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『映画ざんねんないきもの事典』公開記念、監督鼎談を実施!

『映画ざんねんないきもの事典』公開記念、監督鼎談を実施! ウチヤマユウジ氏&イワタナオミ氏&由水桂氏が作品への思いを語る

シリーズ累計480万部突破の大ヒットを記録し、その勢いがとどまることのない人気児童書シリーズ『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)をアニメーション映画化! 7月8日(金)より全国ロードショー中です。

公開を記念して本作の監督3名による、公式鼎談が公開されました! 参加しているのは、南極編「ペンたび」のウチヤマユウジ監督、オーストラリア編「リロイのホームツリー」のイワタナオミ監督、日本編「はちあわせの森」由水桂監督。作品に込めた思いなどを語ってくれています。

「ざんねんないきもの事典」とは

いきものに少しでも興味と愛情をもっていただけるよう、あえて「ざんねん」という言葉を使って、これまでの本ではあまり語られてこなかったいきものの“意外な一面”を紹介している大人気児童書シリーズ。

『映画ざんねんないきもの事典』では、世界中の様々ないきものについてリサーチし、豊かな自然の存在とともに「ざんねんないきもの」たちが多数生息する南極・オーストラリア・日本(長野県安曇野)の3カ所を舞台に、オリジナルストーリーでお届けします。

『映画ざんねんないきもの事典』監督鼎談

──『映画ざんねんないきもの事典』ではオーストラリア、南極、日本を舞台にしていますが、監督の皆さんはそれをどのように選ばれたのでしょうか?

イワタナオミさん(以下、イワタ):最初にプロデューサーの高山さんから相談を頂いて大まかな案を出し、その後で改めて「この3ヵ所でしたらどこがいいですか?」とお話をいただきました。僕はもともとオーストラリアに魅力を感じていたので、それをお伝えしたところ、スムーズに希望が通った形です。

ウチヤマユウジさん(以下、ウチヤマ):僕もこの3ヵ所に決まったときにお話をいただきまして、南極でペンギンが何かをするという映像が頭に浮かんだので、それをお話したところ南極編を担当させていただくことになりました。

由水 桂さん(以下、由水):僕はお2人の残りを拾いました(笑)。というのは冗談で、僕も当初から希望した通りに日本編を担当させてもらいました。

──皆さんテーマとストーリーについては、それぞれどのように考えて作っていきましたか?

イワタ:『リロイのホームツリー』はテーマを決めて作っていきました。周りの子どもたちを見ていると、「そんなに無理をしなくていいんじゃない?」と思うことがあったんです。そこで何か“子供が逃げられないような状況”というものは作ってはならない、というところから、「生き延びるって、カッコイイんだぜ」というテーマを据えました。

調べていくなかで、コアラの子どもは独立して新たなホームツリーを探しに行く習性を知りまして、それが冒険の理由になると考えました。プラス、進化もテーマの一つとしていたので、恐竜の化石とそれに絡めたファンタジーの要素を盛り込んで、脚本の加藤(陽一)さんにお願いしました。個人的に王道の物語が好きなものでして、その点でいうと加藤さんは『妖怪ウォッチ』などでそうした作品を数多く手掛けていらっしゃるので、何の心配もなくお任せできました。

ウチヤマ:『ペンたび』の場合はもう、とりあえず笑ってもらいたいというところから始まっています。むしろテーマは作らずに1つ1つの小さいネタが積み重なって、ペンギンの生態や子育ての大変さが垣間見えればいいかなと思っていました。当初はわりとファンタジーだったのですが、専門家の方から南極のお話を伺う中で軌道修正していって、現在の形になりました。

由水:『はちあわせの森』は、メインとなるお客さんは、やはり小学生とその保護者になるだろうと想像し、家族で観たときの納得感を考えました。このお話ではウサギの親子と熊の親子が登場します。

その親子の関係を軸にして、それぞれの家族観や成長に対するアプローチの違いを描いていきました。監修の今泉(忠明)先生やロケ先で会った動物に詳しいガイドの方などからお話を伺う中で、脚本家の細川(徹)さんからもアイディアが出てきて、そこから私が絵コンテにする段階でさらにストーリーに仕立てていきました。

──オープニングやナビゲーションのモグラの親子のシーンはイワタさんのデザインをもとに由水さんが演出されていますが、どんな映像にしていこうと思いましたか?

