アニメ
ロリガBD-BOX発売記念|出合小都美×むとうやすゆき対談(後編)

『ローリング☆ガールズ』Blu-ray BOX ~5周年記念特装版~発売記念座談会|出合小都美(監督)×むとうやすゆき(脚本) 後編【第4弾】 望未たち4人が巡った国々について、じっくり振り返る

東京編(#3 ~#4) 非日常が常態化しているのが『ロリガ』!でもコミケを365日やるのは無理かも!?

――東京はオタクの世界観で、東京ってそういうイメージなんだなと思いました。

出合:地方の人が東京に来るイメージって、東京にしかない文化があるからだと思うんです。地方にないわけではないけど、東京って“お祭り”が数多くあるじゃないですか。たとえばアイドルやアニメのイベントのような。その中心地みたいなイメージがあるから東京がオタクシティになるのは、ちょっと面白いなと思いました。

むとう:その土地から離れている人から見た、少し偏ったイメージでやろうというのが最初からあったんです。大阪ならたこ焼きとお笑いとか、鳥取はもう全部砂丘とか。そういう無責任な「お前んとこってこうなんだろう?」っていう感じでいきつつ、アニメを観る人に寄せて考えると、東京はコミケなのかなって(※東京ではオールウェイズ・コミマが年中無休で開かれている)。当時はまだコミケに行ったことがなくて、出合さんと一緒に年末の冬コミにロケハンに行ったんです。短い時間でしたけど、そこで感じたものは画面に活かされているというか。

出合:熱量?

むとう:そうそう、みんなのスピリットみたいな。その後自分もサークル参加する身になってみると、その熱量をまた違った角度から感じることができたんです。あのとき「親が泣いてるぞ」っていうフレーズにみんな笑ってはくれたけど、親世代も参加しているし、というか自分もそうだし(笑)。それと、これを通年でやる(※作中設定の「オールウェイズ・コミマ」)というのは無理だなと思いました(笑)。

出合:あははは(笑)。

むとう:だから、スピンオフ小説では、後付けで「通年とはいっても実は一定期間で参加サークルは入れ替わっている」ということにしたんですよ。そのくらいコミケは熱いものだし、みんながその日のために半年間日常を頑張って集まる、大切な非日常の空間なんですよね。

――対談の前編で話していましたけど、設定をぼかしておいて良かったことのひとつですね(笑)。

むとう:そうですね(笑)。『ロリガ』は非日常が常態化しているという世界だからそれでもいいのかなとは思ったけど、リアルで体験すると365日は到底無理だなと(笑)。

――その他の見どころというと?

出合:東京編は、音楽もシーンによって曲調を変えていて、基本電子音ベースな感じなんですけど、東京の自警団が鎧っぽいものを着ているので、そこは西洋のクラシック風の荘厳な音楽だったりするんです。だから、そういうところも注目していただけたらうれしいです。

むとう:望未たちが転がり込む鈴本家のお茶の間シーンが楽しかったです。

出合:地獄のミサワさんにもご参加していただいたところですね。

むとう:結季奈が描いた肖像画もあって。

出合:あれを描いたのはご本人ではなく、アニメのスタッフなんですけど、“地獄のミサワ絵”を使ってもいいですかと、ミサワさんがいらっしゃる出版社の方にご挨拶にいったことを憶えています。

むとう:あれって、出合さんが直接行ってくれてたんですか。それは申し訳ないです(笑)。まさか監督が直々にいってくれていたなんて……。

出合:すごく良い方で、「全然大丈夫です」と快く承諾していただきました。こんなわけのわからんアニメに……ありがたい(笑)。

むとう:うんうん。あらためて、地獄のミサワ先生ありがとうございました。

愛知・三重編(#5 ~#6) モブだけど主人公。目立たせすぎてはいけないというバランス

――ここでは、旧愛知の愛知てんむす(自衛団)と旧三重の三重モーターズ(自衛団)との争いが描かれましたが、三重の副団長の阿漕がしゃべっている声がエンジン音でかき消されるというのが、バカバカしくて面白かったです(笑)。

むとう:あれは何であんなことになったんでしたかね。

出合:ノリですよね(笑)。

むとう:阿漕役の浜添伸也さんは番組のレギュラーとして来ていただいていて、名バイプレイヤーの卵みたいな感じで、毎回味のある演技をしてくれていたんですよ。

阿漕に関しては、声がSEでかき消されてしまうということでちょっと申し訳ない部分もあったのですが、かき消されちゃうから適当なことを言っといてみたいなディレクションだった割には、けっこう聴きとれてしまうんですよね(笑)。

