
『追放者食堂へようこそ!』連載インタビュー第4回:バチェル役・松田颯水さん|「けれど、あなたは死なないほうがいい」──アトリエの言葉から感じる、バチェルを救った「温かい輪」
2025年7月3日から放送スタートとなった、TVアニメ『追放者食堂へようこそ!』。超一流の冒険者パーティーを追放された料理人デニス(CV:武内駿輔)が、憧れだった食堂を開店し、看板娘のアトリエ(CV:橘茉莉花)とともに、お客さんに至高の料理を提供するという“新異世界グルメ人情ファンタジー”です。
重厚なストーリー展開に加え、作中に登場する美味しそうな料理も本作の魅力のひとつ。アニメーション制作を、食欲そそる料理作画にも定評があるOLM Team Yoshiokaが担当するなど、深夜の飯テロアニメになること間違いなしです!
アニメイトタイムズでは、アニメ放送後に掲載されるインタビュー連載を実施。連載第4回、第4話「じゃあ、日替わり定食で」の放送後は、頑張り屋の苦労人魔法使い・バチェルを演じた松田颯水さんに、エピソードを振り返っていただきました。
闇の部分もしっかり描き、美味しいご飯で引っ張り上げるアニメ
──松田さんが感じた、原作の印象・魅力からお聞かせください。
バチェル役・松田颯水さん(以下、松田):まず、ご飯という生命力の源と、登場人物たちの抱えている影があまりにも対照的で、その陰影に驚いてしまいました。
作品的に、美味しいご飯がメインで、隠し味程度の闇=人が抱えているしんどさ、のようなものが描かれるのかな?と思っていたら、光と影のどちらもが強く描かれていたんです。だから、「闇がこんなに大きく描かれているご飯モノってあるんだ!」というのが第一印象でした。
──特に松田さんが演じられたバチェルは、闇の部分が大きかったかもしれません。
松田:大きかったですね。まさかここまで闇が深いとは思いませんでした……。でも、このような暗い部分から引っ張り上げてくれるものが、「ご飯の美味しさ」なのかなとも思います。
もしかしたら、視聴者の方の中には、過去の悲しい記憶を思い出してしまう方もいるかもしれない。そう感じるほど、バチェルには強い“影”を感じました。
でもだからこそ、その影を乗り越えて前に進む“きっかけ”として、ご飯の存在が描かれているのだと思います。
──確かに、イヤなことがあっても、美味しいご飯を食べれば忘れられるかもしれません。
松田:本当にそうですよね! 自分は結構ご飯をおざなりにしてしまいがちというか、バタバタしていると「ご飯はいっか」と諦めてしまうので、しっかり食べなきゃダメだなと、改めて思いました。
──あまり食に興味がないのですか?
松田:元々あまり興味はなくて……。3、4年前に「ご飯って大事かもしれない!」と気づいたくらい、食にこだわりなく生きてきたんです。だから優先順位も低かったのですが、今は美味しいご飯を食べたいと思うようになりました。
──そう思うようになったきっかけはあるのですか?
松田:ある方のお家に遊びに行って、手作りご飯を食べさせてもらったときに「美味しい……!」って思ったんです。私自身、あまり自炊をしないタイプだったので、料理が得意な方に呼んでもらって食事をしたときに、泣きそうになってしまって。
こんなに安心できて、食べるだけで「もうちょっと頑張ろう」と思えるものがあるんだ、と。これがきっかけですね。なのでその方には頭が上がりません(笑)。
──まさにバチェルにとっての「冒険者食堂」ですね。その経験から、ご自身でもご飯を作るようになったり?
松田:いや、下手なままです(笑)。でも、そこから人に甘えられるようになりました。料理が得意な人がいたら、「料理得意なの!? 食べに行っていい?」みたいな。
──料理を作る人は、「誰かに食べてもらうこと」が原動力でもあると思うので、そうした言葉が返ってくると、きっと嬉しいと思います。
松田:そうなんですか! でも確かに「さっつんは、食べたいものとか好きなものを明確に伝えてくれるから嬉しい」と言われたんですよね。「何でもいいよ」と言われると困るらしいんです。
あと「食べているときに、ものすごく喜んでくれるから、やりがいがある」と言ってもらったことがあるので、大切にしなければと思いました(笑)。
──松田さんの料理に対する向き合い方は、ヘンリエッタ(CV:鈴代紗弓)に似たものがありますね(笑)。
松田:確かに! 料理人冥利に尽きるって感じですかね(笑)。
──(笑)。ではここで、バチェル役のオーディションについても伺わせてください。
松田:バチェルについては最初、昔の自分に似ているなとも思って、重ためのニュアンスで作っていきました。ただ、関西弁風の訛りを持っているキャラクターだから、もう少し明るめに作ってもいいのかもしれないと、事務所の方と相談しつつ、2パターンの音源を録ったんです。
その状態でスタジオオーディションに進んだのですが、スタジオでのテストテイクのとき、関西人みを出したほうがいいのか、暗い雰囲気を出したほうがいいのか悩んでしまって……。
“異世界モノ”において、関西弁のキャラクターが担う役割がある、と思ったので、関西弁ならではの少し明るいイメージのバチェルを出してみたんです。そうしたら「関西弁っぽい訛りはあるけれど、この子の中にある自信のなさ、自分を否定してしまう感じを大切にしたい」というディレクションをいただいて。ちょっとだけ悔しかったんですよね。なぜ明るめのほうを選んでしまったんだろうって……。
──なるほど……。
松田:そのあとはもう一度冷静になって、最初に自分で作ったバチェルちゃんを出していったら、そこからはディレクションもなく、スーッとオーディションが終わったんです。
そのときは「やっぱりテストで、自分が思ったままを出していたほうが良かったやろうか……」と、これもバチェルちゃんっぽい思考なんですけど、考えてしまって(笑)。でも、そこで一度気持ちを切り替える時間があったからこそ、良かったんだなと思っています。最終的に役をいただけて、自分が最初に思っていた“バチェルちゃんの雰囲気”がしっかりと届いていたんだと感じられて……とても嬉しかったですね。
──良いエピソードですね。
松田:あとで音響監督の小沼則義さんにオーディションのことを聞いたのですが、「松田さんには元々、“このベース”があったんだろうなというものを(ディレクションをしたあとに)出してきたので、無理に暗めに作った演技ではない、というのが伝わってきました」と言ってくださったんです。それもバレてるんやなぁって思いました(笑)。
──ちなみに、関西弁のキャラを演じることは多いのですか?
松田:多いですね。事務所に入った頃は「関西弁を直しなさい」と言われていたのですが、作品の関西弁指導などのお仕事をさせていただくうちに、「関西弁を忘れないでほしいから、直さないで大丈夫」と言われるようになりました(笑)。なので、今や毎日バキバキの関西弁で話す人になっています。
──アニメでも関西弁キャラって多いですからね(笑)。
松田:本当にありがたいことに、アニメの世界では、異世界でも関西弁のような訛り方をするキャラクターがよく出てくるので嬉しいです。
でも、関西弁の“ような”だから、バチェルちゃんも、バキバキの関西弁に直していないところもあるんですよ。そこは原作準拠で、言葉は関西弁の流れではないけれど節だけは関西弁で付けたりすることはありました。
















































