
TVアニメ『ワンダンス』原作者・珈琲先生、モーションキャプチャを担当する伊折役のYOUTEEさん、壁谷役のYU-KIさん、Shigekixさんにインタビュー|ブレイキン、そしてコミュニケーションとしてのダンスについて語る
珈琲先生から3人に質問タイム「2on2を組むなら…」
ーー折角の機会なので、皆さん同士で聞いてみたいことがあればぜひ。
珈琲:質問というより、伝えたいことなんですけど……Shigekixさんを高校生のときにテレビで見て、めちゃくちゃ感動したんですよ。たしか、高校に芸人のダイアンさんが来たことがありましたよね?
Shigekix:ありました。かなり前のことですが(笑)。
珈琲:たまたま見ていたんですけど、ダイアンの津田(篤宏)さんが鈴木雅之さんの歌を歌っていて、そのバックでShigekixさんがブレイキンをしていたんです。
津田さんが歌っている間はずっとトップロックしていて、曲がブレイクに入った瞬間にフロアに入って。完全にブレイキンの起源を体現しているじゃないですか。誰にも伝わらない可能性だってあるのに、「ここまでやるのはすごい」と思いました。
Shigekix:いや、そこに注目していただけたことがすごいです(笑)。
珈琲:無意識かもしれませんけど……そうですよね?
Shigekix:そうです。大前提として、本当にブレイキンを好きな人たちに「その感じでブレイキンが世の中に伝わっちゃうんだ」と思われるのは避けたいと思っていて。特に、オリンピックが近づくにつれて、いろいろな場所でブレイキンをやる機会が増えたんです。それはすごくありがたいことですけど、だからこそリアルにこだわりたかった。
例えば、J-POPを踊るとしても、そのままではなく、リミックスしてブレイクビーツを入れてもらうとか、ブレイク部分で踊るとか。1年前、郷ひろみさんと「紅白歌合戦」で共演したときも、そういう“特別バージョン”で対応していただきました。あくまで「これはブレイキンだ」と思える内容にしたかったんです。格好良いと思えるものであれば、新しい試みとして受け取っていただけるというか。いろいろなカルチャーを取り入れていくのが、ブレイキンやヒップホップカルチャーの良さだと思うので。
バスケのユニフォームを着るとか、バッシュを履くとか。カルチャーを取り入れること自体はむしろポジティブ。でも、“取り入れ方がイケてるかどうか”って、めちゃくちゃ重要視するところなんですよ。そこを間違えると、リアルじゃなくなってしまう。それは当時からずっと意識していました。
珈琲:すごい。高校生の段階でそこまで考えているというのは……。
ーーそれをテレビ越しに偶然見ていたというのも、すごいご縁ですね。
珈琲:そうなんです。ダイアンさんが好きなんですよ(笑)。それでたまたま観ていて。
Shigekix:一番うれしいです(笑)。無作為なタイミングで出会えるって、何よりありがたいことだと思います。
珈琲:もうひとつ、3人全員に聞いてみたいんですけど『ワンダンス』のキャラの中で2on2を組むなら、誰と組みたいですか?
YU-KI:みんな上手すぎて、迷いますね……。
珈琲:YU-KIさんは、パワー系が得意ですよね?
YU-KI:そうですね。だから自分とスタイルが違う人でもいいなって思っていて。たとえば湾田さん。壁谷役として選ぶのであれば、(壁谷と)同じ要素を持っていたり、噛み合うところもあれば合わないところもあったり……。そういう関係性も面白いと思います。
YOUTEE:僕は恩ちゃんです。ダンスの感じ方、音楽に対するアプローチとか、すごく共感できる部分があって。伊折役として、一緒にポップをやってみたいと思います。
Shigekix:僕は伊折としてのYOUTEEと組んでみたいですね。質問から逸れてしまって申し訳ないんですけど、YOUTEEとは同世代で、小さい頃からよく一緒になる機会があったんです。でも活動の仕方がさまざまで、今やっと「KOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)」として一緒に活動できています。メンバーのISSEIもそうなんですけど、面白い形で交わっているので、2on2で出てみたいって思います。
珈琲:それはもう、今すぐ見たいですね。
Shigekix:じゃあ次はモーションキャプチャーの中で……(笑)。
珈琲:最高です(笑)。もうひとつ、漫画で「B-BOYがすげえ!」となるような要素、何か取り入れたら面白いネタってありますか?
