音楽
フルアルバム『V.D.』VALSHEさんロングインタビュー

VALSHEさんにロングインタビュー! 全曲解説で『V.D.』を紐解く

 昨年11月1日に初となる実写アーティスト写真の公表、そして11月30日赤坂ACTシアターでの初ライヴを開催──自身の大きな決意と覚悟に基づき、新たなステージへとチャレンジしていったデジタルロックシンガー・VALSHEさんが、2月19日に1stアルバム『PLAY THE JOKER』より約2年ぶりのフルアルバムをリリースする。タイトルは『V.D.』。

 今作は「VALSHEがVALSHEである、その意味とは? - VALSHE's Identity」がテーマとなっており、全曲一切フィクションのない「VALSHEそのもの」が赤裸々に描かれている。つまり、“いま”の心の全てを曝けだした渾身の一作に仕上がっているのだ。ちなみに、タイトルに関しては「I.D.(アイデンティティ)」の造語である「ブイデンティティ」の頭文字が採用されているため、『V.D.』となっているとのこと。

 今回アニメイトTVでは、昨年の出来事を振り返りながら、ニューアルバムについて徹底取材! 収録曲について、限られた時間のなかで真摯に語ってくれた。可能であればアルバムを聴きながらインタビューを読んで、想いを巡らせて欲しい。


●怒涛の2013年を今振り返って。

──アニメイトTVのwebラジオ『ばるとく☆RADIO』でもたっぷり語って頂いていたんですが、まずは改めて2013年を振り返るとどんな年でしたか?

VALSHEさん(以下VALSHE):激動という言葉がいちばんしっくりくる年だったのかなと思います。毎日が目まぐるしく、いろいろなモノが進んで変わっていく一年でした。ラジオでは振り返りつくせなくて結局振り返ってなかった気がします(笑)。

──(笑)では今日はざっくり上半期・下半期に分けてお話をお伺いしたいのですが……。2013年の上半期は、3月に4枚目となるシングル『4 FELIDS』をリリース、5月にオフィシャルファンクラブ「OVER THE HORIZON」の設立があり、同時に年内にライヴを行うことが発表されました。

VALSHE:2013年は「大きな船に乗れました」という言葉が新年のあいさつだったんです。「自分たちの描いた大きな船を見つけたので、その船に乗って出発します」というところからスタートして、すぐにファンクラブ設立の準備をはじめて。初のコンセプトシングル『4 FELIDS』も出し、前半は前半ですごく充実していました。ただ表立っての充実感というよりかは、あくまで準備段階での手ごたえを噛みしめていたというか。

──その内側で噛みしめていた充実感が開花するような下半期。8月21日には初のアニメタイアップを勝ち取った『BLESSING CARD』(テレビアニメ『探検ドリランド −1000年の真宝−』エンディングテーマ)を発表されました。

VALSHE:『BLESSING CARD』からは止まる日がなくて、充実という言葉とはちょっと違うかもっていうくらい(笑)、忙しい日々でした。でも流れてしまうというよりは、ひとつひとつに手ごたえをしっかり感じながら制作ができていましたね。

──11月27日リリースした6枚目のシングル『Butterfly Core』は『名探偵コナン』のオープニングテーマに抜擢され、初の“実写ジャケット”でのリリース。さらに11月30日には赤坂ACTシアターで初のライヴ「OVER THE HORIZON FIRST CONTACT "LIVE THE JOKER 2013"」を開催と(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1387965662)、大きなトピックスが続きました。お忙しい日々だったとは思うのですが、ライヴの準備はいつから始めていたんでしょうか。

VALSHE:漠然とした演出・構成はファーストフルアルバムをリリースした当時からあったんですが、具体的に動き出したのはライヴの半年前くらいですね。ダンスを取り入れたり、人形の動きを取り入れたり、そういったアイデアを演出の方に伝えて、ディスカッションを繰り返しました。実はそれまでボックス(ステップ)すら踏んだことなかったんです。だからダンスの先生には「イチからよろしくお願いします」と伝えて(苦笑)。

──えーっ! ライヴでキレのあるダンスを目撃しているので驚きです! VALSHEさん、もともと運動神経が良いんですか?

