
TVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3種﨑敦美さん・藤原夏海さん・加藤英美里さんインタビュー【後編】|「Season 3は一歩踏み込んで見せてくれるお話が多い」
収録現場には役者の工夫がたくさん
──イーデン校に通う生徒たちは〈星(ステラ)〉を目指して頑張っていますが、キャストやスタッフの中で、〈星〉をあげたいという方やエピソードがあればお聞かせください。
加藤:収録時のあっちゃん(種﨑敦美)のアーニャの一人芝居が最高に面白くて……(笑)。
藤原:本当にいつもいろんな引き出しを見せてくださるなと感じています。
加藤:台本を見る度に、「今回の収録はあのシーンがあるんだ!」と思うと、すごく楽しみです。
藤原:「今日の収録はどんな感じで来るんだろう?」と、役者としてもすごくワクワクしながら楽しみにしています。
加藤:Season 1の時もアーニャの一人芝居のシーンがあったんですけど、収録の時に「どんなふうにここをやりましょう?」という相談があって、私たちだけしか聞けないところがあるよね。ヘンダーソン先生はヘンダーソン先生の口調でやるとか、デズモンドはデズモンドの口調でやってみるとか、本番とは違うアプローチのものを私たちはテストの時に聞けるじゃない。
藤原:テストテイクでしか見られない、聞けないものがありますよね。
加藤:放送バージョンではないものがすごく面白いこともあって、別バージョンで残しておけばいいのにと勝手に思っています。
藤原:おまけみたいな感じで、その週のテストテイク集をもう一度見たいですよね。
加藤:見たい! だから、ああいう妄想シーンを一人でやっている種﨑敦美さんに私は〈星〉をあげたいです! 大変だなと思いながら見ています。
藤原:〈星〉、獲得です!
種﨑:アフレコ収録時は毎回必死ではあるんですけど、「どうしたらアニメとしてさらに面白くなるか」と考え続けていた結果だったりします。本当に一番最初の妄想シーンのとき、妄想の中もそれぞれのキャストさんがやるはずだったんですけど、「アーニャの妄想ですし、一回私がやってみてもいいですか?」と、お願いしてやらせてもらえることになり、結果それが採用になったので勇気を出して提案してみて良かったと思いました。
有難いことに、たぶん遠藤先生もアニメのその部分を汲んで原作に逆輸入…のようにしてくださって、今ではアーニャの妄想範囲もだいぶ拡大され、ダミアンの顔も崩れまくりで最高におもしろいです(笑)。
原作でMISSION:43「イーデン校バスジャック事件」のお話を見た時にも、ここがアニメになった時は「種﨑さんやっちまってください」ということなのかなと思いながら、アフレコに臨みました。だいぶプレッシャーはありましたけど、みなさんにそう言っていただけて今ものすごくホッとしています。
たぶんアーニャだけではなくて、他のキャストさんのお芝居を見ながら、遠藤先生は影響されているんじゃないかな。遠藤先生本人に聞いたわけではないので、わからないですけど、キャストさんが出したものを汲んで描いてくださっている気がします。
加藤:そう思うと、嬉しいね。一緒に『SPY×FAMILY』を作っているという感覚が生まれてきて、より良いものにしたいなと思いますね。
藤原:本当にありがたいですね。
種﨑:それでいうと、MISSION:42「ママ友作戦」のアフレコ収録時、セリフが書かれていない画だけで見せようとしていたカットに、エミール・エルマン役の佐藤はなさんが「声を付けていいですか?」と音響監督さんにお願いして、アドリブを入れていたところがありました。
それがアニメで使われているかどうかはわかりませんが、そんなことがありました。
もし使われていなかったら、それもまた現場にいた私たちだけが楽しめたものになっちゃうんですけど、より良いものを作ろうとして、自分から発信されていたその姿を見た時、「はなさん、〈星〉だ!」と思いました。
藤原:はなさんはいろんなところで、エッセンスを入れてくださる方なんです。「ダミパン」は使われると思うのですが、はなさんのアドリブです。
加藤:やきそばパンをかぶっちゃったところで、ダミアン様を「ダミパン様」って言ってたね。
種﨑:語呂もいいし、ナイスアドリブでしたよね。
──アドリブもOKなんですか。
加藤:NGが出なければ、そのまま放送で使われることもあります。私はけっこう字幕を出しながら放送も見るんですけど、その時にアドリブもちゃんと字幕になっていることもあります。そういうものを見つけると、「これは台本にはなかったけど、ちゃんと字幕に起こしてくれているんだ」と感動するので、「ダミパン様」もちゃんと字幕になっているか気になる。
藤原:確かに、ちゃんと確認したい。そういったアドリブにチャンレンジしてくださる姿を見ると、「こちらもそれについていきたい」という気持ちもわいて高ぶりますね。種﨑さんもはなさんも現場の士気をあげてくださっているなと思います。収録現場には〈星〉がたくさん散りばめられていますね。
加藤:『SPY×FAMILY』は良い化学反応がたくさん起きている作品なんだなと、今話をしていて改めて感じましたね。
