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『名探偵プリキュア!』東山奈央がキュアアルカナへの変身を振り返る【インタビュー】

「すべてをこの瞬間のためにやってきた」るるかと手を取り合って臨んだ第31話を振り返る――『名探偵プリキュア!』キュアアルカナ/森亜るるか役・東山奈央さんインタビュー

「私は失敗しない」というキーワード

ーー「守る」といえば、るるかは「世界は……私が守る!」という言葉に象徴されるように、強い使命感を持っていて。東山さんは、どのような思いで彼女の覚悟を表現していたのでしょうか?

東山:「リキッド・アイス」という挿入歌を歌わせていただく段階で、かなり早くから脚本をいただいていたんです。第30話と第31話をセットでいただいて読ませていただいたので、自分の中でセリフを読み解き、しっかりと読み込む時間をたくさんいただけました。るるかの中では、「くれあを守りたい」という気持ちと「世界を守りたい」という気持ちが、ぐちゃぐちゃに混ざっていて。

プリキュアとしては、世界を守らなければいけない。そして、一人のるるかという女の子としては、くれあを守りたい。そのふたつの望みのためならなんでもやってきました。でも、本当の本当の心の奥底には、「くれあと一緒にいたい」という思いがありました。ただ、その心を殺さなければ、世界もくれあも守れないと思っていたから、るるかはずっと本音を打ち消していた状態だったんですよね。彼女が導き出した「世界とくれあを守る」という答えと、彼女自身の本音には大きなギャップがあったからこそ、すごく苦しかったと思います。

でも、「くれあと一緒にいたい」という気持ちは、彼女の中ではとっくに諦めて、蓋をしていたものだったので……。第31話でくれあから「あなたの本当の答えを教えて」と言われ、使命によって覆い隠していたものを一枚ずつ剥がしていったときに、るるかの本当の答えが溢れ出してきました。

るるかは、天才的で、一手も二手も先を読める名探偵として、とてもミステリアスで強いキャラクターとして描かれてきました。でも、彼女も間違えることがある。やはり完璧ではなかったんですよね。

ーーどれほど優秀なるるかでも、完璧ではなかった。

東山:るるかが本当にしなければいけなかったのは、一人で答えを決めつけて突き進むことではなく、周りに助けを求めて、みんなで解決することでした。でも、彼女はそこを間違えてしまいます。それが様々なすれ違いや、かけ違いを起こしてしまったんです。

キュアアルカナ・シャドウに初めて変身した回で、ゴウエモンから「落ち込むなよ、新人」と言われたとき、るるかが「私は失敗しない」と答えていましたよね。あれは、実は一つのキーワードでもあります。

ーーなるほど! るるか自身を象徴するような言葉でもあったんですね。

東山:はい。るるか自身も「自分は失敗しない」と信じているし、視聴者の皆さんにも、「この子は失敗しないキャラクターなんだ」という前提で見てもらうための言葉でした。

でも、実はそんなことはありえない。誰しも完璧ではないということ。そして、間違えてしまったときに、どのようにみんなで解決していけばいいのか。やはり、仲間がいなければたどり着けない答えがあるんです。

キュアアルカナになる過程を通して、そうしたことを皆さんに感じてもらえたら、受け取っていただけたらいいなと思います。

ーー普段の生活でも、一人で考え込み、抱え込んでしまうことはありますよね。でも話すことで解決する場合もある。家族で見ていても受け取るものの多いお話だと感じました。

東山:頑張り屋さんほど、一人で抱えてしまうと思うんです。「周りに心配をかけてはいけない」「自分で解決しなければいけない」「これは自分が抱えるべき問題だ」と思ってしまいがちですよね。でも、周りには、ちゃんと助けてくれる人たちがいる。自分一人では解決できないことも、みんなと一緒なら解決できることがある。

どんな優秀そうに見える人も、間違えてしまうことがある。るるかが辿ってきた道のりが、皆さんにとっても力になってくれたらと思います。誰かと一緒に解決しようと踏み出すための勇気を受け取っていただけたらうれしいです。

ーーキュアアルカナ・シャドウは、『プリキュア』シリーズの中でも新しい存在だったと思います。一方で、ここまでの物語を見ると、ある意味では“プリキュアらしさ”が詰め込まれたキャラクターなのかもしれませんね。

東山:そうなんですよね。仲間の大切さを、身をもって教えてくれたキャラクターだと思います。『プリキュア』シリーズを通してたくさんの子どもたちに伝えたいメッセージを、強く届けてくれたキャラクターになったのではないでしょうか。

ーーそして、キュアアルカナへと変身しました。変身シーンはいかがでしたか?

