
“友だちやめて良い?”──ターニングポイントを迎えたTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』を鈴代紗弓さん・青山吉能さんが振り返る【連載インタビュー第9回】
「言葉にしてしまう勇気」踏み出した一歩
──第9話はターニングポイントとなる重要なお話でしたね。
青山:第9話のあとにアップされるインタビューに我々ふたりを呼んでいただいたのが本当に嬉しいです。ありがとうございます(笑)。
第9話は、これまで描いてきた“言葉にしきれない感情”を、グッと言葉にしていく勇気みたいなものが見れた回だったなと思います。収録中もずっとドキドキしていました。
鈴代:ドキドキしたよね……!
青山:台本も印象的で、見開き2ページにセリフがひとつあるかないかくらいなんです。ほとんどが“絵”なんですよ。その間(ま)にすごく緊張感があって……本当に言い淀んでしまう瞬間もありました。
実際の会話でも「どうやって次の言葉を紡いで、相手に掛けたら良いんだろう」のような間があると思います。それをそのまま録ってくださっていて。だからこそ、私たちもその間に、ずっと考えて、考えて……。
鈴代:「次の言葉どうしよう」「言うか、やめるか」。
青山:うんうん。「……」をずっとね、考えていました。
──奥深いお芝居の世界を感じます。
青山:だからこそ、やりやすかったんです。普段のアニメだと尺に合わせてセリフをはめていくことも多いから。
例えば「好き」という言葉を「ここでもう言わなきゃいけないのか」と感じる場面があったとしたら、その一言に至るまでの心の流れを自分たちで作っていく必要がある。でもアニメ『上伊那ぼたん』の場合、映像に身を委ねたら自然と言葉が出てくるんですよね。アニメというより、感覚としては実写映画に近い印象でした。表現が合っているか分からないですが(笑)。
鈴代:分かる。実写映画っぽいよね。
──ソロインタビューで鈴代さんもボールド(アフレコ時、発声タイミングを指示するために表示されるマーク)について言及されていましたが、タイミングがこぼれてしまっても、そこまで気にしなくて良かったとか。第9話はまさにそれが活かされた作りですよね。
鈴代:そうですね。プラネタリウムの続きのような流れで、星を見に行くやりとりが描かれて。ふたりの関係性が前から続いていることがわかるのが良いなと思いました。「この間(あいだ)のあれ」という表現も良いですよね。
プラネタリウムを見た時はかなり距離も縮まってハッピーな空気だったので、いざ本物の星となったらよりウキウキしたテンションで向かいそうなものなのに、煮えきらない気持ちから入っていて、これまでの時間経過を感じさせるといいますか。日常のなかでも楽しかった時間の後、ふと一人になったときに考えこんでしまったり、ダークな気持ちになったりすることってあるじゃないですか。その“時間差で来る感情”みたいなものがシーンをまたぐことによって、映像の表現で、描かれているように思いました。
──まさに日常の延長線上にある、心の揺らぎというか。
鈴代:ぼたんとしては、いぶきのことをより強く考えるからこそ「自分にとっては特別だけど、彼女にとってはどうなんだろう」と悩んでいるんだろうなって。それは「一緒にいたい」という気持ちの表れでもありますが、一方で「一緒にいたいけれど、それを言って関係が変わるのが怖い」「言ったところで、そもそも変わらないかもしれない」「どうにかしたいのに言えない」「言ってしまったらなにかが壊れるかもしれない」みたいな気持ちもあって……そんな駆け引きがすごく苦しくて。いろいろな感情が入り乱れて「『飲まなきゃやってられない』ってこういう気持ちなのかな?」と(笑)。
──ぼたんからそのセリフが出てくるとはと、驚きました(笑)。
鈴代:お酒と出会って日も浅いぼたんが言うんだ!と(笑)。
青山:衝撃だったよなぁ(笑)。
鈴代:もうお酒が飲める年齢だから大人ではありますが、お酒に頼ってしまう気持ちもすごくリアルで、大人になっていく様も描かれているなと思いました。そんな中でも、いぶきは良い意味で変わらずに自由。「もうっ!」と思う反面、その自由さに惹かれていて「そこが好きなんだよな」って思っちゃうんですよね。
青山:でもいぶきはいぶきで「おかしいな」とは思ってましたよ。「ぼたんの様子、おかしいな」って。「体調悪い?」って聞いてたもんね。
鈴代:「体調悪い?」じゃないよ!(笑)
青山:あはは!
鈴代:あなたのせいだからね!(笑)
青山:(笑)。きっといぶきも本当は「体調悪い」じゃないんだろうなと、分かってはいるんですよね。でも、それを言葉にしてしまったら何かが終わってしまうかもしれない、という怖さがある。いぶきはどちらかというと、前に踏み出せないタイプなんですよ。だからこそ、一歩踏み出すよりも、この関係のままでいたい、という気持ちもあったと思います。
……そう思っていたんですが!
鈴代:ね(笑)。その感情を……もうこのシーンを、どうやって言葉で表現すればいいんだ……。
「言いたいことがある」となってからも、すぐに「言いたいことを言う」シーンにならないのも、すっごくリアルなんですよね。
青山:うんうん。
鈴代:気にかけてくれているのはわかるけど「そこじゃないんだよ」と。その感覚がすごく“女の子っぽい”というか。
鈴代:ぐにゃぐにゃした感情がずっとあるんですよね。
鈴代:いぶきはどちらかというと男勝りというか、少しシンプルな思考をしている部分もあると思うんです。でも、その中にちゃんと繊細さもあって。ずーっとずーっと、ぼたんがずっと言えなかった気持ちがある中で、いぶきがそれを超える言葉をかけてくるんです。そりゃあ、ぼたんも泣いちゃいますよ。
しかもここの演出も最高で! 露天風呂でふたりが向き合うシーンなんですけど「友達やめよ」という話の間に挟まるイメージカットがすごく象徴的なんです。川辺のカットだったり、少し距離を感じさせるような構図だったり……。生々しく描きすぎないことで、逆に心情が強く伝わってくる演出になっていてオシャレだなと思いました。
(シーンを見返して)ここ、先にぼたんが先に露天風呂に入っているんですよね。
青山:ぼたんの「待ってるから」っていうセリフが良いよね。
鈴代:実は「待ってるから」はディレクションを受けて2パターンくらい録っていました。少し強めに意味を込める挑戦的なパターンと、あえてしおらしくした言い方と。私は最初、ちょっと念押しする感じで演じていたのですが、最終的には、後者の切実な願いを感じるような言い方のほうが選ばれていました。そこにいぶきが入ってきて、他愛もない話をして……。
鈴代:「いいお湯だね」じゃないよ!(笑)。
──(笑)。
青山:でも(そのあと)ちゃんと言うから(笑)。
鈴代:「気にならないの?」っていう問いに対して「ならないわけないでしょ」「私は、ぼたんを一人じめしたいよ」。心情を表しているイメージカットも入ってきて……。
──そこから「友達、やめていい?」につながっていくという……。「友達をやめる」「やめない」の言葉は、こんな場面でも使える言葉だったんだと、あらためてハッとさせられるような展開でした。
鈴代:ともすればネガティブな意味の方が印象として強いですからね。それ以外であったんだ……って。






