VALSHE:うーん、どうでしょう。体を動かすことは好きだったので、ダンスにも興味はあったんですが……ダンスに接する機会もなかったですし、学校では部屋のなかでやる部活ばかりに所属していたので、自分だと分かりません(笑)。でもダンスの練習はすごく楽しかったです。

 また、ダンスの練習と前後して声優のレッスン、舞台演技のレッスンも並行して行っていたんですが、そこで学んだことが今回のライヴですごく活かせたように感じました。今までは“歌のみ”で自分の感情を伝えていたんですけど、ステージでの表情や立ち振る舞いで、より多くの感情を伝えられるんだなと。そういう意味でも時間を掛けて構想を練っていった甲斐があったなと。

──ステージに立ったとき、率直にどんなお気持ちになりましたか。

VALSHE:それまでにできることはやりつくしたので、あとは楽しむことと伝えることと──全力で会いに行くこと。それだけに気持ちが向いていたので、すごく満足しています。

──当日は二部制でしたが、特に二部の後半はVALSHEさん自身も楽しんでいるように感じました。

VALSHE:そうですね。どちらも楽しかったんですけど、二部はファンのかたのレスポンスがよくて、すごく楽しそうな表情で。ライヴ自体が初めてで「どういう風に動いたらいいのか」分からないかたもいたと思うんですけど、二部では一部にも参加してくれたかたが先導して引っ張ってくれているのが伺えて……。

──ステージからでもその様子が分かるんですか!?

VALSHE:はい。思っていた以上にみなさんの顔がよく見えました。

──へぇ! また、二部の本編終了後アンコールを求める声が“アンコール”ではなく“VALSHEコール”になっていたことも印象的でした。

VALSHE:はい。着替えながらバッチリ聞いていました(笑)。「あ、アンコールじゃないんだ!」って、嬉しかったですね。ライヴの完成を目指してきてずっとやってきたんですけど……ライヴは来て下さるかたがいて初めて完成するものなので、最終的な完成図はステージに立ってみないと分からないんです。でも実際に立ってみたら、自分が思った以上の完成図がそこにあったので。"LIVE THE JOKER 2013"に関しては思い残すことはないですね。

──うんうん。みんなにとって特別なライヴだったと思います。

VALSHE:そうだと良いなぁ。

──ところで、ライヴを経てチームVALSHEに変化はありましたか? より絆が深まったのかなと個人的には思ったんですが。

VALSHE:ライヴを経て絆が深まったという感じは正直していないんです。ライヴに至るまでに“絆”という意味ではこれ以上にないくらい感じられる機会があって、それを感じられたからこそあのライヴに繋がったというか。ライヴが終わったら改めて、一緒にやってきて良かったなと思えた瞬間でした。

●テーマは「VALSHEがVALSHEである、その意味とは?」

──ライヴのために学んだ表現方法やライヴで得たエネルギーが、今回のアルバムの制作に繋がっていきましたか? 今回のアルバムでは、声の表情が今まで以上に豊かになった印象があります。

VALSHE:そうですね。ライヴがあったからVALSHEのすべてを解放するアルバムを出すことができたし、ライヴを経たから、今だからこそこういう言葉が出てきたんだろうなと思っています。でも実は今作の構想、タイトルは1年半前から決まっていたんです。いつ出すのかということはまだ決まっていませんでしたが、ただVALSHEは実写で顔が出ていて、ライヴもやっていて……という状態であればこのコンセプトのアルバムが出せるかなと。2013年の一連の流れが、このアルバムを作るにあたっていい方向に作用しました。

──1年半も前から決まっていたとは……。アルバムの本格的な制作はいつからはじまっていたんですか?

