構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」第2回

構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」──連載第2回「“この人とやりたい”なのか“こんな番組をやりたい”なのか?」

 『さよなら絶望放送』や『下ネタという概念が存在しない退屈なラジオ』など、伝説的なラジオを作ってきた構成作家・田原弘毅さんにラジオの作り方をレクチャーしてもらいながら、アニメイトタイムズオリジナルのラジオ制作を目指す本企画。早くも第2回目です。

 第1回では新米編集者石橋が“ラジオ番組を作りたい”という漠然とした思いから田原さん、フロンティアワークスの寺田純一さんの両名にラジオトークを交えながら番組制作に繋がるヒントをお聞きしていきました。

 今回は引き続き、実際にラジオ番組が出来るまでの流れを聞き、アニメイトタイムズに相応しいラジオ作りに繋げていきます。

 過去の連載もお見逃しなく!
>>構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」第1回

難航極めるラジオ制作会議。実際の現場の流れはどのような感じ?
 前回は思いのほか思い出話が盛り上がってしまい、実際のラジオについてほぼ話せなかった石橋(ヘタレ)。今回は思い切ってラジオの話題を切り出します。しかし、意気込みも空回り気味で会議はさらに難航していくことに……。


──そういえば、そもそもラジオってどうやってスタートするんですか?

寺田純一さん(以下、寺田):基本的にこちらから「やらせてください!」と頼むか、アニメの製作委員会から「ラジオやりません?」と声をかけて頂くかですよね。それで決まったら作品に合わせて何をやるか提案したりして、少しずつ形にしていきます。製作委員会の中にラジオを担当するメーカーさんもいらっしゃったりしますよね。

田原弘毅さん(以下、田原):宣伝目的で製作委員会やレコード会社から仕事が入る場合が多いですね。もちろんこちらから「このアニメ面白いので!」とお願いする場合もありますよ。

寺田:元々、その作品が好きだったらラジオを作らせて欲しいって思いますからね。その権利元様に企画提案しますよね。

田原:僕も寺田さんもガチガチのアニラジ屋ですからね(笑)。前回で出た番組もだいたいこんな感じの流れで決まっていきました。


──キャスティングはどんな感じですか?

寺田:作品を元にしたラジオですから、その作品の出演キャスト様にやってもらうことになります。ラジオパーソナリティをこの人にしたいからって、そのアニメの主役をこの人にしてくださいなんて、そんなケース無いじゃないですか(笑)。

一同:(笑)。

田原:そんな話は聞いたことないですね(笑)。でもいっぺん言ってみたいですよね。「最高のアニラジを作るから、俺にキャスティングさせろ!」と。

寺田:ラジオ番組は権利を頂いて作るので、アニメ化が決まっている作品ならすでにキャスティングも決まっているだろうし、僕らがそこに口を出すようなことはないですよね。

田原:『みなきけ』のときも3姉妹決まっていたから、「この3人でお願いします」ということでしたし。

寺田:主役の方にラジオをやって欲しいこともあれば、組み合わせを男女パーソナリティにしたい、など色々な意向があるだろうし。スタッフ側から提案することもあれば、すでに決まった状態で話が来ることもあります。

田原:基本的には主人公とヒロインの組み合わせになりますよね。もし原作のアニメが女性向けなら男性コンビにすることもあるし。作品のファンが聴いて一番満足してもらえる組み合わせにしようとは考えますよね。

寺田:それが自然な形ですからね。たまに、学園モノで放送部がラジオをしてる体の番組とかで、主役じゃない方の番組とかもありますよね。結局はファンが満足するのが一番だし、そういう番組になるように製作委員会様なり様々な方と相談して決めることになりますね。

田原:もっと詳しい話をするのなら、キャスティングに絡んでる人をこの連載のゲストに呼んでみるのもいいですね。原作者さんや監督のイメージや音響監督さんの意向もあるし、あまり深くは言えませんがレコード会社との兼ね合いなんかもありますしね。