由水:最初にキャラクターをいただいたときにオシャレさや洗練されている印象を感じたので、それを活かせる演出をしていこうと思いました。そこでちょっとレトロな劇場が森のどこかにあって、いきものたちはそこにおめかしして観に来たという形にしていきました。

──キャラクターについて教えて下さい。性格やデザインはそれぞれどのように考えて作られましたか?

イワタ:コアラのリロイについては、物語の最初の甘えん坊なところと、冒険を経る中で男らしくなっていくようすの違いを意識しました。ルックについては、僕の普段の絵を3Dに起こしたような感じです。クレイアニメのように見せたかったので、テクスチャで粘土のような温かみを見せています。美術の白佐木(和馬)さんが見事に雰囲気を表現してくれてキャラクターと馴染みやすい画面を作ってくれました。

ウチヤマ:メインのペンギン4体についてはそれぞれ性格の違いを出していきました。アデリーは何かやらかしそうな感じ。ジェンツーはそれを周りから見ている性格。ヒゲは後輩キャラクターで、ママさんは結構グイグイみんなを引っ張っていく。

それぞれクラスにいる誰かに当てはまりそうなキャラクターで、みんな仲良くしている雰囲気を出していきました。あと、おじいちゃんは昔から自分の得意なキャラクターで、これを出せば絶対に盛り上がります(笑)。物語の中盤で笑いの熱を高めるときと、オチに活用していきました。

由水:ウサオの性格は年齢感から考えていきました。細川さんと相談したときに「人間でいえば中学1〜2年ぐらい」という話になって、それが面白かったです。小学校のときには意識していなかった“先輩”の存在を認識する頃で、大人から見ればどちらも大差ない様に見えるけれども、当事者からすると1年の違いが大きな違いです。実際の動物の世界でもそうで、1年のあいだ野に放たれて生き延びた動物はすごく大人になっています。

その間には酷い目にも遭っていて、傷が入っていたり耳もかじられたりしている。それゆえ、ウサギ崎先輩はビビリなんです。逆に、ビビリだからこそ生き延びることができたとも言えます。そういうかたちで、ウサオも四季を通じてたくましく成長していきます。フォルムについては、動物のリアルな骨格を再現しています。人間のような演技をするところはあるけれども、遠目には動物そのものに見えるよう、逆算してデザインしていきました。

キャラクター原案の祖敷(大輔)さんが、毛のフワフワした感じをブラシのタッチで入れてくれたので、CGも上手く美術に乗るように同じようなエフェクトを加えています。

──声の演出についてはいかがでしたか?

由水:『はちあわせの森』は、家族のお話ですので、それぞれの親子関係の距離感の違いを上手く声で表現していただけたと思います。とくに熊のお母さんからの月子に対する態度は、最初はつっけんどんだけれども最後の最後で優しくしてくれて、そこが役者さんに非常に助けられました。

あとは月子のうんこですね(笑)。自由に演じてくださいとお伝えしところ、訛りを入れてくれたんです。僕自身、うんこのキャラクター性をあまり深く考えていなかったのですが、たしかに訛りを入れることでひとつキャラクター性が足されるのだなと勉強になりました。

──うんこ、侮りがたしですね(笑)。『ペンたび』の声は全員ウチヤマさんご自身の声を加工したものですが、これはアニメ作りよりも先に声を収録した形でしょうか?