東山:まだ完成した映像は見ていないんです。オンエアのギリギリまでクオリティを高めていかれるということで、いまアフレコで見ているものは、まだ線画の状態なんです。

キュアアルカナ・シャドウの演出を踏襲しながら、“白いアルカナ”として作られた変身シーンになっています。「当初からここまで考えられていたんだ」と感じる部分もありました。あらためて、『名探偵プリキュア!』は本当に細部まで作り込まれた作品なんだなと、ひしひしと感じましたね。

きっと、キュアアルカナの姿には、重たい使命から解き放たれた彼女の表情や、明るさが表れているのではないかなと思います。

ーーキュアアルカナへと至るまで、るるかの心の動きをどのように組み立てていったのでしょうか?

東山:ずっと言われていたのは、るるかは嘘で覆われているわけでも、誰かに操られているわけでもないということでした。彼女は彼女として、自分で判断し、自分の意思で怪盗団ファントムに入り、キュアアルカナ・シャドウになっていると。キュアアルカナになった後も、彼女の人格はずっと地続きにあるものなので、突然、別人のように変わってしまうわけではないんです。

ただ、こういう展開になることは以前からわかっていたので、彼女の心の動きを丁寧に表現するために、どのようにお芝居を組み立てていけばいいのかは、かなり考えました。

ーー東山さんご自身の中でも、先の展開を見据えながら演じていたのですね。

東山:そうですね。物語が進むにつれて、るるかが必死になり、声を荒らげる場面も出てきます。でも、もともとは感情を大きく表現するタイプではなく、淡々としたクールな女の子です。そんな彼女でも声を荒らげてしまうのは、どのラインなのだろうということは、川崎弘二さんとも丁寧に打ち合わせをしました。

例えば「ここは感情としてはすでにメーターが振り切れているけれど、声の出力としては、まだ抑えたほうがいいですよね」と確認したり。彼女が平静を保てなくなるほど感情をあらわにするのは、くれあにまつわるところまで取っておいたほうがいいのではないか、といったことも話し合いました。

というのも、るるかはクールですが、内に秘めているものはとても熱いですし、すごく優しいんです。そのなかで「世界を守らなければ」という思いや、さまざまな葛藤がずっと渦巻いている。もしかしたら、誰よりも感受性が強い子なのかもしれません。ただ、感情表現が小さいだけなんです。

もしも感情がないのであれば、そのまま淡々と演じればいいのですが、るるかには強い感情がある。表には出さないようにしていても、そこには微妙な揺れがあります。

ーーその揺れを表すのは、針に糸を通すような繊細な作業ですよね。

東山:自分では抑えたつもりでも、「思っていたより声に出てしまった」と感じることもありました。演じている感情の方向性はあっていても、それをるるかとしてどのように届けるのかがすごく繊細で。「もう一度やらせてください」と、自分からリテイクをお願いすることもありました。

ーーエクリプス・シャドウとなったるるかは、それまで抑えてきた感情を一気に爆発させていましたよね。

東山:エクリプス・シャドウになる過程のなかでは、それまで「かわいい」と言っていただいていたキュアアルカナ・シャドウが闇に飲み込まれ、声を荒げながら、張り裂けそうな思いをぶつけています。お子さんの中には、「怖い」と感じた方もいるかもしれません。「怖がらせてしまっていたらどうしよう」という不安もあります。

ただ、ここで出し切らなければ、キュアアルカナ・シャドウの思いに背くような気がしました。たとえ怖いと思われても、それはむしろ正しいことだとも思いました。強い意志を持つのはいいことだけど、身を滅ぼしかねない力を手にしてまで貫こうとしてはいけないんだ、何かを間違えてしまっているんだ、ということを伝えられると思いました。

