声優
『温泉むすめ』4thライブレポート

そこに声優はいなかった――のぼせるほどに熱い進化を続ける『温泉むすめ』が4thライブで切り開いた未来の向こう

2018年12月22日(土)、カルッツかわさきにて「温泉むすめ 4th LIVE“ NOW ON☆SENSATION!! ”~聖夜にワッチョイナ Vol.2~」が開催されました。

『温泉むすめ』は温泉の魅力を世界に発信するために生まれた、地域活性クロスメディアプロジェクト。若手人気声優が“温泉むすめ(以下、温むす)”なるキャラクターを演じ、多様な活動を通して温泉の魅力を広めていくコンテンツです。

4度目の大型となった今回のライブでは、SPRiNGSやAKATSUKIをはじめ、デビューしたばかりの新グループ&ソロプロジェクト、今回のライブのために結成された選抜メンバーによる1日限りのステージが展開。

さらに従来のライブの構成を変えて進化を遂げた新しい『温泉むすめ』のライブを披露し、ぽか旦那・ぽか女将(温泉むすめファンの総称)を大きく沸かせました。本稿では、そんな4thライブ夜の部の模様をお届けします。

【出演】
<SPRiNGS>
草津 結衣奈(CV:高田 憂希)
箱根 彩耶(CV:長江 里加)
秋保 那菜子(CV:高橋 花林)
有馬 輪花(CV:本宮 佳奈)
道後 泉海(CV:篠田 みなみ)
登別 綾瀬(CV:日岡 なつみ)
下呂 美月(CV:佐伯 伊織)
有馬 楓花(CV:桑原 由気)
奏・バーデン・由布院(CV:和多田 美咲)

<AKATSUKI>
鬼怒川 日向(CV:富田 美憂)
玉造 彗(CV:田澤 茉純)
別府 環綺(CV:岩橋 由佳)

<ソロプロジェクト>
大手町 梨稟 (CV:楠木 ともり)

<OH YOU LADY?>
いわき あろは(CV:大坪 由佳)
万座 千斗星(CV:井澤 美香子)
定山渓 泉美(CV:小野 早稀)

<ゆのはな選抜>
伊香保 葉凪(CV:茜屋 日海夏)
阿蘇 ほむら(CV:髙橋 麻里)
下田 莉華(CV:南 早紀)
奥津 かがみ(CV:久保田 未夢)
南房総 日由美(CV:徳井 青空)

<特別ゲスト>
ゆもみちゃん(草津温泉観光大使)
あきう はな(秋保温泉 華乃湯イメージキャラクター)

“温泉むすめの未来の向こう”を魅せるための新たな試み

大型ライブとしては今回で4度目、クリスマス前後に行う「聖夜にワッチョイナ」としては、2度目の開催となった今回のライブ。『温泉むすめ』のメイングループとして活動しているSPRiNGSやライブではおなじみのAKATSUKIに加え、新グループのOH YOU LADY?、ソロプロジェクトとして始動した大手町 梨稟、さらには“ゆのはな選抜”と題して5名のキャストが1日限りのステージを作り上げます。

夜の部ということもあり、既に温まりつつある会場にOPムービーが流れると、無数の手拍子とペンライトの輝きがキャスト陣を待ち望みます。途中、舞台裏からかすかに漏れ聞こえるキャスト陣の円陣も相まって、期待感がいっそう膨らむとSPRiNGSによる『70億分の9の奇跡』でライブの幕が上がりました。

ぽか旦那・ぽか女将の期待に応えるかのように元気いっぱいに披露したと思いきや、2番Aメロでは壇上の階段に座り込んでメンバーや客席に温かい視線を送りながら歌うシーンも。さらに新曲『未来の彼方』では、会場のぽか旦那・ぽか女将それぞれに寄り添うように、ひとつひとつのフレーズを丁寧に紡ぎます。


