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『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』脚本・高橋悠也インタビュー

“神出鬼没”のルパン三世を信じるなーー『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』脚本・高橋悠也さんインタビュー

 

裏テーマは「闇」。ルパン三世という人物を再定義したい

──小池監督からのオーダーはあったのでしょうか?

高橋:特に話し合ったのは、石井さんのアイデアをどう具現化するかという部分ですね。小池監督はかつて一緒に仕事をしたこともあって、石井さんをすごくリスペクトしているんです。ムオムのデザインが物議を醸した時も、「ぜひこれで!」とおっしゃっていて。ムオムは石井さんが発想し、小池監督が最後まで守り抜いたキャラクターだと思います。

──ムオムのそばにいる少女・サリファ(CV.森川 葵)は、見た目の可愛らしさとは裏腹に不気味な雰囲気です。

高橋:彼女も石井さんのデザインにありましたね。殺し屋がルパン一味を次々狙ってくるというシリーズを通したフォーマットの中で、「ムオムに仕えている少女って何だろう?」と考え、マモーに繋がる世話係みたいな役割になりました。

『ルパン三世 ルパンVS複製人間』におけるクローン人間についての考え方が、マモーの根底にあるものだと思っていて、それに繋がるような敵側のキャラクター造形をしていこうと。『銭形と2人のルパン』における“もう一人のルパン”もそうですし、サリファに関してもそういった意味合いがありました。

 

 

──『ルパン三世』の映画らしい手に汗握るスリルがありながらも、メッセージも込められていて。

高橋:ストーリー上では描いていませんが、“小池ルパン”シリーズの各作品に僕の中で裏テーマを作っていました。

アニメ制作のTMS(トムス・エンタテインメント)さんから各キャラの設定やキーワードが書かれた1枚の紙をいただいた時、「次元は猛禽類である」と書いてあったんです。猛禽類といえばタカやワシなので、風が似合うなと。五ェ門は「犬」と書いてあったので、テーマを「水」にしました。荒波に佇む五ェ門やししおどし、雨が降ったりするシーンを入れています。不二子は「猫」だから「砂」の世界、銭形は「狼」だから「雪」をテーマにした物語。各キャラクターのイメージと国を合体させていったんです。

では「ルパンは何だろう?」と。彼は「猿」ですが、「森」や「猿山」というのも短絡的で物足りなく感じたので、そこから色々考えて、最終章なので「闇」をテーマにしました。

──「闇」ですか。

高橋:世界の「闇」や政治の「闇」など、我々が知らない世の中の「闇」を表わせる世界観にしたくて、生まれたエピソードです。

──本作はここまで続いてきた『LUPIN THE IIIRD』シリーズの総決算的な立ち位置なので、物語をまとめるのは大変だったのでは?

高橋:難しさと同時に、「ここまでたどり着いた」という達成感もありました。僕が携わった「次元大介の墓標」(2014年公開)でマモーの伏線をまいて、「血煙の石川五ェ門」(2017年公開)でサリファのことを少しちらつかせて、「峰不二子の嘘」(2019年)では地図にない島の話を……という感じに、ちょっとずつ出していったことをようやく回収できたんです。

 

 

── 一方で、ラストは「THE END」という締めくくりではなく、この後もお話が続いていくように感じられるのもいいなと。

高橋:この映画が興行収入100億円を超えれば、続きをやるかもしれません(笑)。
元々このシリーズには、それぞれのキャラクターを主人公にしっかり据えて、「こういう人なんだ」という魅力を改めて描く意図がありました。

今回は、僕の中で「ルパン三世はどういう人物なのか」を深堀りして、再定義したかったんです。

冒頭の「この世には信じてはいけないものが3つある」から、最後の「もう1つ信じちゃいけないものがある」というセリフで締めたところに集約されていますが、「皆さんは本当にルパン三世を知っていますか?」ということを問いたかった。もちろん僕自身もわかりませんし、分かるはずもないキャラクターであってほしいんです。

そして、長くたくさんの方に愛されてきた作品だけど、ずっと側にいるわけではないんだよと。ずっと信じていたものに裏切られる気持ちを僕自身が味わいたかったのかもしれませんね。そのうえで、『ルパンVS複製人間』にも繋がっていけばいいなと。続きを予感させたかったというよりは、「今度はいつ会えるかわからないよ」という読後感にしたかったんです。

 

今まで以上にルパンを追い込む。『ルパン三世』でしか描けない物語

──完成した映像をご覧になった感想はいかがでしたか?

