声優
「最終巻」にあたり朗読劇「タチヨミ」の魅力をご紹介

舞台も衣装も黒のみ──! 故・松野太紀さんが主催して来た朗読劇「タチヨミ」がついに「最終巻」! ”声の表現だけ”にこだわった唯一無二の朗読劇の魅力をご紹介

2025年6月に東京・下北沢「本多劇場」で開催予定の朗読劇「タチヨミ-最終巻-」。

アニメ『金田一少年の事件簿』金田一 一役など数々の人気作品に出演していた声優・松野太紀さんによる「声優」後進育成の場であり、主催者として「声だけの芝居」に特化した究極のエンターテインメントを実現した公演です。

初公演となる2013年の「第0巻」から13年の時を経た2025年、朗読劇「タチヨミ」は突然の松野さんの訃報を受け、ついに「最終巻」となります。

主催・松野さんが不在でありながらも、松野さんの遺志を継ぎ、存在に思いを馳せて「演出・松野太紀」のまま開催されることとなった「最終巻」の朗読劇「タチヨミ」について、イチ「タチヨミ」ファンにほかならない筆者がその魅力を微力ながら綴っていきたいと思います。
 

 

朗読劇「タチヨミ」とは

まずは「タチヨミ」がどういった朗読劇であるかを簡単にご紹介します。

「タチヨミ」は声優・松野太紀さんが主催する朗読劇です。2013年に「タチヨミ-第0巻-」を開催して以降、ほぼ年1回のペースで歴史のページを重ねて来ており、2025年の「最終巻」は13回めの公演となります。

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複数本の演目から成り立っている、いわゆる「オムニバス形式」で、その構成や脚本、キャスティングにおけるまで、すべてが松野さんの手腕によるものなのです。

扱われる物語はさまざまなジャンルがあり、数分ほどの短いものから、30分ほどにもわたるものまでが取りそろえられており、実にバラエティ豊か。それらの脚本家の中には松野さん自身や、声優・三ツ矢雄二さんらの名前もあるなど、魅力にあふれています。

過去には「草月ホール」や「サンシャイン劇場」といったホールでの興行もありましたが、基本的には東京・下北沢の「小劇場B1」という135名が定員の小さな劇場で開催されており、臨場感もたっぷり。(「第0巻」「第一巻」は千本桜ホール)
 


 
この「タチヨミ」の大きな特徴は、数本のマイクスタンドのみが立ち並ぶ黒で統一された素舞台に、黒い衣装を各々身にまとった出演者たちが声だけで物語を表現していく朗読劇であるということ。小道具・大道具などほとんど存在しません。
 

 
さらに、この「タチヨミ」の目玉ともなるのは、出演者や配役が日替わりである、ということ……! 「タチヨミ」がほかの朗読劇と一線を画するのは、そんな”一期一会”感なのです。
 

1回の公演で繰り広げられるバラエティに富んだ演目が、コミカルやら風刺やらシリアスやらの多岐にわたるため、観客たちは笑ったり泣いたりと感情が忙しい……! 

言うなればまさに「感情のジェットコースター」、それこそが朗読劇「タチヨミ」の醍醐味なのです。

「タチヨミ」が「最終巻」のワケ

2024年6月、声優・松野太紀さん急逝──そのニュースはあまりに唐突で、青天の霹靂でした。

アニメ『金田一少年の事件簿』金田一 一役や『犬夜叉』鋼牙役、『スポンジ・ボブ』スポンジ・ボブ役など、数多くの人気作品に出演されていた松野さん。声優業界においても大きな損失であり、朗読劇「タチヨミ」にとっては求心力の喪失・痛手であることは想像に難くありませんでした。

年に一度行われていた朗読劇「タチヨミ」は今後どうなってしまうのか……松野さんが明日の声優を目指す人材として育てていた「タチヨミ倶楽部」の生徒たちは……? 

「タチヨミ」ファンの1人である筆者も、悲しみの中でそうした姿の見えない不安感を抱いていた矢先の2024年12月。朗読劇「タチヨミ」のX(旧Twitter)公式アカウントが突如動き始めたのです。

 


 
 
「最終巻」開催告知──! 
こうして、松野さんファンはもちろんのこと、朗読劇「タチヨミ」を愛する者、魅了されて来た者たちは「最終巻」という言葉に戦慄しながらも、開催に対する感謝の気持ちがあふれ返ることとなりました。

 
この「最終巻」は、これまで複数回開催して来たなじみのある「小劇場B1」のすぐ近くにある「本多劇場」での公演となります。松野さんと同世代でもあり、古くから交友のあった声優・皆口裕子さんからはこのような投稿も……!

