
『追放者食堂へようこそ!』連載インタビュー第11回:デニス役・武内駿輔さん|この作品のメインは「人の幸せを考えることの素晴らしさ」だと思うんです──“深夜の飯テロ人情アニメ”は「人生を生きる上でのヒントが散りばめられている物語」
セッションの中で、相手のボールをどれだけ良いものにできるか
──ヴィゴー役の鈴木崚汰さんとの掛け合いはいかがでしたか?
武内:強大な敵として立ちはだかることができたと思っています(笑)。個人的に崚汰とは友達のような関係というか……上手く言語化はできないのですが、お互いに何かあったら「お前の面倒は俺が見るよ」みたいな、そんな間柄だと感じているんです。これは崚汰も同じようなことを言ってくれていて。
そんな関係なので、同世代の役者とライバルとなるキャラクターをやれたことがとてもありがたかったです。パーソナルな部分を役に乗せたくないとは思いつつ、崚汰がヴィゴーをやったからこそ出た芝居というものが、僕の中ではあった気がします。
──考えてみると、同世代で特に仲の良い役者さんと共演するチャンスというのも中々ないことかもしれません。
武内:そうですね。こういうご縁って中々ないんですよ。何度も共演する方、お仕事をする上で良いタッグが組める方はいますが、崚汰みたく空いた時間に古着屋さんに行ったり、焼肉を食べたり、ただただ肩の力を抜いた時間をお互い過ごせる存在とライバルや相棒のキャラクターになる機会って、そう多くないんです。
「もう一歩ステップを踏んで上に行くためには、どうしたらいいんだろう」と思う感覚は僕にもあるし、崚汰にもあると思うんです。アフレコではその気持ちをぶつけながら演じることができた気がするので、良い意味で役に作用させられたのかなと思います。
──バトルシーンも迫力満点でした。
武内:先ほど、2人のバトルシーンを改めて拝見させていただきました。思ったとおり崚汰はバッチリでしたが、僕も思っていたより悪くなさそうだなと(笑)。崚汰に引き出してもらったなと思います。
──役を演じていることが前提ですが、武内さんとしても「お前がそう来たんなら、俺はこういく!」のような心理も、演じているときに感じることがありますか?
武内:それはもちろんあると思います。相手がそう来たら、自分もそれに応える。相手の芝居をさらに良くするために、もっと良いボールを投げるにはどうしたらいいのかは、いつも考えています。
お互いが、相手よりも良い芝居をしよう!と考えて、そのセッションから生まれていく表現もあると思いますが、僕の場合は相手が投げてくれたボールを自分が演じ返すことによって「そのボールがもっと良くなるためには、どうしたらいいんだろう」と考えるタイプなんです。そういう意味でも信頼できる役者がいるというのは大事だと思います。
──あくまでも相手がいて成り立つこと、といいますか。
武内:まず役者って、本がないと何もできないんです。自分で書いちゃう方もいますが、基本的には共同作業の中にいる人間なので、信頼できる相手や気になる相手は、どんな役者さんにもいると思います。
今話した通り、僕の目指す役者像が「セッションの中で相手のボールをどれだけ良いものにできるか」なんですね。『追放者食堂へようこそ!』は感覚を研ぎ澄まさせてくれる現場でした。
──ビビア役の伊瀬茉莉也さんのインタビュー時に、「武内くんはどんな球でも必ず打ち返してくれる」「まだ20代後半だと思うけれど、人生何回目?って思うくらい、心の深いところまで全部わかっていて、なおかつそれをお芝居に全部乗っけられるくらいの技術力がある」とおっしゃられていました。
武内:いやいやいや、伊瀬さんこそですよ!
デニスに関しては、僕は毎話葛藤しながら演じていました。反省点を挙げるならば、最後まで自信が持てなかったところです。どのくらい自信を持って演じれば良かったのかという答えもないんですけどね。あまりに「俺について来い!」になってしまっても違うから、別に悪い反省点ではないと思いたいです。
作品はみんなで作るものだから、最終的に良いバランスになっていたらいいなと思うし、そこは音響監督の小沼則義さんや志村錠児監督が、しっかり演技をチョイスしてくださっていたと思います。
──皆さんの演技はもちろん、作画も料理だけでなく、バトルやギャグなど幅広いものを求められていたのにすべてが魅力的でしたよね。
武内:身体の動きもそうですが、表情にもこだわってくださっていましたね。アニメーション全体を通して感動したのは、アトリエの寄りの絵での機微! 髪の毛の揺れ方などにも重きをおいてくださっていて、妥協がなかったように思いました。
アトリエのようなキャラクターは、普段の表情変化が乏しい分、ほんの些細な動きで、セリフのニュアンスも違って聞こえると思うんです。彼女のことをとても写実的に捉えて反映させてくださっていたと思います。そうやって作り込んでくださったのは、作品ファンとしても感動する部分でした。
──アトリエが、何かをギュッと握るシーンをはじめ、アトリエだけでなく、それぞれのキャラクターの目の少しの動きなどで語るシーンが多かった印象です。
武内:キャラクターの細かい呼吸感や目の動きで、どれだけ立体的に感じられるか、命を感じられるかが決まると思うんです。そこをとてもこだわってくださっていたので、素敵な作品だなと思いました。















































