
「FLOOR KILLER」で表現した「口先一つでこの場を支配する」というイメージ──アニメ『グノーシア』リレーインタビュー第8回 新エンディングテーマ担当・梅田サイファー
2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう──そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは──。
人狼ゲームをベースにしながらも、SF要素やキャラクタードラマを掛け合わせた独自の体験型ゲームとして熱狂的な支持を集めてきた『グノーシア』。その唯一無二の世界を映像として立ち上げるにあたり、制作陣はどのような試行錯誤を重ねてきたのでしょうか。
第8回は、新エンディングテーマ「FLOOR KILLER」を手がける梅田サイファーのテークエムさん、Cosaquさん、KennyDoesさんに、楽曲制作の舞台裏や作品への想いを伺いました。
ビートや詩で表現される『グノーシア』と梅田サイファーの共通点
──まず、『グノーシア』という作品に触れた際の印象をお聞かせください。
テークエムさん(以下、テークエム):原作の『グノーシア』をプレイして思ったのが、「ループと人狼の組み合わせって面白いな」と。対人の人狼って、同じメンバーで何回も繰り返してやるじゃないですか。それ自体も、ある種のループですよね。
『グノーシア』が面白いのは、ループを通じて善悪や役割は変わるけど、キャラクターの性格は変わらないところ。嘘をつくのが下手な人がいたり、いつも同じ役割になりがちな人がいたり。
何回もやることで、ゲーム内キャラクターのパーソナリティが見えてくる。一度きりだとみんなの個性はまだ見えないんですが、何回もやることで本当に知り合いとやっている感じになるのは、画期的で面白いなと思いました。
Cosaquさん(以下、Cosaqu):さっきテークが言ったループの要素が、僕らとすごく重なる部分があるなと思いまして。
ヒップホップって基本的にループミュージックで、例外もありますが4小節とか8小節の短く反復されたビートの上で様々な音やラップを重ねていって新しいグルーヴが生まれたり、独自の美学が存在する音楽なんですよ。
『グノーシア』は、そのループの中で新しいキャラクターが登場したり、ストーリーが変わることによって、それぞれのキャラクターやパーソナルな部分が見えてくる。
一回きりだと見えにくいけれど、何回もループすることで見えてくるものがある──そこは、作り手の僕たちの視点としてもそうですし、梅田サイファーのリスナーから見た僕らの姿にもすごく通じる部分があって、親和性が高いんじゃないかなと。
KennyDoesさん(以下、KennyDoes):そもそも『グノーシア』って、ゲームの側面から言うと一人用なんですよね。オンラインのチーム戦だと、手練れを相手にするイメージがあって敬遠していたんですけど、これだったら自分でもできるなと。
アニメになるってどうなるんだろうと思っていたんですが、実際に映像を見せてもらって「なるほど、そう来るのか」と思いました。
テークエム:あとは、メンバーの中にインディーゲームファンがいまして。KBDというメンバーなんですけど、『グノーシア』の大ファンで。わざわざ資料を作ってプレゼンしてくれて、キーワードやシチュエーション、ゲームの仕組みまで、かなり詳しく説明してくれました(笑)。
──制作にあたって、木村さんはどのようなオーダーをされたのでしょうか?
プロデューサー・木村吉隆さん(以下、木村):大きなコンセプトは「人狼における狼の曲をお願いしたい」でした。人間としての乗員に対して、狼としてのグノーシア汚染者にスポットライトを当てて、そのヴィランとしてのかっこよさが立つような曲というイメージです。
楽曲の初出が第8話のラスト、主人公のユーリがはじめてグノーシアになるタイミングというのは、最初から決まっていました。コメットの「ようこそ、グノーシアの世界へ!」というセリフが、新エンディングテーマの呼び水になる演出は、楽曲のデモをいただいたときに生まれたアイデアです。
テレビアニメを見慣れているファンの皆さまの中には「第8話でエンディングが変わるの?」とびっくりする方もいらっしゃると思うのですが、その驚きの中で、圧倒的なラップの迫力を叩きこまれるのは、1度きりのサプライズ演出として、すごくかっこいいものになると思いました。
あとはタイアップということもって、できれば「『グノーシア』で韻を踏んでほしい」とお願いをしました(笑)。
──そのオーダーを受けて、どのように楽曲を制作していったのでしょうか?
テークエム:テーマとしては、今話してもらった通りです。僕らが悩んだのは、この作品でのヴィラン側は「騙す」側でもあるということ。でも実はヒップホップカルチャーと「騙す」って相性が悪い。嘘をついてはいけないカルチャーなので。
だからまず、そこをどうするかという話になって。みんなで話す中で、最終的には嘘をつくというよりは「口先一つでこの場を支配する」というイメージにシフトしていきました。
Cosaqu:最初は「二枚舌」みたいなテーマがあったんですが。そこからどんどんアイデアを繋いで、最後にタイトルの「フロアキラー」になったよね。
テークエム:二枚舌からフロアキラーって、ちょっと物騒だけど(笑)。ヒップホップって、このカルチャーの中で誰が一番かみたいな、バトル的な側面が強くて。直接的じゃなくても、競い合うというか。この曲の中で一番ラップがやばかった人が「この曲をキルした」みたいな言い方をするんです。
Cosaqu:そうそう。
テークエム:だから「嘘つき」じゃなくて「口先でキルする者たち」という意味合いから、ステージやダンスフロアでお客さんを“キル”する俺たちと、宇宙船のフロアでヴィランとして二枚舌で人間たちを“キル”するグノーシアたち。そこに共通点を見出していきました。
Cosaqu:梅田サイファーの特性として、作品の世界観をすごく抽出してラップにまとめることができるメンバーが多い。(梅田サイファーとして)過去にもアニメのタイアップ依頼をいただいたことが何度かありまして。
ただ、よくも悪くもアニメの世界観に寄せすぎてしまうという反省もあって。今回は作品の世界と梅田サイファーの色のバランスを探りながら、結果的にいい答えが見つかった曲になったと思います。
──ビートはどなたが作ったのでしょうか?
Cosaqu:僕とpekoで作りました。梅田サイファーでタイアップの楽曲を作るときは、まず方向性を話し合って、どんなジャンルを取り入れて梅田サイファーのスタイルに落とし込むかというところから考えるんですが、今回はドラムンベースがいいんじゃないかと。
特徴的なワブルベース──波打つようなベースのサウンドと、サビで鳴っているプラックシンセの音がSF感との相性が良いなと感じたので。
あとは「フロアキラー」というタイトルもあり、とにかく早いラップが欲しかった。そこで「早いラップと言えば」という流れで、KennyDoesとテークエムに「頼むわ」と(笑)。
最初にできたのは、僕が歌っているイントロの部分。イントロだけ先にできて、歌詞はまだ入ってない状態で「こんなんどうですか」って聞かせました。
KennyDoes:(KennyDoesのパートは)テンポは早いんですけど、やっていること自体はジャンルとしてオーソドックスなやり方で。無茶なことやってるのはテークさんの方かなと(笑)。導入としての役割を意識していて、自分らがやってることと『グノーシア』で起こっていることの、ちょうどいい接点を探しながら書きました。
テークエム:自分の歌詞は、『グノーシア』の世界観とヒップホップ的なボースティング(※ラップで自分の強さや優位性をアピールする表現手法)を意識して、共通性のある言葉を選んでいます。一つひとつ説明するのも野暮かなと思うので、読んでもらって想像してもらう方がいいかもしれません。
















