 
「松野太紀演出」のまま、松野さんを愛する人々の力と支えにより、松野さんの「夢」が叶う朗読劇「タチヨミ-最終巻-」は、松野さんの1周忌を間近に控えた2025年6月開催となります。

朗読劇「タチヨミ」のココが「おもしろい」!

ふとしたきっかけでこの朗読劇「タチヨミ」を知り、観劇して以来、その魅力にすっかり取り憑かれてしまい、そこから数年 複数回通っている筆者。「芝居」に関する知識はない素人ですが、いや素人だからこそ! 「タチヨミ」について個人的に感じ取った魅力を語らせてください。

素舞台だからこそ際立つプロの声ワザ

ご紹介したとおり、「タチヨミ」のステージはすべて黒で統一されています。あるのは数本のマイクのみ。そんな「素舞台」ゆえに、より一層 出演者さんたちの演技力のみが際立ちます。
 


 
しかも、これまで数多く開催されて来た「小劇場B1」では特に、ステージと客席の距離が迫っており、臨場感がハンパない! そこへ、プロが繰り出す圧巻の「芝居力」があっという間に観客を飲み込み、ストーリーに引きずり込ませるため、相当の没入感を味わうことに……!

 
「タチヨミ」では、思わず笑いを誘うようなコミカルな演目がありながらも、最後には常に重いテーマ性を持った物語が紡がれます。長年「芝居」のプロとして活躍されて来た演者さんたちの、まさに「憑依」とでも表現したくなるワザのぶつかり合いには、虜にならざるを得ません。
 


 
今回の「最終巻」が催される「本多劇場」は、小劇場の中心的存在でもあるそうで、収容人数は「小劇場B1」の3倍ほどを誇ります。しかしながら、出演陣の熟練された芝居力に圧倒される予感しかないそのキャパシティ。ぜひ直接目撃し、体感して欲しく思います。

声優だけにあらず! 松野さんの広い人脈が垣間見える豪華出演者

自らキャスティングも手がけていた松野さん。出演依頼もご本人がするほか、信頼のおける出演者からの紹介もあったそう。そうして、「タチヨミ」出演者には毎回 名だたる実力派の声優陣が勢揃いするわけです。

また「タチヨミ」のすごいところは、出演者が声優だけではないところ。河合雪之丞さんや佐藤仁美さんといった、舞台やテレビ等で活躍する俳優さんも名を連ねているのです。そしてお2人とももちろん、松野さんの人脈からであることが、カーテンコールでしばしば語られていました。
 


 
朗読劇は、台本を持ってお芝居をする、という声優寄りの領域ではありますが、根本は同じく「芝居」。声優業ではない俳優も出演者に入ることで、新しい刺激や風を取り入れているようにも思われます。

 
さらに、最終巻ではなんとアニメ『ONE PIECE』でモンキー・D・ルフィ役を演じる声優・田中真弓さんも出演予定! 田中さんが関係者席から「タチヨミ」を観劇している姿を筆者は何度かお見かけしているので「ついに……!」と胸アツです。

日替わり配役で全員が「主役」

そんな芝居のプロたちによる声の競演が複数の演目で楽しめる「タチヨミ」ですが、それぞれの配役はなんと「日替わり」! 出演者さんにとってはなんともリスキーかつトリッキーな演出に思われますが、観客にとっては毎回が目新しく新鮮!

全員が主役──! これこそが「タチヨミ」の最大といってもいいエンタメなのです。

同じ演目でも連日、違う演者同士での掛け合いとなるため、毎回が「初回」とも言える「タチヨミ」。

同じ役でも、役者の数だけその解釈や表現方法があるため、それぞれのかけ算によって無限のエンタメが毎日毎回生まれてくるのです。まさに一期一会……!

なお、配役の発表は朗読劇「タチヨミ」公式Xアカウントでアナウンスされることもありますが、基本的には会場の座席に置かれている「香盤表」で確認することが出来ます。その香盤表ではまだ誰が演じるか決まっておらず、空欄を示す「○」のみが表記されているところも……!
 


