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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。

「週刊少年ジャンプ」にて2021年から2026年にかけて連載された漫画『逃げ上手の若君』(作・松井優征先生)。2024年7月よりアニメ第1期が放送され、この7月から第2期が放送中です。
本作は、滅亡した鎌倉幕府で1人生き残った北条家の正統後継者・北条時行が、“逃げ隠れ”の才能を活かし、北条一族を裏切った足利尊氏から鎌倉を奪還するため厳しい試練と戦いに身を投じていく物語です。
本稿では、毎週の放送に合わせてそのストーリーを振り返りながら、戦の戦況や政治情勢を整理していきます。今回は第十九話「ぼくのおじさん」です。
※本記事は本編のネタバレ要素が含まれます。
時行の逃げの才能は誰に由来するものなのか。本話はその“逃げの血”を感じるとともに、改めて現代との死生観の違いや生きることの尊さを感じる回となりました。
物語の中心となった人物は、前話ラストで姿を見せた北条泰家(やすいえ)。彼は鎌倉幕府のトップ・北条高時の実弟であり、幕府の中枢にいた人物。時行にとっては実の叔父に当たります。
まさかこんなに近い血縁者が生きていたとは! 身内は全滅させられていると思っていただろう時行。そのような中での叔父との再会はこれ以上ないほど嬉しいものであり、涙を流しながら喜んでいました。諏訪で多くの仲間を得た時行ですが、同じ宿命を背負う身内というのはやはり特別で心強いものですよね。
泰家は鎌倉が陥落した際、頼重に時行を預ける手はずを整え、自身は敵方(新田)の負傷兵に扮して鎌倉を脱出。仲間からはいっしょに自害しようと誘われたものの、「命など惜しくはないが再び天下を取り返すことで皆の無念を必ず晴らす!」と言い、死を回避。
口ではそういうものの、思っていることが顔に出る泰家の額には「ひたすら死にたくなかった」の文字が。時行たちは丸見えの本心にちょっと引いたような表情を見せていましたが、今の時代であればなんらおかしいことではありません。
玄蕃も口にしていたように、敵兵に扮してまで懸命に生きようとすることを「恥知らず」と蔑むことに強い違和感を覚えます。この時代の武士ならば潔く死を選ぶことが美徳とされていたのでしょうが……生きたいと思って何が悪いんだ!
鎌倉から逃げ延びた泰家は、東北を巡りながら北条残党を集めて戦い続けてきたものの、全て敗けてしまい、諏訪頼重を最後の希望に信濃へ逃げてきたのでした。これも時行を逃がした目的のひとつだったのかもしれません。
文字通り、本音が顔に書いてあるというユニークなキャラクターである泰家。鎌倉幕府滅亡以前は、正統後継者である甥っ子に下心丸出しで近づいてきており、少々浅はかで欲深い人物として描かれていましたが、その胸中が全て顔に出る素直さや飾らない人柄が時行は大好きだったと言います。
ある意味、謀反の片鱗を一切見せないまま忠臣の顔をして鎌倉幕府を滅亡させた足利尊氏とは真逆の人物です。本心を隠しきれないからこそ、信用できる人柄ということなのでしょうね。確かに、尊氏とは友達になりたくありませんが、泰家なら友達になってみたいです。
泰家の来訪で賑やかさが増す諏訪大社を密かに見張る影。いち早くその存在に気づき、接触した玄蕃は、得意の術でやり合うも全く歯が立たず「技じゃないな、手品だ」と評されてしまいます。何とか殺されることなく逃げおおせたものの、自慢の術を貶されたことは相当なショックだったようです。
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— TVアニメ『逃げ上手の若君』 (@nigewaka_anime) August 30, 2026
#逃げ上手の若君
第十九回 切り抜き
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第十九回「ぼくのおじさん」より
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「技じゃないな。手品だ」https://t.co/lb9xkTPtkf #逃げ若 pic.twitter.com/Oo6T6xWp4L
影の正体は、足利直属の忍集団・天狗衆。足利学校という教育機関で養成された腕利きの忍たちによる集団で、日に百里(約392km)駆けると言われるほどの高い身体能力を誇っているのだそう。現代のような通信手段のないこの時代において、彼らの情報伝達力がどれだけ多大な力を持っていたかは想像に容易いですね。実際に尊氏の鎌倉幕府打倒にも大きく貢献しているといいます。
玄蕃がこのことを頼重に報告すると、頼重は「時行様がこのまま諏訪に止まっていたら死ぬであろう なるべく遠くへ逃げるが吉」という自身が見た不吉な未来について言及。きっと天狗によって正体を暴かれてしまうことを意味しているのでしょうね。
そこで頼重は、大乱の準備のため京に向かう泰家に時行も同行するよう提案。人口の多い京ならば人に紛れることもできるうえ、天下人を目指す時行にとって、自身の目で京を見ることは大きな学びになると頼重は考えたのでした。
そうと決まれば打つ手は早い方が良い。その夜、侵入者に混乱する現状を逆手に取って失火に見せかけて館ひとつを燃やし、その騒ぎに紛れる形で泰家と逃若党は京へ出発。危険を回避するための上京であるものの、初めての都に期待に胸を膨らませながら時行は馬を走らせます。
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第十九回 切り抜き
