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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。

記憶喪失となってからいくら野球に誘われても拒否し続けていた要。しかし、野球部のクソみたいな3年生に清峰が馬鹿にされたことに無性に苛立ちを覚え、自分が捕手を務めて勝負することを決意します。要の豪速球を目の当たりにした先輩は圧倒され尻尾を巻いて逃亡。捕球した要は初めての感覚に感慨深い表情を見せます。ここから『忘却バッテリー』の物語が始まったのです。
初めて藤堂と千早に出会ったときのこと。練習する自分たちを見ていた初対面の2人に対し、要はにこやかに声をかけたのです。清峰・要バッテリーとの試合を機に野球を辞めた2人はその場では拒否しますが、ここで声をかけたことがきっかけで、彼らは友達となり野球部に入部することに。今思うと、2人の表情や雰囲気から本当は野球が大好きな本心を無意識のうちに見抜いて声をかけたのかもしれませんね。
のちに藤堂側、千早側の視点で同じ場面が描かれますが、本当は野球をやりたいと思っていた2人の本心をこの一言が大きく揺さぶっていることがわかります。ラブ&ピース精神の要の姿勢が頑なだった2人の心を溶かしたのです。
同じ西東京地区の強豪校・帝徳高校との練習試合の中で、ファールチップが顔面に直撃し、マスク越しではあったもののその衝撃の強さから恐怖心が生まれてしまい、それ以降要は捕球ができなくなってしまいます。焦る要に対し、清峰は「全力投球」のサインを拒否してハーフスピードで投球。その結果、相手に大量得点を許し、5回コールドでその試合を終えることになりました。
「帝徳との試合で球が取れなくなっちゃって焦ってちゃってるところ!清峰くんの優しさとで友情がたっぷりですごい好き!(10代・女性)」というコメントが寄せられている通り、言葉は発しないものの、要のことを考えて緩いスピードで投げる清峰の優しさ、幼馴染の友情が感じられるエピソードです。
今回のアンケートでより多くの声が寄せられたのは、イップスに苦しむ藤堂に対する要の対応でした。藤堂はイップスにかかってからというもの、何とか治そうと練習を重ねてきましたが、改善しないまま。そんな彼に対して清峰は悪気なく「努力が足りないんじゃないのか」と発言してしまい、場が凍り付きます。そんな時、要は「人の努力否定すんの禁止な」と清峰を諫めたのです。
その後、要はワンバウンドで送球してみることを提案。始めは「草野球のおっさんじゃねーんだぞ」と抵抗感を示していた藤堂でしたが、治る可能性が1%でもあるなら、と試してみることに。笑顔で「きっと上手くいく」と言った要の言葉通り、このワンバン送球をきっかけに藤堂はイップスを克服してしまいます。
また、アニメでは藤堂に対し「イップスマウントっすか」と深刻な問題に対してあまりに軽い返しをするオリジナルシーンも登場(第7話)。アニオリシーンですが、アホの要らしい励まし方に、きっと藤堂も心が少し軽くなったはず。そんな彼を見守る姉妹の笑顔も印象的でした。
西東京地区のもうひとつの強豪校・氷河高校との練習試合で勝利を収めた小手指。要は勝利打点を打ったことで野球の楽しさに目覚め始めます。そんなとき、彼の記憶喪失の原因が苦しい野球によるものだったのでは? というチームメイトの推測を聞いた清峰は、要に「シニアの時、オレと野球やるの嫌だったか?」と訊ねます。
過去のことは覚えてないけど今は楽しいと答えた要は、その場で“打倒智将”を宣言。努力の鬼だった智将を超えるのは至難の業ですが、それでも「自分に負けてんの悔しいし」と高い目標を掲げた要は一層野球に熱心に取り組むようになっていきます。
小手指高校にとって初めての夏の大会。4回戦まで勝ち進み、初めて帝徳高校と公式戦を戦うことになります。強豪校相手に一瞬の隙も許されない緊迫した中で、要は失った記憶を取り戻します。それは決して楽しいとは言えないもので、むしろ努力を積み上げてなお、才能の無さを突きつけられてしまう苦しいものでした。意に反して「清峰葉流火と出会わなければ良かった」とさえ思ってしまうほどに。
しかし、そんな苦しいばかりだったこれまでの経験や努力が活き、藤堂や千早も打てなかった帝徳のエース・飛高の球を打つことに成功。さらに、下位打線を考慮した結果、全力で本塁まで駆け抜け、ランニングホームランにしてしまったのです。過去の苦しい経験も要の糧になっていることがわかるシーンに胸と目頭が熱くなりますね……。
王者・帝徳相手に奮戦するも負けてしまった1年目の夏の試合。季節は巡り、要たちが2年生になった夏、準々決勝で再び帝徳と当たることに。1年で大幅に成長した要は、帝徳の作戦を読み、明らかに打つと思われる空気の中、スクイズを警戒し、1年生投手の瀧に「万が一スクイズが来たらショートバウンド叩きつける」という作戦を伝えます。
要の読みは的中し、帝徳のバッターはスクイズの態勢を取ったため、瀧は言われた通りショーバンを叩きつけます。普通なら捕球できず後逸してしまい、最悪一点取られてしまうものですが、要は見事捕球。そして、三塁から本塁へ向かっていた走者をアウトにしてしまったのです。このプレーは本当に痺れます……。
