
夏アニメ『うたごえはミルフィーユ』に込めた“想像の余白”と“コンプレックス”のリアル|山中拓也さん&手鞠沢高校アカペラ部キャスト6名が語る青春のかたち【インタビュー後編】
それぞれのキャラクターの、今後の見どころは?
──須藤さんが演じているアイリは、ここまでだと、何でもできる完ぺきな人という印象です。
古城愛莉役 須藤叶希さん(以下、須藤):アイリちゃんのすごいと思うところは、人が必要としているもの、相手が今欲しい言葉やモノを与えてあげられるところなんです。ウタちゃんを誘うシーンもそうですけど、人の心を読み取ることがすごく上手な子だなと思いました。あとは、第2話のコーラス練習をさせるところも、自分がアクションするわけではないけど、ひとつ自分が投げて、みんながどう思うのかを大事にしている。部を成長させるにはどうすればいいかを俯瞰で見られているところが、アイリちゃんのすごいところだし、能力だと思いました。
ただ、そんなアイリちゃんも、人に対してアクションはできるけど、自分のことはあまり語らないんですよね。だから何を考えているのかが見えてこないんです。弱みを見せないから、人からも介入されないし、影響もされない。自分の中で考えが固まりがちなのかな?って、これは私が個人的に思っている部分なんですけど、それがどうなるのか。みんなと関わる中で影響されることもあるので、そのあたりは楽しみにしていてほしいところです。
──ウタについてですが、第3話までだと、ザ・ネガティブ少女ですね。
綾瀬:第3話まででウタを説明するのは難しいんですけど、そもそもウタちゃんはネガティブで、いろんなことをマイナスに捉えてしまう子なんです。歌うことが大好きな女の子で、軽音部に入ろうとしたけれど、入れなかった。でも初対面のアイリちゃんに「歌える部活の部長をしております」と言われただけで付いて行くのって、すごいことだと思うんです。私なら、そのくらいでは付いていかないので、意外とウタは、好きなことに対しては正面から向き合えるタイプなんだなと感じました。
第1話の最後で、アイリとレイレイとムスブのハーモニーを聴いて、アカペラ部に入ろうと決意するので、ネガティブだけど勇気がある子なんだなと感じました。また第3話の最後で、クマちゃんのために掛けた言葉で、クマちゃんを傷つけてしまうシーンがあるんですけど、そこでも、しっかり人の気持ちを考えられる子なんですよね。人のことを考えて共感できる。それは私にはそこまでないところなので、ウタちゃんの魅力なのかなと思いました。
──レイレイ(近衛玲音)は、アイリに甘いということ以外がまだ見えないですね。
松岡:レイレイはサポート的な役割に回ることが多くて、第3話までだと、説明をしてくれている子なんです。アカペラについてとか、和音についてとか、アイリがやっていることの補足しているので、俯瞰して状況や物事を見て、それに対して適切に動ける、何でも器用にできてしまう子なんだろうなと思いました。
その中で、ムスブと話すシーンが一瞬あるんですけど、ムスブと話すときのレイレイの様子が好きなんです。ムスブと話すときだけ、むず痒そうなんですよね。そこがレイレイの中で新しい感覚というか。新しい刺激に繋がっているんです。ムスブから出てくるピュアな言葉を受け取り、それをどう感じてどう動いていくのか、今後に注目してほしいところです。
──ウルルとムスブは、先程話していたシーンが楽しみですが、ここまではいかがですか?
花井:ウルルはMe Tubeをやっているおかげでアイリ先輩に見つけてもらったし、その動画でちょこっとやっていたボイパを見つけてくれたので、アイリさんの先見の明がすごすぎますよね(笑)。ちょっとしか視聴者がいない上に、ちょっとしかやっていないボイパに可能性を見い出すって、ある意味面白ポイントでもあるんですけど、ウルルの転機にもなったかなと思いました。
夏吉:ムスブは攻撃的なところはあるけど、音楽に対して純粋でピュアなだけで、人との接し方や距離感は苦手なんですよね。だからイヤな子には見えない。ムスブもコンプレックスはあるんだけど、それとはそんなに向き合わないタイプなのかなと思っています。ただ歌への情熱を貫くために、少しずつ生き方はうまくなっていくので、楽しみにしていてほしいです。
──クマちゃんは、重い悩みを抱えての登場でしたけど、第3話を演じてみていかがでしたか?
相川:今まで誰にも声を聞かれないようにしていたクマちゃんが、ウタちゃんに見つかってしまい無理をして高い声でごまかしたり自虐的に「じゃあ、交換する?私の声と」という台詞はクマちゃんの事を思うととても辛かったです。
アカペラ部のメンバーに出会う前のクマちゃんはまだ高校一年生にも関わらずこんなに重い苦しみを抱えながら過ごしていたんだなと改めて実感しました。
──最後に、山中さんにTVアニメ『うたごえはミルフィーユ』の楽しみにしてほしいところを語っていただければと思います。
山中:TVアニメ『うたごえはミルフィーユ』の原作は、ゆっくりしっかり作らせていただけていて、過度に劇的にするわけでもなく、派手にするわけでもなく、というのを許してもらえた作品なんです。僕としては、アニメ用に「1話のインパクトを」とか「強烈な引きを」とか派手に調整せざるをえないのかな?と思っていたんですけど、監督含め制作陣が、この原作の良さを尊重しましょうと言ってくださったので、本当に『うたミル』らしいペースで進めることができました。刺激が強いアニメのラインナップの中に入れてもらえたら、良い清涼剤になるのではないかと思っています(笑)。あとは、登場人物の成長の物語なので、人となりも演奏も少し拙いところからスタートします。そこも面白いところかなと思います。時間が進むごとにたくさん考えて、成長する彼女たちを見守ってほしいなと思います。
あと、みんなの話を聞きながら思ったんですけど、このメンバーって、きっと学校という場所でなければ出会わなかった子たちだと思うんです。そんな子たちが、人生のこの一瞬だけ出会って、また別の場所へ向かっていく。それが高校だったり部活だったりするなと思ったので、そういうところも楽しんでいただければ嬉しいです。
[文&写真・塚越淳一]
作品情報
あらすじ
苦手なもの、たくさん。
好きなもの、歌うこと。
人並みの青春を目指して、
高校デビューで軽音部への入部を試みるも
臆病な性格が災いし大失敗。
失意の中、ウタが出会ったのは
人間の声だけで作られる音楽【アカペラ】だった。
歌声を重ね合わせることでしか繋がれない
少女たちの不格好な青春がそこにはあった。
――輝かなくても、青春だ。
キャスト
(C)うたごえはミルフィーユ製作委員会 (C)2022 UTAMILU



































