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デジモンtri.第4章:空への愛情あふれる重松花鳥さんが語る苦悩

会う前からこれはきっと運命なんだ――『デジモンアドベンチャーtri. 第4章「喪失」』アフレコ初日のピヨモン役・重松花鳥さんが空役・三森すずこさんにかけた魔法とは

 2017年2月25日(土)から3週間限定劇場上映、劇場限定版Blu-ray 先行発売、先行有料配信が行われる『デジモンアドベンチャー tri. 第4章「喪失」』(デジモンtri.)。

 『第3章「告白」』では多くのデジモンファンを驚かせた大きな展開を迎えた本作ですが、『第4章「喪失」』では太一たち“選ばれし子どもたち”は再びデジタルワールドへ。記憶を失ったパートナーデジモンたちとの関係の再構築などが描かれます。

 そんな『第4章「喪失」』のキーパーソンとなる武之内空役の三森すずこさん、ピヨモン役の重松花鳥さんにインタビューを実施。それぞれの役についてのお話をはじめ、第4章の見どころについても語っていただきました。

 

重松さんの空への愛情、そして三森さんへの愛情
――まずは重松さんにお伺いしたいのですが、『デジモンアドベンチャー』(1999年3月7日~2000年3月26日放送)の続編が製作されると聞いた時のご感想をお伺いしてもよろしいでしょうか。

ピヨモン役 重松花鳥さん(以下、重松):オファーが来る前に『デジモン』が復活するっていうことを周りの人から聞いて、いきなり「おめでとうございます!」って言われたんです。なので最初は作品が復活したのは純粋に嬉しいと思っていたんですけど、私にオファーが来るかは分からないという形でした。

そこから期間が空いて、マネージャーに「おめでとうございます! ピヨモンはあんただよ」って言われて(笑)。それを聞いた時に「またピヨモンを演じられるんだ」と思ったら感極まって涙が出てしまったんです。

――やはりピヨモンという役に対しての思い入れは強いのでしょうか。

重松:凄くありますね。新人の頃に初めてオーディションで頂いた役でしたし、それがシリーズになったので。『デジモンアドベンチャー』の後はアニメーションの世界から離れて、ナレーションの仕事を主にしていたんです。選んでそうしていたわけではないのですが、頂いていた仕事をやっていたらいつの間にかアニメーションの世界から離れて10数年経っていて。なので常に私の中にピヨモンっていう存在はいますね。

――三森さんは今回の『デジモンアドベンチャー tri.』で参加される事になりましたが、役が決まった時の感想はいかがでしたか。

武之内空役 三森すずこさん(以下、三森):私はデジモン世代よりも1歳か2歳くらい上の世代で、子供の頃は『デジモン』を観ていなかったんです。でも、周りの子たちのデジモン熱を感じながら大人になってきたので、まず『デジモン』が復活するって聞いた時は「オーディションを受けられるのかな」というワクワクがありましたね。

それで実際に「オーディションがあります」って言われて、どの役を受けようと思った時に今まで自分の演じてきた役を考えた時に(太刀川)ミミかなって思ってオーディションを受けたんですよ。でも、空も受けてみようと思って受けたんです(笑)。

私の中では手応え的にミミの方が合っているかなと思っていたんですけど、空役で合格を頂いて「えー! 嬉しいけど空!?」みたいな感じになって、お姉さんぽくて母性溢れる空を私が演じられるかなって心配でした。でもデジモンの世界に加われる事が本当に夢のようで、とてもテンションが上がって、早く情報解禁になって皆に自慢したいって思いました。

重松:情報解禁までが長かったもんね。決まってから解禁されるまでが本当に長くて。

三森:なので周りのデジモン好きの子に早く自慢したくてしょうがなかったですね(笑)。

――空役の合格を受けて、役作りを行う上で気をつけた部分などありましたか。

三森:皆の頼れるお姉さんっぽく演じようとは思っているんですが、お姉さん過ぎても高校生の感じが出ないかなと思っているんです。お姉さんになりきれていないお姉さんというか。成長途中みたいな感じが出たら良いなと思いましたね。