──アニメ作品のラジオですから、パーソナリティもその作品から選ばれるのは、もちろんそのはずですよね。

田原:その中でも人気の人で作るということもありますよね。ただ基本的にはその作品のファンが喜ぶのが一番なので、メインキャストから選ぶことにはなります。その中でも僕は男女パーソナリティのラジオが好きなので、見ていただければその傾向が強いのがわかると思いますよ。

寺田:やっぱり多くの作品に出演されている方はレギュラー番組も多いですし、それに付随する仕事も多い。一般的に考えても、沢山のアニメ作品に出られて主題歌も歌われてイベント出演やユニット活動等々……同じ時期に全部やるってかなり大変ですよね。

田原:「この人とこの人で番組やったら面白そう」と考えるのは楽なんですよ。でも現実的には誰にだってスケジュールがありますからね。みなさん本当に忙しいんですよ。

寺田:例えば、アニメのアフレコが終わって、さらにCMなどのナレーション収録や取材や色々なお仕事があって、その後にさらに「ラジオ1回分収録したい」とお願いしたり……。本当に、そんな状況で引き受けて頂いてありがたいと思います。

いよいよ本題! アニラジのプロにラジオ作りをご教授願う
 ここまでありがたい話を聞くことに徹してきましたが時間も押し始めたので本題を切り出します。人気ラジオ番組を量産してきた2人はどんなアドバイスをしてくれるのでしょうか?


──そんな中、この度アニメイトタイムズでラジオ番組を作ることになりました。

田原:媒体はどうするんですか?


──アニメイトタイムズでの配信を考えています。キャスティングをどうしようかと迷っているのですが、せっかくアニラジに詳しいお二人に起こしいただいたので、その辺りのアドバイスをいただきたいと思いまして……。

田原:どんなラジオにするかで話は変わってきますよね。アニラジだったら、原作のアニメのキャストから選ぶことになるので幅が狭まりますよね。たまに鷲崎さん(鷲崎健さん)がMCみたいにトークする番組はありますけど……。現状はまだフラットなんでしょうし、誰でも良いんですよね。

寺田:どこから考えるかだと思いますよ。“この方でこんな番組を作りたい”なのか、“こういう番組作りたいからやってくれそうな方を探そう”なのか。そのどちらかですよね。

田原:カッコいいこと言いましたね(笑)。

一同:(笑)。

田原:超プロデューサーっぽかった。つまりアニメイトタイムズがどういうラジオを作りたいのかハッキリさせないと。石橋さんはどういうのを作りたいんですか?

──そこがまだ決まってないんですよー。アニラジばかり聴いてきた人間なので、ずっと作品に基づいたものという認識だったんです。だからゼロから考えるとなると、どうすれないいのかわからなくて……。

田原:そういうことなら、多分この2人より詳しい人が文化放送とか音泉(※1)にいると思いますよ。それってラジオそのものの作り方になるので、企画として考える人達が僕たちの上にいますからね。次にその人たちに話を聞きに行くのもいいかもしれませんね。

※1:コスパ関連会社であるタブリエ・コミュニケーションズが運営するインターネットラジオ配信サイト。アニメとの連動番組を始め声優がパーソナリティを務める番組を多数配信している。

寺田:“アニメイトタイムズを宣伝すること”に特化した番組もいいですよね。プロモを流してみたり、最新ニュースを紹介してみたり、それがアニメイトタイムズの宣伝になるようにするとか。もしくは、企画そのものが面白い番組を作って、その番組目的の人をアニメイトタイムズに誘導するとか……取り敢えず、自分が好きだった番組からなんか面白そうな要素を持ってきたらどうですか。

田原:わりとそのパターンは多いですね。「あれ面白かったからあんなのをやって」と言われることあるんですけど、影響されたくないじゃないですか。

寺田:“アニラジを作りたい”とのことですが、“アニラジ”ってどういう定義なんでしょうね。アニメや声優さんの名前を冠している番組のこと? 一般的なAM局の深夜番組とかだと、色々な専門家を呼んでMCとともにトークする番組とかありますけど、ああいうのはパーソナリティが声優さんだったら“アニラジ”って括りなんですかね? ジャンル的には教養番組になるのかもしれないですし……。

田原:ニッポン放送だと声優さん枠の番組でそういうのありますよね。

寺田:“アニラジ”ってだけだと広すぎませんか?

