「初音ミク」との出会いが、今に至るまで十数年の原動力になっています――『劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク』連載インタビュー｜ボカロP・DECO*27さんが語る『プロセカ』の意義

「初音ミク」がスクリーンで動く、さらに歌うなんて

――ところで、DECO*27さんと『プロセカ』の出会いはどのようなものだったのですか？

DECO*27：「VOCALOIDとキャラクターが入り混じった音楽コンテンツをやります！」というお話が来て。当時、ボカロP目線から思ったことを正直に言うと「ボカロとキャラクターを混ぜるの？」「大丈夫？」でした。もちろんワクワク感もありつつですが、前例がなかったからこそ、ユーザーさんに受け入れられるかなという不安がありましたね。

ただ、やはり新しいことに対して「面白そう」という気持ちもありました。そのプロジェクトに自分が参加させていただけるときに何ができるだろうと、グルグルと考えていた思い出があります。

――リリース当時の話題、そして反響も大きなものがありましたよね。

DECO*27：DECO*27に制作チームが求めることと、お客さんが『プロセカ』に求めるものに乖離があるかもしれない。実際に何を求められているのかは、予想はすれどわからないところがあって。自分の中で色々な可能性を考えながら『セカイ』を制作していました。

――そんな『プロセカ』が銀幕デビューとなります。スクリーンで動き歌う「初音ミク」について、DECO*27さんの率直なお気持ちをお聞かせください。

DECO*27：今回の劇場版は『プロセカ』としてもおめでたいことなのですが、約17年の間「初音ミク」と一緒に楽曲を作ってきた身として、「初音ミク」がスクリーンで動く、さらに歌うなんて……やはり感動しますよね。その作品に、自分が楽曲制作という形で参加できるのも光栄です。

これまで『プロセカ』に触れてきた人は、「ボカロ曲が好き」「音ゲーが好き」という方が多かったと思うのですが、今回の劇場版でアニメファン、映画ファンの方々にもアプローチできるのかなと。

『プロセカ』の名前は知っているけれど触れてこなかった方々にも、映画になることで興味を持っていただけますし、この劇場版から『プロセカ』や「初音ミク」、VOCALOIDをとりまく環境がさらに盛り上がったらいいなと思っています。

――何回くらい観に行こうと思っていますか？

DECO*27：何回だろう……（笑）。普段から、あまり映画を見る方ではないのですが、その代わり気に入った作品は何回も何回も観ちゃうんです。7、8回劇場に足を運ぶこともあるくらい。

先んじていただいている脚本が、どのように映像化されているのかにも集中したいし、その中で自分の楽曲にも集中したいし……。その上でお気に入りのシーンを見つけたら、そのシーンを観るために通うと思います（笑）。友達を誘って、感想も聞きたいですね。ボカロをあまり知らない友達と観に行くのも面白そう。たくさん観に行きたいと思います！

ボカロP・DECO*27が語る『プロセカ』の意義とVOCALOIDの未来

――ボカロPの目線から見て、現在の『プロセカ』はどのような意義を持っていると思いますか？

DECO*27：ボカロ曲を聴くことができるプラットフォームは、多種多様だと思いますが、その中のひとつに『プロセカ』が含まれているのかなと。

しかも『プロセカ』には、最近の楽曲に加えてVOCALOIDの歴史の中で大事な楽曲も収録されています。『プロセカ』からVOCALOIDを知っていく若い世代の方々が、それらの楽曲に触れたときの反応や感想を見るのも、個人的な楽しみなんです。

――たしかに、往年の名曲が収録された際、SNSなどで様々な世代のファンが一緒に盛り上がりますよね。

DECO*27：これは、『プロセカ』が色々な世代をひとつに重ねてくれたからこそ起こる現象だと思っています。

……「自分が昔作った曲にもう一度目を向けてもらう」って、ボカロP自身がやろうとすると、結構難しいことなんです。でも、昨年ハチくんが『ドーナツホール』の新装MVを投稿して、湧いたじゃないですか。あのような盛り上がりを実現したくて。

『プロセカ』は、そのムーブメントを実現しやすい場が整っている、良い場所だと考えています。

――DECO*27さんも『Reloaded』としてご自身の名曲をリメイクされていますね。

DECO*27：そうですね（笑）。あれはまさに、「自分が昔作った曲にもう一度目を向けてもらう」を実現させたくて取り組んでいるプロジェクトです。昔の楽曲を新装版にして、調声してアレンジも変えて、時には歌詞も変えたりして。

