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TVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』恩田尚之インタビュー

「やっぱり怒っているガッツはガッツらしい」│『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』キャラクターデザイン・総作画監督 恩田尚之さんインタビュー

あの時期は自分自身もかなり頭がおかしくなっていたと思います(笑)

──劇場版三部作と言っても順番に作り込んでいったわけではなく、三作をほぼ同時並行で進めたということで、プロダクション過程はかなりヘヴィなものになったのではないでしょうか。総作画監督として、こだわられた点はどんなところでしたか?

恩田:本当に、気が遠くなる感じでした(笑)。でも、ドラマの流れの勢いだけはとにかく消さないように、と意識してやっていました。各所からあがってくる個々のカットが、シーンに合った表情になっているか、前後の流れとつながっているか、というところが大切なんですよね。例えば、怒っているカットだとしたら、ちゃんと必要な熱量で怒っているだろうか、というところを詰めていきました。

――本当に、人智の及ばない極限状態の中での表情だったりしますからね。

恩田:そうなんですよ。だから、あの時期は自分自身もかなり頭がおかしくなっていたと思います(笑)。深く入り込まないと描けないので。

――描かれるときに、キャラクターがしているような表情を自分自身もしていたり?

恩田:鏡では見ていないですけど、多分そうなんだと思います。

――ポルノではない人間模様としての濡れ場もこの作品の大切な要素となりますが、そのあたりの表現に関してはいかがでしたか? 第8話のグリフィス、シャルロットの場面は、シャルロットの女性としての歓びと、グリフィスの脆さが表現されているシーケンスになりました。

恩田:そうですね。非常にうまくできていたと思います。詳細を語るには、なかなかちょっと照れる部分があるのですが、基本的には原画さんや窪岡監督の描かれたラフにあったものを目指して描いていった感じですね。

――そして、今回のメモリアル・エディションは新規シーンの追加もありました。久しぶりに『ベルセルク』の人物たちを描かれてどんな感覚がありましたか?

恩田:(自分が)歳を取ったなあ、と(笑)。なかなか当時のような勢いのある絵をすぐには描けなくなっていて。ガッツもキャスカも、そうか、だいぶ勢いがあるキャラクターだったんだな、と今更思い知らされました。苦労したのは確かですね。

――絵の勢いというのも変わってくるものですか。

恩田:全然違いますね。おそらく世界への入り込み方も全然違っていると思うので、あの感覚を思い出すのが難しかったです。描いているうちに戻ってくるところもありましたが、最後の方になってなんとか、ですね。

――ガッツとキャスカのシーンなど新規シーンで、こだわられた点を教えてください。

恩田:うーん、なんというか……。鷹の団の人間同士のやりとりを描くシーンが加わったわけですが、その後の彼らのことを思うと、とても切なくて。描いている間もどうしてもそれを意識せざるを得ませんでした。

――そこへ向かって行く物語という。

恩田:そうですね。ですから、その切なさを大事に描いていました。それから、ガッツに関しては、ラストの方の顔も描いたところがあって、そっちはすごく入りやすかったです。やっぱり怒っているガッツはガッツらしいので、それはすごく描いていて楽しかったです。

――そのほか、第9話までで好きなシーンや思い出深いシーンはありますか?

恩田:百人斬りのあたりは本当に大変で、よく覚えていますね(笑)。たぶん3Dチームも大変だったと思いますので、現場の熱量も感じてほしいシーンですね。

――これから放送される第10話はグリフィス奪還のエピソードも語られる予定です。拷問されたグリフィスの状態というのは、どんな気持ちで描かれたのでしょう。

恩田:よく胸に刻まれていますね。オーダーとしては「モロに描く」というものだったので、かなりキツいな……と思いながら描いていました。あのあたりのシーンは本当に切ないですよね。

――ガッツやキャスカもどんなに悲しかっただろうかと……。

恩田:よくできていました、本当に。いい救出劇でした。

展開を知っていても見たいと思わされる

――新規キービジュアルの「夢のかがり火」も描かれていますが、こちらにはどんな思いを込められましたか? 

恩田:オーダー通りの構成と言ってしまえばそれまでなんですけど、当時の自分が描いていた絵の方向性をだいぶ忘れちゃっていたので、当時のものをいろいろ見ながら、思い出しながら描いていきました。

──本作の制作を通して受けた刺激を教えてください。

恩田:当時、5年くらいはこの作品にエネルギーを使ったので、いろいろ成長させていただいたなという感じはありますね。ドラマが何度見てもおもしろくて、展開を知っていても見たいと思わされるところがあるので、そういった魅力に刺激を受けました。

――今回10年の時を経て制作に入られて、現場の進化を感じたことはありますか?