田原:僕がやってる『上坂すみれの文化部は夜歩く』とかは声優冠の番組ですけど内容はアニラジ的じゃないですしね。“上坂すみれさんをパーソナリティにしてどう活かすか”となったときに、アニメ・ゲームの話をしないようが面白いという結論になったので。

今回話してて思ったのは、声優さんとラジオ制作について話す機会が最近少ないことですね。昔は番組を作るとなったら、まずパーソナリティの声優さんと話をするところからスタートしてたんですけど、最近はみなさんお忙しくなったのと、製作委員会やレコード会社が間に入るので、声優さんを通さないことがほとんどなんですよ。

寺田:昔はほぼキャストさんに事前に会いに行って、一緒にコンセプトやコーナーも考えたりしてましたからね。「こういう番組作りたいんです」というのを事務所さんに送った後に、アフレコ現場とかにお邪魔して、直接お話をさせてもらって……。

田原:構成台本は事務所に行くので、NGがあればすぐに戻ってくるんですけど、実際に声優さんと膝を突き合わせて話すのはやっぱり大事だと思うんですよ。だから、打ち合わせの様子とかを記事にしても面白いかなと。

寺田:僕は響さん(※2)や音泉さんの人をぜひ呼んでもらいたいですね。ここまで話したことって僕と田原さんとの話であって、実際にラジオ作られてる他の方たちの考えは僕らも知らないですから。僕は、ラジオを専任にしてるわけではなくて、普段は違う業務をしている部署にいるんですよ。

※2:ブシロードグループ運営のインターネットラジオを配信するポータルサイト。アニメやゲーム、声優に関するラジオ番組を無料で配信している。また、ラジオ番組に留まらず、映像付き番組の配信も行っている。

田原:寺田さんはアニラジのマニュアルを持ってる人ですからね。頼りにされるんですよ。

寺田:昔のお付き合いで、ラジオのお仕事の声をかけてもらったりですね。

田原:そうなると音泉は全員がラジオプロデューサーみたいなものですからね。

寺田:一度そういった方の話を聞いてみたいですね。僕が(笑)。

田原:じゃあ次呼びますか(笑)。

寺田:お願いします(笑)。


──んー! 叶うかどうかは別として、ちょっと交渉してみます!

ラジオへの関わり方も様々。アニメイトタイムズに相応しいラジオは作れるのか?
 紆余曲折を経てさまざまなアドバイスを頂戴できました。まだまだ形の見えない中、石橋は2人ならどんなラジオ番組を作るのかが気になります。立場とお金と柵がないならば、2人はどんな面白いラジオ番組を作れるのでしょうか?


──寺田さんはどういう形でラジオを作っているんですか?

寺田:ラジオだけではなくドラマCDも担当したり、作品によっては製作委員会に参加していたり。製作委員会内でラジオの権利を頂くことも多いですね。僕自身がラジオの企画をして権利取得しに行った、という番組はそんなにはないかもしれません。響さんや音泉さんのプロデューサーさんたちってどうなんでしょうね。

田原:アニメ冠の番組はほとんど一緒だと思いますよ。要するに宣伝目的ですから。なぜアニラジがウェブラジオばかりなのかと言えば、単純に地上波が物凄く高いからなんですよ。ウェブラジオは安く作ることが出来るから、アニメの宣伝としてよく使われるんですよ。

そういう意味で言うなら、アニメイトタイムズが出資している作品のラジオを作るのもいいですね。作品がないのであれば、頑張って取りに行くしかないです。

寺田:お願いしたい人が決まっているならどんな番組をしようかというのを考えなきゃいけないし、まだ別になにも決め事がないのなら、テーマが定まらないと話が進まないと思いますよ。某『水●う』みたいにスタッフとキャストさんの手作り感のある番組なのか、TV番組の雛段トークみたいなことをしたいのか、『●子の部屋』みたいにホストの声優さんと1対1で話をするのか。漠然とした方向性を決めたほうが良いですよね。


──うーん……。ちなみにお二人ならどんな番組を作りたいですか?