――『デジモンアドベンチャー』の時に空役を演じられていた水谷優子さんの演技を参考にされた部分などはありましたか。

三森:『デジモンアドベンチャー』を観させて頂いて、その時から水谷さんが演じる空って凄くお姉さんじゃないですか。むしろ私が演じている空よりお姉さんっぽさがあるので、そこから成長させると考えたら難しかったですね。でも逆に子供の頃から大人っぽい子って成長しても意外とそのままな事もあるし、「そっちでいこう」と考えました。

――役に対してそういう組み立て方があったんですね。

三森:ただ、水谷さんの喋り方を聞いたりして「私もこんな感じで包み込む様なお芝居が出来たらいいな」と思いながらやっています。

――2人で実際に声を合わせてみていかがでしたか。

重松:私は会う前から三森さんの事は知っていて、作品を観たり、私の教え子が三森さん主役の作品の相手役でデビューしたり、勝手に会う前から好きだったんです。しかも偶然誕生日も同じで、会う前から「これはきっと運命なんだ」ぐらいの気持ちがあったので、実際に三森さんと会えた時に久しぶりに空と再会したような「会えた!」っていうテンションで入ってしまって、きっとビックリさせたと思います。

三森:私はピヨモンを通しての(重松)花鳥さんしか知らなかったので、ピヨモンは空の事が大好きで、愛に溢れている子じゃないですか。それで実際に花鳥さんにお会いしたらピヨモンそのままの花鳥さんがいらっしゃって(笑)。初めてのアフレコの時は凄く緊張しましたが、花鳥さんが「私は空の隣に座ろ」と言って座って下さって、その時に空って呼ばれた瞬間に「私が空なんだ」っていう魔法をかけて貰った感じがしました。

重松:私の中では水谷さんと『デジモンアドベンチャー』を収録していた時に、ずっと隣に座れなかったなという想いがあったんです。近くにはいたんですけど、並び順がなんとなく決まっていたりして、本当に隣に座ったのが15周年の時のドラマCDの収録が初めてだったんです。その時、(水谷)優子さんの隣に座って「これが空の隣だよね」っていう想いがあったので、新しいシリーズでみもりん(三森さん)が来る時は「絶対に隣に座るんだ。誰かがいても座らして貰おう」ぐらいの気持ちでちょっと突進しました(笑)。

――久しぶりに演じられた時はすぐにピヨモンを演じられるものなんですか。

重松:いや、戻れないですよ(笑)。そもそも当時は役作りとか難しい事は考えて無くて、本当に一生懸命に空が好きっていう想いだけでしたね。だから、よく「どういう風にピヨモンを演じたんですか」って聞かれるんですけど、「一生懸命やりました」としか答えられないんです。自分はピヨモンみたいに可愛い役を演じる機会が無いので、役が決まった時に「オーディションで選んで頂いたから、きっとこのままでも大丈夫なんだ」っていう思いでやっていました。

全く関係ない仕事をやっている時に「ピヨモンやって」と言われる事も結構あって、声真似でやろうとすると「似てない」とか言われちゃって(笑)。だから『tri.』の台本を頂いた時に「困ったな」と思って練習しても心配だったんですけど、空に会ってアフレコをした時に絵を見ながら一生懸命な気持ちを思い出したら「こうかな」っていう声が出たんです。

それでも「大丈夫かな」と不安だったんですけど、完成した第1章を試写で観て「ピヨモンかも」ってやっと思いました。なので声真似では駄目なんだなと思って、たとえ本人でもセリフの中で相手と掛け合う時にピヨモンになるんだなっていうのを第1章で実感しました。

――重松さんは高校生になった空のビジュアルを見たときはどんな印象を持たれましたか。

重松:「あ、大人になった!」って思いましたね。でも『デジモンアドベンチャー02』(2000年4月2日~2001年3月25日放送)の時も空が大人になっていて、帽子を被った空ちゃんから今の空の中学生版という感じになっていたので、違和感は無かったですね。

――デジモンは長く続いているシリーズですが、三森さんは参加されるに当たってプレッシャーを感じたりはしましたか。

三森:ありましたね。ファンの方も沢山いらっしゃるし、子供の頃に観ていた方は作品に対する思い入れも強いと思うので、「これは空じゃない」って言われるのは想定していました。でもビクビクしていたら良いお芝居も出来ないし「やるっきゃない」と思って、アフレコの日が近づいたら吹っ切れましたね。

