冬アニメ『東京24区』下倉バイオ(ストーリー構成・脚本)インタビュー|シュウタ・ラン・コウキが自分たちの望みにどのようにアプローチしていくかという点に注目【連載 第11回】
津田尚克×下倉バイオ(ニトロプラス)×CloverWorksが贈る新作オリジナルアニメ『東京24区』が、TOKYO MXほかにて好評放送中です。
東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」――通称“24区”を舞台に、蒼生シュウタ、朱城ラン、翠堂コウキ、まとめて“RGB”と呼ばれる3人を中心とした物語が描かれる本作。死んだはずのアスミからの電話や3人が見た映像、超人的な能力、突きつけられる“未来の選択”とは一体……? 物語も終盤となり、ピースがどんどん埋まってきました。シュウタもKANAEシステムの真実を知ったことで、どのような決断をするのか楽しみなところです。
そんな注目の『東京24区』について、アニメイトタイムズでは毎週スタッフやキャストにインタビューを実施。第11回は、本作でストーリー構成・脚本を務めている下倉バイオさん(ニトロプラス)のメールインタビューをお届けします。
KANAEシステムでアスミをどのように扱うか、かなり議論しました
――ここまでの放送をご覧になった感想をお聞かせください。
下倉バイオさん(以下、下倉):アニメ初挑戦で自分の脚本が映像化されたのを見たのは初めてなのですが、想像を軽々と超える映像にしてもらっていて、津田監督・スタッフの皆さんに感謝です。いつも脚本に「すごいグラフィティ」なんて文字で書いていたのを反省しています(笑)。
――放送前インタビューで「ループものへのカウンター」との話がありましたように、第3話は衝撃的な結末となりました。このトロッコ問題や結末はどのような考えや思いを込めて書かれたのでしょうか?
下倉:トロッコ問題は、毎回どのようなものを設定するかに頭を悩ませました。全体の流れの中でどう機能するべきかというのを考えつつも、一方でキャラクターの感情のドラマを追求しなければという意識も強くあり、かなり条件の厳しい中、監督やスタッフの皆さんと協議しながらなんとか作り上げていった感じです。
――クナイのエピソードも考えさせられるものでした。こちらも制作秘話などありましたらお聞かせください。
下倉:ニューヨークを舞台にしたグラフィティ関係の資料に当たったとき、スラム街で生まれ育つと、犯罪者になるかアーティストになるしかない、といった言い回しが強く印象に残りました。それをランとクナイの対比で表現したいなあと考えました。
――キャラクターでは、RGBの3人は視点や立場の違いを意識したとのことでしたが、物語が核心に迫りどのような役割を担わせようと考えたのでしょうか?
下倉:今回はスタッフで色々なアイディアを持ち寄って細部が定まっていったこともあり、当初の予定よりもだいぶ現実のトピックに問題意識が寄っていった印象です。テクノロジーの進化に伴い人々が分断されていく中、視聴者視点でシュウタがなにを考えるのかが、軸になっていくと良いと思っています。
――アスミについては放送前インタビューでは詳しく聞くことができませんでしたので、改めてアスミの誕生についてや練り込んでいった経緯をお聞かせください。
下倉:アスミについては、シナリオ展開と同じく、スタッフ内でもポッカリと開いた穴で、後半までなかなか掴み所がないキャラだったという印象があります。後半になって、彼女の苦しみが肉付けされていって、初めてひとりの女性として姿が浮かび上がってきた気がします。
――SF作品では装置の核として人間の脳だけを使うケースも出てきますが、アスミは人の姿そのままでした。そこはどのような意図があったのでしょうか?
下倉:これはかなり監督と議論を行ったところです。人間らしさをどこまで残せば感情的に同情が湧くかとか、逆に死者であることに納得感があるかなど……コウキや父の決断に乗れるかどうかという点で大変重要なので、あの落とし所には自分も納得しています。