恩田:今回はリモートで動いていてスタジオには全く入っていなかったのですが、3Dモデルの動きとかを見ると、当たり前ですが、この年月の間にだいぶ研究されたんだなと思って。新作部分は本当に感心しましたね。「誰が手描きしたんだろう?」と思ったくらいだったので驚きました。

――TVシリーズ版で監督を務められている佐野雄太さんが、元々3DCGのスタッフだったということもあって、そういった技術も注ぎこまれているんでしょうね。

恩田:すごくよくできていると思います。

――第9話以降は大変なシーンが続いていきます。放送を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。今回初めてご覧になる方もいらっしゃると思います。

恩田:初めて見る人は本当に羨ましいですね。僕が昔のタイトルを初めて観たときの衝撃みたいなものを感じてくれたら嬉しいですね。知らないままというのは本当にもったいないので、ぜひ、たくさんの人に見てほしいと思います。

――ちなみに恩田さん的には、これから突入していく超常的な展開にはどんな印象を抱かれていますか?

恩田:いやあ、映画のスタートをそこからにしたほうがいいと思うくらい、好きな場面ばかりです。もちろん、黄金時代篇を描かなければこの重さは表現できないので、それはなかなか難しいと思うんですけどね。

[取材:ワダヒトミ]

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キャラクターデザイン・総作画監督 恩田尚之
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脚本 大河内一楼
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編集 重村建吾&TVシリーズ監督・佐野雄太
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編集 重村建吾&TVシリーズ監督・佐野雄太
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TVアニメ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』作品情報

放送情報

2022年10月よりTOKYO MXほかにて放送開始!
・TOKYO MX 10月1日(土) 24:30-
・とちぎテレビ 10月1日(土) 24:30-
・群馬テレビ 10月1日(土) 24:30-
・BS11 10月1日(土) 24:30-
・アニマックス 10月16日(日)23:00~ 

配信情報:

ABEMA、dアニメストア、U-NEXT、NETFLIX、WOWOWオンデマンド、GYAO!、ひかりTV、FOD、バンダイチャンネル、Hulu、auスマートパスプレミアム、TELASA ほかにて配信予定

イントロダクション

全世界累計発行部数5000万部突破(2022年現在)日本を代表するダーク・ファンタジー超大作がTVシリーズとして放送決定!

1989年の連載開始から今もなお孤高の存在として本格ダーク・ファンタジーの軌跡を現代漫画界に刻み続けている『ベルセルク』(著・三浦建太郎/白泉社『ヤングアニマル』連載)。

ファンの間でも最も人気が高い“黄金時代”を三部作で映画化し、2012年~13年に日本をはじめ世界16カ国で公開しました。そして2022年、劇場公開から10年の時を経て、『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として2022年10月よりTVシリーズにて地上波初登場を予定。

【黄金時代篇三部作】
2012年2月4日公開 『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』
2012年6月23日公開 『ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』
2013年2月1日公開 『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』

今回の放送では2012年の劇場公開時にはなかった原作人気シーンの一つでもある「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンが、劇場版同様に恩田尚之総作画監督のもと新規カットとして追加することが決定!さらに、既存カットも、数百カットに手を加え、リマスターとしてバージョンアップ!

新規カットには、平沢進、鷺巣詩郎による、新たな楽曲提供が決定。

ストーリー

己の剣だけを信じてきた。友も家族も帰る故郷もない──孤独な剣士ガッツは、百年戦争に揺れる地を傭兵として渡り歩いていた。身の丈を超える長大な剣を自在に操り、強大な敵をいとも簡単に倒すガッツ。そんな彼に目をつけたのが、傭兵集団“鷹の団”を率いるグリフィス。

美しい姿からは想像もつかない統率力を持ち、大いなる野望を秘めたグリフィスは、自らの夢を叶えるためにガッツを決闘で制し、鷹の団に引き入れる。数々の激戦を共にくぐり抜けるうちに、信頼で結ばれていく仲間たち。なかでもグリフィスとガッツの絆は、今や特別なものとなっていた。

やがて鷹の団はミッドランド王国の正規軍にのし上がるが、それはグリフィスの目指す頂点へのはじめの一歩にすぎなかった。一方ガッツは、グリフィスの「夢」に取り込まれ剣を振り回すだけの人生に疑問を抱き始める。だが、ガッツはまだ知らない。果てなき夢が二人に与えた、恐るべき宿命を──

STAFF

原作:三浦建太郎
メモリアル・エディション監督:佐野雄太
劇場版監督:窪岡俊之
脚本/メモリアル・エディション脚本総監修:大河内一楼
キャラクターデザイン/総作画監督:恩田尚之
アニメーションディレクター:岩瀧智
美術監督:中村豪希 竹田悠介 新林希文
動画検査:梶谷睦子 加来由加里
色彩設計:成毛久美子
CGI監督:草木孝幸 廣田裕介 斉藤亜規子 今中千亜季
編集:重村建吾
音響デザイン:笠松広司
音楽:鷺巣詩郎
オープニングテーマ:平沢進「Aria」(テスラカイト)
エンディングテーマ:中島美嘉「Wish」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃

CAST

ガッツ:岩永洋昭
グリフィス:櫻井孝宏
キャスカ:行成とあ
ジュドー:梶裕貴
リッケルト:寿美菜子
ピピン:藤原貴弘
コルカス:松本ヨシロウ
ガストン:矢尾一樹
バズーソ:ケンドーコバヤシ

アニメ公式サイト
アニメ公式ツイッター(@berserk_mePR)
原作公式サイト
原作公式ツイッター(@berserk_project)

(C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS
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