
『ある魔女が死ぬまで』声優インタビュー連載第6回:折役・伊藤静さん |実は面白いだけじゃない? 祈の新たな一面が見えた第9話を振り返る
犬好きの伊藤さんの琴線に触れたのはあの意外なキャラクター!?
――ご自身が出演されていない回も含めて、今までの物語の中で特に印象的だったエピソードはありますか。
伊藤:印象的だったのは、第8話の悪魔崇拝の一家の回ですね。あのラストでファウスト様が助けにくれたところで、台本を読みながらちょっとうるっときちゃいました。
――ファウスト様がああやって出てくるのってかなり珍しいですよね。
伊藤:そうなんですよ。だからこそ、助けにきてくれたことにより感動して。……いや、もちろん私のために来てくれたわけじゃないんですけど(笑)。
その時、まずは自分の手の中にあるものを守ることが大事といったことをおっしゃられていて。欲張って手を出して失敗するような経験は私の中にもあったので、すごく納得できたんですよね。
――キャラクターとしてはどうですか。
伊藤:キャラクターだと、第5話に出てきた狼の……そう、ウーフさんですね。
――なかなか意外なチョイスですね。それはどういったところがポイントに?
伊藤:さっき第8話のファウスト様にうるっとしましたとお話しましたが、個人的には第5話も感動した回で。読み終えた後に気持ちが温かくなったというか、すごい素敵なお話だなって。ずっと会えなかった二人が、メグの頑張りで再会することができて、メグのこともより好きになりましたし、ああいう違う種族同士の恋愛模様はロマンチックさを感じます。
あと、単に私は犬がすごく好きで、獣人も好きなので、それも影響してると思います。恋愛とかじゃなく、ただ純粋にお近づきになりたいです(笑)。
――これまでの収録で印象的だったことはありますか?
伊藤:私の話じゃないんですけど、木の精霊のセレナちゃん(CV.東山奈央)が魔力で汚染された時、さっきまでめちゃくちゃかわいい声で喋っていたのに本当に怖い声で喋るので、その時の落差がもう凄まじくて。
しかも収録中だと、「度合いどれくらいにしますか?」って演技の相談をする時は、また一瞬でかわいい声に戻るのがシュールで、「プロの現場だ」って思いながら眺めていました(笑)。
――祈を演じることについてはいかがでしたか? やっぱり演じやすさみたいなところはあったのかなと。
伊藤:そうですね。祈は割とさらっとした性格をしているのでやりやすいタイプです。意外とクールで深く他人に踏み込みすぎないところや、自分にできる範囲でできる限りのことをやろうとするところとか、共感できるポイントも多くて、演じていて気持ちいいキャラクターでしたね。
――前回の第3話、今回の第9話と、共に少人数での収録だったそうですが、少人数の収録の良さというのはどんなところなのでしょうか?
伊藤:なんか、ごちゃごちゃしない良さ……みたいなのはありますね。掛け合いのところとか、人数が多いと、別に録らざるを得ない場面もあったりしますけど、人数が少ない時はちゃんと一人一人向き合った状態でできるので、より集中できる側面はあると思います。
あと雰囲気自体も違っていて、少人数の時は大人のバーのような空気感もあったりして、それも好きだったりしますね。
でも最終的には現場によるというか、皆が台本だけに集中してて会話がほとんどない時もあれば、ストーリーがめちゃくちゃシリアスでも、休憩中はずっとバカ話してることもあります(笑)。
――『ある魔女』の場合はどうでしたか?
伊藤:青山ちゃんが良い空気を作ってくれていたなと。メグのキャラクターもあると思うんですけど、青山ちゃん自身も色んな人に話しかけにいって、すごく居心地の良い現場だったと思います。
――その青山さんの収録での頑張りというのは、伊藤さんとしてはいかがでしたか?