小手指は見事帝徳に勝利したものの、要はその疲労から主人格(アホ)が眠ってしまい、(同一人物ではあるのですが)氷河との決勝戦は智将が捕手を務めることに。記憶喪失以降初めて公式戦で2人が組むことになるため、チームメイトの中には内心心配する者もいました。
しかしすぐにそれは杞憂だったことがわかります。清峰が一球投げただけで球場全体が圧倒され、呼吸を忘れるほどの緊張感に包まれたのです。打者を圧倒する豪速球に加え、捕球技術によって生み出される大きな捕球音で要が場の空気を作り出しているのだと言います。アンケートには、悪魔のような怪物バッテリーの復活にゾクゾクした、というファンの声が寄せられました。
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— 『忘却バッテリー』公式 (@boukyakubattery) February 5, 2025
⚾『#忘却バッテリー』最新第169話更新⚾
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勝つにはスプリットが必要。
そう考えた清峰葉流火は
智将・要 圭に意見を伝えようとするが……。
一方、圭も勝利のために
今の自分ができることを考えていた。
小手指高校バッテリーが出した結論とは?https://t.co/5QyF101bpS#ジャンププラス
眠ってしまった主人格に代わり試合を続ける智将ですが、清峰が習得したばかりの魔球・スプリットの捕球は主人格にしかできません。しかし、清峰はスプリットを投げたがっており、リードの上でもスプリットが欲しい智将は、一人で葛藤します。
なかなか起きない主人格に苛立ちを覚えていたところ、氷河の四番・巻田から「俺にもスプリット投げてくれよ」と挑発されたことで、智将はスプリットを投げさせる覚悟を決めます。ファンからは「169話の最後、スプリットを捕ると決めるまでの智将要圭の、どいつもこいつも舐めやがって 俺は”智将”要圭だぞ に、震えました。本当に大好きです。(30代・女性)」との声が寄せられました。
これまでは主人格の成長が描かれてきましたが、最新話では智将が成長しようとする姿が描かれています。氷河との試合の行方とともにその変化に注目したいですね。
要のアホの象徴と言えば「パイ毛」という方も多いはず。今回のアンケートでも「パイ毛のシーンが好き」というコメントが多く寄せられました。みかわ先生いわく「アホであるという具体的行動の1例」であり、実は旦那さんがする一発芸だそう。三文字と一コマで100%滑り、尺の節約にもなるため採用されたそうです。
しかし、先生の予想を遥かに超えた反響を呼び、時には智将からアホに戻る前兆として使われることもあり、アホの要を象徴するものとなっています。ファンの皆さんはご存じだと思いますが、パイ毛って実は結構大事な伏線になってるんですよね……。
パイ毛をはじめ第1話目から強烈な印象を読者に与える要。しかし、彼だけではなくお母さんもまたなかなか癖の強い人物です。第5話では要が清峰、藤堂、千早、山田の4人を自宅に招きます。するとそこにはパートでいないはずの母の姿が。
社交的だが友達の前でも思春期的な部分に容赦なく踏み込む母を恥ずかしがり、反抗心を丸出しにする要。ようやく要の部屋にみんなを招き入れ、落ち着いたかと思いきや、出されたカルピスがとんでもなく薄いというオチ。テンポの良いギャグ回で、本作らしい魅力が詰まったストーリーです。
清峰の決め球・スライダーの捕球練習を始めた要。強烈な変化球を前に怯む要を見たチームメイトたちは彼が逃げ出すと考えたのか、なんと要を縛ってしまいます。そのうえでキャッチャーポジションに座らせ、「やれ 清峰」と一言。両腕を後ろで拘束されたままの要は大焦りで「やめろ清峰 自我を持て」「縛られたら智将とて!縛られたら智将とて!!」と必死に説得します。アンケートにはこの一幕が大好きという声が寄せられました。
「縛られたら智将とて」のテンポや語呂の良さ、ワードの強さに多くの読者が大笑いしたようで、かくいう筆者もこの前後の小手っ子たちの小気味良いやりとりが大好きです。ぜひアニメ2期で見たい。しかしながら痛みと恐怖に悲鳴を上げつつも、逃げずに練習を続け、最後にはちゃんと捕れるようになってしまう要はさすがとしか言いようがありませんね。
正反対の人格を持つがゆえに、キュートでお調子者の顔も、クールで聡明な顔も見せてくれる要。最新話ではどちらの人格が主人格かわからないような描写がされており、加えてどちらかの人格は最終的に消えてしまうような表現がされています。
しかし、今回寄せられたファンの声の多くが「どっちの圭も好き!」というものばかり。私も皆さんと同じくどちらの要も大好きなので、二つの人格が共存する、あるいは双方の長所を持った新生・要圭となればいいなと個人的に思っています。最新話では甲子園をかけた氷河との試合中の小手指。試合展開とともに要の変化や活躍にも注目しましょう!

1990年生まれ、福岡県出身。小学生の頃『シャーマンキング』でオタクになり、以降『鋼の錬金術師』『今日からマ王!』『おおきく振りかぶって』などの作品と共に青春時代を過ごす。結婚・出産を機にライターとなり、現在はアプリゲーム『アイドリッシュセブン』を中心に様々な作品を楽しみつつ、面白い記事とは……?を考える日々。BUMP OF CHICKENとUNISON SQUARE GARDENの熱烈なファン。