VALSHE:本格的にはじまったのはライヴの直後なので12月の前半ですね。それまでに歌詞がついていない状態の曲が少しあるという状態でした。そのときにあったのが『RAGE IDENTITY』と、『Human Dolls』、『EVALUATION』かな。サウンドプロデューサーは今回ももちろんminatoなので、アルバムのコンセプトも考えつつライヴ後にすぐ作詞に入れるように下準備をしておいてもらっていて。終わった瞬間に全員でアルバムに臨むような状態でした。

──構想が固まっていたとは言え、制作期間はかなり短いですよね?

VALSHE:はい。シングルより短かったかもしれません(笑)。

──(笑)でもすぐに言葉は湧いてきました?

VALSHE:そうですね。今回は、VALSHEの存在意義、自分が自分であることの証明をテーマにして全編ノンフィクションで作っているので、何をテーマにして書くのかを先に決めていたんです。その上でこのテーマだったらアップテンポがいい、ミディアムなサウンドがいい……みたいなことを話して、詞をつけていくという順番だったんです。だからあらかじめテーマを決めていた分、悩むようなことはなかったです。

──それだけ伝えたいことに迷いがなかったということですね。今作は全曲一切フィクションのない「VALSHEそのもの」がテーマになっているとのことで、気持ち的にはこれまでの制作とはまったく違うモノになったと思うんですが、そこで壁にぶつかることはありませんでしたか?

VALSHE:歌詞に自分の気持ちを落とし込むときに難しさを感じることはなかったんですけど、これまでの作品はノンフィクションであるのは自分の心情の部分が“少し”入っている曲が多かったので……どちらかというと“共感”に近い形で歌っていたんです。

 それがVALSHE自身がコンセプトという形に変わって。まぎれもない自分自身を歌詞にする際に、難しいというよりかは“つらい”と悩んでしまったり、照れるなと感じたり……そういうことはありましたね。嬉しいことを嬉しいということに対して、むず痒い感じもありましたし。初めて“当事者”として歌うと、レコーディングでも気持ちが違いましたね。いろいろな気持ちが楽曲ごとにあるので。

──では今日は1曲1曲お話をお伺いできればいいなと思っております。

VALSHE:ハイ! よろしくお願いします。

●VALSHEさんと共にアルバムを紐解いていく全曲解説!

──『Overture』から繋がっていくリード曲『RAGE IDENTITY』。アルバムのキーともなる重要な曲です。

VALSHE:実はこのタイトルも1年半前から決まっていて、「表題曲は『RAGE IDENTITY』にしよう」とminatoと話していました。その上で歌詞を書いていったんです。なんのために自分がここにいるのか、なんのための存在なのか。これまでは覆面を貫いてきて……それは思い描いていた道筋ではあったんですけど、こと存在意義に関しては自分自身を追い詰めていくものがあって。今作の “VALSHEのすべてを解放する”というキャッチフレーズのもと、自分が自分であることの意義と初めて向き合えたのかなと。

──自分と改めて向き合う作業というのは、どういうものでしたか。

VALSHE:正直、自分はこうであるみたいなものを明確に言葉で語れないという部分も感じて、それも含めてこの曲が完成したんです。でもいま出せる最善の言葉を収められたのではないかなと。かつ、一年半前の構想していた時期に漠然と思っていた“自分自身”の答えが、みんなと会えたことで変わったと思うので。きっと昔の自分だったらこうは思ってなかっただろうなということが、歌詞には出ていると思います。

──ああ、なるほど。

VALSHE:『Mr.Diorama』(『BLESSING CARD』収録)のときにも同じように葛藤があったんですよ。『Mr.Diorama』の感情が、この曲に繋がっているんじゃないかなと思います。顔を出していないことの葛藤が顔を出したあとにどういうモノに変わったのかというところを含めて──『Mr.Diorama』も今作に収録されているので、合わせて聴いて頂けると面白いと思います。