――『tri.』でイベントなどにも参加されていますが、実際にファンの方を目の前にしてみていかがでしたか。

三森:私と同じか、ちょっと下ぐらいの世代の人が子供の頃のような感覚のままイベントに遊びに来てくれて、すごくあたたかいイベントだなと思いますね。

重松:熱がすごいよね。私普段は収録ブースにこもっていて人前に出ることはあまり無いんですが、イベントに初めて出た時にお客さんが「キャ―」って言うんですよ。「(ピヨモは)いやそういうキャラじゃないでしょ」って(笑)。声優にじゃなくて、キャラクターに対しての愛で「空だ!」とか「ピヨモンだ!」って盛り上がるのが凄いと思いましたね。

あと海外の方も多いですね。先日、宮﨑歩さんのライブに行って「海外の方はいますか」って聞いたらフランスの方がいらっしゃったんです。その後にパルモン役の山田きのこさんと一緒に帰ったら、山田さんが本当にパルモンのままなので声バレしちゃったんですよ。そうしたらフランスのファンの方に声を掛けられて、滅多に無い機会なので「ありがとうございます」って言ったりして(笑)。

でもデジモンのファンの方ってとても節度があって、ちゃんと順番に並んでくれて、すぐに帰れました。でも山田さんには自分が(パルモン)そのものっていう事を自覚してほしいです(笑)。

一同: (笑)


台本を読んだ時は先が読み進められなくなった

――ストーリーのお話に移りますが、第3章でストーリーに大きな展開があったじゃないですか。それを受けて第4章の台本を読んだ時はどんな印象を受けましたか。

重松:イベントの後に脚本家の方にお会いして、「いっぱい空としゃべりますよ」って言われて嬉しいと思っていたら、台本を見て「嘘でしょ」って思ったのが第一印象でしたね。

空とピヨモンの関係は、テレビシリーズの時に空がお母さんとの確執があって、それを乗り越えてピヨモンが進化をしたというのがあったじゃないですか。だからピヨモンの方に悩みは全く無くて、何か悩むとしても人の事ばかり考えている空をピヨモンがどう支えるかという所で、空が悩んでいくだろうと思っていたんですけど、「原因はアタシ?」って思いましたね。

「どうして分かってくれないの」っていうセリフが第4章のPVにもありますが、これを空に言わせたのがピヨモンっていうのが本当に耐えられなくて、最初に台本を読んだ時はこのセリフの先が少し読み進められなくなりました。

三森:第3章まではピヨモンと空は絆もしっかりあって、ピヨモンも凄く愛情深くて「空! 空!」って来てくれてたのに、第4章になって他人のようになってしまったので、やっぱり悲しかったですね。改めて“仲間とは何か”という事に空は気づかされることになるんですが、大人っぽく振る舞っていた空だからこそ、気づかないフリをしていた部分が急に浮彫になって戸惑うんです。台本を読んでいて話が重いというよりかは「人生ってこんなこともあるよね」って諭された感じでしたね。


――重松さんは台本の途中で読み進められなくなったとおっしゃいましたが、やはり演じていて悲しい気持ちにもなりましたか。

重松:悲しいというか衝撃を受けて、特にテレビシリーズの時は役作りをせずに「空が好きなんだ」という気持ちだけで演じてきたので、ピヨモン自身が記憶を無くして、なんで空に強く当たるのかっていうのを理解するのに時間がかかりましたね。それを読み解きながら想像して収録テストをやったら、音響監督に「もっと嫌ってくれ」って言われてしまったんです。私は「なんで嫌うんだろう」って思うんですけど、それが必要な事ならやるしかないという感じでした。

気を抜くとすぐに好きになってしまうので、いつもみたいに「みもりーん!」って行かずに、第4章の収録は普通の先輩っぽく振る舞いました(笑)。やっぱり相当辛かったですね。プロデューサーが休み時間にデジモンの昔のシリーズの話とかをして落ち着かせて下さったっていうのを覚えています。

