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『劇場版プロセカ』sasakure.UK×じんが主題歌に込めたそれぞれの想い【連載インタビュー第7回】

「みんなが好きに歌える合唱曲」『Worlders』が導く、音楽と歌が生まれる条件『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』連載インタビュー|ボカロP・sasakure.UKさん×じんさん

制作チームから「みんなに楽しくプレイしてもらおう」という熱量をすごく感じた

――『プロセカ』との出会いや第一印象などをお聞かせください。

じん:先ほどお話しいただいた『ステラ』の依頼を受けたのが、『プロセカ』との出会いでした。少し重たい話かもしれませんが、依頼を受けた当時の僕は、事務所を辞めて、“つながり”がなくなっていた時期だったんです。今まで自分がやっていた音楽活動も、いろいろな権利の関係などでできませんでしたし、中々自分から動くという気持ちも持てず、落ち込んでいました。

そんなときにいただいたお話が、『ステラ』だったんです。自分を必要としてくださることが嬉しかったですし、何より、チームのみなさんの熱量がすごく高かったのが印象的でした。「こういうものを実現したい。絶対いいものになると思う。キャラクターの設定はこうで、ここにエモーショナルがあって、ここをユーザーさんに伝えたいし、感じていただきたい」と語っていただいて。

一連のお話から、子どもから大人まで、みんなに楽しくプレイしてもらおうという強い芯を感じました。このキックオフで書かせていただいた『ステラ』は、作曲家としての今のじんに続く、「こういう風に音楽を作ってみよう、こういう道を進んでみよう」と思えた一曲です。

sasakure.UK:今のお話、(ゲームのストーリーと)リンクするところがあって胸が熱くなりました。レオニ(Leo/need)も一回バラバラになったところからくっついていますし。

じん:もっと高校生らしい、キラキラした可愛らしいエピソードから始まってもいいのでは、なんて思いましたが(笑)、そこも含めて『プロセカ』はすごいですよね。


――sasakure.UKさんが感じた『プロセカ』の第一印象についてもお聞かせください。

sasakure.UK:ミクたちバーチャル・シンガーが、オリジナルキャラクターたちと一緒に歌っている姿が新鮮でした。いままで見たことのない演出だったので「何か新しいことが始まる!」というワクワク感がありましたね。

――そこから『トンデモワンダーズ』のお話が来たときはいかがでしたか?

sasakure.UK:どのユニットの書き下ろしを担当するか決めるに当たり、全ユニットのストーリーを読ませていただいて、ワンダショ(ワンダーランズ×ショウタイム)の明るい雰囲気にハマって……「これで一曲書きたいな」と。

そうしたら、いただいたストーリーが重くて(笑)。「僕の力で彼らの大切な遊園地、フェニックスワンダーランドを救うしかない!」という気持ちで臨みました。

――先ほど、sasakure.UKさんから『NEO』をプレイしている、というお話がありましたが、じんさんも『プロセカ』で、sasakure.UKさんの楽曲をプレイされたり……?

じん:実は僕、ギターを弾く感覚で曲を捉えてしまうことが多くて、音楽ゲームがめちゃくちゃ下手くそなんです……(笑)。少しだけリズムより先に、前乗りで弾いたりするのが好きなので、その感覚でやるとノーツとずれるんですよね(笑)。

以前、エキシビションマッチに挑戦したときは、頑張って練習しました。

sasakure.UK:じんさんを推薦したのは、僕とまらしぃさんだったんですよ。大会では練習の成果もあって大活躍でしたね! その節はありがとうございました!

――sasakure.UKさんの楽曲は難易度が高いものも多いですから、プレイするのは大変ですよね。

じん:たしかに(笑)。

sasakure.UK:(笑)。僕にとって音ゲーは人生なので、ヒーヒー言いながらも自分の曲は全部クリアするようにしています!

――今回の劇場アニメ化をはじめ、『プロセカ』はますます大きなプロジェクトとなっています。そんな今の『プロセカ』の印象も教えてください。

じん:僕は音楽以外に本を書くこともあるので、「ストーリーと音楽」という意味でも『プロセカ』とシンパシーを感じています。ユーザーがそれぞれ自分の感想を抱けるような骨の太いシナリオと、それに向き合うキャラクターが丁寧に描かれている印象です。

『プロセカ』のこれまでの歩みを見ると、舗装された道を歩いていない、道を新たに切り開いているような感じがしていて。「子どもの頃に遊べたら、幸せだっただろうな」と思います。

sasakure.UK:確かに……その気持ち、めちゃくちゃわかります!(笑)

僕は、リアルイベントだったり、ユニットを越えた登場人物のやり取りが増えたりと、『プロセカ』の奥へ広がってゆくような可能性を感じていますね。

音ゲーの部分についても、新しいノーツが登場して、譜面の表現の幅が広がっていて。3周年で追加された「APPEND」譜面も面白いですし、これからもどんどん新しい、面白いことが増えていくといいなあ……と。完全に、音楽ゲーマー目線の意見になってしまってすみません(笑)。

40mPさんと“交換日記”のように、何度もやり取りして完成させた『はじまりの未来』

――sasakure.UKさんには前回(第6回)のインタビューで伺ったのですが、じんさんは今回の劇場版のシナリオや脚本を読んでの印象はいかがでしたか?

じん:最初の印象は、「子どものころ、夏休みに映画館で観た映画」のような、そんな懐かしさを感じました。アプリゲームのイベントで描かれる以上の大きなテーマが込められていて、すごく“劇場版っぽい”なと。

実は、「歌えない」というテーマは、僕も『NEO』のときに考えていたんです。音楽に向き合えば向き合うほど「歌えない」という状況に陥ってしまうことがあって。

悩みがないときは気楽に歌えるのですが、「想いを伝えるための歌を」や「真に迫る音楽を」となった瞬間、途端に怖くなってしまう。「音楽の意味ってなんだろう?」と考えこんでしまって、歌えなくなる瞬間がある……。「音楽と向き合う」ということを『プロセカ』はこういう風に描くのか、すごいな、と思いました。

――sasakure.UKさんが、40mPさんとともに担当されたオープニング主題歌『はじまりの未来』は、具体的にどのようなテーマを持って制作されたのでしょうか?

sasakure.UK:最初に劇場版制作チームから、「季節が春から夏に変わる感じ」というオーダーをいただいたので、そのシーンを連想しながら作りました。

季節が移り変わるといえば“情景”かなと。「いいことも悪いことも、全部を受け止めて、歌にしてくれるミク」のような情景を歌にしたのが『はじまりの未来』です。

40mPさんと、まるで交換日記のように毎週曲を送り合って、「ここの歌詞、どう思いますか?」とけっこう突っ込んだ意見も交換しあって、密なやり取りをたくさんしながら制作しましたね。

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――じんさんは、そんな『はじまりの未来』を聴いて、いかがでしたか?

じん:初音ミクの「ミク」は、漢字で表記すると「未来」ですし、まずタイトルに惹かれました。それから曲を聴いて、「あっ!! うぅっ!!」ってなりましたね(笑)。随所にお二人らしさが溢れていますし、感動して言葉が出てこなかったです。

sasakure.UK:(笑)

じん:『はじまりの未来』は先の読めない展開が続く一曲ですが、その展開が不条理じゃないんですよね。

sasakureさんのとんでもないハンドリング、導き方に40mPさんのメロディの太さやカラーリングが反応して、とてつもないうねりでもって、曲が広がっていく。いつものお二人が個人として制作する楽曲とはまったく違う、ドライブ感のある、すごい曲でした。

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