──『Mr.Diorama』はVALSHEさんが初めて自分の感情や葛藤を覗かせた曲ですよね。

VALSHE:そうですね。つまり『Mr.Diorama』は過去の自分、『RAGE IDENTITY』は現在の自分ということです。

──いまお話してくれた想いがサビの<自分が自分で在る事の意味/容易く答えられるはずもない/戦って 戦って/見つけていくものだろ>というラインに繋がっているんですね。その上で、<いま残らず全てをさらけ出す/引き返す場所なんてない/それが「証明」(すべて)>という言葉が出てきます。今のVALSHEさんの決意表明なのかなと。

VALSHE:そうです。何か手ごたえがあったことで、今まで持てていなかった自信がひとつついたのかなと。

──さきほども「存在意義に関しては自分自身を追い詰めていくものがあった」とおっしゃっていましたが、今までは自分自身に自信が持てませんでした?

VALSHE:はい。

──即答されましたね(笑)。

VALSHE:はい(笑)。もちろん制作物には自信はあるんですよ。ただVALSHE自身には自信がなくて……そういう意味でも、自信を持たせてくれる存在である周りのチームの方たちが不可欠と言うか。自分でなければならない意味って突きつめてしまうと「あるのか」って。以前であれば 「ない」と思ってしまっていたんですけど、ライヴを経て「自分じゃないといけない」という自信が少しだけできました。

──その謙虚な姿勢がVALSHEさんらしいです。ところで、この曲を始めVALSHEさんの編曲を数多く手がけられているG’n-さんってどんな方なんでしょう?

VALSHE:えーっと……メガネとヒゲがとてもステキで、オーガニックが大好きな九州男児です(笑)。音楽的にもとても幅が広い方で、新しい要素を取り入れたいときに臨機応変に色々と提案してくださるので頼もしい存在ですね。今回のアルバムでも多数アレンジして頂いているんですけど、各楽曲、色のある曲にしてくださって。ライヴにも駆けつけてくれてお菓子と明太子を持ってきてくれました(笑)。

──(笑)では3曲目『Butterfly Core』(6th SG/テレビアニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ』)についてお伺いさせて下さい。アニメの世界観とリンクするスリリングなデジタルロックナンバーで、リアルタイムのVALSHEさんの想いが表れた歌詞が印象的です。

VALSHE:アルバムの前作だったので自分の気持ちが固まっていた段階で作詞をしていることもあって、自分の決意や覚悟が最近の作品のなかでは一番色濃く出ているんじゃないかなと思います。なので、『RAGE IDENTITY』、『Butterfly Core』という曲順は自分のなかで必須だったんです。

──なるほど。『名探偵コナン』のオープニングテーマのお話を頂いたときはどんな心境でした?

VALSHE:ビックリしました。1話から見ていたアニメだったので「自分で大丈夫かな」という不安も正直あったんですけど、『Butterfly Core』が完成して自信を持って送り出せるなと。今でも流れているのを聴くとすごく嬉しい気持ちになります。リリースの日がライヴの直前だったので、発売したことを喜ぶ時間はあまりなくて。ライヴが終わったあとに「ああ、CDをリリースしたんだ。ライヴも終わったんだ」と同時に噛みしめたような感じでした。

──続く4曲目『AFFLICT』(3rd SG/『Fragment』との両A面シングル曲)もスリリングな曲になっています。

VALSHE:『AFFLICT』をリリースしたのが一昨年の6月なので、船を探している最中に作った楽曲なんですね。さきほどチームVALSHEの絆の話が上がりましたが──今現在チームVALSHEは絆や信頼関係がしっかりある状態なんですけど、正直言うと『AFFLICT』の段階では信頼関係を作りかけている最中であったというか。