そんなパフォーマンスからは、これまでのライブより増してキャラクターがそのまま歌い踊っているような印象を受けましたが、それもそのはず。最初のMCでキャストが「温泉むすめの未来の向こうをお届けできるように」と意気込んだ通り、今回のライブでは温むす(キャラクター)によるMCが新たな試みとして行われていたのです。

従来のライブではドラマパートこそ見られていたものの、MCはキャストとして展開されていました。しかし、今回のライブMCのほとんどはキャラクター同士による会話で繰り広げられ、まさに温むす本人が目の前でパフォーマンスを繰り広げているという、没入感と臨場感が得られるようなステージに昇華していました。

もちろんキャスト本人によるトークは各グループで行われたものの、極力抑えられている印象を受け、いい意味で“中の人”を感じさせない構成となっていました。

そのため『未来の彼方』直後のMCでは、キャラクターとしてのSPRiNGSがフリーダムかつ和気あいあいとトークを展開。温むすによるステージであることがより印象付けられ、全体的に『温泉むすめ』の世界観を強く感じられるライブになりました。

ソロのパフォーマンスがもたらすオリジナルカラー

そんなSPRiNGSのトークに「ちょっと待ちなさいよ!」と割って入ったのは楠木さんもとい、大手町梨稟。自信家だったり小生意気だったりな性格もご愛嬌。ぽか旦那・ぽか女将の温かい視線が向けられる中でSPRiNGSに食って掛かる一幕も。

もちろんソロデビューを果たすこともあって、その実力は折り紙付きです。スタンドマイクを手にすると、ロックナンバーの『Passionate Journey』を熱唱します。AKATSUKIやAdharaとは異なる、彼女のロックかつクールな魅力を歌声に乗せ、曲が終わるまでの一挙手一投足を大手町梨稟として披露。

『願いキラキラきらり』では<この勢いで未来を あたし色に染めるよ>というフレーズの通り、ペンライトの色だけでなく、ぽか旦那・ぽか女将の心までも“あたし色”に染め上げます。どのグループにも所属しないソロプロジェクトの先駆者として、一騎当千のパフォーマンスを繰り広げました。

「Hey 湯ぅ♪」とステージに姿を表した篠田さんは、泉海のソロ曲『うぇるかむ to ONSEN』を披露。<あなたのONSENをナビゲイトさせて>のフレーズに合わせて客席を指差す姿に、コロっと落ちてしまうぽか旦那・ぽか女将は多かったことでしょう。

さらに、間奏前のシンガロングでは会場と声を揃えて楽しげに披露したと思いきや、ラスサビ直前の<待ってたよ!>でウィンクを飛ばして、客席を大きく沸かせました。

ふたりのソロならではの魅力に骨抜きにされたところでSPRiNGSメンバーが登壇し、再びキャラクターによるMCへ。そこで結衣奈が「みんなに紹介したい人がいるんだ!」と呼びかけると、ゲストのゆもみちゃんが登場。さらに那菜子の紹介で、あきうはなちゃんもステージに加わり、賑やかさに磨きがかかったところで『未来イマジネーション!』を披露。おなじみの楽曲ということもあり、会場のテンションが一気に引き上げられます。

さらに座礼を経て繰り広げられたのはアッパーソングの『純情-SAKURA-』。メンバーの真剣な表情と熱く真っ直ぐな歌声に加え、高難易度のフォーメーションが織りなす完成度の高い一曲は、誰しもが思わず見惚れてしまうほど。披露するほどにクオリティを増していく圧巻のパフォーマンスに会場は熱狂の渦に包み込まれました。

湯冷めを知らない三者三様のパフォーマンス

沸騰して間もない会場に新たな風を吹かせたのは、大型ライブ初参加のOH YOU LADY?。陽気な挨拶と共に登場し、軽快かつコミカルなMCで会場に笑顔を咲かせた3人の温むすは、トーク同様に軽やかなステップを踏んで『レイニーボーイフレンド』を披露。

往年のアイドルを彷彿とさせる楽曲に、様々な表情を覗かせつつ恋心を歌い上げました。聞いているだけで自然と幸せな気持ちにさせてくれるのは、OH YOU LADY?の大きな魅力と言えるでしょう。