その取り組みを、『プロセカ』だと自然に実行できるんです。リメイクを挟まずとも喜んでもらえるのは、本当にすごいことだと思います。

――最後に「初音ミク」、そしてVOCALOIDに出会ってからの思い出をお聞かせください。

DECO*27：一番は、初めて初音ミクの声を聴いたときですね。あのときの衝撃は今でも忘れられません。忘れられないがゆえに、かつて自分が体験した感動を、今度はみなさんに味わってほしいと思う気持ちが大きいんです。「初音ミク」との出会いが、今に至るまで十数年の原動力になっています。

自分が楽曲を投稿して、それを聴いたリスナーさんが喜んでくれている様子を見ると、毎回嬉しくなるんです。どの曲においても楽曲を聴いて、感想を発信してくれて……ありがたいことですよね。それが結果的にその人の好みでなかったとしても、色々な楽しみ方をしてほしいと思っています。

僕の楽曲を聴いてくれた人が、何かを思ってくれた。しかもその気持ちを発信してくれた。この尊さは、何回味わっても変わらないんだなと、常々感じます。

これからも、音楽であるからこその楽しみ方をしていただけたら嬉しいです。

※「VOCALOID（ボーカロイド）」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

【インタビュー・文：西澤駿太郎】

『劇場版プロセカ』インタビューバックナンバー

｜連載：01

「Leo/need」野口瑠璃子 × 礒部花凜 × 中島由貴

｜連載：02

「MORE MORE JUMP！」小倉唯 × 降幡愛 × 本泉莉奈

｜連載：03

「Vivid BAD SQUAD」秋奈 × 鷲見友美ジェナ × 今井文也 × 伊東健人

｜連載：04

「ワンダーランズ×ショウタイム」廣瀬大介 × 木野日菜 × Machico

｜連載：05

「25時、ナイトコードで。」楠木ともり × 田辺留依 × 鈴木みのり × 佐藤日向

｜連載：06

ボカロP：40mP × sasakure.UK

｜連載：07

ボカロP：sasakure.UK × じん

｜連載：08

ボカロP：DECO*27

｜連載：09

監督：畑博之 × 脚本：米内山陽子

「劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク」公開記念フェア

開催期間：2025年1月11日（土）～2025年2月16日（日）
開催場所：全国アニメイト（通販を含む）

フェア内容

期間中「劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク」、『プロジェクトセカイ カラフルステージ！ feat. 初音ミク』関連のキャラクターグッズ・グラッテコラボのご飲食をご購入1,100円（税込）毎にポストカード（全27種）を1枚プレゼント！

※特典はお選びいただけません。

特典（ポストカード全27種）

■注意事項、フェア詳細はこちら

■「劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク」公開記念×Gratte詳細はこちら

『劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク』作品情報

あらすじ

「キミのことを、教えて。そうすれば、歌がわかるのかもしれない」

CDショップで聴いたことのないミクの歌を耳にした星乃一歌。彼女はモニターに、見たことのない姿の”初音ミク”を見つけ、「ミク!?」と思わず声に出す。その声に驚いたミクは、一歌と目が合ったものの、ほどなくして消えてしまう。

後日、路上ライブを終えた一歌のスマホに、以前見かけたミクが姿を現す。寂しそうに俯くミクに、一歌はそっと話を聞いてみると、歌を届けたい人たちがいるのに、いくら歌っても、その歌が届かないという。

ライブで多くの人の心に歌を届ける一歌の姿を見て、彼女のことを知れば自分も同じように出来るのではと考えたミクは、一歌のもとにやってきたのだった。ミクの願いに「私でよければ」と微笑みながら一歌は答え、初音ミクと少年少女たちの新たな物語が始まる―。

キャスト

初音ミク：ORIGINAL CV BY 藤田咲
鏡音リン・鏡音レン：ORIGINAL CV BY 下田麻美
巡音ルカ：ORIGINAL CV BY 浅川悠
MEIKO：ORIGINAL CV BY 拝郷メイコ
KAITO：ORIGINAL CV BY 風雅なおと
星乃一歌：野口瑠璃子
天馬咲希：礒部花凜
望月穂波：上田麗奈
日野森志歩：中島由貴
花里みのり：小倉唯
桐谷遥：吉岡茉祐
桃井愛莉：降幡愛
日野森雫：本泉莉奈
小豆沢こはね：秋奈
白石杏：鷲見友美ジェナ
東雲彰人：今井文也
青柳冬弥：伊東健人
天馬司：廣瀬大介
鳳えむ：木野日菜
草薙寧々：Machico
神代類：土岐隼一
宵崎奏：楠木ともり
朝比奈まふゆ：田辺留依
東雲絵名：鈴木みのり
暁山瑞希：佐藤日向

(C)「劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会

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