藤原:音響監督のはたしょう二さんも、役者側で出したものを尊重していただけることも多かったりしますし、アドリブだったり、魅力的だなと思ったら、それを生かしてくださるので、そういう面でもやってみようかなと取り組みやすい現場だなと感じますね。
Season 3はこれまで以上に見ごたえたっぷりな作品
──本作を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
加藤:私自身も『SPY×FAMILY』の作品が大好きなので、またこうやってSeason 3のアフレコが始まって毎週楽しみにしています。出番がないと、寂しいなとか、見たいなとか、現場に遊びに行きたいなと思うぐらい作品が大好きですし、キャストのみんなが『SPY×FAMILY』の作品が好きと思いながらアフレコに臨んでいる様子が言葉に出していなくても、空気感で伝わってきます。
みんながそれぞれの役のことをすごく深く考えていらっしゃるので、結果アニメの放送の時もみなさんに良い評価をしていただけることが多いのかなと思います。私たち声優陣だけでなくて、作品を作り上げているアニメーターさんも含めて、みなさまのいろいろな力の結集を都度感じています。
とある回では、アフレコ収録(練習)のために配られるDVDの画がほぼ完パケ状態で配られていることがあって、家でチェックする時に「え? 全部画ができている!」とビックリして、本当にみんなの気合が入っている作品だなと感じました。
Season 3も変わらず、みんな気合を入れて作り上げていますので、みなさんにいろんな形で応援して、盛り上げてもらえたら嬉しいなと思います。ぜひ楽しみにしていてください。
藤原:私もこの『SPY×FAMILY』という作品に関わらせていただいて、アニメを家族と一緒に見て、面白いコミカルな場面では、家族と大笑いしながら楽しんでいます。コミカルの背景にあるシリアスな部分やキャラクターたちが抱えている部分をどんどん深堀って、フォーカスしてくれているので、作品のこともキャラクターひとりひとりのこともすごく好きになれる作品だなと改めて感じています。
ダミアンというキャラクターを演じさせていただくにあたって、キャストのみなさんと一緒にどんどん魅力的なキャラクターにしていきたいという気持ちも、Season 3になって改めて思いました。ダミアンとしても、このSeason 3は母のことがけっこう深堀されるので、みなさんも改めてデズモンド家をよりフィーチャーしながら見ていただけたらと思います。
そして、フォージャー家も含めて、家族というものの在り方をあたたかく感じていただけたらといいなと思いますので、楽しみにしていただけたら、嬉しいです。
種﨑:Season 1で、『SPY×FAMILY』という作品やキャラクターをみなさんに知っていただいて、Season 2は知っていただいたからこそできるエピソードがたくさんありました。満を持してではないですけど、だいぶ間が空いて、Season 3は「気になっていたけど、どうだったんだろう?」というところを一歩踏み込んで見せてくれるお話が多いです。
ロイドの過去もそうですけど、バスジャック事件の中で、いろんなキャラクターのいろんなものが見えてきます。
目指すべきはドノバン・デズモンドなんですけど、その何歩か手前、そこにはまだ届かないけど、これまでよりちょっと踏み込んだお話が散りばめられているSeason 3 はこれまでのシーズン以上に見ごたえたっぷりだと思いますので、余すことなく、最後まで楽しんでいただけたらと思います!
──ありがとうございました!
[取材・文]宋 莉淑(ソン・リスク)
作品情報
あらすじ
世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた時代。
東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)は、十数年間にわたる冷戦状態にあった。
西国の情報局対東課〈WISE(ワイズ)〉所属である凄腕スパイの〈黄昏(たそがれ)〉は、東西平和を脅かす危険人物、東国の国家統一党総裁ドノバン・デズモンドの動向を探るため、ある極秘任務を課せられる。
その名も、オペレーション〈梟(ストリクス)〉。
内容は、“一週間以内に家族を作り、デズモンドの息子が通う名門校の懇親会に潜入せよ”。
〈黄昏(たそがれ)〉は、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作ることに。
だが、彼が出会った娘・アーニャは心を読むことができる超能力者、妻・ヨルは殺し屋だった!
3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。
ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された――。
キャスト
(C)遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会


















