ウチヤマ:はい。脚本作りの段階からセリフを声に出して書いていきます。ネタを考えるようにさまざまな言葉を選んでいくので、傍から見たら変な人に見えるかもしれません(笑)。そのときに会話のタイミングやリズム感もほとんど決めていきます。

今回、アニメーションを作ってくれた「スタジオななほし」の佐藤(こーだい)さんは僕と同年代で、見てきた芸人も同じなので、僕の思った通りの形でアニメーション演出を入れてくれて、完成までとてもスムーズに進めることができました。

──イワタさんはいかがでしょう?

イワタ:皆さん素晴らしかったのですが、特に最後のシーンを歌で盛り上げてくれた、ざんねんトリオが良かったですね。あの場面はギリギリのところで演出を変えて、音楽のホコヤマワタルさんが曲を作って3人への歌唱指導までしてくれました。そうしたら、どんどん3人の歌声が伸びていって良くなるんです。ハモリも綺麗で良い感じに締めくくることができました。

──1本のオムニバス映画として他の方の作品とまとまったものをご覧になってどんな感想をお持ちになりましたか?

由水:僕が子どもの頃は「まんがまつり」みたいな形で、今よりも多くのオムニバス映画が公開されていましたが、最近は少なくなりました。。その意味で、これだけ個性の違う監督同士がまったく異なるタイプの映像作品を作ってそれを1本の映画としてご覧いただくことはとても面白いチャレンジだなと思いました。

イワタ:同じような傾向だったら比べられてしまいますから、それぞれが違っていいんですよ。僕の場合はやっぱり直球なんすよね。そのあと継投するウチヤマさんがスローカーブで飄々と打ち取っていって、最後クローザーの由水さんは高速スライダーでビシッと締めくくる。順番的にもとても良かったです。最後に里山の風景で締めくくるのも感動的でしたし。

由水:イワタさんの作品はやっぱり、全体の完成度が非常に高いなと思いました。お話はもちろんですが、音楽も含めてとっても安心して見ていられる感じがあって、それでいて無駄のないつくり。本当にトップバッターに相応しい作品だなと思いました。

ウチヤマ:僕は、お二方の作品を見たときに「やっちまったな……」と思いました(笑)。1本目のイワタさんの『リロイのホームツリー』がとてもしっかりしたストーリーで、小さい子どもたちにもきちんと響く作品でしたので、最初の時点でそう思いました。

イワタ:いやいや、僕も「厚生年金」のネタでは笑いましたから(笑)。他の方の作品はテーマと題材しか知らなくてはじめて1本にまとまっての試写だから、こちらもちょっと空気が固かったのですが、あそこは吹き出してしまいました。ちょっと悔しかったです(笑)。

ウチヤマ:ありがとうございます(笑)。由水さんは僕が学生の頃からテレビ番組や雑誌に登場されていて、3DCGを始めたきっかけとなった憧れの存在でしたので、1本の映画の中でご一緒できることが光栄でした。今回の『はちあわせの森』もまた新たなタッチの作品で、ただ圧倒されました。

由水:僕も『ペンたび』の最初の1カット目を観たときに「やられた! そういう入り方もあるのか」と思いましたよ(笑)。自分の作品ではやっぱりハートウォーミング担当なんだろうと思ってつき進んでいったし、イワタさんも王道な感じで徐々に映画の幕開けをしていく形なのに、ウチヤマさんはファーストカットからいきなりのパンチ力で、その作り方に感心しました。

──観客の皆さんにご自身の作品のどんなところに注目をしてご覧いただきたいと思いますか?

