映画
『ゴースト・イン・ザ・シェル』石川光久社長が語る制作秘話

押井守監督も本気になった映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』製作総指揮 Production I.G石川光久社長が語る制作秘話

 4月7日に公開される映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』。本作は、日本国内だけでなく海外でも多くのファンを産み、数々のクリエイターに影響を及ぼしている『攻殻機動隊』初の実写映画です。

 製作はドリームワークス。監督は、「白雪姫」をダークファンタジーとして捉えアクションとアドベンチャー要素を加えた『スノーホワイト』(2012年)で注目されたルパート・サンダース。ハリウッドでの製作ということもあり、なかなか情報が表に出てきませんでしたが、公開直前になり、ついに製作総指揮としてクレジットされるProduction I.Gの石川光久社長へ取材できることになりました。

 1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』をはじめ、長年『攻殻機動隊』に関わってきた石川さん。様々な制約がある中、どんなことを口にしてくれるのでしょうか? 気になるポイントをぶつけてみました。

ハリウッドからのオファー
──実写映画化の経緯を教えていただけますか?

石川光久さん(以下、石川):士郎正宗さんの原作を出版している講談社さんのお力添えもありましたが、Production I.Gが持っている海外進出の力、特にアメリカへ遠慮しないで入り込む力があったからの実写化だと思います。我々が、ドリームワークスから『イノセンス』の世界配給(※1)をしてもらう直接交渉をした経緯もあって、ハリウッドのメジャー大手をはじめ、色々な人脈ができたことも要因です。

その中で『攻殻機動隊』を作りたいと言ってくれる会社が数社あり、この作品をどこのプロデュサーに預けたらいいか、講談社さんとアメリカへ行って幾つかの魅力的なプレゼンを受けることになったんです。最終的には、アヴィ・アラッド(※2)が「こういうスタイルで作りたい」と言ってくれたものに決まりました。あれからもう6、7年経ったのかな。

私は脚本を読める立場の一人に入れていただきましたが、契約上他の誰にも内容を言ってはいけないし、今も言えないことが色々あります。ただ、何回も脚本家さんに頼みながら、ここまで作ってきた経緯を見ていると、脚本に対する時間とお金の掛け方は日本の10倍以上、もしかしたら100倍かけているなってイメージがありますね。


※1:2004年に劇場公開された『イノセンス』は、ドリームワークスにより全世界に配給された。世界配給決定の発表会には石川さんをはじめ、『イノセンス』を手がけた押井守監督、スタジオジブリ作品でお馴染みの鈴木敏夫プロデューサー、ドリームワークスのハル・リチャードソンさんも登壇。
※2:アメリカを代表する大物映画プロデューサー。『X-メン』『スパイダーマン』『アイアンマン』などヒット作を手掛けた。

押井監督の態度が激変した撮影現場見学
──香港での撮影を見学されたと伺いました。

石川:僕としては、押井守さんと神山健治さん(※3)、この二人にまず現場を見て欲しかった。さらに、音楽の川井憲次(※4)さんも誘ったらなんとか調整できて香港での撮影現場に伺うことが出来ました。このメンバーで行けたのは良かったですね。最初は僕と押井さんに温度差があって「中身が薄っぺらいから俺たちが宣伝に使われるんじゃないか」「中身は『攻殻』じゃないものになっているから、風避けにされるんじゃないか」「石川はまた俺を騙しているんじゃないのか」と言われましたが……(笑)。でも、現場に行ったらグッと雰囲気が変わりました。

川井さんは「実写版はアニメの音楽も強く影響している」と言っていました。押井さんは本気モードに入って、監督として「これは凄い」と言っていましたよ。主演のスカーレット・ヨハンソンの佇まいや演技を見て、「(少佐役は)世界で彼女しかいない」と惚れていましたね。

押井さんはカメラの撮り方や構図のこだわり方とかにも注目したみたいで、モニターを見ている目が尋常じゃなかったですね。そこはやはり監督だなと思いました。決して観光で行ったわけじゃないなと感じました。

神山さんも「これは真剣だな」と思ったはずなんだけど、押井さんがザッと現場に入ったのと比べて、神山さんはそう簡単ではないから(笑)。それに、神山さんは全体で捉えるから、きっとそこは仕上がった映像を観た時に何か感じるんじゃないかな。


※3:『攻殻機動隊』は様々な形で映像化され、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『イノセンス』などの初期の映画は押井監督が、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などのTVシリーズは神山監督が監督を努めた。
※4:『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『イノセンス』などの楽曲を担当。近年では『ジョーカー・ゲーム』(2016年)、『刀剣乱舞-花丸-』(2016年)などの楽曲も担当。

細部から伝わるインスパイアとリスペクト
──言えないことは多々あるとは思いますが、どんな作品になるのでしょうか?

石川:これはあくまで僕の主観ですが、士郎さんの原作をベースにしているんだけど、最初は神山さんが作ったTVシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の匂いが結構するなと。でも、香港で観た映像からは、やはり映画なので押井さんの映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や『イノセンス』からインスパイアされているなという匂いはしていて。でもやはり、ストーリーは変わっているんです。


──今作でも士郎さんの原作をベースに、今までの作品とも違う、新しいパラレルな作品に?

石川:そう考えてもらっていいと思います。それが出来るのが『攻殻』の素晴らしさだと思います。根っ子が深いというか、設定がしっかりしている。全てがブレない。誰が作っても『攻殻』になるというのが、士郎さんの凄さですね。改めてそれを痛感しました。これまでの作品も原作漫画を熟読して映像を作っています。今回の実写版に関しても同じように、原作漫画はもちろん、これまでのアニメ作品を観ているし、研究しているし、凄くリスペクトしているなと感じています。


──日本側はスタッフとして関わっているのでしょうか?

石川:クレジットに出ているのか、どんな表記になるのかはわかりませんが、例えば、I.G USA(※5)としては通訳的な橋渡しをしています。藤咲淳一(※6)はニュージーランドでの撮影に立ち会って、ビートたけしさんのセリフなどをサポートしています。他にもProduction I.Gとしてはサポートというかショックアブソーバーとして、質問をされた時の手助けや、相談にのったりしています。「アニメだとこうでした」みたいな。ただ、押井さんたちが直接何かをするということはありません。


──日本語吹き替えのキャストも話題になりましたね。

石川:やはりハリウッド側が、一作目の映画のイメージを意識されたんじゃないでしょうか。士郎さんの原作を映像化したエポックメイキング。やはりそこがスタートですから。ルパート・サンダース監督(※7)から日本側へのリスペクトですね。


※5:Production I.Gが海外営業窓口として経営しているProduction I.G.,LLC。
※6:Production I.G所属の脚本家。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』の脚本を務めた。
※7:『ゴースト・イン・ザ・シェル』の監督。『ゴースト・イン・ザ・シェル』は『スノーホワイト』に続き、2作目の監督作品となる。

実写映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』はハリウッドからの招待状
──今回の実写化は『攻殻』シリーズにとってどんな意味があると思いますか?

石川:『イノセンス』の時にスタートラインに立ったイメージがあったんですが、今回の実写映画を作ってくれたことで、Production I.G1社の話ではなく、日本でアニメーションを制作している我々に対して招待状を貰った気がします。


──招待状とは?

石川:たぶん「負けるなよ」と言ってくれているのではないかと。「俺たちはこれだけのものを作った」それに対して「悔しかったらもっと凄いものを作ってみろよ」と、そういうことだと思います。これを活かすかどうかは、クリエイターがこれからどんな作品を作っているかにかかっているんじゃないかな。僕はそういうふうに受け止めましたし、スタッフもそうじゃなきゃいけないなと思います。


──この作品から新たなファンも生まれそうですね。

石川:もちろん日本ではかなり強いタイトルでしたが、これを機会により一般の方にも認知されるのは大きいですね。エンターテインメントはひとりでも多くの方に観ていただいてなんぼの世界ですから。その面でも良い招待状をもらったなと思います。

同じこの時期にVRアプリである『攻殻機動隊 新劇場版 virtual reality diver』の全世界配信も始まるので、これもひとつの『攻殻』ワールドとして、I.Gというアニメ制作会社がこれから何処を目指していくのかというヒントにもなるんじゃないかと思います。過去のもので満足しちゃいけないんです。これからどういうものを作っていくか。作らないといけないんですよね。


──公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

石川:みなさんが楽しんでいただける作品になっていますので、まずは素直に楽しんで欲しいです。世界観やSFがどうとかもありますが、士郎さんは楽しめる作品を追求していたし、今作でも『攻殻』が楽しめる作品になっているのは嬉しいですね。是非とも、映画館で楽しんでください。

作品情報
2017年4月7日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー


監督:ルパート・サンダース『スノーホワイト』
配給:東和ピクチャーズ


スカーレット・ヨハンソン
ビートたけし
マイケル・ピット
ピルー・アスベック
チン・ハンandジュリエット・ビノシュ



>>映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」公式サイト
>>映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」公式Twitter

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