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 『天幕のジャードゥーガル』Abel監督が語る、「本物」を描くアニメーション【インタビュー】

『天幕のジャードゥーガル』Abel Gongora(アベル・ゴンゴラ)監督インタビュー|シタラの「Revenge(リベンジ)」と「Freedom(フリーダム)」。歴史と文化へのリスペクトから生まれるアニメーション

 

徹底的に「本物」を創る

──手塚治虫作品を思わせるようなビジュアルもあり、当時の歴史・文化や生活も細かく描かれている本作。そんな作品をアニメーションとして映像化するうえで、気にしていたこと、大切にしていたことを教えてください。

Abel:やはり、ペルシアとモンゴルというふたつの文化の描き方でしょうか。実際に存在しており、現在でも続く文化なので、リスペクトを持って描く必要があります。できるだけ現実をベースにしたいですし、リアルに描きたいと思っていました。もちろん、物語として分かりやすくするために、多少アレンジを加えることはあります。ただ、むやみに現実と違うことを描いたりするのはやりたくなかったです。それは最初からルールというか、ポリシーとして考えていました。

──原作コミックスを読んでいても、同様の想いを感じます。

Abel:トマトスープ先生ももちろんそうだと思います。何より、その地域の歴史や文化に対して、リスペクトや尊重を持って取り組む姿勢が必要だと感じていました。

──文化を尊重すること、そしてオリエンタリズム的な眼差しにならないバランスと言いますか。

Abel:そうですね、過不足がない、リアルであることが重要です。ペルシアの描写や音楽に関しても拘って作っています。本作の音楽を担当された日野浩志郎さんもそのあたりをしっかり理解してくださっていて、実際にイランにルーツを持つ方々と一緒に制作を進めてくれました。

やっぱり、「本物」を目指したいという思いが、スタッフみんなにあったんです。なんとなくオリエンタリズム的な音楽にするのではなく、本当にペルシアの楽器を使って、ルーツを持つ方と一緒に作ろうという話になりました。そのおかげで、かなり特別なものができたと思っています。

一方で、モンゴルに関しては、資料に残っていない部分、分からない部分も多いんです。なので、現代のモンゴルの方々による表現や描写を参考にして、そこからインスピレーションを受けながら、自分たちなりの再現に挑みました。

もちろん、「これが完全に史実通りです」とは言えない部分もあると思いますが、そういったルーツを持つ視聴者の方が見ても「本物だ」と感じてくだされば何よりも嬉しいです。

 

吉田健一さん・山田尚子さんとの仕事

──キャラクターデザインについても伺えればと思います。本作のキャラクター造形をアニメーションとして映像化する際、どのような方向性で作られていったのでしょうか。個人的には、アニメ版の方が大人っぽい印象も受けました。

Abel:ちょうどいいバランスを取るのはかなり難しかった印象です。そんな中で、吉田健一さんのデザインは本当に素晴らしいと思っています。

例えば、「このキャラクターが3次元空間で振り向いたらどう見えるか」といったことまで、きちんと考えられたデザインになっているんです。立体感もしっかり検討されたうえで作られていて、とても完成度が高いと思います。

「大人っぽい」とおっしゃいましたが、少しキャラクターの等身が高くなっている部分はありますね。多くのアニメーターは、そういった等身の高い作品の方が描きやすいというか、慣れていると思います。

だからこそ、アニメーターたちの経験やスキルに、少し寄り添う形でデザインを調整すれば、もっと描きやすくなるのではないかなと。その意味でも、吉田さんは本当に素晴らしい仕事をしてくださったと思っています。特に本作のキャラクターたちの「大きな手や足」という特徴は、ぜひ活かしたいと思っていましたし、鼻の大きさなども残したかったんです。

──確かに。アニメーションでもシタラらの手は大きかったですね。生活者のモチーフとして効果的になっていると感じました。

Abel:そうですね。吉田さんのデザインは、その特徴を残しながら、絶妙なバランスを取ってくださった。原作の絵の魅力を残しながら、アニメーションとして描きやすくする、その両方を実現できたと思っています。また、複雑な感情の表現が巧みで、表情づくりも本当に素晴らしいですし、キャラクターたちの一体感を作るセンスにも非常に優れていると感じています。

──続いて、総監督を務める山田尚子さんとのお仕事について聞かせてください。

Abel:山田さんは、かなり早い段階から本企画に参加されていました。特に脚本やストーリー面で、非常に貢献してくださったと思います。

山田さんの強みは、やはりキャラクターの性格や、内面の描き方にあると思っています。必要に応じて、ストーリーの構成を入れ替えたり、「ここは長く見せよう」「ここは短くまとめよう」というような調整を行って、キャラクターがダイレクトに伝わるように調整していただきました。

──共に並走して制作されたのでしょうか?

Abel:初期段階ではそうですね。作品全体のベーシックなルックや方向性について、かなりたくさん話をしましたし、得意分野とは少し離れた、声優のキャスティングについても意見を交わしました。その後、実際に制作が動き出して、作画作業が始まったタイミングからは、比較的こちらに任せていただく形になったと思います。

 

シタラの「Revenge(リベンジ)」と「Freedom(フリーダム)」

──この作品は主人公・シタラが学び、知性や知識を獲得しながら生き抜いていく、そういったテーマ性も感じられる作品だと思っています。本作のテーマやメッセージ性について、Abel監督ご自身はどのように捉えられていますか。

Abel:まだ原作が完結していないので、今後どうなっていくのかは分かりませんし、作品全体を見ないと、「原作のテーマはこうだ」と断言するのは難しいかなと思っています。ただ、やはりシタラの「Revenge(復讐)」が、かなり重要なテーマになっているのではないでしょうか。そして、それがあるからこそ、シタラというキャラクターは面白いんです。主人公なんですけど、ただ純粋に良い子というわけではないんですよね。結構暗い部分も持っている。だからこそ、私は彼女のことが好きなんです。

また、アニメとして伝えたいテーマやメッセージとしては、「Freedom(自由)」というものも挙げられるかなと思っています。例えば、第1話の冒頭で、とあるシーンを追加したんですけれども、それも「自由」というコンセプトに関わっています。キャラクターの置かれている状況や、作品全体の設定を伝えるうえでも、重要なシーンになりました。視聴者の皆さんには、そういった部分も感じつつ、作品を楽しんでいただければ嬉しいです。

 
[インタビュー/タイラ]

 

作品情報

天幕のジャードゥーガル

あらすじ

13世紀、イランの奴隷市場にその少女はいた。
これは、広大な大陸を翻弄した一人の魔女の話――。
⺟を亡くし、故郷からも遠く引き離されたシタラ。
まだ幼く、一人で生きていく術も未来への希望も持たない彼女は、
学者の一家に拾われ、穏やかな日々の中で“知”を授けられる。
その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が他国への侵攻を繰り返し、
日に日に勢力を拡大していた。
その野望がシタラの住む街に到達したとき、日常は終わりを告げ、運命が大きく動き出す。

キャスト

シタラ:関根明良
ドレゲネ:小清水亜美
ファーティマ:桑島法子
ムハンマド:齋藤潤
オゴタイ:下野紘
トルイ:鈴木崚汰
シラ:入野自由
チャガタイ:浪川大輔
ジュチ:野島健児
チンギス・カン:玉鷲関
モンゴル兵士:玉正鳳関

(C)トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会

 

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