田原:柵を全部取っ払っていいなら、僕は2時間番組を作りたいですね。やりたいことを詰め込めて、いろんなネタで充実した番組に出来ると思うんですよ。あとは声優さんのワイド番組ですかね。朝の9時から12時まで時間をたっぷり取って、その中でミニコーナーとかをやったら面白そうじゃないですか。あと今思ったことなんですけど、アニメイトで流す番組とかやったらどうですか? 面白いと思うんですけどね。

この間『東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー』がタワーレコードで開店アナウンスをやったんですけど、結構好評だったんですよ。それをラジオでやったらなと。1日流すことはないですけど、何日の何時に行けば聞ける番組を作って、アニメイトの一押しを紹介したりして。もしくはガッツリとオタトークする番組を流しても面白いかもしれないですね。そうすれば声優さんに限らずいろんな人を呼べるし。せっかく全国制覇したんですから、店舗を使って何かやらない手はないですよ。

寺田:僕は、だだ雑談を1時間するだけの番組とかやりたいですね。あと、この前の子供向けのTV局でやった、「昆虫博士が、良く判っていない人に向けてとにかく熱く語る」みたいな番組。話している内容がニッチすぎても、その図式を眺めてるだけでも面白いって。

田原:僕それ『上坂すみれの文化部は夜歩く』でやってるからなあ(笑)。

寺田:僕はやりたいんですよ! それこそ、片方は本当に素人の方でも良いんです。そういう人の遍歴とか語って貰うだけでも面白いし。

田原:そういうのに否定的なのは、たぶん構成作家としてつまらないからなんでしょうね。仕事がないから(笑)。ぶっちゃけラジオなんて構成作家いらないような瞬間が結構多いんですよ。僕はやりたがりなのでいろいろ詰め込むのが楽しいんですけど。基本的にラジオなんて喋れるパーソナリティが1人、ミキシングが出来るディレクターが1人、あとは企画を考えるプロデューサーが1人いれば出来ますからね。

寺田:僕、収録もブースじゃなくて、ファミレスとかでやってほしいんですよね。語りたいジャンルがある人を呼んで、それを熱く語ってもらえれば面白いし、良くないですか?

田原:僕は『上坂すみれの文化部は夜歩く』でやってるからなあ(笑)。

寺田:羨ましい(笑)。

田原:何をやるか悩んでいるときによくやられているのは、メールフォームを作って「こんな番組やってほしいです」というのを募集することですね。


──悩ましい……。この話は、どういう番組を作りたいのか、そして誰をキャスティングしたいのか、まず候補を僕が立ててくることから、ようやくスタートラインに立てるような気がします。

田原:そしてそれを添削する記事を次やりましょうよ。厳しくいきますよ~(笑)。


──ぜ、ぜひ(笑)。田原さんにダメ出しされる回もいいですね。

田原:そしてその流れで構成の説明とかもしていけたら良いですね。

 見切り発車してしまったことに悩んでいたはずが、実はスタート地点にも立ててないなかったこと気が付かされた石橋。しかし、今回のインタビューでうっすらとではあるが光明が見えてきました。お金の問題、声優さんのスケジュールの問題、そして何よりもどんな番組を作るのかという問題。今回のインタビューにより得られた田原さんと寺田さんの協力のもと、素晴らしいラジオ作りを目指します。今回のポイントはこちら。

“声優さんはファンが思っている以上に忙しい”
““この人でこんな番組を作りたい”なのか、“こういう番組作りたいからやってくれそうな人を探そう”なのかが大事”
“出資している作品のラジオをやるのもあり”


 次はどのようなアドバイスと裏話を聞けるのか? お楽しみにお待ち下さい!

[インタビュー/石橋悠 文/原直輝]

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