『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』ムオム役・片岡愛之助さんインタビュー｜「ルパン一味のメンバーはずっと色褪せなくて、それはある意味で“歌舞伎”なんですよね」

ルパン一味と“会話”できる幸せ

ーー愛之助さんは『映画妖怪ウォッチ誕生の秘密だニャン!』のトキヲ役、『ホーンテッドマンション』や『怪盗グルーのミニオン超変身』では吹き替えも担当されています。声優のお仕事に感じる面白さや難しさについて、お聞かせください。

愛之助：僕らは普段身体を使って演じて、お客様に観ていただいていますが、声だけで喜怒哀楽を表現する難しさはやらせていただくたびに痛感します。

ただ、毎回勉強になりますし、今回もすごく楽しかったです。何よりも僕自身が『ルパン三世』のファンなので、ルパンや次元、五ェ門、不二子たちと喋れるなんて夢みたいです。

ーーキャラクターのセリフを聴きながら収録されたそうですね。

愛之助：ルパン一味の声を聴けただけで感動しました。「あっ、ルパンだ！次元だ！」って。子供の頃から知っているメンバーと会話できるなんて、こんなに幸せなことはありません。

ーーできることなら一緒に収録したかったのでは？

愛之助：いやいや、キャストの皆さんと一緒にアフレコするなんて……絶対緊張しますし、恐れ多いです（笑）。

ーー今作の主題歌を担当するB’zも、愛之助さんと親交のあるアーティストですよね。

愛之助：B’zさんの大ファンなので、こういう形で共演できてすごく光栄です。主題歌の「The IIIRD Eye」もとても格好良いし、この映画にピッタリすぎます。初めて聴いた瞬間に鳥肌が立ちました。

アニメと歌舞伎。それぞれの『ルパン三世』を楽しんでほしい

ーー愛之助さんは2023年に『流白浪燦星（ルパン三世）』でルパン三世を演じられました。

愛之助：「歌舞伎の世界にルパン一味がいたら」というifの世界でルパン三世を演じさせていただきましたが、演じる中で作品の持つ力強さをひしひしと感じていました。『ルパン三世』ファンの方からも「よっ!?　待ってました！」と掛け声が飛んできたくらい。僕らも作品自体のパワーや音楽に随分助けられていたんです。

ルパン一味のメンバーはずっと色褪せなくて、それはある意味で“歌舞伎”なんですよね。声優さんも引き継がれていますし、キャラクターも年を取りません。変わらないものを演じつつ、続きや新しいお話があるところも似ています。

ーーそして、2025年9月2日より京都・南座にて、『流白浪燦星』が再演されます。

愛之助：そうですね。ところどころ変えようかなと思っています。

初演を制作する時、みんなでどう作ろうかすごく悩んで、その結果何周も回って。「洋服にしようか？着物にしようか？」みたいな話から、「歌舞伎の世界は時代劇だから、ルパン三世はまだ生きていないよね。じゃあアルセーヌ・ルパン？　それだとルパン三世じゃない！」とか。そういう会話をずっとしていました。

そんな中で、アニメを制作されているトムス（・エンタテインメント）さんから「歌舞伎の世界の中にもしルパン一味がいたら、で大丈夫です」と言っていただいたので、「これならイケるかも！」と。

アニメをリスペクトして、お馴染みの音楽は全て和楽器で演奏していますし、それぞれの衣裳も色や形にこだわりながら作っていきました。例えば、ルパンのジャケットはいろいろ相談した結果、皆さんの間で定着している赤、黄色のネクタイはエリにして。銭形なら、烏帽子（男子の袋状のかぶりもの）がハットに見えるようにフチをつけたり、トレンチコートを着ているので派手な羽織にしてみたり。

ーー初演では『ルパン三世』ファンの方も結構ご覧になられたのでしょうか？

愛之助：沢山ご来場いただきました。『ルパン三世』ファンの方、歌舞伎のファンの方それぞれに喜んでいただけたようで、千穐楽を終えた時はホッとしたことを覚えています。

ーールパン一味は神出鬼没なので、国や時代を超えても違和感がなく、歌舞伎にも馴染んでいるように感じました。

愛之助：そうですよね。実は初演の時に『ルパン三世』のメインキャストの皆さんがそれぞれ来てくださって。アニメで演じているキャストの目の前で演じるなんて滅多にないことですし、ルパン一味を演じたみんなは緊張していましたね。特に僕は栗田貫一さんが来られた日の緊張感がMAXでした（笑）。皆さん楽しんでいただけたようで、本当に良かったです。

『ルパン三世』ファンの方にはぜひ観ていただきたいですし、できれば続編も作りたいと思っています。映画のルパンと歌舞伎のルパン。それぞれの『ルパン三世』を楽しんでいただければ幸いです。

ーー最後に、映画の見どころと皆さんへのメッセージをお願いします。

愛之助：今回の映画は絵的にもハードボイルドで実写的なリアリティがあるところが魅力的だと思います。色々な『ルパン三世』ファンの方に楽しんでいただける作品になっているんじゃないかなと。

シリーズにまだ触れたことがない若い方にも楽しんでいただけると思いますし、観たら過去の作品、TVシリーズや劇場版なども観たくなると思います。その上でもう一度観ていただくと、新たな発見や楽しみがあるはずです。

『ルパン三世』を一度でも目にしたことがある方は絶対に観てください。「なるほど！」と腑に落ちる部分が散りばめられているので、同じ『ルパン三世』のファンとして喜びを共有したいです。

[インタビュー／永井和幸　撮影／MoA]

『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』作品情報

6月27日（金）ROADSHOW

あらすじ

世界地図に存在しない“謎の島”を目指し、ルパン三世たちはバミューダ海域へ向かう。目的は、これまで彼らに刺客を送り続けてきた黒幕の正体と、隠された莫大な財宝を暴き出すこと。しかし島に近づいた瞬間、狙撃によって飛行機は撃墜され、一行は死の島へと不時着する。

そこに広がっていたのは、朽ちた兵器や核ミサイルが山のように積まれ、かつて兵器として使われ、捨てられた“ゴミ人間”たちが徘徊する、世界の終わりのような風景だった。霧に覆われたその島には、24時間以内に死をもたらす毒が充満し、逃げ場はない。

島の支配者・ムオムは不老不死を掲げ、世界を選別と排除で支配しようとしていた。銃も刀も通じない“死なない敵”を前に、ルパンは過去と誇り、そして盗人としての矜持を賭けた知略の戦いに挑む。

果たして、ルパンは24時間以内にすべてを盗み出し、生きて島を脱出できるのか──。