イワタ:『リロイのホームツリー』は、主人公であるコアラの少年リロイが、仲間達と旅をする冒険物語ですので、やはりリロイの成長ですよね。彼が新しいところに向かっていく姿を見て、自分の未来にはどんなことが待っているんだろうと思いを馳せながら見ていただけるとありがたいです。

ウチヤマ:『ペンたび』は、ペンギンたちがコウテイペンギンのお母さんを元の場所に戻すお話なのですが、基本的にユルく作っているので、笑って楽しんで観ていただけると嬉しいです。

由水:『はちあわせの森』は、「行きて帰りし物語」です。ウサギたちは自分の住処から最果ての地として人間界と接します。これから夏休みですので、里山などに出かけた際には、ぜひとも人間の方からそこにいるいろいろな動物と触れ合って自然を感じていただきたいですね。帰るころには「人間と動物がお互いにこんなに近い距離に住んでいるのだな」と実感すると思います。ぜひ3作品とも楽しんでご覧ください。

「映画ざんねんないきもの事典」作品情報

公開情報

絶賛公開中!

スタッフ&キャスト

原作:「ざんねんないきもの事典」シリーズ(高橋書店刊)
監修:今泉忠明

キャスト:花江夏樹 内田真礼 下野紘 
榎木淳弥 松岡禎丞 小松未可子 沢城みゆき 釘宮理恵 佐藤利奈 玄田哲章 日髙のり子
椿鬼奴 斎藤司(トレンディエンジェル)昴生(ミキ)
ムロツヨシ 伊藤沙莉

主題歌:秦 基博「サイダー」(AUGUSTA RECORDS/UNIVERSAL MUSIC LLC)

<南極編「ペンたび」> 
監督・脚本・すべての声:ウチヤマユウジ

<オーストラリア編「リロイのホームツリー」> 
監督:イワタナオミ 脚本:加藤陽一

<日本編「はちあわせの森」> 
監督:由水桂 脚本:細川徹

アニメーション制作:ファンワークス
配給:イオンエンターテイメント
製作:「映画ざんねんないきもの事典」製作委員会

あらすじ

<南極編「ペンたび」>
南極にくらすモテたいアデリーペンギンと仲間のペンギンたちはある日、道に迷ったコウテイペンギンに出会い、家族のところまで送り届けることに。アデリーたちははたして無事に送り届けることができるのか!?

ざんねんポイント:アデリーペンギンは警戒心がゆるゆる

<オーストラリア編「リロイのホームツリー」>
自然豊かな島でくらす甘えんぼうのコアラ・リロイは自分だけのユーカリの木、“ホームツリー”を探す旅に出発! アオバネワライカワセミのクーカ、ウォンバットのワンダと一緒に旅をつづけるけれど、危険がいっぱい! リロイは自分だけのホームツリーを見つけ出すことはできるのかな?

ざんねんポイント:コアラはユーカリにふくまれる猛毒のせいで一日中寝ている

<日本編「はちあわせの森」>
自分を最強だと思い込んでいるニホンノウサギのウサオ、臆病で自信のな いツキノワグマの月子は、家を飛び出し行く当てのない旅へ。それぞれ森の中をさまよう中で、いままで出会ったことのないいきものに出会って大パニック! ウサオと月子はちゃんと自分のおうちに帰れるのかな?

ざんねんポイント:ノウサギは本当は跳びはねたくない

公式サイト
公式ツイッター(@zannen_movie)
公式Instagram

「ざんねんないきもの事典シリーズ」7弾目となる待望の新刊が発売中!

やっぱりざんねんで面白い!ライオンやトラ、サメやシャチなどの人気の生き物たちや、イヌやダンゴムシなど身近な生き物たちがたくさん登場!

「キリンの体は鳥のねぐらにされる」「サメはひっくり返っただけで気絶してしまう」「実はカバは泳げない」など‟やっぱり”面白い新ネタ盛りだくさんでお届けします。

『おもしろい!進化のふしぎ やっぱりざんねんないきもの事典』

監修:今泉 忠明/イラスト:下間 文恵ほか
定価:1,100円(税込み)/体裁:四六判、160ページ
ISBN:978-4-471-10393-4
発売日:2022年4月19日

(C)2022「映画ざんねんないきもの事典」製作委員会
(C)TAKAHASHI SHOTEN
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