
『追放者食堂へようこそ!』連載インタビュー第4回:バチェル役・松田颯水さん|「けれど、あなたは死なないほうがいい」──アトリエの言葉から感じる、バチェルを救った「温かい輪」
ヘヴィな内容の第4話。救われたアトリエとのやり取りの秘話
──松田さんから見て、バチェルはどのようなキャラクターでしょうか?
松田:常に「私なんて……」という気持ちがどこかにある子なんですよね。だけど、根っから暗いわけではないとも思っているんです。
自信がなくて、自己肯定感も高くない……初めて「冒険者食堂」に足を運んだとき、常連さんとデニスのやり取りを見て、「あたしなんてたまの休日は一日中寝てるし、友達もおらんし……」と思ってしまう。でも、そのすぐあとに「こういうお店に通うところから始めてみよっかな」と言うんですよね。それって、どこか前向きなメンタルがある人だから、という気がするんです。
それでもバチェルちゃんはきっと、私なんて明るくないし、そんなポジティブじゃないよ、と言うと思いますが、根っこにそのメンタルがあるから、愛されるのかなと思っています。
──そんなバチェルも、ネガティブな感情に追い込まれて、限界を迎えてしまいました。
松田:助けてくれる手を掴める性格なはずなのに、追い込まれすぎて、それも拒絶してしまっているような気がしましたね……。
──ブラック企業のような環境で働き、追い詰められていくというのも、どこか現代の社会問題にも通じるエピソードでした。
松田:追い込まれると、本来の自分の良さを出しにくくなってしまうので、バチェルちゃんもそうなってしまっただけなんだと思います。みんなの期待を一身に背負って街を出てきましたから、それだけ愛されるキャラクターだったはずなんです。
──故郷のみんなからも期待されていたから、余計に追い詰められてしまって……。
松田:それも大きかったでしょうね。あと「他人から求められている自分になろう」とこだわり過ぎてしまう部分もあったのかな、と思います。
自己肯定感が高いと、それをはねのけて前に進むこともできると思いますが、「自分なんて……」と思っていると、相手が求めている自分になったほうが、関係が良好になる気がしてしまうんですよね。それがバチェルちゃんの中にもあって、さらに意見を言えなくなってしまったのかなと思いました。
──演じていく中で、バチェルの気持ちに重なるような瞬間はありましたか?
松田:私も昔はそうだったと思います。デビューしたばかりの頃だから、もう10年くらい前になりますが、自分に確固たるものがないから、求められていることに応えなきゃと思って、ノーと言えない気持ちがとても強かったんです。そこは、バチェルちゃんと似ているところだな、と思っていました。
──すでに第4話の内容にかなり踏み込んでしまったのですが、改めて、第4話の台本を読んだときのお気持ちをお聞かせください。
松田:すごくヘヴィでした。そして「夜の霧団」が、真っ直ぐにブラックでしたね……。物語の感想でいうと、バチェルちゃんがデニスさんに救われる展開ではないんだなということに驚いていました。
第4話は、デニスに影響を受けた人たちが助けに来てくれて、気にかけてくれるお話だったんですよね。バチェルちゃんが死のうと思って飛び降りたときに、物理的に救ってくれたのはビビアさん(CV:伊瀬茉莉也)とヘンリエッタさんだったけれど、そのことにまだ心が追いついていないところで、アトリエちゃんが声を掛けてくれる。
ここが、第4話の中で、一番苦しいところだったと思うんです。もちろん理不尽だし、めっちゃしんどいことはあったけど、バチェルちゃん的に、息が止まりそうな瞬間って、このアトリエちゃんとの会話だったんじゃないかなって。
自分が一番しんどいと思っていたけれど、目の前にいるこの華奢な女の子が、「こんなにもつらい思いをしてきていたんだ」と思っただろうし……ここで背中を押してくれるのが、そんなアトリエちゃんというのが、めっちゃいいなと思いました。
──アトリエも「死んじゃダメだよ!」ではなく、「自分はこうだったよ」と伝えて、あとは「あなたの意思を尊重する。けれど、あなたは死なないほうがいい」と諭すように言うんですよね。
松田:ここのアトリエちゃんのセリフですが、収録時のディレクションも覚えているんです。「あなたは死なないほうがいい。アトリエは、そう思う」というセリフを、橘さんは当初、想いを込めて伝えてくれていたのですが、それに対して、「淡々と“あなたは死なないほうがいい”と伝えるだけにしたい」と話されていたんです。
制作陣の皆さんの考え方、そしてそれを受けての橘さんのお芝居が本当に良くて……。「強く語りかけたからといって、受け止めてもらえるわけではない」というのが、一番深く刺さったポイントでした。
──デニスの周りには、本当に良い人が集まってくるんですね。
松田:デニスさんが広めた温かい輪が、バチェルさんを救ってくれた気がします。
──最終的に、理不尽な「夜の霧団」に話を付けたのもデニスでした。
松田:そうですね! 本当に力強いし、動かぬ大きな柱でいてくれるんですよね。「夜の霧団」を抜けるためにバチェルちゃんが直接やり取りをしたわけではなく、デニスさんが一番大変なことをしてくれたので、「おおきに」という感じです(笑)。
──「夜の霧団」が引いたきっかけのひとつとして、「銀翼の大隊」副隊長ケイティ(CV:安済知佳)の存在も印象的でした。演じる安済さんのお芝居も含めて、松田さんはどのように感じられましたか?
松田:実は私、ケイティさんが気になっているキャラクターなんですよ! そんなに煙に巻くようなキャラクターではないのですが、底が知れないしミステリアスなんですよね。クールなミステリアスではないのに、常に目で追ってしまう雰囲気もある。安済さんのお芝居も相まって、次のセリフをどう言ってくださるんだろう、どんな動きをするんだろうって楽しみになっていました。もう少し、バチェルちゃんとの絡みも見てみたかったですね(笑)。















