伊藤:メグの収録って、本当に体力使うんですよね。時間も朝からで大変そうだったので、「頑張れ~」って応援の気持ちで見てました。収録で「わーっ」となった後、終わってちょっとホッとしている青山ちゃんを労うことも、私の密かな楽しみになっていましたね(笑)。
――伊藤さんの目から見てもやはりハードそうだったんですね。
伊藤:もう大変ですね。メグって、感情が急にバーンって上下したと思ったら、次の瞬間にはツッコんでボケてるっていう、1人で何もかもやっているフシがあるので。
演じるところだけじゃなく、座長として現場の空気作りとか、作品にすごくしっかり向き合っていることも分かりましたし、私自身もすごく刺激をもらえましたね。
――『ある魔女』は魔法や魔女が当たり前に存在している世界ですが、魔法や魔女に憧れのような感情を抱いたことはありますか?
伊藤:そりゃあ、魔法はあった方がいいに決まってますからね。私の場合は日々の生活の役に立つくらいの魔法なら欲しいです。火を点けられるとか、ちょっと空が飛べるとか、夜道で明かりを灯せるとか。
逆に、願いを叶えるとか死人を蘇らせるような大それた魔法は、なんか代償も大きそうで使うのを躊躇いますね。ささやかな魔法で良いです(笑)。
――もし『ある魔女』で伊藤さんが生きるなら、魔女にはどんな距離感で接したいですか。仲良くするのか、それとも怖がるのか……。
伊藤:やっぱり、仲良くしてくれるんだったら仲良くしたいですね。
ただ、それは魔女だからというよりは、純粋にその人との付き合いがしたいかどうかかなって。魔法の恩恵に預かりたいから仲良くしたい……みたいなことは、多分あまり考えないと思います(笑)。
でも『ある魔女』の世界って、基本良い人だらけなので、あの世界にもし行けたら楽しそうだなと思いますね。
――それで言うと、ファウスト様なんかはまさにお付き合いしてみたい人柄ですよね。
伊藤:そうですね。話していて人生の学びもたくさんありそうですし、特に40歳を過ぎてから、そういう人がいてくれるありがたみをようやく理解できるようになった気がします。私もメグみたいに若かった頃は、何かを言われた時になかなか良いようには受け取れなかったですね。
――物語もクライマックスに差し掛かる中、放送を楽しみにされているファンの方へのメッセージをお願いします。
伊藤:メグとファウスト様の過去など、話がどんどん核心に近づいていくタイミングなので、その中でメグがちゃんと嬉し涙を集められるのか、ご注目いただきたいです。
祈も再登場して、いろいろ活躍していくのではないかと思いますので、これからの展開をより楽しみにしていただければ嬉しいです。
――ありがとうございました。
[取材・文/米澤崇史]
連載バックナンバー
作品情報
あらすじ
十七歳の誕生日を迎えた見習い魔女のメグ・ラズベリーは、魔法の師匠であり、魔法界トップの七賢人に名を連ねる『永年の魔女』・ファウストから、突如として余命一年であることを告げられる。
メグは『死の宣告』の呪いにかかっていたのだ。
呪いによる死を免れる方法はただ一つ。手にした者に不死をもたらす、『命の種』を生み出すこと。
そして、『命の種』の材料となるのは、感情の欠片――人が喜んだ時に流す、嬉し涙。
「それで、一体どれくらい涙を集めればいいんですか?」
「千人分だ」
「......はい?」
こうして、メグは嬉し涙を集めるため、様々な人たちと関わっていく。
幼馴染みで大親友のフィーネ。
ファウストと同じ七賢人の一人――『英知の魔女』・祈。
メグと同い年にして七賢人に名を連ねる天才少女、『祝福の魔女』・ソフィ。
これは、余命一年を宣告された未熟な魔女、メグ・ラズベリーが起こす、奇跡の物語。
キャスト
(C)坂/KADOKAWA/ある魔女が死ぬまで製作委員会


















