──そうだったんですか。

VALSHE:円満な関係を結ぶには十分すぎるほどだったんですけど、もう一歩深くまでっていうところになってくるとその壁が大きくて、高くて。それに対して自分が悩んでいる時期に『AFFLICT』ができたんです。なので、心の内を表したのが『AFFLICT』、でも表では希望を持って動いている自分がいるというのが『Fragment』の心境なんですよ。

──なるほど。だから『AFFLICT』では少し切ない、ブルーな雰囲気が漂っているんですね。でも不思議と儚さみたいなモノはなくて、特に後半は孤独の中から生まれる凛とした強さや気高い闘志を感じさせます。すごくVALSHEさんらしい曲ですよね。

VALSHE:そうですね。既存のシングル楽曲に関してこれまでは「心境は入っていますが、あとは受け手のかたに解釈はお任せします」という形にしてきましたが、このアルバムに入っているということはノンフィクションの曲なんですね。だから後々歌詞を読みなおして頂ければ違った見方ができるんじゃないかなと。

──なるほど。発表当時、ブログで「特別な曲」と綴られていましたが、その想いは今でも変わりませんか?

VALSHE:変わらないですね。大きなコンセプトを持って毎作制作をしているとそれぞれ思い入れが強くなってくるんですけど、シングル楽曲に関しては特に当時の自分が色濃く出ているので、その時期のことが鮮明に思い浮かびますね。

──次の5曲目『ASTRAEA』は一転、ファンタジックな世界観のキラキラとした楽曲になっていて、スケール感のあるサビの伸び伸びとした声が心に響きます。

VALSHE:今回のコンセプトは自分の人生、人間性などの深い部分をさらけ出しているので──本人だからかもしれないんですけど、全体的に妙に生々しく感じでいたんです(笑)。だからひとつくらいファンタジックなモノを書きたいなと思って生まれたのが『ASTRAEA』。もっとライトな部分で自己紹介をできるテーマをさがしたときに、血液型や星座、干支を掘り下げてもいいなと思って、今回は星座で良い曲を作りたいなと。『ASTRAEA』というのは乙女座の女神様なんですけど、彼女の生涯として記されている神話のなかから自分が共感できる部分を探して、それをひとつの歌詞にしました。

──ドラマティックなサウンドに仕上がってますよね。ピアノから始まって、キラキラとした音も入っていて。VALSHEさんの新しい表情が出ているように思いました。

VALSHE:minatoも“新しい音を開拓したい”というつもりで書いたそうです。サウンド的にも軸足となる基本のVALSHEサウンドの上にクラシックがのっかっていて、新しい方向性になっているので、神話から作った歌詞とすごくマッチしているんじゃないかなと。

──ところで、血液型、干支ではなくなぜ星座を選択されたんですか?

VALSHE:自分が新しく誰かと出会って、そのひとのことを知ろうとするときに何を聞くかなと考えたときに血液型と星座を聞くなと。でも血液型を掘り下げても楽曲にならなさそうだなと思って(笑)。それは『ばるとく』でやればいいかなと思ってます。

──楽しみにしてます!(笑) 続く『Human Dolls』はminatoさんが作詞、作曲を担当されています。

VALSHE:今回のコンセプト的に自分自身で歌詞を書かなければ成立しないモノが多かったんですが、minatoは長い期間一緒にいて、自分よりも自分を知っているので、自分以外で自分のことを歌詞にできるのは彼だけだろうなと。そういう意味で、第三者的な立ち位置から見たVALSHEも面白いんじゃないかと思い、幼少期からの生い立ちを彼にヒアリングしてもらって。自分の半生を掘り下げた歌詞なので、ヒアリングしてもらうときは緊張感がありました。

──ヒアリングはどんな形で行ったんですか?