高橋:小池監督は僕が最大にリスペクトしている監督の一人なので、いち視聴者としても楽しませていただきました。監督によってはシナリオを自分流に変えて作り直す方もいますけど、小池監督はシナリオを守ってくださる方で、基本的にはこちらが描きたいことを汲んで描いてくれます。そういう意味でも、「みんなで集大成になる作品を作れた」という達成感がありました。5年前に書いたシナリオがフィルムにのって、懐かしさと同時に、5年前に書いたものでも色あせない作品になったのは凄いと思いました。

 

 

──こんなに前のめりで観た『ルパン三世』は初めてでした。ルパンがピンチになっても「どこかで何とかするだろう」と思えますが、「今度こそヤバいかも」とハラハラする瞬間も多くて。

高橋:僕としては今までもピンチになる瞬間が何度もあったからこそ、「もっと追い込まなきゃ」という気持ちが強かったです。石井さんが作ったキャラクターもクセもの揃いですから、「どう動かそうかな」と考えていくうちに、自然とルパンたちが追い込まれる作品になったのだと思います。

“小池ルパン”はぶっ飛んだキャラクターでも、いてもおかしくないリアリティを感じますよね。だからこそ、そこに訪れる危機もヒリヒリするリアリティが必要だと思っています。これまでの『ルパン三世』でも血を流したり、死にかけたことは何度もありますけど、現実離れしすぎると、「すぐ回復するでしょ?」と安心して観てしまいます。危機にリアリティがあるほど、「本当に死ぬ?」「こんな状況、回避できるはずない!」と思わせる没入感を与えられるのかなと。そういう意味では、キャラクターが生身の人間であるということを追求したシリーズでもあったと思います。

──高橋さんはアニメや特撮、実写ドラマ、主宰する劇団の演劇など、多種多様な脚本を手掛けられていますが、やりがいや面白さは何でしょうか?

高橋:メディアによって脚本の作り方は違いますが、基本的には原作ものか、オリジナルかの違いだと思っています。今回の『ルパン三世』について言えば、非常に挑戦しがいがある分野で、キャラクターという原作はあるけど、エピソードはオリジナル。それが『ルパン三世』の脚本を作る上でのやりがいであり、面白さでもあります。『ルパン三世』でなければならない、『ルパン三世』だからこそ描ける物語をいかに追求していくか。自由度は比較的高いですが、他の作品でもできるものではいけない。ある意味、最大公約数を狙っていくような脚本の作り方になりますね。

 

 

──最後に、今作の見どころや注目ポイントをお聞かせください。

高橋:今作は、小池監督と一緒に作り上げた『LUPIN THE IIIRD』シリーズの集大成です。『次元大介の墓標』『血煙の石川五ェ門』『峰不二子の嘘』『銭形と2人のルパン』、劇場版第一作目の「ルパンVS複製人間」を観てからこの映画を観ていただけると120%楽しめると思います。過去4作とは違う不気味な敵も登場しますので、この世界の謎解きをルパンと一緒に楽しんでいただけると嬉しいです。

TVや映画など、これまで数えきれないほど『ルパン三世』のアニメを観てきたと思います。それは決して当たり前のことではなく、“神出鬼没”のルパン三世は、もしかしたら二度と僕たちの目の前には現れないかもしれません。今作を観る前に、まずはルパン三世を疑うところから始めてみてください。

[インタビュー/永井和幸]

『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』作品情報

LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族

あらすじ

世界地図に存在しない“謎の島”を目指し、ルパン三世たちはバミューダ海域へ向かう。目的は、これまで彼らに刺客を送り続けてきた黒幕の正体と、隠された莫大な財宝を暴き出すこと。しかし島に近づいた瞬間、狙撃によって飛行機は撃墜され、一行は死の島へと不時着する。

そこに広がっていたのは、朽ちた兵器や核ミサイルが山のように積まれ、かつて兵器として使われ、捨てられた“ゴミ人間”たちが徘徊する、世界の終わりのような風景だった。霧に覆われたその島には、24時間以内に死をもたらす毒が充満し、逃げ場はない。

島の支配者・ムオムは不老不死を掲げ、世界を選別と排除で支配しようとしていた。銃も刀も通じない“死なない敵”を前に、ルパンは過去と誇り、そして盗人としての矜持を賭けた知略の戦いに挑む。

果たして、ルパンは24時間以内にすべてを盗み出し、生きて島を脱出できるのか──。

キャスト

ルパン三世栗田貫一
次元大介:大塚明夫
石川五ェ門:浪川大輔 
峰不二子:沢城みゆき
銭形警部:山寺宏一
ムオム:片岡愛之助
サリファ:森川葵
ゴミ人間:鈴木もぐら(空気階段) 水川かたまり(空気階段)

原作:モンキー・パンチ (C)TMS
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