 
誰がその役で登場してくるのか、始まってみないとわかりません。そんなところもまた、ワクワクさせられるポイント。

 
1公演だけでももちろん楽しいのですが、複数回リピートすると、また違った味わいを楽しめるため、思わず通い詰めたくなってしまうワケなのです。

楽しみのひとつ”アドリブ”

「タチヨミ」にはコメディタッチな演目が毎回含まれているのですが、それと同じくらい笑いを誘っているのが、実は演者による「アドリブ」。主催の松野さんも公認で繰り広げられる「アドリブ」の応酬を、ひそかに楽しみにしている観客も少なくないと思われます。筆者もその1人(笑)

「第二巻」から毎回出演している声優・岸尾だいすけさんにより投入されるアドリブで、散々かき回される出演者たち(笑)かと思えば、岸尾さんのアドリブ被害者たちから「アドリブ」で逆襲されたりと、演目の所要時間を大幅に越えるほどの盛り上がりを見せる時もあり、松野さんから「そろそろ終了して」の合図が飛び出したことも数知れず。
 


 
そんな愉快なアドリブの応酬ですが、「松野ファミリー」と呼んでも齟齬のないほど、みなさんの仲良し度が伝わって来る微笑ましいシーンでもあり、あえて「見どころ」のひとつとしてご紹介します。

感情を揺さぶる美しい音楽

「タチヨミ」では、生演奏が添えられる演目もあります。「第二巻」からはピアノ奏者として石川祐介さんが、「第九巻」からはフルート奏者の鎌田邦裕さんが生演奏で参加し、物語に彩りを添えています。

美しい音楽に加えて、特筆すべきは「詩唱」とも呼ばれる「歌唱」パート。ディズニー映画『アラジン』のジャスミン役等で歌声も披露している女優・声優の麻生かほ里さん、ジャズシンガーとしても活動している声優・高乃 麗さんが生歌を聴かせるシーンは必見。
 


 
ピアノとフルートの生演奏に乗せて、情感たっぷりに歌いあげられる美声に心を洗われ、浄化されるような心地よさを感じさせられます。力強くも美しい調べに思わず涙を流す観客も多く、「タチヨミ」において大きな存在感を放っています。

 
この「詩唱」には時折、主催の松野さん自身が登壇されていたこともあり、貴重な機会となっていたことも忘れられない出来事でした。

舞台転換までもエンタメ!

オムニバス形式で織りなす「タチヨミ」は、演目と演目の合間に行われる舞台転換すらもエンタメとして昇華されています。

演目ごとにマイクを動かし配置するのは、松野さんの教え子でもある「タチヨミ倶楽部」の生徒さんたち。少し懐かしい歌謡曲のリズムに乗って、きびきびとマイクを動かしていく様子もまた、観客の目を楽しませてくれるエッセンス。時には観客の手拍子も起こるなど、楽しいひとときとなっています。

この「タチヨミ倶楽部」生さんたちは、タチヨミ公演になくてはならない存在。影になり日向になりメインキャスト陣を支えるほか、エキストラ的に劇中に参加したり、群読を披露することもあるなど大活躍。
 


 
カーテンコールで、メインキャスト陣も彼らにとても助けられているような発言をしていることからも、縁の下の力持ちであることがわかります。若い彼らの活躍には今後も注目していきたいですね。

最後に

最後に、個人的にどうしても触れておきたいのは、映画「男はつらいよ」シリーズで松野さんと共演されていた俳優・北山雅康さんの存在です。

実は北山さん、これまでの「タチヨミ」の出演者欄にもなかなか名前が出ない「隠れキャラ」(笑)。そんな、いつ登場するかわからないその存在感が「タチヨミ」常連客の間では大変な人気を誇っていて、癒やしオーラ満載な人物なのです。

今回の「最終巻」ではそんな北山さんを含め、これまでの出演者・関係者が集い、松野さんの演出による”朗読劇「タチヨミ」”が披露される最後の場となります。

年に一度、恒例のように開催され、声優・松野さんによる後進育成の場でもあり「声優」という「声の力」に特化した朗読劇として推し進められてきた素晴らしいエンターテインメントだった朗読劇「タチヨミ」。

突然の悲しい知らせにより、この灯が消え去ってしまうのはイチ「タチヨミ」ファンとしても非常に寂しい気持ちが募るばかりです。

カーテンコールで、たびたび涙を見せながら深々と頭を下げ続ける松野さんの姿を目にすることは叶わなくなりましたが、誰からも愛される松野さんに思いを馳せつつ、公演を最後まで見届けたいものですね。

◆[文/おかもとみか]