VALSHE:(インタビューの)このような形で。そのなかで「ここが良いんじゃないか」という部分を抜き出して書いてもらったんですけど、第三者としてその場景を歌詞にしている分想像力をかきたてる内容になっていて、完成したものを読んだときは少し気味が悪くなりました(笑)。ノンフィクションなのに、キレイに物語調になっていて。

──3拍子のリズムが、童話のような不穏な音像を描き出してますよね。

VALSHE:minatoによると──「VALSHEからヒアリングをしたうちのひとつのエピソードが興味深い内容で“そんなことってあるのか!?”というようなモノだったので、そこにクローズアップをして、かつそれを少しファンタジックに、物語調にして書きました」とのことです。サウンド的にもひねたリズムになっているので、それを合わせて不気味な雰囲気になるように心がけて制作したので、気味が悪いと思ってもらえたら正解ですよ(笑)。

──なるほど(笑)。では、さきほどもお話にあがりましたが、『Mr.Diorama』(5th SG)が7曲目に収録されています。自らの葛藤をサウンドに乗せて走らせた曲ですが、今聴いてみるといかがですか。

VALSHE:昨年夏のモノなので制作してから間もない作品なんですが……つい最近のことだけど、その当時に思っていたことと現在の気持ちはまったく違って。VALSHEという人間の人生を振り返るのにこの楽曲は絶対にはずせないなとは思います。改めて聴いても。

──8曲目『Blissful Jail』でも心の葛藤を歌われていますよね。抽象的な表現なんですが、水晶玉のなかで行き場のない感情が彷徨っているかのような……すごくミステリアスなバラードで、この曲は作詞・作曲をVALSHEさんが担当されています。どのような気持ちで書いた曲なんでしょうか。

VALSHE:この仕事、この立場ならではの自分の想いを書きました。こういう感情が芽生えたのってつい最近なんです。きっとこの活動をしている限り、考え続けたら尽きないテーマで……本来向き合ってはいけないテーマなのかなとは思うんですけど。でも逃げるワケではなく、そこに常にあるものというイメージというか。結論を言えば、そういうことを考えられるようになったのは自分自身の成長なんだと思っています。この曲に関しては、これ以上具体的な内容はご想像にお任せしたいなと。感情を乗せられた曲になっていると思います。

──なるほど。ところで『Blissful Jail』のコーラスはminatoさんですか?

VALSHE:そうです。サウンドに関しては骨太なギターの重厚なサウンドを心がけています。洋風なバラードを作ってみたくて。骨太なサウンドと洋風のオケが混ざったVALSHEとしては珍しい形のバラードになっています。

──そんなムードから一転、9曲目『BLESSING CARD』(5th SG)からエネルギッシュな雰囲気に変わってきますね。

VALSHE:そうですね、ここからアルバムのテンションが変わっていきます。『BLESSING CARD』という幸福のカードを掴むための決意、誓いを主に書いている楽曲です。ライヴでカードを引いたあとでもう一度聴くと違った気持ちになるというか、すごく安心して聴けます(笑)。自分でも勇気付けられる曲になりましたね、『BLESSING CARD』は。

──続く10曲目『Leopardess』なんですが……なんとなくフィクションかと思っていたので、今回のアルバムに収録されていて驚きました。

VALSHE:はい、実はノンフィクションだったという。なので、作った時点でアルバムに収録することは決まっていました。この曲と同時に『Leopardess -You are...』という曲もあったんですけど『Leopardess -You are...』ではなく、『Leopardess』が収録されているということで……えーっと……この曲に関しては自分からはあまり触れないほうがいいかな(笑)。でも作詞がminatoで第三者視点のお話になっているので……ご想像にお任せします、楽しんでください!

──(笑)この曲もヒアリングしていったんですか?