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第十九回「ぼくのおじさん」より
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視聴者を驚かせたのは、関所を突破する泰家の技。北条残党を探す敵方が作った関所で、行く手を阻まれる一行。泰家の額には「北条」と書いてあるので、誤魔化しも効かないでしょう。
ところが、泰家は驚きの策でこの関所を突破してみせたのです。半日間食事を抜いて、山の中で服を汚してみすぼらしい姿に変貌したうえで、初めて上京する田舎侍を装い、「初めて良い仕事をもらった」「母を亡くした子供たちにもやっと楽な暮らしがさせられる」「借金してまで馬と贈り物を買った」と顔じゅうから涙、鼻水、唾を吹き出しながら通してくれと懇願。
額の「北条」の字は見えないほど薄くなり、代わりに「哀れ」の字が濃く刻まれ、文字通り哀れさが前面に押し出されています。関所の役人もあまりの必死さに気圧され、通過を許可。見事素性を隠して関所を突破したのでした。
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通過後に「まあざっとこんなものよ」と得意げな泰家に思わず笑ってしまいました。上田燿司さんが演じていらっしゃいますが、こんなユニークなキャラクターを演じるのはすごく楽しそうです。
また、「ひと時の哀れさで素性を隠す事など何でもないぞ」「なぜなら我等は天下の北条だからだ!」そう話す泰家の台詞から、彼が揺るぎない気高さを持っていることが感じられました。
自害せず敵兵に扮して鎌倉を脱出することも、みすぼらしい田舎侍に扮して関所を突破することも、この時代の武士の矜持には大きく反するものでしょう。他人から見れば、「恥知らず」と蔑まれさえしそうな行いですが、胸の内に北条としての確固たる誇りを持つ泰家にとって外野からの評価は瑣末なこと。
余計なプライドで命を危険に晒すことはせず、あの手この手で生き残っては再起を図る様は見習いたいほど格好良く映りました。叔父の生き抜く力を間近で感じた時行にとっても大きな学びになったのではないでしょうか。
「技じゃないな、手品だ」天狗にそう酷評されてからというもの、悔しさが胸に残り続けていた玄蕃は、京に向かう道中でそのことを吹雪に相談。「敵う気がしなかった」という天狗と自分の決定的な違いを訊ねると、吹雪は「技の威力の差」と答えます。
今の玄蕃の技は悪戯の範疇であり、死を覚悟した戦の場ではその程度では敵を怯ませることはできません。「本気なら殺せる」という凄みが伝われば真の意味で敵を縛れる、と吹雪は手品と技の差を指摘しました。
本話冒頭では、大戦を目前に控えて身を引くことさえ考えていた玄蕃でしたが、天狗との一件を経て「俺も何か凄いもん開発するか 天狗野郎の間抜け面を拝むためにも」と意識が変わった様子。彼もまた京で一皮剝けそうな予感がしますね。
若者が都会の空気に触れて大きく成長する、というのは今も昔も変わらないのかもしれません。逃若党の京滞在は彼らにどんな変化をもたらすのでしょうか。
| 作品名 | 逃げ上手の若君 第二期 |
|---|---|
| スケジュール | 2026年7月17日(金)~ 全国フジテレビ系“ノイタミナ”にて |
| あらすじ | 時は西暦1333年、武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、信頼していた幕臣・足利高氏の謀反によって滅亡する。 全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた幕府の正統後継者・北条時行は、神を名乗る神官・諏訪頼重の手引きで燃え落ちる鎌倉を脱出するのだった……。 逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく時行。 時代が移ろう大きなうねりを、「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に「逃げて」「生きる」ことで乗り越えていく。 英雄ひしめく乱世で繰り広げられる、時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は―― |
| キャスト | 北条時行:結川あさき 雫:矢野妃菜喜 弧次郎:日野まり 亜也子:鈴代紗弓 風間玄蕃:悠木碧 吹雪:戸谷菊之介 諏訪頼重:中村悠一 望月重信:三宅健太 海野幸康:楠大典 祢津頼直:三浦勝之 足利尊氏:小西克幸 小笠原貞宗:青山穣 市河助房:山本高広 清原信濃守:勝杏里 |
| スタッフ | 原作:松井優征 監督:山﨑雄太 シリーズ構成:冨田頼子 キャラクターデザイン・総作画監督:西谷泰史 副監督:川上雄介 アニメーションディレクター:太田慎之介 プロップデザイン:よごいぬ 色彩設計:中島和子 美術監督:小島あゆみ 美術設定:taracod takao 建築考証:鴎利一 タイポグラフィ:濱祐斗 山口真生 撮影監督:佐久間悠也 CGディレクター:任杰 河北茉衣 編集:平木大輔 音響監督:藤田亜紀子 音楽:GEMBI 立山秋航 音響効果:三井友和 制作:CloverWorks 製作:逃げ上手の若君製作委員会 |
| 主題歌 | OP:「鬼事」中島健人 ED:「ロマンティックがほしいなら feat. 小坂菜緒,正源司陽子,藤嶌果歩(日向坂46) 」ぼっちぼろまる |
| 電子書籍 | 『逃げ上手の若君』電子書籍(コミック) |
