音楽
『ヒプマイ』オフィシャルガイドブック収録楽曲レビュー

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- Official Guide Book』収録楽曲レビュー|『ヒプマイ』はどこまで進化すれば気が済むんだ!? 収録楽曲の何がすごいのか解説!!

圧倒的強者感! 世界を制するのは乙女なのです

続いては「中王区 言の葉党」の「Femme Fatale」です。YouTubeにアップされているトレーラーは、なんと驚異の1070万再生を突破(2020年10月22日現在)。言の葉党、強すぎます……!

①全てを征服する強い女が全面にプッシュ!

みなさんも瞬時に気づいたかと思います。「Femme Fatale」は曲全体から強い女感がハンパないのです。こんなの勝てっこない……と思わせるほどのパワーは圧倒的。

これは、『ヒプマイ』のストーリー的に女性が男性を支配しているという構図があるからもちろんなのですが、現実のヒップホップやラップでも強い女たちが歴史を動かしてきた事実があります。

ラップは歴史上、生まれた当初は男性主導の文化でした。理由は定かではないのですが、ラッパーは男性ばかり(近年では女性も多くなりました)。やはり日本でも男性ラッパーのほうがよく見かけるかと思います。

そういった状況で現れる女性とは強いもので、男性に負けない反骨心が強いカリスマ的存在になっていきます。例を挙げるなら、アメリカで活躍するリル・キム。

MVを見ていただければわかるように、独特なファッション、自信に満ちたその姿、なによりラップが超かっこいいとあって大人気に。

そして、リル・キムのニックネームは「クイーンビー(女王蜂)」。男性を超えるとかそんなレベルではなく、男性を従える、まさにヒップホップ界の女王となったのです。なんだか言の葉党にも似た雰囲気がありますよね。

もちろんリル・キム以外にも強いフィーメールラッパー(女性ラッパーのことをこう呼ばれています。もう古い呼び方かも?)はたくさん存在しており、男性中心のヒップホップシーンで、女性が奮闘する歴史というのは確かに存在していました。

そんなヒップホップの歴史がありながら、『ヒプマイ』では男性優位ではなく、女性優位となっているのがまた面白いところ。そりゃあ「Femme Fatale」がこれだけ強い曲になるわけです。

作詞作曲のReolさんは、「強い女感を出した」とオフィシャルコメントでも言及していました。

自身の楽曲でもパワフルさに満ちあふれているので、言の葉党とのマッチが最高です!

個人的ここ好きポイント

長年ヒップホップを聴いてきた僕も「これはTHEフィーメールラップだな」と思った理由が、“らしさ”です。

先程、リル・キムの楽曲を紹介しましたが、フィーメールラップは印象が強い曲が多く、「男には負けねーぜ! 私は私!」という強い意志を感じます。

その“らしさ”が「Femme Fatale」にもしっかりと出ているのです。参考にいくつか楽曲を挙げてみましょう。

言葉では説明しにくいのですが、この雰囲気をわかっていただけたでしょうか? この感じがある言の葉党、かっこいい……!

そして、“らしさ”を出したReolさんはきっと、そうとうにヒップホップが好きなんだろうなぁと思い、高感度がバク上がりました。

②クール! セクシー! キュート! の三拍子!

もうこれっきゃないでしょう。言の葉党のメンバーはそれぞれに特色があり、東方天乙統女ならクールビューティー、勘解由小路無花果ならセクシービューティー、碧棺合歓ならキュートビューティーな感じで、よりどりみどりで美しい。

そして、三者三様でみんながかっこいいんです。リリックでも「三人寄ればたちまち姦しい攻防戦」とありますが、引けず劣らず全員が芸達者で口が立ちます。かつて寂雷先生がドラマトラックで「君らも男ならラップができるんだろう?」(2017年12月6日発売「麻天狼-音韻臨床-」Drama Track1より)と言っていましたが、女性陣もしっかりラップできることを証明してくれました。

何より、演じる声優陣が間違いありません。演技力の幅で定評がある小林ゆうさん(東方天乙統女 役)、リアルにセクシーすぎる声優でもあるたかはし智秋さん(勘解由小路無花果 役)、ラップ好きでTwitterなどでもその姿を披露している山本希望さん(碧棺合歓 役)。

