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劇場版『G-レコ』第4部&第5部公開記念! 富野由悠季総監督インタビュー

劇場版『Gのレコンギスタ』第4部&第5部公開記念! 富野由悠季総監督インタビュー|「いつまでも『ガンダム』なんか見ているんじゃない」 『G-レコ』を通して未来の子供たちに伝えたい事とは

2019年の第1部「行け!コア・ファイター」から展開を続けて来た劇場版『Gのレコンギスタ』シリーズが、2022年7月22日(金)公開の第4部「激闘に叫ぶ愛」、そして8月5日(金)公開の第5部「死線を越えて」で遂に完結を迎えます。

本作は日本のロボットアニメの金字塔である『機動戦士ガンダム』の生みの親・富野由悠季氏が総監督・脚本を手掛けており、2014年に放送されたTVシリーズを劇場版全5部作として新規カットを加え再編集した作品です。

アニメイトタイムズでは、今回の第4部&第5部の連続公開に際し、総監督を務める富野氏にインタビューを行いました。

しかし、日本のアニメ業界を黎明期から知る人物だけに、筆者は終始圧倒されるばかりでした。

何を隠そう、筆者も幼少期から『ガンダム』を見続けてきたファンのひとりです。「富野監督に取材できる……!」その気持ちだけで臨んだインタビューではありましたが、取材では厳しい言葉の数々に思わず言葉が詰まってしまうほどでした。

ですが、取材後に富野監督をよくよく思い出してみると、インタビュー中に受けた言葉の数々には、『G-レコ』を通して今を生きる若い世代や、未来の子供たちに伝えたいメッセージが隠れていると感じました。

それは筆者だけでなく、読者のみなさんにとっても読んでいるだけで身につまされる部分や、衝撃を受けるであろう部分があると思います。これを読んでくださっているあなたがインタビュアーになったような気持ちで本稿をご覧ください。


 

富野監督が考える時代と共に移り変わったアニメ業界の様相

――虫プロダクションで国産初の連続TVアニメ『鉄腕アトム』に関わられていました。長い間アニメの仕事に携わってきて、良かったことは何でしょうか。

富野由悠季監督(以下、富野):昨年(2021年)80歳になりましたが、この歳まで生活できたのはアニメのおかげだと実感しています。当時は職業として認められていなかったので、虫プロを出てフリーになり青色申告に行くと、税務署から「なんの仕事?」と確認されました。つまりアニメの仕事は職業だと思われておらず、遊び人だと思われていたのです。それでも犯罪者にならず生活を続けられたので、感謝はしています。

社会的な認知度が無くとも続けられたのは、アニメという表現に何らかの力があったのだと思います。これしかできない事を仕事としてやってきて、日銭だけは稼がせてもらえる。そうなったらしがみつくしかありません。その感覚があったから今日までやれたのだし、特に取り柄がなかった人間でも『ガンダム』を作るくらいのことはできた。そういう体験はアニメがなければできなかった事です。

アニメがどれだけの人を救ったのかという一面もあります。僕だけではなく、もう何人ものスタッフがアニメで生計を立てています。この業界にいるような人は、アニメの仕事にしか就職できない人間の集まりです。そんな人間が、自分の仕事について話しているだけでお金が貰えるようになれる。そういう未来が20年とか30年後にあるとなれば、しがみつくでしょう。

  
アニメーターの視点で言えば、「アニメの絵しか描けないけれど、それだけで生活できるのか?」というところから、好きな絵を描いているだけで生活できるようになった。普通の職業では通用しない大人が、これだけでお金を稼げる事実は馬鹿にできません。

当時は現代ほど精密な作画が要求されなかったので、30分のTVアニメの原画をひとりで描くようなスタッフが2~3人はいました。そういう優秀な人は1ヶ月で当時のサラリーマンの何倍もの月収を稼いでしまう。僕なんかにしてみれば高嶺の花だったけれど、フェアレディを乗り回す奴も出てきた。そうやって職業として認められてきたのです。

僕たちはそういったプロセスを経験しましたから、今の時代は当時より競争者が多く、大変ではないかとも思うんです。だから、これからアニメの仕事を目指そうという方には、今の世の中を生きる人の暮らしや、その裏側にあるものを想像することをして欲しいですね。

――そこからフリーでお仕事をされ、72年の『海のトリトン』で初監督を務められます。アニメ監督となってからの50年は、富野監督にとってどんな時間でしょうか?

富野:小説家や映画監督と言われる人にとって、自分の処女作は宝です。たとえ死んでも忘れることはありません。制作時の良いことも悪いことも全てを覚えています。

TVシリーズだったので、制作にあたって様々な条件が付けられました。手塚治虫先生の原作あっての作品ではありましたが、それをすべてチャラにして作り直すことをやりました。6人はいたシナリオライターも、僕との方針の違いから最終的には1人を残していなくなりました。

チャラにしたとは言え、手塚先生の原作を全て無視することはできませんでしたし、作品に関わるいくつかの組織の意見を取り入れながら制作を進めなければなりません。しかも虫プロではなく新興のプロダクションでやるのだから、オンエアのためには制作スタッフも集めなければならなかったのです。

  
そうやってタスクをこなしていくと雁字搦めになってしまうので、僕の意思を働かせる暇などありません。けれど「原作があろうがなかろうがこの方向で行く。誰にも文句は言わせない」という作り方をしたので、僕に作家の才能があろうがあるまいが、嫌でも富野カラーが出てしまいました。

時には、シナリオのままアニメとして成立させようとコンテの段階で整理するのだけれど、今度はそこで各アニメーターの腕の差が出てくるので、作業配分も決めていきます。そうして必死に仕事を進めていたものの、1クールもしない内に視聴率の低さから打ち切りが決まりました。

あと12本しかない中で、物語を完結に導くとなった時に、自分の下手な部分や無能な部分もモロに出てしまいました。シナリオライターと大喧嘩するほど悪い制作環境だったからといって、アニメ『海のトリトン』をなかったことにはできません。

あまりこの話はしたくないんだけれど、僕程度の人間でも全力投球して臨んだ作品なのだから、自分の色も出ているし、出発点だと思っています。だから今に至るまでこの経験は影響していますよ。


 

(C)創通・サンライズ
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