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やなぎなぎ『覇穹 封神演義』EDに託したメッセージ

やなぎなぎさん18thシングル『覇穹 封神演義』EDは「レクイエムのような曲」に/インタビュー

音楽家・やなぎなぎさんさんの18枚目のシングルが、自身の誕生日の前日である5月30日にリリースされます。本作は、前作「間遠い未来」に続いてTVアニメ『覇穹 封神演義】エンディングテーマを飾っている「無形のアウトライン」。作詞はなぎさん、作曲は『凪のあすから』ED「アクアテラリウム」以来のタッグとなる石川智晶さんが手がけられています。

テーマとなったのは「レクイエム」。どんな風に「無形のアウトライン」を描いていったのかを聞くと、柔らかな表情で教えてくれました。


 

「間遠い未来」のアンサーソング的存在に

──今年1月にリリースしたアルバム『ナッテ』、2月にリリースしたシングル「間遠い未来」、そして今作のリリースと続きますが、『ナッテ』以降、なぎさんはどんなモードだったんでしょう。

やなぎなぎさん(以下、なぎ):制作としてはライブと平行していたので“以降”というよりかは“最中”って感じでした(笑)。『ナッテ』を制作していたこともあって、自分の好きなものを見直すことが多かったんです。特に「瞑目の彼方」(TVアニメ『ベルセルク』エンディングテーマ)は自分の音楽作りの原点であるエレクトロニカの色が強いので “昔から好きなものに目を向けてみる”みたいなモードになってたと思います。

──エレクトロニカを改めて聴いて、どんなことを思われました?

なぎ:変わらずというか……初めて聴いたときの印象の通り「好きだなぁ」「心地いいなぁ」って。自分はこれが好きだなぁって改めて感じました。結構手当たり次第聴いてたんです(笑)。

──(笑) 曲を作る上でそれは影響されました?

なぎ:そうですね。かなり影響は受けているんじゃないかなと思います。意識して取り込もうと思ってはないんですけど。

──『ナッテ』のツアーはいかがでしたか? 宝物をたくさん詰め込んだアルバムだけに、ライブも1本1本とても濃いものになったかと思うんですが。

なぎ:いままでのアルバムよりも1曲1曲が自分のなかにある宝物の一部だったので、いつもより……1曲1曲の詰め方に違いがあったような気がします。いつもはアルバムの流れを意識していることが多いんですけど、どちらかというとしっかりと曲を見せられたのかなって。

全9公演だったんですけど、最後の東京公演ではスクリーンを使った演出をできたことが嬉しかったです。『ナッテ』の曲たちってバンドでやってもあまり派手にはならないんです。でも映像で世界を完結させることができたので……テーマにしていた“宝物”って部分が、分かりやすく皆さんに伝わっていたらいいなって思いです。

──では「無形のアウトライン」はどんな風に作られていったんでしょうか。

なぎ:「間遠い未来」は黒石ひとみさんに作っていただいたんですが、アニメの制作サイドからも、「間遠い未来」のような方向性の曲がまた欲しいというリクエストをいただいていて。2クール目は話がどんどん重くなっていくこともあって「レクイエム的な要素も欲しい」っていうお話だったんです。

同じ流れを汲みながら違う曲に消化させていくにはどうしたらいいのかなと思っていて。そのときに浮かんだのが、石川智晶さんだったんです。智晶さんの作る曲は退廃的でありながらも、入ってみると世界が広がって見えるような、そんな曲なので、智晶さんにレクイエムを書いてもらったら面白いのかなと思ってお願いしました。

──他にリクエストされたことってあったんですか?

なぎ:私からは「間遠い未来」の対になるような歌詞を書こうと思っていますということをお伝えしました。

──独特の雰囲気の曲ですよね。個人的には「無形のアウトライン」を聴いたときに、ビョークのような雰囲気を感じました。

なぎ: (笑) 確かに特徴は近いものがありますね。

──曲が上がってきたときはどんな印象を受けましたか?

なぎ:凄くカッコ良いんです。実は製品版では結構コーラスが少な目になってるんですけど、上がってきた当初はもっと盛り盛りにコーラスが入っていたんです。最終的に少し抑えめになったんですけど、そのバージョンもすごくカッコ良いんです。

──前半のところですかね?

なぎ:そうです。イントロのところが結構盛り盛りでした。あと終わりの部分とか……。

──今も入ってますが、さらにという。それも聴いてみたい!

なぎ:独特の世界観の曲になったので、制作サイドからお願いされて少しシンプルにさせてもらったんです。でも削ったとは言え、智晶さんの世界観が十分に伝わる内容になってると思います。

──今回収録されているインストを聴いて、なぎさんのブレス、コーラスは、やなぎなぎの楽曲に欠かせないものだなと改めて感じさせました。毎回伝えているような気もするんですけど、楽器のようで。

なぎ:そうですね。無いと全然印象が違うというか。たまに1カ所だけ削ったりとか、細かく修正したりすることもあるんです。そういう意味では本当に楽器ですね。

──「レクイエム」がテーマになったということですが、歌詞はどんな想いで書かれていったんでしょうか。

なぎ:「間遠い未来」が残された人たちを想った歌だったんです。自分が長く生きていて、周りのひとは短く生きて(生涯を)終えてしまった状態で……。そんな人たちを思った歌だったんですけど、それのアンサーソングというか。その逆の視点で、自分たちは先に逝ってしまうけど、こういう想いを残しているんだよって視点で書きました。今見比べるとすり合ってはいない状態なんですけど、2人とも共通して、“もしまた次に会えることがあればいいね”って願った歌になっています。

──<今 解き放ったなら>という一節が凄くエモーショナルで。

なぎ:そこは一番ピークを迎えている感じですね(笑)。でもあまり感情移入をしすぎなかったつもりなんです。最後に向けてちょっとずつ感情を入れていくような気持ちで歌っていきました。

──語り部のような立ち位置ということでしょうか?

なぎ:ああ、そうですね。語り部がいちばん近いかな。最初は手の届かないところで起きていることだから何もできない。そこから「また会えるのかもしれない」ってところに繋がって、ちょっとずつ情が入ってくる……みたいなイメージではいました。

──「アクアテラリウム」も智晶さんの楽曲でしたが、制作に違いみたいなものはあったんでしょうか。

なぎ:今回は智晶さんに曲を作っていただいてから歌詞にしましたけど、前回の「アクアテラリウム」のときは私がイメージをした詞を書いて、そこに曲をつけてくださって、また私が詞をつけて……って流れがあったりして、いろいろな作り方があるんです。そのたびに違うものができているので、面白いですよね。

──曲によって色々な化学反応が起きてるんですね。ところで『覇穹 封神演義』の2クール目のエンディングを観たときはどんな印象でした?

なぎ:なんて言ったらいいのかな……。1人1人のキャラクターに背景がたくさんあるので、(エンディングが)出てくるたびに色々と考えてしまうんです。前回のときもそうでしたけど。複雑な話でもあるので、余韻に浸りながら観ています。

──今回は1クール目のED「間遠い未来」の続投という形ですが、なぎさんは同じ作品に複数曲提供されることが多いように思います。ちょっと変な質問かもしれませんが、同じ作品の曲を続けて担当できることは、やはりアーティスト冥利に尽きますか。

なぎ:嬉しさはもちろんあります。でも続けてってなると比較もされてしまうので難しいところもありますけど……やっぱり嬉しいです(笑)。長く担当させていただくと私自身もどんどん作品を好きになりますし、好きになると「もっとこうしたい」という想いも出てきます。それが実現するのは嬉しいことですね。

「智晶さんの曲に影響をされて、創作意欲が沸いた」

──2曲目「return」はなぎさんが作詞・作曲をされた曲ですが、どんな想いから生まれたんでしょうか。

なぎ:智晶さんの「無形のアウトライン」をいただいてから作った曲だったんです。「アクアテラリウム」もそうだったんですけど、智晶さんの曲は凄く刺激を受けるんですよ。何か作りたいって気持ちにさせられる曲を作られるので、「無形のアウトライン」を聴いたときになにか作りたいなって。今自分が作りたいこと、書きたいことってなんだろうなって考えて……「return」という、自分や何かが消えてなくなるときに、どういう状態で消えるのが美しいのかってことを書き始めました。

──解放的な曲よいうよりかは、どちらかと言えば内側に潜るような曲だと思うんですが、智晶さんがキッカケになったとは言え、こういう曲を作りたくなった理由というのはなんだと思いますか?

なぎ:うーん。なんでしょうねぇ。自分の好きなものを見直したり、ずっと思っていることだったりとか……そういうことに対して高まっていた時期だったんですよね。でも「return」はポジティブに書いたつもりです。どうせ消えちゃうんだったら、大きい生き物の一部になったりしたいなとか。

──<覚えていてね/縛る様に言葉を植えて>という歌詞が鮮烈に残ったんです。これはどんな意味を込められたんでしょうか。

なぎ:いなくなるときに……本当は(残された人に)覚えていて欲しいんですよね。「けれども」みたいな気持ちというか。それは消せないなぁってところから入れた言葉です。

──そういう歌詞も然り「無形のアウトライン」に通じるものがあるなとは思っていたんですが、智晶さんの曲に影響されて生まれた曲だったんですね。

なぎ:そうなんです。智晶さんの曲に影響をされて、創作意欲が沸いたから作った曲だったんですけど、無意識に「形がなくなるもの」を書いていて(笑)。

──確かに「無形」!