役にもピッタリで、歌唱力も高い。まさに言の葉党は、最強の布陣なのです。

また、先程フィーメールラッパーの話をしましたが、フィーメールラッパーといえばセクシーさが売り。言の葉党は、露骨なセクシー路線ではありませんが(勘解由小路無花果様はあれがそのままのお姿だからこそお美しいと個人的には思っています)、ラップからはどこかセクシーさを感じさせられます。

さらに、個々の実力だけでなく、東方天乙統女を筆頭とした統率力を曲中に見せてくれるのが面白いところ。東方天乙統女の指揮のもと、曲が変調していくため、曲全体を通しても飽きさせない作りになっています。

最初は堂々と我道を行く東方天乙統女。碧棺合歓のバースが終わるとフック(サビ)に入り、曲の2番からは急にBPMがスピードアップ。ラップだけでなくメロディーでも魅せます。

さらに東方天乙統女「決めるターゲット お次はだあれ?」で曲が一気にスロウダウン。まるで作戦会議を綿密に行っているかのようです。

そして、「「お手本」の二人におまかせ」というリリックでテンポアップ。勘解由小路無花果と碧棺合歓が実行部隊かのように言葉を畳み掛けます。

といった感じで、『ヒプマイ』はストーリーを曲に入れ込むのが本当に上手いんです。この曲を聴くだけで言の葉党がどんな組織なのかわかることでしょう。

個人的ここ好きポイント

すばり言うと、声優陣が素晴らしすぎて好きです! 先程も言及しましたが、小林さんは演技の幅も広くて、個人的に好きな出演作も多く、間違いありませんでした。圧倒的な首領(ドン)感がかっこいいんですよね。

たかはしさんは、「今夜はチュパ♡リコ」という曲を昔リリースしていまして、この大胆さとグルーヴをみなさんにも感じてほしかったので、嬉しかったです……!『ヒプマイ』にもこのグルーヴ感はぴったりかも!?

▼刺激が強すぎるたかはしさんの動画

山本さんがラップが好きなのも知っていたので、「『ヒプマイ』で女性キャラが出るなら出演するだろうなぁ」と思っていた矢先の出演! これも「やった!」と思いました。碧棺合歓の高速ラップはびっくりしましたね。

そんな感じで、声優ファン目線でもしっかりと楽しめるのが『ヒプマイ』です。声優ファンに寄り添ってくれていることに感謝!

個人的Reolさん&フィーメールラッパーおすすめ楽曲

『ヒプマイ』の最前線を知るならオフィシャルガイドブック!

以上、楽曲レビューでした。少しでも楽曲の魅力が伝わっていれば幸いです。

「SUMMIT OF DIVISIONS」では「闘いはローカルvs中王」というリリックもありましたし、いよいよ全面戦争的なものがはじまりそうな予感がしていてドキドキしています。

しかし、言の葉党は「Femme Fatale」では相変わらずの余裕を見せています。

一体これからの『ヒプマイ』はどうなるのか……?

そういった期待を最大限楽しむのにも、今回の『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- Official Guide Book』はピッタリです。

まだチェックされていない方は初回限定版があるうちにぜひゲットしてみてくださいね!

これからも一緒に『ヒプマイ』の世界を楽しみましょう!

[文/石橋悠]

◆『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- Official Guide Book』特設サイト

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- Official Guide Book』詳細情報

 

商品解説

<キャラクターのパート>
・6ディビジョン/全18キャラクターのビジュアル・プロフィール紹介
・中王区 言の葉党の紹介
・キャラクター相関図
・サブキャラクター紹介

<物語・世界観のパート>
・作品内用語解説
・作品内年表
・ディスコグラフィー
・ドラマトラックあらすじ
・楽曲制作スタッフ一覧
・美術設定紹介
・コミックスあらすじ

<メディアミックス紹介パート>
・ゲーム『ヒプノシスマイク-Alternative Rap Battle-』紹介
・アニメ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima紹介
・2.5次元舞台『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage 紹介
・コミカライズ作家による書下ろしイラスト掲載

※CD収録内容
・Division All Stars新曲(イケブクロ/ヨコハマ/シブヤ/シンジュク/オオサカ/ナゴヤ・ディビジョン)
・中王区 言の葉党(東方天乙統女/勘解由小路無花果/碧棺合歓)新曲
・中王区 言の葉党ドラマトラック

◆『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』公式サイト
◆『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』公式Twitter

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1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。

この記事をかいた人

石橋悠
1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。

担当記事

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