VALSHE:いえ、『Human Dolls』は幼少期をテーマにしていたので改めて話し合ったんですけど、普段はそういうことはしてないんですよ。現在のVALSHEは誰よりも知っているので、第三者として見ていれば分かることを書いたというか……これはminatoによるVALSHEの観察結果なんです(笑)。

──11曲目『EVALUATION』は久々にminatoさん(作詞)、doriko(作曲)がタッグを組んだ曲ですね。

VALSHE:ひさびさのdorikoさんで、お気に入りの楽曲です。これは客観的に見たVALSHEをテーマに書いてもらいました。minatoいわく「(VALSHEは)いつも何かから身をまもっている印象があって、そのために人やモノや価値観、さまざまなモノを値踏みしている印象。ということで、このタイトルにした。でも実際はそんなことをしたいワケじゃなく、本当はすごくまっすぐで単純な欲求ひとつなんだという歌詞です。あんまり深く言うと照れられると思うので、ココまでで」と(minatoからの資料に)書いています(笑)。

──もうちょっと聞きたいです!(笑)

VALSHE:いや、照れるのでちょうど良かったと思います(笑)。自分のことをよく知っている人でないと書けない歌詞だと思いますね。自分自身で自分のことを歌詞にとはしたものとは違った面白さがあるなぁと。サウンド的には「これぞVALSHE」という王道の音になっていて。ボーカルではBメロで追っかけがあったり、サビで重ねがあったりとか、いろいろとチャレンジしているのでそのあたりも聴いて頂ければ。

──『Prize of Color』は、冬から春に変わる雪解けの瞬間を感じるかのような、ハートフルな可愛らしい曲ですね。

VALSHE:楽曲、歌詞ともにこれまでのVALSHEのイメージになかった曲かもしれません。自分のことをよく知っている人から “VALSHEは天邪鬼だ”って言われるんです……自覚もあって(笑)。好きなモノを好きって言うのが実はすごく苦手なんです。とくに人に対して。でもこの楽曲に歌詞をつけるときは、そういう部分をとっぱらってファンのひとに対する想いを思いっきりストレートに書こうと思ったんです。そういうテーマの楽曲なので、ライヴでファンのみんなと一緒に歌うのが今から楽しみなんですよ。

──ハンズクラップも入っていて、ライヴで盛り上がりそうですよね。ピコピコした電子音が入っていたのが意外でした。

VALSHE:デジタルと言っても今まではテクノポップみたいな音を導入してこなかったので、「今までやってこなかった音も取り入れてみよう」と思い挑戦しました。すごく新鮮で、レコーディングも楽しかったです。

──13曲目『Tigerish Eyez』(4th SG)はすごくエネルギッシュな曲で。すこしファンタジックな要素も入ってますよね。

VALSHE:そうですね。『V.D.』以前の曲はファンタジックな要素が入っているんですけど、『Tigerish Eyez』はそれを象徴するような楽曲になっているんじゃなかなと。

──サビではVALSHEさん節が出てますね。

VALSHE:そうですね。色濃く表れています。

──さて、いよいよラスト2曲に迫ってきましたが……『Fragment』(3rd SG/「奇跡体験!アンビリバボー」エンディングテーマ)から『Sincerely』の光に溢れたクライマックスの流れが素晴らしいですね。

VALSHE:ありがとうございます。この2曲は続けて収録したいなと思っていたんです。

──さきほども少し話に上がりましたが『Fragment』はどんな気持ちで作られた曲なんでしょうか。

VALSHE:『Fragment』は自分自身に関して言い聞かせている希望なんですよね。さきほどお話しした通り『AFFLICT』と対になる曲なので“光”にスポット当てた曲なんですけど、『Sincerely』は初めて自分自身の身近な存在に向けて書いた曲です。一人ではなく、身近にいる複数人に書きました。これまでは万人に向けて発表する楽曲で特定の誰かを思って歌詞を書くことにあまり積極的ではなかったんです。ただコンセプトを考えると外せなくて。大切な人たちへの手紙として、収録することにしました。ロックバラードではない、優しいバラードって実はすごく久しぶりで、もしかしたら1stアルバム以来かもしれないですね。

