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「風といっしょに」小林幸子さん&中川翔子さんインタビュー

『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』主題歌「風といっしょに」に込めた特別な思い。小林幸子さん&中川翔子さんインタビュー

TVアニメ ポケットモンスターシリーズの劇場版第1作『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』が、公開された1998年7月18日から約21年経て、シリーズ初のフル3DCGで描かれた『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』として2019年7月12日に帰ってきます。

21年の歳月を経て進化したのは、作品そのものだけではありません。小林幸子さんが歌う主題歌「風といっしょに」も、本作では亀田誠治さんによる新たなプロデュースを受け、さらに“しょこたん”こと中川翔子さんが参加されます。

ポケモンに対して並々ならぬ思いを抱く中川さんと、「風といっしょに」がきっかけでポケモンに出会い、21年間寄り添い続けている小林さん。おふたりがともに歌う「風といっしょに」はどのような進化を遂げたのか、どんな思いが込められているのか、お話を伺いました。

「風といっしょに」は、あの夏の日の記憶を思い起こさせてくれる歌

——「風といっしょに」をいっしょに歌うことが決まったときのご感想をお聞かせください。


小林幸子さん(以下、小林):
しょこたん(中川さん)は本当にたくさんの才能と温かい人柄をあわせ持っているんです。以前にもコラボをしたことがありますし、今回のお話はすごく嬉しかったです。また、今回は“EVOLUTION”(進化)がテーマでもありますので、「風といっしょに」を進化させる意味でも、しょこたんといっしょに歌えることはありがたく思いましたので、「ぜひ、お願いします」とお答えしました。

中川翔子さん(以下、中川):本当にありがたいお言葉です……。「風といっしょに」には、あまりにも特別な思いがたくさん詰まっていて、私はイントロを聞くだけで21年前の夏の日に戻ることができるんです。いつだってこの曲を聞くと幸せな気持ちになれます。そんな特別な曲だからこそ、恐れ多いという気持ちが最初にありました。じつはいまだに信じられない気持ちで、夢よりもすごい夢を見ているような感覚です。

小林:いま(ステージで)歌ってきたところじゃない(笑)。

中川:そうなのですが(笑)、公開されてようやく実感が沸き始めるような気がしています。それくらいすごく嬉しいんです! 21年前、私は小学校5年生でしたが、あのときからずっと幸子さまが元気に歌い続けて来られたことの尊さが、いますごく心にしみています。

小林:当時は、これだけの皆さんに愛してもらえる歌になるとは思っていなかったんです。それまでの私は演歌を歌っていましたから、お話をいただいたときも「私でいいんですか?」と逆に聞いたくらいです。

——そうだったんですか。当時の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を見ていた世代からすると、「風といっしょに」にはやはり特別な思い入れがあります。今回作られたミュージックビデオもこの世代にはかなり刺さっていると思います。

小林:よかったでしょう! しょこたんがかつて描いた漫画が原作になっているのよね。

中川:エモいですよね! はじめてポケモンに出会ったときのこととか、どのポケモンを選んだかとか、みんな絶対に覚えています。それくらいポケモンは私たちの思い出に深く結びついているんです。

——ミュージックビデオで小林さんはおもちゃ屋さんの店員役を演じていらっしゃいましたよね。

小林:お店のおばちゃん役をやりました(笑)。私が子どものころに『ポケモン』はありませんでしたが、おもちゃ屋さんや駄菓子屋さんにいたおばちゃんのことは覚えているんです。ある程度歳を重ねたいま、あのときのおばちゃんの気持ちがよく分かるんですよ。子どもが目をキラキラさせてどっちのソフトにしようか迷っている、それを見ているだけでどれほど愛おしいか。しょこたんはどっちを買うか決められなくて公園をぐるぐる走り回っていたというのを聞いて、思わず笑ってしまいました(笑)。

中川:「どうしよう!」と悩みながらずっとグルグルしてしまって(笑)。

——ところで、今回の「風といっしょに」は亀田誠治さんのプロデュースとなっていますが、曲を最初に聞いたときの印象はいかがでしたか?

小林:当時の「風といっしょに」とはまったく違います。作品とともに「風といっしょに」も“EVOLUTION”しています。とても素敵だなと思いました。

中川:亀田さんは、いわゆるポケモン世代ではないので作品のことをご存知でないかもと思っていたのですが、なんと当時息子さんを連れて映画を見に行っていたそうなんです。レコーディングのときにそれを聞いて感動してしまいました。お父さんの目線でも愛されているんだと思うと、本当に2世代3世代にわたって愛される作品なのだなと改めて実感しました。そうした亀田さんの思いも込められているおかげで、これまで以上に聞いている人に寄り添うような優しい曲になったと思います。

小林:そうですね。当時はバックがオーケストラでしたから壮大なイメージがありましたが、それがより身近になったような感覚がします。

中川:ひとつだけ変わったところがありまして、最後に「ララララ」と幸子さまが歌ったときに、私も同じようについていって、さらに子どもたちもついてくるところがあります。3つの世代の声が重なるわけですが、舞台挨拶のときに歌ったときもポッポ肌が、いやキャモメ肌が立ちました。

小林:キャモメ肌(笑)。私が演じるボイジャーも作中でキャモメと言っていましたね。21年前はカモメと言っていたのですが。

中川:21年間のあいだにキャモメというポケモンが新しく発見されたことによってセリフも“EVOLUTION”したわけですね!

進化した「風といっしょに」は、“母親の色”で歌う

——曲の中で、特に思いを込めて歌ったフレーズやお気に入りの歌詞はありますか?

小林:聞き手からするとやっぱり「いくつもの であい いくつもの わかれ」がグッとくるのではないでしょうか。出会いがあれば別れがあるものですが、年齢を重ねていけばいくほど出会いも別れも増えていきます。人それぞれ違った出会いと別れを経験しますから、感じ方も人によって変わってきますよね。

中川:大人になってようやく意味を理解できる物事って本当にたくさんあるんだなと思います。あのとき違う選択をしていたら、この瞬間はないんだなということに後から気づくこともいっぱいあります。

命が生まれて、だんだんいろいろな人と出会って、そして故郷を旅立って大人になって、ふと立ち止まって諦めそうになったり辞めそうになったりする。そんなとき、また風といっしょに歩きだそう、と背中を押してくれる、人生の助けになってくれる曲なんです。歌詞を改めて見ると、そういうことだったのかとハッとさせられます。

これからさらに歳を重ねれば、また新しいことに気付けるのかと思うと、歳をとるのが楽しみになりますよね。本当に深くて素敵な歌だと思います。

小林:私が初めて曲をいただいたときは、「ひとつめの たいこ トクンとなって たったひとつの いのち はじまった」という表現。「トクン」という命の始まりの表現がすごく印象的でした。

中川:まさにその「トクン」の幸子さまの歌い方が大好きなんです!!

小林:そうなの!?

中川:「トクン」の“ク”のところがたまらないんですよ!! きっとオタクはみんなこの一文字萌えを分かってくれるはず!

小林:一文字萌え!? その言葉のセンス最高だわ(笑)。

——歳を重ねたことで新たなことに気付けるというお話がありましたが、これは今回の作品についても同じことが言えそうですね。

中川:そう思います。映画も観させていただいたのですが、子どものころと違う場所で泣けたんですよ。そこに自分でびっくりしました。観る前から号泣確定なのは分かっていたものの(笑)、3Dになったことで変わった部分や変わらない部分に興奮して、逆に泣かなかったりするのだろうかと思ったりもしたんです。結局そんなものは杞憂で、もう目から“ハイドロポンプ”でそのまま“なみのり”できそうなくらい泣いてしまいました。

小林:“なみのり”できそうなくらい(笑)。

中川:首藤さんが遺された素晴らしい脚本が使われているのですが、それでいて“EVOLUTION”している部分がしっかりあります。それはご自分の目で確かめていただきたいのですが、ポケモンのことをまったく知らない大人にもぜひ見てもらいたいと思いました。知らなくてもバッチリ楽しめますし、ポケモンが20年以上世界中から愛され続けている理由も理解してもらえると思います。どうか映画館で見てほしいです。

——レコーディング時の印象的なエピソードを教えてもらえますか?

中川:私自身、幸子さまにお聞きしたいことがあるんです。というのも、レコーディングのときに幸子さまが来てすぐに1回2回歌って即OKが出てしまったことがあまりにも衝撃的で。21年間も歌い続けてきた曲で、少なからず変わっている部分もある中、改めて歌うのはどういう感覚だったのですか?

小林:レコーディングにはいつも「声を録音しても大丈夫です」という状態に仕上げてスタジオに入ります。重要なことはひとつ、“何色で歌えばいいのか”だと思っています。今回はそれを尋ねたら「母親の色です」と言われました。それに対してみんなそれぞれ違う解釈があるでしょうけど、私は包み込むような感覚だと思ったので、その通りに歌っています。

中川:はぁーーー。

——「母親の色です」という答えが返ってきて、すぐに「はい、分かりました」となるものなのですか?

小林:分かります。

中川:すごいです!! 「風といっしょに」を生で聞けていることも感動だったんですけど、バシッとOKテイクが出るのを目撃できたことがすごく幸せでした。

小林:目撃(笑)。

——伝説を目撃したと。

中川:そうなんです。そして「後はよろしく!」と去っていく様子がもうルギアにしか見えない!

一同:(笑)

中川:その後、まだ幸子さまのいい香りが残る空間で、今度は自分が歌うというのは、それはもうたいへんでした。考えすぎてはいけないと思ってはいたのですが。

小林:それはその通り。歌は考えすぎてはダメ。考え過ぎてしまうと“歌を歌う”という意識が強くなりすぎて、言葉が伝わらなくなってしまうんです。不思議ですよね。

——歌うのではなく、伝えるというイメージですか?

