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夏アニメ『英雄教室』新木 伸×森沢晴行×岸田こあらインタビュー【連載第2回】

夏アニメ『英雄教室』新木 伸さん(原作)×森沢晴行さん(原作イラスト)×岸田こあらさん(コミカライズ)座談会|頭の中である人物が語りかけてきたことが作品誕生のキッカケ!? さらに小説にはなかった漫画版ならではの要素も明らかに 【連載第2回】

小説では想像に任せていた部分もアニメで表現

――見どころはたくさんあると思いますが、アニメ化されて皆さんが注目したところはどこでしょうか?

岸田:シリアスとギャグとの顔つきのギャップがめちゃくちゃいいですね。シリアスなところはキリッと決めるんですけど、ギャグになるとふにゃっとなるのが可愛くて。あと、場面切り替えのときにちょっとした小ネタが入るのも、いい意味で平成感があるというか。ニューレトロみたいにノスタルジーを感じて、私はすごく好きです。見ていただく方にも刺さる表現かなと思います。

森沢:ラノベのときは最初ちょっと手探り感があったと思うんですね。それが漫画でキャラクターの動きとかがついて完成度が高まったというか、進化した感じがありました。それが今度アニメになって、今まで表現できなかった音や動き、演出などで、さらに進化した感覚があります。僕はそういう楽しみ方で見ています。

――それぞれの違いも魅力のひとつですからね。新木先生はいかがですか?

新木:『英雄教室』はもともとアニメになっても大丈夫なように書いたんです。僕は『GJ部』で一度アニメ化を経験していますが、その後、何本もアニメ化している人から聞いてなるほどと思ったことがあって。「アニメ化を意識して小説を書いていないと、アニメになったときに上手くハマらなくなる」と。なので、全部その形式でやろうと思い、『英雄教室』はラノベでは珍しい1話完結式の連作になっているんです。第1巻であれば3話構成で書いたかな。そうやって書いているから、アニメなったときにもちょうど1話に収まっている話が多いんですよ。

――顔つきに関する話がありましたけど、表情だけでなく、例えばアーネストがベッドの上でゴロゴロするとか、小説ではそこまで細かく描写されていなかった動きもアニメでは表現されていますよね。そういう部分に関してはいかがですか?

岸田:そこは漫画を書くときもすごく気をつけていたところです。小説には明確にそうであると書いていない部分を漫画で補足しています。突っ立ってしゃべるだけだと絵的に弱くなってしまうから、体全体で表現する描き方をしたいなって。なので、アニメを見たときに、やっぱりこのぐらいオーバーにやるよね、という気持ちになりました。

新木:日本語の文章は基本「過去形」なんですね。「アーネストはベッドでゴロゴロした」と。それに対して、ラノベの文章は現在起きていることを書くように進化したんですけど、基本があるだけにやっぱり全部終わったことを書いてしまうんです。

「ゴロゴロした」を何段階かに分割して、ゴロゴロしている途中経過をいっぱい書くこともできます。でも、それをやると可読性が落ちるし……やっぱり「ゴロゴロした」になるよなぁと。そう書くと「出来事」としてゴロゴロしたことはインプットされても、ゴロゴロ中の動きはないんですよね。

岸田:そこは読んでいる側が想像して楽しむ要素なんでしょうね。

新木:そうなんです。アニメだと全部がリアルタイムになるから、そこが変わりますよね。

森沢:イラストだと本当に決めのところしか描かないから、そういう間を埋める動きとかを漫画やアニメで見るのは面白いです。

表情のギャップや髪型の変化、お色気シーンも注目

――第1話はすでにご覧になったとのことですので、より具体的に第1話で注目して欲しいポイントをお聞かせ下さい。超個人的なことでも構いませんので。

岸田:私は、ところどころに挟まるおっぱいのカットが好きです(笑)。そういうちょっとしたお色気シーンも結構力が入っているなと思いました。服が破けるシーンも、ビリっと破けた時の肌の揺れみたいなのがすごかったですね。

