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春アニメ『ゴジラS.P』高橋敦史監督インタビュー【前編】

春アニメ『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』の制作秘話を高橋敦史監督に聞く!難解な世界観は科学的根拠に基づいて説明【インタビュー前編】

『ゴジラ』シリーズ初のTVアニメ化&SF作家の円城 塔さん脚本による濃密なSFミステリー、ボンズとオレンジの2大スタジオの強力タッグ、3DCGによるゴジラと怪獣たちのリアルな描写、キャラクターデザイン原案を『青の祓魔師』などでおなじみのマンガ家、加藤和恵さんが務めるなど、放送が開始されると話題になったアニメ『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』もいよいよ最終回の放送を残すのみとなりました。

『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』の最終話の放送に向けて、作品を手掛けた高橋敦史監督へのインタビューを前後編に分けてお送りします。

前編の今回は、『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』を制作することになった経緯と、アニメ化で意識されたポイント、キャスティングについてなど、最終回の見どころをおうかがいしました!

監督オファー後、『ゴジラ』シリーズの変遷を知る。好きなのは初代『ゴジラ』と『シン・ゴジラ』  

――『ゴジラ』シリーズやゴジラに対してどんなイメージがありますか? また好きな『ゴジラ』作品をお聞かせください。

高橋敦史監督(以下、高橋):今回お話をいただくまで作品を語れるほど詳しくなかったので、シリーズをひと通り見て、理解した感じなので、にわかといえばにわかなんですけど(笑)。見て一番おもしろいなと思ったのは初代の『ゴジラ』と『シン・ゴジラ』ですね。

――『ゴジラ』シリーズにはシリアスなものからコミカル、ヒーロー系など様々な作品がありますが、監督はシリアス系がお好きなのでしょうか?

高橋:シリアスだからというより、純粋に映画としておもしろいなと。ゴジラの変遷も、最初は人類の脅威だったゴジラが途中から子供たちの味方になったり、立ち位置そのものが変わっていく中で、また悪者に戻ったり。そんなふうに行ったり来たりしながらも、前作と地続きになっているお話もあれば、まったく違って新たに始まったりして。進化しながらここまで続いてきたんだなと思いました。

――『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』を制作することになった経緯をお聞かせください。

高橋:ボンズさんからお話を聞いていただけませんか?」とご連絡をいただき、行ってみたら東宝さんもいらっしゃって、「『ゴジラ』をやりませんか?」と。ボンズさんとはTVシリーズで演出や絵コンテをやったことがあるくらいでそれほど交流がなかったのに不思議に思いながらも、『ゴジラ』シリーズについて詳しくなかったので、後でお返事させてくださいと一旦保留させていただきました。でも作品数が膨大だったため、結構時間がかかってしまい、ちょっとお待たせする形にはなってしまいました。

――長きに渡る人気シリーズであり、今回はアニメでの表現ということでプレッシャーはなかったのでしょうか?

高橋:長く続いている作品ということよりも、『シン・ゴジラ』がかなりおもしろかったし、評価が高く、ヒットもしているので、その流れを繋いでいきたいというオファーだったので、そのプレッシャーのほうが大きかったです。

――『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』のストーリーや世界観はどのように構築されていったのでしょうか?

高橋:『シン・ゴジラ』が政治や国としてどう立ち回るかをかなり詰めて描いていて、到達点も高かったので、違った切り口で、今までやっていないことをやろうと。作品の設定が科学的にあり得るのかを議論する空想科学研究みたいなものが流行って、ゴジラのあの体重を支えられる骨は存在しえない、みたいな説もあったりしたので、ちゃんと科学的根拠で説明するラインを作った上で制作してみましょうということになりました。

――『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』を制作するにあたって意識されたことは?

高橋:まず3DCGを使うことが前提にあって。怪獣や、車などメカ的なものは3DCGという条件が最初にあったし、例えば怪獣を描く際に使えるカット数も決まっていたので、そこをどう調整していくか、難しかったです。

――視聴者層はどのあたりをターゲットにされていたのでしょうか?

高橋:『シン・ゴジラ』で高校生など若い方たちが見るようになったので、そこから繋げたいというオーダーもありました。コアな層が強い作品は新しい人が入りにくかったり、特定のファンに向けてのマニアックな作りになり過ぎると、よりハードルが高くなってしまう。でも新規ファンに向けて作ると昔からのファンが離れてしまうし。そのバランスが難しいなと思いました。

――特撮ファンだけではなく、アニメファンにも?

高橋:アニメはどうやってもアニメになるので。それよりも特撮ファンの人たちがアニメになった時、果たして見てくれるのだろうか? という不安はありました。

構成&脚本、キャラクター原案、音楽担当を決めたポイントとリクエストとは?

――この作品はスタッフ組みが大きなポイントになっていると思いますが、どのように決められたのでしょうか?

高橋:最初にお願いしたのは構成と脚本を担当していただいている円城さんです。以前、円城さんが『スペース☆ダンディ』で脚本を書かれた時、僕が絵コンテをさせていただいたことがあって、その回の脚本がとてもおもしろくて。この作品も円城さんに頼んだら何とかなるんじゃないかと思ってお願いしたら「そのオーダーではどうにもなりません」と(笑)。いまどきのSFとして作りたいんですとお話しして、引き受けていただきました。

音楽や怪獣デザインに関しては、何十年も続いているシリーズなので、まったく新しいものというよりも延長線上の見慣れたデザイン、聞き慣れた音楽で、怪獣の鳴き声も昔のものを再現したいというオーダーをさせていただきました。まず『ゴジラ』シリーズで有名なテーマ曲3曲が使えるのでそれを使いましょうと。とはいえ、他の場面で流れる曲と全然違ってもいけないし、負けてもいけないという話を沢田 完さんとしました。

キャラクターデザイン原案の加藤和恵さんは、僕が劇場版で監督をさせていただいた『青の祓魔師』の原作者で、以前から「キャラクターデザインする機会があったらお願いします」とお話ししていました。今回は『ゴジラ』シリーズというより加藤さんらしさでお願いしました。お願いした時には脚本も最後まで完成していない状態で、後半に登場するキャラクターは立ち位置と設定だけしかなかったので、円城さんからもどんなキャラクターなのか説明して描いていただきました。普段描いているマンガとは違うのでそこは大変だったんじゃないかなと思います。

――ボンズとオレンジという2つのスタジオによる制作体制はオファーを受けた段階から決まっていたのでしょうか?

高橋:そうですね。怪獣やメカまわりはオレンジさんで、キャラクターや背景はボンズさんと。オレンジさんとは今回初めて一緒にお仕事させていただいて、ボンズさんも演出で関わったのは1本だけだったので、それほどがっつりとやった経験はなくて。だから世の中の人たちが抱いているイメージしかありませんでした。ただ僕がマッドハウスにいた時に一緒に仕事をしていた人がオレンジにいたので、まあ何とかなるかなと(笑)。

特殊な制作体制ではあるので、最初の頃は「組線(組み合わせ線)は誰が引くのか」みたいな話をしていたような気がします。あと今回の作品は半分以上が3Dで、しかも先行する形で。よくあるのは原画マンがレイアウトして、そこに3Dを置いてもらうんですけど、今回は3D発信でレイアウトまで作って、そこにキャラを置く珍しい形だったので、どうシステムを組んでいくのか、試行錯誤しながら進めていきました。

 

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