
劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』佐倉綾音さん&杉田智和さんインタビュー | 二人が仲良くなったきっかけは食パンだった!?
親子のような関係性と、ロボットアニメとしての『シンカリオン』
――『シンカリオン』では親子役として出演されているお二人ですが、お互いの存在から刺激を受けた部分はありましたか?
佐倉:実は、『シンカリオン』が始まるまで杉田さんとしっかりとお話したことがなくて。他の現場でご一緒した時にちょこちょことお話自体はしていたのですが、その時に杉田さんから、「距離を感じる」と言われたことがあって(笑)。
杉田:確かに、得体が知れない、というような意味合いのことを言ったような記憶があります。
一同:(爆笑)。
杉田:何に気を使うべきなのか、何を言ったら地雷になるかとかいろいろ考えてしまって……。
特に『シンカリオン』は親子という役柄だったので、それこそ親が子育てに悩む時のように、どう接したらいいのか分からなかったんです。
――なるほど。
杉田:(佐倉さんは)求心力の強い女優さんで、お芝居においてすごく信頼を置いているんですが、人柄の部分までは深く知らなくてもいいのかなと考えていて。
例えば、アフレコでは一緒に声を合わせる場面があって、普通は何秒後とか相談したり、「せーの」でタイミングを揃えたりするのですが、(佐倉さんとは)それをしなくても自然と合わせられるんです。これは他の人とだとなかなかあることではないですね。
佐倉:確かにそうでした。とくに相談したりもしてなかったですね。
杉田:あと、同い年の女優さんたちと仲良く話している姿を見た時は安心していました。良かった、友達と話している時はちゃんと笑うんだなと……(笑)。
佐倉:(爆笑)。
――確かに、その感覚は親御さんの気持ちに近いかもしれません(笑)。
杉田:ただ、人柄を知る上で一つの突破口になったのは、めちゃくちゃご飯を食べるというところですね。美味しいものが大好きで、そこにはすごく興味があるんだということを知った時は嬉しかったです。
それで覚えているのが、(佐倉さんが)2斤くらいの大きさの食パンをいっぱい買ってきていたことがあって。
佐倉:5個ですね。5限(一人あたり5個まで買える)だったので。
杉田:そう、5個だ。それを「そのままにしておくと食べちゃうんで」と、浪川(大輔)さんと僕に一つずつくれたんです。それで、「ああ、いっぱい食べる人なのね」と分かって。
佐倉:そのあとお返しに、(杉田さんから)ハンバーガーチケットをいただいて、実際に食べに行きましたね。1枚で2つ頼めるチケットだったんですけど、一人で2つとも食べました(笑)。
杉田:やっぱり(笑)。一応、「お母さんとかお友達と」って渡したつもりだったんですが、「たぶん一人で食べるんだろうな」と思っていました。
けど、それで喜んでくれている姿を見ていると、子供が喜ぶのを見る親の気持ちも少し分かるような気がして。
――ある種のお父さんの疑似体験というか。
杉田:自分の親は、あまり子供にものを買い与えるタイプではなかったので、そういう意味でも『シンカリオン』に出演できたのは良かったですね。
あとは、佐倉綾音さんに人の心があると知ることができたのも良かったと思います(笑)。
佐倉:(爆笑しながら)……実は私も、今おっしゃられたのとまったく同じことを、杉田さんに対して思っていて。
――佐倉さんの方もですか!?(笑)
佐倉:私もあまり人に自分から積極的に話しかけにいくタイプではなくて、一つ壁を取っ払わないと心を開けないんです。
たくさんの方から好かれている方だし、知識が豊富ですごく引き出しが多くて、頭の回転が早い面白い先輩だというのは知っていましたから、ずっと興味はあったのですが、自分から話しかけにいくのになかなか踏ん切りがつかなかったんです。
たぶん、杉田さん自身も私と近いタイプだったこともあって、なんとなく膠着状態みたいなのが続いていたんですが(笑)、一緒に出演した『コトダマン』(※1)とのコラボの生放送の時に、「構ってくれる人なんだ」ということが分かってきて。
※1:コトダマン
セガゲームスより配信中のiOS/Android向けアプリ『共闘ことばRPG コトダマン』。2018年12月には『シンカリオン』とのコラボが実現し、ハヤトなどの運転手からセイリュウらキトラルザスのエージェント達まで、多数のキャラクターが参戦している。
――絡んでも大丈夫なんだと。
佐倉:はい。食パンを買いに行ったのは、その次か次の週くらいの収録でした。その時には、糖質制限とかで断られることも心の中で想定して、なるべく傷つかないように心の準備をした上で渡しにいったのですが(笑)、快く受け取ってもらえました。
杉田:いやいや。糖質制限は、緩やかな自殺だと思っているくらいなので。絞りたいなら運動が一番です。
――幸い、杉田さんは糖質制限をされていなかったわけですね。
佐倉:ええ、それで「ちゃんと受け取ってくれる人なんだ」ということが分かってホッとして。私はそれでコミュニケーションが取れたと、そこまでで満足してしまった部分もありました。
劇中のハヤトとホクトも、親子ではあるんですが依存しあっている関係ではないですよね。
大人になりかけているハヤトと、成熟した大人のホクトというのは、それぞれが独立しているので、役柄としてもあまりベタベタする必要もないのかなと、杉田さんとも同じように接しています。ただ、やっぱり今も気になる存在ではあります。
杉田:いわゆる「ロボットもの」と分類されるような作品において、親は既に亡くなっていたり、早々に退場したりすることが多いのですが、それにはそうしないと子供が精神的に成長できないという事情があって。
その図式は当然分かっていたので、『シンカリオン』が始まった時も、内心では「いつか退場するだろうな」と思っていたんです。
――最初は自分もそうなるのではと予想していました。
杉田:ええ。そうしないとハヤトが成長できないよなと。ただ、実際には斜め上の展開が待っていたという。
――シンカリオンに乗り込んで、ハヤト達と一緒に戦うという展開ですね。
杉田:違う支部にいってからも、先輩(リュウジ)を連れてきて精神的に競わせますからね。これってすごく新しくて、誰かが描きそうでありながら、今までなかった展開だと思います。
――杉田さんはロボットアニメにもお詳しいと思うのですが、『シンカリオン』のロボットアニメとしての魅力とはなんでしょうか?
杉田:僕が子供の頃に観ていたロボットアニメは、玩具の販促を想定していて、得てして「やらない方がいいこと」「やっちゃいけないこと」という一種の足枷が存在していたと思っています。
中にはそれを逆手に取った作品もあるのですが、『シンカリオン』は(販促のために)「やらない方がいいかも」と躊躇うような要素を、全部入れてくるんですよ。
例えば他作品の人気キャラクターを連れてくるなんて、本編の方の人気が食われてもおかしくないのに、『エヴァンゲリオン』(※2)や『初音ミク』(※3)を呼んでくる(笑)。
さっき言っていたことにも繋がるのですが、こうした禁じ手を可能にするには、『シンカリオン』そのものの存在が大きくないと成立しないんです。
ロボットアニメとしてのお約束を守りつつも、そのお約束を前向きに破ってくる。そこに尽きるかなと思います。
※2:エヴァンゲリオン
1995年に放送され、社会現象を巻き起こしたTVアニメ。主人公・碇シンジは、謎の存在「使徒」に対抗する兵器であるエヴァンゲリオンのパイロットに選ばれ、秘密機関・NERVの一員として使徒と戦う。父親が上司で、ロボットとの適合率によってパイロットが選出されるなど、『シンカリオン』との共通点も多い。
※3:初音ミク
ヤマハが開発した音声合成システム「VOCALOID」に対応した、クリプトン・フューチャー・メディアから発売されているDTM音源。ソフトウェア自体をキャラクター化した「キャラクター・ボーカル・シリーズ」の第一弾で、ユーザーが自ら作成した楽曲をアップロードし、それを共有する文化は、日本の音楽シーンに絶大な影響をもたらした。『シンカリオン』には「発音ミク」として登場。「シンカリオン H5はやぶさ」の運転士として活躍する。
――昔のロボットアニメとか、懐かしのネタがオマージュ的な要素として入っていて、大人も一緒に楽しめるというのも、一つの要因なのかと感じました。
杉田:そうですね。実際に、一般人のオタク仲間の友人から、三歳の息子がレコーダーに録画してあった『ポプテピピック』(※4)を観てテンションを上げているという話を聞いて、「親父の才能を継いでいるな」と思ったことがありました。「じゃあ家族だと何を観ているの?」と聞いたら、『シンカリオン』だという答えが返ってきて。
佐倉:TVシリーズの時は家事をしたりして、流し見をしていたお父さんとお母さんたちも、劇場版だとスクリーンに集中できるので、そこでまたハマってくれる人が出てくるんじゃないかという期待もあります。
杉田:「家族みんなで」というのはいろんな企業や人が唱える言葉ですが、それを本当に可能にしてしまうのが、『シンカリオン』の凄さだと思います。
※4:ポプテピピック
2014年から『まんがライフWIN』で連載されている漫画作品。2018年の1月にTVアニメ化された。ギリギリのネタとハイセンスなギャグが話題。TVアニメでは毎話ごとに出演声優が変わるなど、これまでのアニメでは見られなかったチャレンジが行われている。










