――そしてダンディの声が大塚明夫さんというのも、まんますぎて面白かったです。

出合:やっていただけて本当に良かったです。すごくカッコよかった。

むとう:スタジオに入るなり「今日はダンディにやればいいの?」と聞かれて、「はい、そうです」で打ち合わせは終わり、という感じでした(笑)。名古屋のダンディ店長と岡山の藤原春(CV.田中敦子)だけは、キャスティングのリクエストをさせていただいたんです。ふだんは控えるんですけど、tanuさんの最初のラフ画がバッチリ過ぎて、声がきこえてしまったんですよね。

――ダンディと渡り合っていたのが三重のモサである鈴鹿友亀でしたが、彼を演じた細谷佳正さんのお芝居も熱くて良かったです。

むとう:テストから全力で驚きました。

出合:すごかったですよね。絶叫するところは、こちらが喉の心配をするくらい全力でやってくれていて。クライマックスで、望未が「行けーーーーっ」って叫ぶんですけど、そのあとに鈴鹿も「うおおおお」って叫ぶんですね。細谷さんがあまりに力の入ったお芝居だったので、望未がちょっと負けているんじゃないの?と思ってしまったんです。

そのときに、もう一発、望未に強い叫びをお願いしますか?と提案したら、(音響監督の)はたしょう二さんに「望未は応援する側のモブだから、このバランスでいいんだよ」と言われて、納得したんです。

むとう:フィルムになったらバランスが良かったし、モブとして応援するという意味では、望未もすごく起っていましたからね。

出合:だから「なるほど」と。私は主人公だからもうちょっとと思っちゃったんですけど、そういう作品じゃなかったんだと、あらためて思いました。

むとう:本読み(脚本会議)の段階からそういう感じでしたよね。望未たちの行動について、いろいろアイディアが出て盛り上がるんだけど、「違うよ、こいつらはモブだから、これをやったらダメだよ」ってなる。それを何度繰り返したか分からないというか。

その世界ではモブだけど作品においては主人公だから、ついヒロイックなことをさせたくなるんです。今の出合さんのお芝居の話は、そういう部分のひとつなのかなって。

出合:やっていくうちに望未たちへの思い入れが強くなって来てしまって、目立たせたいと思ってしまうんですよね。でも、この作品はそうではないんです。

むとう:モブの物語だし、いろいろとファンタジーという意味では、6話のそのくだりで望未がバイクから落ちるときにヘルメットが脱げる演出にちょっと戸惑いました。バイクに乗る身からすると、あご紐って締めたら絶対に取れないし、望未はちゃんと締めているから脱げないと思っていたので。でも、ファンタジーという前提で見ると効果的ではあって。脚本で指定してたサイドカーに乗っている匠座のアウト側に体重をかけたバランスどりなどをばっちり表現してもらっていたぶん、バイクアニメ的に観ている人からしたら、どっち寄りなのか迷わせてしまったところはあるかも。

――バイクが3DCGだったそうですね。

出合:実は1話からCGはちょこちょこ入れているんです。でも本格的にバイクをCGで描いてもらったのが愛知・三重編でした。別作品でご一緒した、オレンジの越田祐史さんが、すごく才能のある方だったのでお願いしたんです。むとうさん的にバイクの表現はどうでしたか?

むとう:6話は全体的にすごいなと思って観ていました。的外れだったらあれですけど、レースが始まってすぐのクランク状のコースを走り抜けていくカットで、ちょっと画を間引いているような感じがして、ヌルヌルしていない感じが作画っぽくて良いなと思ったんです。

出合:中抜きっぽいということですかね? 6話は演出をしてくれた若野哲也さんもバイクを乗る方だったので、結構細かくこだわって作ってくれていたんですよ。

むとう:CGだけど作画っぽい感じもあるのがいいなと思いました。それと、よくある「さぁ始まりました!」みたいなアナウンス実況を入れないでレースを始めたのも、画の展開に集中できて良かったなと思います。

5・6話の名古屋編は、「才能があるけれど機能不全状態に陥っている人のために、モブが人知れず頑張る」という、『ロリガ』という作品のコンセプトを一番よく表しているエピソードで、キャラクターコメンタリーでも脚本を自画自賛しているんです(笑)。それをああいう熱いフィルムとして定着させてもらえたことが、本当にうれしかったです。

出合:挿入歌の「TRAIN-TRAIN」もすごく効いていましたよね。あの曲のテンション感とフィルムのテンション感がうまく混ざりあって、あの熱量になったのかなと。企画の初期段階で、バイクとケッタ(自転車)が競り合って、ケッタが勝つみたいな、ちょっと馬鹿みたいな胸熱展開に「TRAIN-TRAIN」が流れたら良いよねみたいな構想があって、それが完成形のフィルムにまでなったのは奇跡的なことだったんじゃないかなと、個人的には思っています。

 

(C)2015 The Rolling Girls 製作委員会
おすすめタグ
あわせて読みたい

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング