
今こそ伝説に触れる時。『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』が初見プレイヤーに突きつけた、残酷で美しい世界【レビュー】
約30年の時を超えても色褪せない、SRPGとしての「おもしろさ」
本作のバトルは、マス目状のフィールドでユニットを動かす、オーソドックスなSRPG。敵味方が交互に行動するのではなく、キャラの「すばやさ」順に行動が決まる「CTバトル」のおかげで、戦況は常に目まぐるしく変化。「ヘイスト」で敵の行動順をぶち抜いて2回行動!なんて戦術もとれるわけです。
さらに、高低差の概念が戦略を面白くしています。高所にいる弓使いは射程が伸びて圧倒的に有利になりますし、逆に崖下に居れば攻撃が当てられないこともあります。魔法には「詠唱時間」があり、強力な魔法ほど発動までに時間がかかるため、その間に敵が移動し、攻撃が外れることも。敵の行動順を読み、敵の足を止めることができる妨害技で敵を足止めして詠唱時間を稼ぐといった、戦略が常に求められます。
SRPGとしての面白さはかなりの完成度。オリジナルの時点で高い完成度の作品であったことが伺えます。
そして、『FF』と言えばジョブシステム。本作でももちろん健在で、見習い戦士やアイテム士といった基本ジョブのレベルを上げることで、ナイトや弓使い、黒魔道士、白魔道士といった上位ジョブが「ジョブツリー」に次々と解放されていきます。このジョブツリーを眺めながら、「よし、次は竜騎士を目指すために、まずシーフのレベルを上げよう」なんて育成計画を練る時間こそ、本作の醍醐味の一つと言えるでしょう。
さらに、このシステムの真骨頂は、習得したアビリティを他のジョブでもセットできる点にあります。
例えば、「アイテム士」のアクションアビリティ「アイテム投げ」をSpeedの高い「シーフ」にセットすれば、戦場を駆け巡って遠くの味方にポーションやフェニックスの尾を投げ込み、窮地を救う高速ヒーラーとして活躍できますし、また、「時魔道士」が覚えるサポートアビリティ「ショートチャージ」を「黒魔道士」にセットすれば、強力な魔法の詠唱時間を大幅に短縮でき、敵に反撃の隙を与えずに攻撃を叩き込めます。「竜騎士のジャンプができる二刀流の侍」なんてロマンの塊のようなこともできます。
中でも、特にユニークに感じたのが「話術士」。武力じゃなくて「話術」で味方にバフや敵にデバフを与えることができます。
そしてこのジョブの最大の魅力は「勧誘」によって、敵を味方に引き入れることができること。これはその戦闘中にも味方として戦ってくれるだけでなく、その後でも使えるようになります。例えば、敵のナイトを「勧誘」すれば、その戦闘中はNPCとして味方してくれ、戦闘終了後は即戦力として自軍に組み込めます。
さらに面白いのがモンスターの勧誘。FFらしくチョコボも仲間にできるうえに、それ以外のモンスターたちも味方に引き入れることができます。モンスターは装備品の変更やジョブなどは変更できませんが、それぞれ固有の能力を持っており、頼もしい戦力になってくれます。
戦争と分断がテーマのこの物語で、「対話」で道を切り開くというのはなかなかに魅力的に感じられました。
もちろん、オートセーブ機能や難易度「カジュアル」もあるので、「SRPGって難しそう…」って人も心配ご無用。かつて恐れられた「仲間のロスト(永久離脱)」も、戦闘をやり直せば回避できるので、心ゆくまでこの奥深い世界に没頭できます。
「エンハンスド」モードには、戦闘の「早送り機能」や、戦場を真上から見下ろせる「タクティカルビュー」といった便利な機能も満載。
特に早送り機能のおかげで、レベル上げ(レベリング)のテンポは格段に良くなり、ストレスなく育成に集中できたのは嬉しいポイントでした。とはいえ、自動戦闘がちょっぴりおバカだったり、戦略ビューが切り替えることができず長押し限定のため少し使いにくかったりと、重箱の隅をつつけば気になる点もあります。
すべてのRPGファンに体験してほしい不朽の名作
初めて触れた『ファイナルファンタジータクティクス』は、筆者の心に深く、そして鋭く突き刺さりました。色褪せることのない重厚な物語と、現代的に洗練された遊びやすいシステム、そしてキャラクターに命を吹き込んだ声優陣の熱演。そのすべてが完璧に融合しています。
今作は、今や伝説となったSRPGの最高傑作を最高の形で体験できる、またとない機会。かつてこの物語に熱狂したベテランの方はもちろん、私のようにこれまで触れる機会を逃してきた人にこそ、この衝撃的な物語を体験してほしい。すべてのRPGファンにおすすめします。
[文/失野]
『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』作品情報
あらすじ
隣国オルダリーアとの“五十年戦争”の敗北より1年、前王の病死により即位することになった王子は、わずか2歳。
その後見人の立場と実権を巡り、“五十年戦争“で武勲を挙げた二人の将軍、ゴルターナ公とラーグ公の間での緊張感が高まりつつあった――。
黒獅子を紋章とするゴルターナ公と、白獅子を紋章とするラーグ公。
両者の激突はのちに“獅子戦争”と呼ばれることとなる。
この”獅子戦争”を終結に導いた英雄王と称されることになる青年ディリータ、そしてその幼馴染にして、歴史上けっしてその名を語られることのない青年ラムザ。彼らもまた、激動の時代のなかで様々な選択を迫られてゆく――。
人々は何を選び、何を勝ち取ったのか。
さあ、語られてこなかった歴史の”真実”を、今こそ解き明かそう――。
キャスト
(C) SQUARE ENIX






















