技じゃなくてもいいんですが、「これってB-BOYならではだよね」みたいなやつがあれば教えてほしいんです。たとえばフットワークのときって、みんな手を地面につけるじゃないですか。あれを素人がやると、めっちゃ痛いんですよ(笑)。でもそういうことって、読者は意外と知らないように思っていて。あるいは、自分だけのシグネチャーでもいいし、マニアックな“つなぎ方”があったらぜひ教えてください。
YOUTEE:既に“あるある”はふんだんに入っていると思います。
YU-KI:ですね。
Shigekix:そうですね……例えば「壁で踊る」とか?
僕たちは小学生のとき、学校の壁とかを使ってつないだりしていました。それと、温泉やプールに入ったときに浮きながら動きを試すとか(笑)。シミュレーション的なことが結構好きで、そこからヒントを得てクリエイトしていますね。
珈琲:へええ……! 無重力状態だからこそできる技を、ってことですよね。それを実際に試したらできることもあるんですか?
Shigekix:大体できないです(笑)。理想が先行しているので。ただ、そこにもヒントがあるかもなと。実際にやりながら、「あ、これいけるかも」と試していくような方法と、想像してからやってみる方法が半々くらいなんです。常に想像はしているので、「できなかったから、もう少しこうしてみよう」みたいな感じで、“想像→試す、想像→試す”がルーティンになっています。ブレイキンは「やってみよう」でやると、怪我することもあるので、ちゃんと想像してから段階を踏んで試します。彼(YU-KI)なんかは特に、命がけなこともあるので。
珈琲:じゃあ、頭に思い浮かんでも、いきなり本番ではやらないですか。
YU-KI:やらないです。足の甲で着地するアクロバットがあるんですけど、それをやりすぎたせいか、整体で「足の甲の靭帯が薄いですね」と言われたことがあります(苦笑)。(Shigekixに)怪我したことある?
Shigekix:僕は比較的少ない方でしたけど、ちょうど1年前くらいに練習で“ワープ”っていう動きをやっていた時に肩を脱臼したことはありましたね。スタイルに依ると思います。
ーー最後に『ワンダンス』の放送を楽しみにしている皆さんに向けて、お一人ずつメッセージをください。
YOUTEE:ダンスにはすごく大きな力があると思っています。作中でも描かれている「ダンス=コミュニケーション」という部分は、僕も実感していて。僕は英語が全く話せなかったんですけど、海外に行ったとき、ダンスだけで現地の人たちと繋がれて、コミュニティもどんどん広がっていきました。自己表現が苦手な人にもダンスは本当におすすめなので、作品を通して、そんなダンスの魅力にぜひ没頭してくれたら嬉しいです。
Shigekix:実際に踊っているシーンはもちろん注目していただきたい部分ですけど、踊っている瞬間だけがダンスじゃないんですよね。ブレイキンやダンスのコミュニティって、カルチャーそのものなんです。テクニックだけじゃなくて、そこから生まれる出会いや学び、コミュニケーションで、そういう全てを含めてのカルチャー。僕は普段からそういうことをよく言っているんですけど、『ワンダンス』のように、物語や登場人物がいて、それぞれが成長していく姿を通じて、観る人にも自然とそういったメッセージが届くんじゃないかなって。アニメ化によって、動きそのものの魅力もより感じていただけると思います。
YU-KI:僕はすごく人見知りで、もともと無口なタイプなんですけど、ダンスがあったからこそ、人とコミュニケーションを取れるようになったんです。だからこそ、『ワンダンス』を読んでいて自分を見ているような気持ちになりました。いろいろな登場人物がいるので、自分を重ねながら観られる作品になっていると思います。これをきっかけにダンスを始めてくれる人が一人でも増えたら嬉しいです。ぜひ観てください。
ーー珈琲先生、最後にいかがでしょう?
珈琲:いや、もう全部言っていただきました(笑)。みなさんもこう言ってくれているので、ぜひご覧ください。
一同:(笑)
[インタビュー/逆井マリ 撮影/胃の上心臓]
『ワンダンス』作品情報
2025年10月より毎週水曜よる11時45分~
テレビ朝日系全国ネット“IMAnimation W”枠ほかにて放送開始!
※一部地域を除く















