あくまでも『プリキュア』シリーズであるということは自分の中で大切にしながらも、今回は少し踏み込んで、キュアアルカナ・シャドウの悲痛な思いをお芝居に乗せようと決意しました。

「やっと自分の答えにたどり着けた」

ーーくれあと心が通じ合って、本当に良かったですね。

東山:本当に! るるかにとっては、とっくに諦めていた未来でした。くれあに自分の名前を呼んでもらうことも、二人で名探偵として活躍することもないと思っていたはずです。そもそもくれあには、ずっと助手としてそばにいてもらっていましたし、キュアエクレールになった瞬間にマコトジュエルを奪われてしまったので、二人がともに名探偵になった状態で活動したことはなかったんですよね。だから、ようやくくれあと二人で、対等な名探偵として並んで歩いていけることが、すごく良かったなと思います。

ーー長谷川育美さんが演じるくれあやキュアエクレールの言葉を受けて、東山さんはどのような気持ちになりましたか?

東山:私は長谷川さんのことを“はせちゃん”と呼んでいるのですが、はせちゃんがまっすぐに言葉を届けてくれるので、私の心にもまっすぐ届いてきました。くれあはお姉さんらしい包容力があり、ちょっとのことでは動じない落ち着きを持ったキャラクターです。でも最後にキュアアルカナ・シャドウへ訴えかける場面では、キュアエクレールも涙ながらに、必死に言葉を届けてくれて。はせちゃんも、本当に一生懸命、気持ちを届けてくれました。

私はその流れに身を委ねているだけで、自然と心が通じ合い、導いてもらえたように感じまています。

ーーそれこそ、るるかが涙を流す場面もあります。

東山:私自身も「ここまで彼女が感情をあらわにするなんて」と感極まるものがありました。本当はるるかも、ずっと誰かに本音を言いたかったのかもしれません。本人にも、その自覚はなかったと思うんです。でも、本当はずっと言いたかった。いちばん大切にしたかった気持ちを、心の奥へ追いやっていたんですよね。だから、「良かったね。やっと自分の答えにたどり着けたんだね」という思いでした。

ーー子どもたちをはじめ、ご家族でキュアアルカナ・シャドウの行く末を見守ってきた方も多いと思います。第31話までを見届けた皆さんに、これから注目してほしいところを教えてください。

東山:ここから先、何が起こるのかは私にもわかりません。物語はまだまだ続いていくので、きっとこの先も大きな展開が待ち受けていると思います。ここからは、重たい使命から解き放たれ、仲間と手を取り合って歩いていくアルカナを、温かく見守っていただけたら嬉しいです。アルカナだけでなく、みんなの幸せな未来を応援していただけたらと思います。

[インタビュー/逆井マリ 編集/小川賢人]

作品情報

名探偵プリキュア!

あらすじ

【明智あんな】は、マコトミライタウンに暮らす14歳の中学2年生!
誕生日に現れた妖精【ポチタン】と、お部屋にあったペンダントに導かれて
2027年から1999年のまことみらい市にタイムスリップ…!

そこで出会ったのは、名探偵に憧れている14歳の女の子【小林みくる】!

そんな中、事件発生!?
大切なものを盗まれて困っている人がいるみたい…!
事件は【怪盗団ファントム】のしわざ…!?

困っている人を見逃せない…!
そんな思いから、あんなとみくるは【名探偵プリキュア】に変身!!

名探偵プリキュアがみんなの笑顔を推理で守る!
「そのナゾ!キュアット解決!」

そして、あんなは元の時代に戻ることができるのか…!?

キャスト

明智あんな/キュアアンサー:千賀光莉
小林みくる/キュアミスティック:本渡楓
帆羽くれあ/キュアエクレール:長谷川育美
森亜るるか/キュアアルカナ/キュアアルカナ・シャドウ:東山奈央
ポチタン:加藤英美里
シュシュタン:礒部花凜
マシュタン:羊宮妃那
ジェット先輩:梶裕貴
ニジー:松岡禎丞
アゲセーヌ:大橋彩香
ゴウエモン:石川栄一
ウソノワール:日野聡
デッチ・アゲイン:天﨑滉平

(C)ABC-A・東映アニメーション

 

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