──タイトルは“心から”などという意味の、手紙の最後につける言葉ですよね。

VALSHE:そうですね。普段は絶対に言えないので、機会があって良かったなと(笑)。

──個人的には、過去のVALSHEさんと今のVALSHEさんが繋がっていくような、そんな曲と捉えることもできるのかなと思いました。また、後半はファンへのメッセージでもあるのかなと。

VALSHE:そうですね。おっしゃってもらった通り、後半は過去の自分に対して手紙をあてるつもりで書いているんですけど、ここまで来れたのは身近な人だけではなく、ファンの方やスタッフの方がいてこそなので……。締めくくりという意味では、アルバムの最後に『Sincerely』を入れられたことが自分にとっても良かったなと。この曲はデモからアレンジがあがって、歌詞ができて、歌を録って、ミックスして……って進んでいくたびに良い曲になっていった印象が強いんですよ。

──へぇ! 人の手が加わってどんどん良くなっていく……このアルバムならではのすごくステキなエピソードですね。

VALSHE:そう思います。

──全15曲。改めて聴いてみていかがでした?

VALSHE:実はさっき全曲のマスタリングが終わったんです(※今回のインタビューは1月上旬に行われています)。だからまだマルっと聴いてないんです(笑)。コンセプトがコンセプトなだけに、どう想うか想像がつかないんですけど。でも楽曲が出来上がるごとに物凄く手ごたえがあったので、きっといい方向に進んでいるんじゃないかなと。既存の楽曲の歌詞を改めて読み返すのも久しぶりなので……すごく楽しみですね。

──では最後に。今後イラストとはどう付き合っていくのかを教えて下さい。

VALSHE:ライヴ会場で販売したパンフレットでそのことについて触れているんですけど、こうやって実写が出ていくことによって、ジャケットやミュージックビデオなどビジュアル面を担う部分でイラストが出てくることはやはり減ってくるんじゃないかなと。ただそれによってイラストレーションが一切なくなってしまうワケではないですし、この先もそれはないです。

 今回も白皙にはジャケットを作る上でチームの一人として参加してもらっていますし、今後はイラストと実写という両方の選択肢を使ってVALSHEならではのことをしていきたいと思っています。ファンクラブに入って下さっているかたのなかにはイラストのVALSHEが好きと言って下さるかたもいらっしゃるので、ファンクラブの会報やFC限定のモノなどで、イラストバージョンを出していきたいですね。

──2014年の活動も楽しみにしています、ありがとうございました!

[インタビュー&文・逆井マリ]


<発売情報>
■ニューアルバム『V.D.』/VALSHE

発売日:2014年2月19日(水)
【初回限定盤(CD+DVD+封入特典/三方背スリーブ仕様)】3,900円+税
【通常盤(CD)】3,000円+税

▲初回限定盤ジャケット

▲初回限定盤ジャケット

【CD収録内容(初回限定盤/通常盤 共通)】
01. Overture
02. RAGE IDENTITY
03. Butterfly Core(6th SG)※読売テレビ・日本テレビ系全国ネット土曜よる6:00放送『名探偵コナン』オープニングテーマ(O.A中)
04. AFFLICT(3rd SG)
05. ASTRAEA
06. Human Dolls
07. Mr.Diorama(5th SG)
08. Blissful Jail
09. BLESSING CARD(5th SG)※テレビ東京系6局ネット『探検ドリランド −1000年の真宝−』エンディングテーマ
10. Leopardess(4th SG)
11. EVALUATION
12. Prize of Color
13. Tigerish Eyez(4th SG)
14. Fragment(3rd SG)※フジテレビ系列全国ネット「奇跡体験!アンビリバボー」エンディングテーマ
15. Sincerely


>>VALSHEオフィシャルウェブサイト
>>VALSHE Twitter(@valshe9)
>> VALSHEのばるとく★RADIO

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