――今回の第4章ではそんな苦労があったんですね。

重松:役作りをしてこなかったので、初めて『デジモン』の中で“ピヨモンとは何か”というのをしっかりと考えて、その考えたものを崩されて、また立ち上がってというのがあったので、自分の中では体当たりでした。なので出来上がりが凄く怖くて、ニコニコ生放送の「トクバンアドベンチャー」で第4章の本編のチラ見せを観たんですけど、「えー! 大丈夫? ファンのみなさんの心に届く?」って思いましたね。

三森:ピヨモンの目が凄かったですよね。

重松:逆三角形でね。でも、第4章だけでピヨモンと空の関係は完結していないので、今までとはまったく同じでは無いピヨモンをこれから積み重ねるのは新人の時じゃなくて良かったなと思います。多少なりとも年輪を重ねているはずなので。

――では、三森さんは第4章を演じてみていかがでしたか。

三森:いつもは大人っぽく皆を引っ張っているけど、空もまだまだ成長途中で、演じている自分としては「空も年頃らしい感情を持っているんだ」とわかって新鮮でした。辛いけど一緒に乗り越えなきゃっていう感じはありましたね。

――もし2人が空の立場だとしたら、記憶がなくなったピヨモンと対峙した時にどのような対応をとると思いますか。

重松:私はきっと泣いちゃうと思います。私自身が好きと思っていた相手から「知らないし」とか言われたら。でも、どうしても失いたくないものに対しては努力をするので、仲良くなるように頑張ると思います。アプローチは劇中の空とは変えて、「ちょっと引いてみるか」とか「ここでプレゼントをあげてみるか」とか「ピヨモンと仲が良いガブモンから攻めてみるか」とか(笑)。

三森:あの手この手を使ってですね。

重松:だって絶対に失いたくないもん。あきらめたくないもんね。

三森:私は2人で過ごして楽しかった思い出を動画にして、動画サイトにアップします。

一同: (笑)

重松:ここが世代の差か~。

三森:鉄拳さんのパラパラ漫画の如く、感動させる内容にして気づかせますね。

重松:でもピヨモンは言うんだよ。「だって知らないもん」って。

三森:悲しい(笑)。

――ピヨモンは難しいですね……

重松:だって第4章の途中で芽心(めいこ)にちょっと懐いてますからね。「何やってるの!」「そこ行っちゃうの!」って演じながら思っていました。「でもそれは重松の想いだから」って抑え込みながらでした(笑)。

――最後に第4章を待っているファンに見どころとメッセージをお願いいたします。

重松:私自身としてはピヨモンが喪失して変わってしまった部分が大きくて、それを皆さんがどういう風に受け取るかが凄く不安なんです。だけど空との関係は構築していけると信じていますので、そこは安心して観て頂きたいです。あと、ピヨモンと空がピックアップはされていますが、他のパートナーとの絆や、大人たちのドラマ、そして新しいデジモンなど見どころが沢山ありますので、何度も観てください。

三森:今回、空とピヨモンの話でシリアスな部分が結構あるんですが、いつも通り楽しいシーンも沢山あります。「今回は空が凄く喋っているよ」と言われて、肩に力が入った感じで台本を開いたんですが、結局いつものように光子郎さんの方がいっぱい喋っていたり。

あと、幼馴染3人組が思春期あるあるに陥っていたりして、それは甘酸っぱくて良いなと思いました。この年齢ならではのドラマが繰り広げられていて、爽やかだなって思うので、今青春真っ只中の方も、青春が過ぎてしまったけど呼び戻したい方も楽しめると思います。

[文・撮影/イソベアラタ]

作品概要

■デジモンアドベンチャー tri. 第4章「喪失」
3週間限定劇場上映・劇場限定版Blu-ray先行発売・先行有料配信
2017年2月25日(土)同時スタート!
上映館:札幌シネマフロンティア、MOVIX仙台、新宿バルト9、渋谷TOEI、T・ジョイ PRINCE 品川、横浜ブルク13、MOVIXさいたま、T・ジョイ蘇我、109シネマズ名古屋、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、広島バルト11、T・ジョイ博多

※一般販売版 Blu-ray&DVD 2017年4月4日(火)発売

【キャスト】
花江夏樹
坂本千夏 ほか

【スタッフ】
監督:元永慶太郎
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン:宇木敦哉

>>公式サイト

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