この記事をかいた人

おかもとみか
2021夏デビューのオトナ女子新人ライター。ミドル層の男性声優さん関連記事を書くことが多いです。

メインキャスト

麻生かほ里さん

伊藤かな恵さん

伊東健人さん

置鮎龍太郎さん

笠原留美さん

河合雪之丞さん
河合雪之丞オフィシャルサイト

川島得愛さん

神田朱未さん

岸尾だいすけさん

北山雅康さん
合同会社イヅプロダクション

佐藤仁美さん

新垣樽助さん

鈴木真仁さん

高乃 麗さん

田中真弓さん

冨永みーなさん

中井和哉さん

名塚佳織さん

藤澤 奨さん

皆口裕子さん

山口奈々さん

吉野裕行さん

「朗読劇タチヨミ-最終巻-」公演概要

タイトル:「朗読劇タチヨミ-最終巻-」
日程:2025年6月11日(水)~6月15日(日)
会場:下北沢 本多劇場(〒155-0031東京都世田谷区北沢2-10-15)

スタッフ&出演

演出
松野太紀

出演

麻生かほ里/伊藤かな恵/伊東健人/置鮎龍太郎/笠原留美/ 河合雪之丞/川島得愛/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/佐藤仁美/新垣樽助/鈴木真仁/高乃 麗/田中真弓/冨永みーな/中井和哉/名塚佳織/藤澤 奨/皆口裕子/山口奈々/吉野裕行

青山さら/梅澤貴大/岡田詩織/尾高慶安/川口 桜/木目田俊/きゅうり/古賀 楓/佐分祐佳子/島犬/新谷美奈/長谷川天音/深澤宏允/福田知香/松野孔洋/水森拓海/山下 歩/横山冬悟/ラムダ/林藤さちこ

演奏
石川祐介(ピアノ) /鎌田邦裕(フルート)

演出助手:藤原珠恵/照明:赤田智宏(ALOP)/音響:常田千晴/舞台監督:田坂桃子/題字:絵描きしんじ/制作統括:本田裕一郎/制作:滝澤由至、佐分祐佳子

朗読劇『タチヨミ』は声優・俳優の松野太紀がステージ構成、脚本、キャストに至るまで全てをプロデュース。2013年の第0巻からスタートし、これまでに全12回(第0巻~第十一巻)公演を実施してきました。

最終巻では、演目は第0巻から前回の第十一巻公演で上演した作品から抜粋して、松野太紀の演出をそのままにお届けいたします。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

問い合わせ
Mitt TEL:03-6265-3201(平日12:00-17:00)

出演キャスト詳細

※開場は開演の30分前

・2025年6月11日(水)19:00~
麻生かほ里/伊藤かな恵/河合雪之丞/川島得愛/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/新垣樽助/高乃 麗/冨永みーな/名塚佳織/藤澤 奨/吉野裕行

・2025年6月12日(木)19:00~
麻生かほ里/伊藤かな恵/置鮎龍太郎/笠原留美/ 河合雪之丞/川島得愛/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/佐藤仁美/鈴木真仁/高乃 麗/名塚佳織/皆口裕子/吉野裕行

・2025年6月13日(金)19:00~
麻生かほ里/伊藤かな恵/笠原留美/ 河合雪之丞/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/高乃 麗/皆口裕子/山口奈々/吉野裕行

・2025年6月14日(土)13:00~
麻生かほ里/伊藤かな恵/笠原留美/ 河合雪之丞/川島得愛/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/新垣樽助/鈴木真仁/高乃 麗/田中真弓/中井和哉/藤澤 奨/皆口裕子/吉野裕行

・2025年6月14日(土)18:00~
麻生かほ里/伊藤かな恵/笠原留美/ 河合雪之丞/川島得愛/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/新垣樽助/鈴木真仁/高乃 麗/中井和哉/藤澤 奨/皆口裕子/吉野裕行

・2025年6月15日(日)13:00~
麻生かほ里/伊藤かな恵/伊東健人/笠原留美/ 河合雪之丞/川島得愛/神田朱未/岸尾だいすけ/北山雅康/新垣樽助/鈴木真仁/高乃 麗/名塚佳織/藤澤 奨/皆口裕子/山口奈々/吉野裕行

チケット料金

全席指定
前売 8,800円(税込)
当日 9,300円(税込)
未就学児入場不可。

※車椅子でご来場の際は、お座席までのスムーズなご案内のため、チケットご購入後、必ずご観劇の2営業日前までにご連絡ください。お連れ様がご観劇される場合もチケットが必要です。
<ご連絡先>
Mitt TEL:03-6265-3201(平日12:00-17:00)

チケット取り扱い
イープラス

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