙げるならと問われると、神谷さんは最後にどうしようもなくなって忍野に助けを呼ぶ場面を挙げました。なんと原作でのこの場面には、“吸血鬼の肺活量で”という記述があり、それを再現するためならば肺が破れてもいいというほどの覚悟で演じたのだとか。
坂本さんも暦が忍野に助けを呼ぶシーンを挙げると、神谷さんの演技は尋常じゃない気迫だったと話してくれました。また、司会がパンフレットでのインタビューでこれが最後でもいいと話していたことに触れると、坂本さんはひとりひとりに課せられているものが非常に大きかったと述べました。渾身のシーンの連続だったそうで、一度しかできないものをここでやり切らなくてはという思いだったそうです。
なんと堀江さんも暦が忍野に助けを求めるシーンを選択!! 加えて2番めに印象に残ったのは、体育倉庫で暦が羽川の肩を揉み終わった後の「以上です!」とのこと。櫻井さんはキスショットの年齢がグラデーションしていく場面だそうで、このことについて楽屋で神谷さんと話していたんだとか。
最後の挨拶で神谷さんは、今日この日のために声優をやっていたんじゃないかと思えると話すと、「この作品を完結に導くことが目標だった」ことを明かしました。しかし、この先も『〈物語〉シリーズ』は続いて行く雰囲気があるそうで、アニメが終わるのが先か、原作が終わるのが先かのチキンレース状態なんだとか。ぜひこの先も『〈物語〉シリーズ』が見られることを祈りつつ、まずは『傷物語〈III冷血篇〉』を見に劇場へ足を運んでください!
[取材・文・写真/胃の上心臓]

拗らせ系アニメ・ゲームオタクのライター。ガンダムシリーズをはじめとするロボットアニメやTYPE-MOONを主に追いかけている。そして、10代からゲームセンター通いを続ける「機動戦士ガンダム vs.シリーズ」おじ勢。 ライトノベル原作や美少女ゲーム、格闘ゲームなども大好物。最近だと『ダイの大冒険』、『うたわれるもの』、劇場版『G-レコ』、劇場版『ピンドラ』がイチオシです。
作品概要
■『傷物語〈III冷血篇〉』
2016年1月6日(金)より全国公開中
配給:東宝映像事業部
上映時間:83分 PG-12
第一部「鉄血篇」
主人公・阿良々木暦と吸血鬼キスショットとの衝撃的な出会い
第二部「熱血篇」
彼女のために過酷な戦いに足を踏み入れた暦の姿
はたして、三部作の終結部となるこの「冷血篇」で、
暦を待っているものとは……。
決して消えない青春の〈傷〉が今、スクリーンに刻みつけられる。
【STORY】
ドラマツルギー、エピソード、そしてギロチンカッター――怪異の専門家・忍野メメの助力も得て、3人の強敵との戦いに勝ち抜いた阿良々木暦。彼はついに、吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの四肢を奪い返すことに成功する。すべては、普通の人間に戻るため……。しかし再びキスショットのもとを訪れた暦は、吸血鬼という存在、その恐るべき本質を知ることになるのだった。決して取り返しのつかいない自分の行為を悔やみ、そしてその顛末に困惑する暦。後悔にさいなまれる彼の前に現れたのはほかでもない、暦の「友人」羽川翼だった。そして彼女が暦に告げた、ある提案とは……。
【解説/〈物語〉シリーズとは】
2006年に講談社BOXより発表された第一作『化物語』から、2016年1月刊行の最新作『業物語』までで20巻に達し、またアニメ化作品も2009年の『化物語』を筆頭に、現在までで6作・全75話を数える人気シリーズである。吸血鬼体質となった高校生・阿良々木暦が、“怪異”に悩まされる少女たちを助けるべく奔走する本シリーズは、巻数を追うごとに、ヒロインそれぞれにスポットを当て、より深くキャラクターを掘り下げていく構成が採られている。ほぼすべての作品がシリーズの出発点であり、また阿良々木が“吸血鬼”になった経緯を描く『傷物語』から、わずか1年以内の出来事を描いているというのも、特筆すべきポイントである。
【スタッフ】
原作:西尾維新「傷物語」(講談社BOX)
総監督:新房昭之
監督:尾石達也
キャラクターデザイン:渡辺明夫 守岡英行
音響監督:鶴岡陽太
音楽:神前 暁
アニメーション制作:シャフト
製作:アニプレックス 講談社 シャフト
【キャスト】
阿良々木暦:神谷浩史
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾
羽川翼:堀江由衣
忍野メメ:櫻井孝宏