OH YOU LADY?と入れ替わるように葉凪(茜屋さん)が登場すると、彼女が所属するグループ・petit corollaの助っ人として他の選抜メンバーの4人を迎えます。

そんな1日限りのグループで、中毒性の高いトランスの『Petit Etoile』、しっとりとしたナンバーの新曲『追伸、ありがとう』、作品の名刺曲とも言える『咲かせよ 沸かせよ バンバンBURN!』を披露。

当日限りのグループにしておくには惜しいほど抜群のコンビネーションで、多くのぽか旦那・ぽか女将を虜にしました。

そして、満を持して登場したAKATSUKI。『Never ending dream』と曲名だけを告げると会場は凛とした空気に包まれ、熱く真剣な眼差しで客席を見据える3人の歌声が響き渡ります。


従来のライブに引き続き、あえて笑顔を多く見せないパフォーマンスが徹底されているAKATSUKI。続けて披露した『Hang out!!!』2番のAメロ、日向ソロパート<音のすべてを捧げるわ>では王者としての余裕からか、薄っすらと笑みを浮かべる姿も。富田さんを通して鬼怒川日向の圧倒的カリスマ性が垣間見える一幕となりました。

また、キャラクターとしての和やかなMCも束の間の出来事。即座に気持ちを切り替えると、新曲の『情熱のパラディソ』を三位一体となって熱唱。決して多くは語らず、パフォーマンスで“最強とは斯くあるべし”と示しつけ、最後の最後まで“最強”を証明しました。

『温泉むすめ』が切り開く未来の向こう、そしてその先は

冬にぴったりな『粉雪フレンズ』で会場を雪化粧させたのは、衣装チェンジを経て登場したSPRiNGS。曲中のセリフや温かい歌声は身体の隅々まで染み渡り、ぽか旦那・ぽか女将の心を温かく満たします。

さらに、キャストとしてのMCでは2019年への意気込みを語り「来年の飛躍を目指して」と想いを込めて『Hop Step Jump!』を披露。その歌詞からは過去と未来のSPRiNGSを歌っているかのようで、今後の彼女たち、ひいては『温泉むすめ』にさらなる期待感が高まる一曲となりました。

アンコールではSPRiNGSが再登場すると「聖夜にワッチョイナ」ならではの『おんくり』を、赤と緑のクリスマスカラーに染まった会場で披露。サビではぽか旦那・ぽか女将と共に手を振る姿も見られ『温泉むすめ』ならではのクリスマスを一体となって楽しみます。


さらにオールキャストがステージに集結すると、ラストナンバーの『青春サイダー』を全員で熱唱。グループの枠を越えて一緒に歌うキャストや抱擁を交わすキャストなど、総勢21名によるライブの締めくくりに相応しい圧巻のステージが展開しました。

最後に各グループから、ぽか旦那・ぽか女将へ向けて挨拶。選抜メンバーは一層深まった作品や温むすへの愛を、大手町梨稟こと楠木さんは改めてソロとしての責務を全うする覚悟を、AKATUKIは今後も最強を追求していく意志を、SPRiNGSはさらなる進化と感謝の想いを込めてメッセージを贈ります。

そして、オールキャストによるチョイナ締めとSPRiNGSによる生声での感謝の言葉で、一足早い聖夜の奇跡に幕を下ろしました。

3年目に差し掛かる中、新グループやソロプロジェクトの発足やグループ単独ライブなど、多彩な活動を基軸にまだまだ進化を続ける『温泉むすめ』。ぽか旦那・ぽか女将のみなさんは、新たな試みとしてライブの常識を大きく変えた本公演に驚いたと同時に、新たな可能性が垣間見えたはず。

“未来の向こう”と言い表された4thライブを終えた今、まだ見ぬ5thライブではどんな景色が広がっているのでしょうか。湯冷め知らずの『温泉むすめ』、そのさらなる未来を期待せずにはいられません。

[取材・文/鳥谷部宏平]

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