なぎ:そうなんです。あとから思ったんです。だからそういう気分だったんだなって。寄せていこうと思ったわけではなかったんですけどね。

──なぎさんのクリエイティブな感性も凄いんですけど、改めて智晶さんの存在感の凄さを感じますね。

なぎ:そうですね。吸引力というか、そういうものがある方なんですよ。

──なぎさんのなかで、ほかにもそういう存在のかたはいますか。

なぎ:ずっと言い続けていますけど、私にとって新居昭乃さんが神のような存在というか。昭乃さんがいなかったら曲は書いていないと思います。「あんな曲を書いてみたい!」って思ったのは、やはり昭乃さんの影響が大きいです。

──唐突なんですけど……「return」の発想にしても他の曲にしても着目するポイントがなぎさんらしくて惹かれるんですが、曲を作るときってどういうところから形になっていくんでしょうか。よくメロディが頭に浮かぶといった話がありますが、ああいう形で浮かんでいくんですか?

なぎ:私の場合は、疑問に思っていることや普段の生活で気になっていることを掘り下げていくんです。で、そういうことを考えていくうちに、その想いを曲にしたらどういう表現になるのかなって置き換えをします。例えば、本を読んでいて気になる言葉が出てきたら意味を調べて「こういう由来があるのね」って。そこから掘り下げて広げて歌詞にして曲を作っていく……みたいな作り方が多いですね。些細なことが多いんですよ。「雪はどうしてこんな結晶になるんだろう?」とか。

──そういうときって先ほど話されていたみたいに、他の音楽を聴かれたりするんですか?

なぎ:そういう時はあまり聴かないんです。なんか作りたい!って思ってるときは、もう明確に「作りたいモノ」があるんです。だから形にしていきます。

「無形」を表現した鮮やかなアートワーク

──ところで今回のジャケの水彩画ってなぎさんが描かれたものですか?

なぎ:あれはデザイナーさんが作ってくださったものです。綺麗に無形を表現していただきました。形がないものを表現するって凄く難しいんですけど、いい形にしてくれて。

──現在ミュージックビデオのショートバージョンが公開されていますが、全貌はどんな映像に仕上がっているのでしょうか。

なぎ:いろいろな形が見えないものがたくさん映し出されます。スモークを焚いて輪郭が薄れていったり、すりガラスの向こうにいてボヤけて見えなかったり……監督が「無形」にまつわるアイディアをたくさん出してくれて。

──そう考えると無形って無限にあるんですね。自分の気持ちしかり。そういうことを考えるのも想像力が刺激されて楽しいですね。

なぎ:そうですね。結構あるんですよ(笑)。

──このシングルをリリースした後は制作に入られるんですか?

なぎ:制作はいろいろやってはいるんですけど、アジアツアー(yanaginagi live tour 2018 natte in Asia)のあとに、秋のライブを控えています。

──秋のライブは、どんなライブなんですか?

なぎ:5日連続でライブをやる予定なんです。

──5日間!

なぎ:今までにやったことのない5日間連続ライブで、しかも毎日編成を変えていくんです。どうやったらいちばん効率的なのか自分でも見えていない状態ではあるんですけど、なんとか形にしたいなと。

例えば同じ楽曲でも次の日に行くと編成がまったく違うので、全然違う曲になっている可能性もあって。色々な楽しみかたができると思います。1対1で歌うような曲もやろうと思ってますし、シリーズでやってる「color palette」のなかでも特殊な感じなので、5日間全部来ていただいても楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。ぜひ遊びに来てください。

[取材・文/逆井マリ]

 

リリース情報

■やなぎなぎ 18th Single
2018年5月30日発売

【初回限定盤】 CD+DVD  GNCA-0530 ¥1,800+税

※初回限定盤特典DVD:「無形のアウトライン」ミュージックビデオ収録

 
【通常盤】 CD GNCA-0531  1,200+税

 
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 

リリースイベント情報

★ 6月2日(土)12:00開場/12:30開演
会場:アニメイト大阪日本橋5Fイベントホール
内容:サイン会
参加券配布店舗:アニメイト大阪日本橋店、天王寺店

★ 6月2日(土) 17:30開場/18:00開演
会場:第3太閤ビル(名古屋)
内容:サイン会
参加券配布店舗:アニメイト名古屋店

【お問い合わせ先】
各公演の参加券の配布状況につきましては、参加券配布店舗へお問い合わせください。

やなぎなぎ Official Website
やなぎなぎ Officia Twitter(@yanaginagi)

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