新木:僕は、髪をおろしてからのアーネストですかね。

森沢:あ、全く同じことを言おうと(笑)。やっぱり可愛いなってアニメを見て思ったので。

――そこは2人の意見が一致しましたね。

岸田:あと、ブレイドの過去が映像として出たことによって、キャラクターの深みが増したと感じました。相当しんどい思いをしてこの学園に来たんだなとわかって、一気にブレイドのことが好きになりましたね。

新木:だからこそ、学園に来て幸せそうな顔で「友達を作るぞー!」と言っているのを応援したくなると思います。つらかったんだね、って。

森沢:そういえば、ブレイドの髪が半分白いのって最初の指定にはなくて、力を半分失ったことの表現として僕が入れたんですよ。だから、アニメの過去の魔王と相打ちになるシーンで、力を出し尽くして真っ白になる表現を見て、なるほどなと思いました。

新木:(髪が半分白い)デザインが森沢さんから返ってきたときは、あー負けた! と思いましたね。これは僕がキャラ指定に書いておくべきだったなと。

岸田:ブレイドのトレードマークですからね。

森沢:真っ黒だと地味だなと思って、こうしたんです。

岸田:逆に真っ白だとちょっとやり過ぎかなって思いますよね。

新木:余命半年の元勇者が余生を過ごす話ではないので(笑)。

――服が破けるシーンは第1話から出てきますし、その後もはだけたり脱いだり、そういうシーンも楽しみにしてもらいたい要素のひとつですね。

岸田:アーネストってこういう役なんだな、というのがわかりやすいですよね(笑)。

新木:本人も裸になるのに慣れていきますからね(笑)。アニメだとコンプライアンス的なところもありますけど、原作では温泉だったら混浴が当たり前にしようと思って。話し合いをするのはだいたい風呂や温泉で、そこにブレイドが平然と混じっているという。

岸田:アニメになって色がつくと、やっぱりドキッとしますね。

森沢:ただ、よくあるラブコメのラッキースケベと違うのは、ブレイドにその意識がないので、エッチな感じにはならないんですよね。

新木:ブレイドは「友達ができた。嬉しい!」のところで止まっているぐらい、精神年齢が幼いので、女の子に対してドキドキすることがそもそもなくて。裸を見ても、ぽかーんとしているので、エッチにならないんですよ。

――それに関して、川島さんは演じる際に「5歳児だから何とも思っていない」と言い聞かせていた、と話していました。

新木:そこがある意味、勇者なんですよ。混浴でも平然としていて、なんて勇者だ! と(笑)。

3人が普通の幸せを感じる瞬間は?

――せっかく3人が同席されていますので、お互いに聞いてみたいことはありますか?

新木:岸田さんに聞いてみたかったのは、漫画では魅力的なモブキャラも多いじゃないですか。小説の場合は「何人か援護してくれる女子生徒がいる」みたいな感じでも、漫画ではその子たちを描きますよね。いいなと思った子は小説でも使わせてもらっているんですが、どのぐらいまでそれぞれの人生を決めて描いているのかなと。

岸田:結構、意気込んで描いていますね。でも、あくまでモブなので、主人公が目立たなくならないようなデザインにしたくて、素朴な感じにするとか、帽子などの小道具でキャラ性を出すようにしています。

新木:魂は入っているんですか?

岸田:入れているつもりです。描きながら作られていく感じもあるので、小説に逆輸入していただいたのを読んで、そうだよね! と解像度があがって、表情に特徴がついていくこともありますね。

新木:なんとなく漠然と思っていたことが言語化され納得する、みたいな。

岸田:そうですね。そうやって行き来しながらどんどんキャラが確立していきます。

森沢:そういうのは嬉しいですよね。僕も、表紙の背景になんとなく描いたものを使っていただいたことがあって。8巻のクジラとか。

新木:空クジラね。あれは表紙先行で、巨大生物が雲間に潜んでいたから、これを話にしなきゃと思って。クレアが空クジラに触れ合う話を書いたんですよ。

――そうやってお互いにアイディアやインスピレーションを得ているのですね。おふたりからはなにかありますか?

岸田:作品のいちファンとして気になっているのは、キャラクター同士の恋愛事情ですね(笑)。どうなるんだろうと。

森沢:僕は、1巻目からブレイドが完全に力を取り戻すのかどうか気になっています。答えられないとは思いますが(笑)。

新木:そうですね(笑)。

――そこは今後に期待しましょう。ちょっとした恋愛トークはアニメにも出てきますからね。では最後に、作品にちなんだこともお聞きします。皆さんはどんなことで“普通の”幸せを感じますか?

岸田:私はこの仕事をしている現状が幸せですね。それ以外のことができないので、好きなことをして暮らしていけるのが、私にとっての普通の幸せかなって。

新木:僕も小説だけを書いて生きていけるのは幸せですね。あと、少し違う観点から言うと、普通の人がしそうなことをしているときも幸せです。例えば、花見の季節に花見をするとか、お祭りに行って屋台を回ってみるとか。周りに普通の人がいっぱいいて、その人たちと同じことをしていると安心するんです。「いま、すげぇ普通のことをしてる!」と思って。

岸田:ブレイドみたいですね(笑)。

新木:確かに、その体験がブレイドに役立っているのかもしれないです。僕は電車に座っていても横に座ってもらえないとか、なぜだか知らないけど目立っているみたいなので、普通の人の擬態が上手くいっていると感じるときは幸せですね。

――森沢先生はいかがですか?

森沢:僕は、健康かなぁ。去年、体調を崩して入院していたので、普通に健康で美味い飯を食べることが幸せです。

新木:そういうことだと、温かい布団に入ってぐっすり寝るのも幸せですね。これ以上の幸せがあるのかって。

岸田:私は逆に、寝るのがもったいないってなっちゃいます(笑)。

――ブレイドはどんな普通を手に入れられるのか、楽しみにしています。本日はありがとうございました!

[文・千葉研一]

TVアニメ『英雄教室』作品情報

2023年7月放送開始!

キャラクター紹介PV公開中

イントロダクション

世界を苦しめる強大な魔王と互角の戦いを繰り広げ、痛み分けによって人類を救った勇者がいた――その名はブレイド。

幼い頃から勇者としての素質を認められ、誰もが憧れる存在であった。だが、ブレイドは魔王との戦いのあと、ダメージによってパワーが減退していく中で、こうも思っていたのである。

“ようやくこれで、一般人になれる!”と。

そしてブレイドは、知り合いを頼って「ローズウッド学園」に入学。“フツー”の学生としてトモダチを作り、華やかで楽しいスクールライフを謳歌しようとする。

だが、個性豊かなクラスメイトたちや様々なトラブル、そして英雄を養成するエリート学校であるローズウッド学園が“フツー”のはずがなく…!?

シリーズ累計160万部の超人気ライトノベル『英雄教室』が、満を持してTVアニメ化!

英雄の座を降りた元勇者ブレイドが、“フツー”を求めて奮闘するバトルファンタジー!

目指せ、普通。満喫したい、青春。でも、フツーの青春って一体なんだ!?

スタッフ

原作:新木伸
イラスト:森沢晴行『英雄教室』(集英社ダッシュエックス文庫刊)
監督:川口敬一郎
シリーズ構成・脚本:ハヤシナオキ
キャラクターデザイン・総作画監督:川村幸祐
副監督:中野英明
総作画監督:小島えり
メインプロップデザイン:実原登
モンスター&メカデザイン:森木靖泰、松田未来
小物デザイン:あきづきりょう
色彩設計:原田幸子
美術監督:E・カエサル
美術監修:東潤一
美術:田中伸哉
美術設定:深井亮太
背景:スタジオイースター
3D監督:遠藤誠(トライスラッシュ)
2Dワークス・CGプロデューサー:永井努(シフト・アール)
撮影監督:棚田耕平(グラフィニカ)
特殊効果:鳴河美佳(グラフィニカ)
撮影:グラフィニカ
編集:定松剛
音響監督:山口貴之
音響効果:安藤由衣
録音調整:齋藤栞
音響制作:神南スタジオ
音楽:中川幸太郎
音楽制作:ランティス
主題歌アーティスト:OP樋口楓/ED熊田茜音
アニメーション制作:アクタス

キャスト

ブレイド:川島零士
アーネスト・フレイミング:山田美鈴
ソフィ:東山奈央
クーフーリン:木野日菜
ほか

公式サイト
公式Twitter

(C)新木伸・森沢晴行/集英社・英雄教室製作委員会
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