小林:そうね。歌手の仕事は、歌を相手に伝えることです。それも、自分の作った歌をキッチリそのまま渡すのではなくて、相手が受け取るための隙間を与えておかないといけないのです。でも考えが凝り固まってしまうと、その隙間がなくなってしまいます。なので、どこかでわざと曖昧にさせておかないといけません。……なんだかすごく難しい話になってきましたね(笑)。

——思いがけず、小林さんの歌に対する考えかたをお教えいただけて光栄です。聞き手が何かを感じ取るためのゆとりを持たせて伝えるのがプロの歌だということですよね。

小林:相手がこんな風に感じてくれたらいいな、という部分を残しておかないとね。私はそう思って歌ってます。

中川:そうかぁ……そうして想像の余地を与えてくれていたから、この21年間「風といっしょに」でいろいろな気持ちをもらえていたんですね。本当にすごいお話を聞かせてもらいました。

——そしてこれからの子どもたちは、同じ思いを中川さんの歌にも抱くわけです。

小林:そうよ、これからしょこたんの歌にもなるわけだから。

中川:うわーーー! そうかぁ……。当時はまだ生まれていなかったちびっ子たち、そして当時から知っている大人たちもみんな特別な思いを持っているのが、ミュウツーというポケモンのすごいところなんですよね。

今回初めてポケモン映画を観る子どもたちもきっとたくさんいて、大人の皆さんも『ポケモンGO』からポケモンに興味を持った方が見てくれるかもしれない。そう思うと、改めてこの令和元年に生まれた「風といっしょに」が、いつかの懐かしい思い出になる日が来るんだと実感します。夏に吹く風ってすごく特別で、とくに記憶を呼び起こしやすい気がするんですよね。

小林:夏に吹く風か、いいこと言うねー。

中川:大人にとっての夏休みはバタバタしているうちにすぐ終わっちゃいますけど、子どもたちにとっては1日1日がすごく長くて特別な時間だと思うんです。そんな特別な思い出を、当時と同じような風が吹いただけで、あの日プールで遊んだなとか、いろいろ思い起こしますよね。同じように、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』を見に行ったことを思い出してくれるようになるのかと思うとドキドキします。

——おふたりにとってポケモンとはどのような作品ですか?

小林:私は最初に主題歌のお話をいただいたとき、「ポケモンってなんですか?」と聞いたくらいで、作品のことをぜんぜん認識できていませんでした。でも、当時3歳くらいの子どもがいたうちのスタッフから「知らないんですか!?」と言われてしまって(笑)。

そのお子さんはもう夢中になっていたようで、それを聞いて「ポケモンを知らないというのはダメなことなんだ」と思って引き受けることに決めたんです。そこからは、ポケモンのすごさをどんどん教えてもらっています。子どもたちがキラキラと目を輝かせている姿を見ていると、「主題歌を歌ってよかったな」と強く思います。これからも、しょこたんの言うように子どもたちにとって特別な思い出になってくれるような作品であってほしいと思います。

中川:ポケモンに出会ってから、本当に人生が変わったと思います。いまやTVアニメにゲームにカードゲームに映画と、いろいろなところでポケモンと触れる機会があります。日本だけに留まらず、世界トレンドに入ることもあって、本当にすごい作品だと思います。ポケモンがあれば、言葉も世代もすべて超えて繋がっていけます。「好き、楽しい」の気持ちをたくさんくれたポケモンには、感謝でいっぱいです。いつか、孫といっしょにポケモンバトルができたらいいな、なんて妄想をずっとしています(笑)。

いろいろすっ飛ばしてしまっていますけど(笑)。それはさておき、人間がいる限りポケモンが好きという気持ちはどこまでも繋がって広がっていくと思うので、楽しみです。この前ケニアに行ったときも、赤道付近で『ポケモンGO』を開いたらポケモンがたくさんいたんですよ。ここにもポケモンたちはいるんだなと思いました。きっとこれからもまだまだ進化し続けて、ポケモンがより身近な存在になってくれる気がしています。地球がまわる限りポケモンは永久に不滅だと思います!

小林:と申しておりますので、ぜひよろしくお願いします(笑)。

——それでは最後に、映画・楽曲を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

小林:それはひとつですよ! 劇場に足を運んで、「風といっしょに」のCDを買ってください!

中川:シンプル(笑)! でもその通りです! 最近では動画配信サイトでも映画が見られるようになりましたが、やはり劇場に行くことそのものが重要な体験だと思うんです。映画が始まる前の予告編を見たときのドキドキ、帰り道に感じる風、そのすべてが思い出になります。日本の夏と言えばポケモンですので、絶対に映画館に観に行ってほしいです!

取材・文/竹内白州、写真/相澤宏諒
ヘアメイク(中川翔子さん)/灯(ROOSTER)
スタイリスト(中川翔子さん)/尾村綾(likkle more)

映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』作品情報

【キャスト・スタッフクレジット】
特別出演/市村正親・小林幸子・山寺宏一
サトシ/松本梨香
ピカチュウ/大谷育江
ムサシ/林原めぐみ
コジロウ/三木眞一郎
ニャース/犬山イヌコ
ナレーション/石塚運昇
原案:田尻智
監督:湯山邦彦・榊原幹典
脚本:首藤剛志
製作:ピカチュウプロジェクト
配給:東宝

(※)「榊」の漢字は正しくは「(木+ネ+申)」です。
 
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