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人気マンガ『フラグタイム』アニメ化記念:原作者・さとインタビュー

『フラグタイム』アニメ化記念!原作者・さと先生インタビュー|3分間時間を止められる森谷と村上の関係と繊細な心理描写が魅力の人気作

もし女子高生が3分間時間を止める能力があったら? 2013年に連載が始まり、完結後の今もなお人気を得ているマンガ『フラグタイム』(秋田書店刊)がアニメ化決定!

本作は能力を持つ森谷と秘密を知ってしまった村上の2人が織りなす日常ドラマと繊細な心理描写が魅力。現在、アニメの制作が進行中ですが、原作者のさと先生にアニメ化の感想と、作品やキャラの誕生秘話など貴重なお話をうかがいました!
 

さと先生もうれしかったアニメ化。約1年足らずの期間で急速進行中!

――『フラグタイム』のアニメ化が決まった時の感想は?

さとさん(以下、さと):最初は驚きましたが、素直にうれしかったです。また担当さんにアニメのスタッフさんたちの熱量を聞いて安心しましたし、「きっと良いものにしていただけるだろう」と思いました。

 

――ファンの方からの反響は?

さと:タイミング的にびっくりしている方も多いみたいですが、同時に喜んでくれている方もたくさんいるようなので良かったです。

――アニメ化はどんな流れで決まったのでしょうか?

編集担当 菅原明子さん(以下、菅原):去年の夏にプロデューサーの方が企画書を持ってきてくださったんですけど、それがいい企画書で。その方が元々、作品を読んでくれていたのと、あとは今の時代に求められているモノ作りにハマるんじゃないかなと思って提案したくれたそうです。

――「アニメ化したいんです!」みたいな熱意で最初から来られたのでしょうか?

菅原:最初は初めましてのところからだったので、「アニメ化の権利は空いていますか」といった話からだったんですが、ただそのプレゼンの中でアニメ化までの道のりがかなり具体的に示されていて「ああ、こうやってアニメになるんだな」とイメージが湧きました。

また作品を読み込んでくださっているのもわかったので、そのタイミングで一度先生に「アニメ化していいでしょうか?」とおうかがいして。そこでOKをいただいたのでプロデューサーの方に大丈夫ですとお伝えしたら、次にいらっしゃった時にはより具体的なスケジューリングやアニメ企画としてのプランニングが立てられていて。かなり早いテンポ感であっという間でした。

さと:私も他の編集さんに「アニメ化するよ」って言ったら「そんなに早く決まるわけないじゃん」と言われました(笑)。

――数年がかりでアニメ化するものも多数ある中で、1年弱というのは確かに早いですね。

菅原:2013年に連載が始まった作品がこのタイミングでのアニメ化だと、出た当初に企画が立ち上がって、紆余曲折あって、やっとアニメ化にこぎつけたように見られるかもしれませんが、今回はそういうものではないです。かと言ってでもあわてて作ったわけでもなく、しっかり丁寧に作っていただいていると思います。

 

さと先生の好きなアニメは?

――ここでちょっと脱線しますが、先生はアニメをご覧になりますか?

さと:アニメは大好きですね。摂取できるものだけ摂取している感じですけど。小さい頃は『トムとジェリー』が大好きで、擦り切れるくらい見ましたね。あとディズニーの『不思議の国のアリス』も好きで、そればかり見てましたね。

――挙がったのが外国のアニメ作品ばかりなのは?

さと:親が与えてくれたのがたまたまそうだっただけで。もちろん日本のアニメも見ますけど、基本的には人に勧められたアニメをよく見てます。最近、おもしろいなと思ったのは『DEVILMAN crybaby』や『SSSS.GRIDMAN』です。あと『ユリ熊嵐』のBD-BOXを買いたいなと思っています。

 

マンガ家を志し、進学。デビュー時の弟さんの心温まるエピソードとは?

――マンガ家を志したきっかけとデビューまでの経緯を教えてください。

さと:小さい頃からマンガばかり読んでいて。あまり人と関わらなかったので友達とも遊ばず、ずっと家でマンガを描いていたので、マンガ以外仕事にできる気がしなくて(笑)。親に反対されることもなかったので、大学も京都精華大学というマンガ学部があるところに進学して。在学中に秋田書店さんから4コマ作品でデビューさせていただいて、マンガを描いていたらいつの間にか留年していました。

――名誉の留年ですね(笑)。ちなみにデビュー作は?

さと:『全部ホンネの笑える話』という4コママンガ誌に描かせていただいたのが最初です。その後、『いわせてみてえもんだ』や『美大道』を経て、秋田書店さんで『りびんぐどっど!』を週刊連載させていただいて、『フラグタイム』でもお世話になりました。

 

――菅原さんが先生の担当されたのはいつ頃ですか?

菅原:『いわせてみてえもんだ』を読んで、京都まで会いに行きました。

さと:『全部ホンネの笑える話』は私の記念すべきデビュー作だからって弟が午前0時になると同時に自転車に乗ってコンビニまで買いに行ってくれたんです。懐かしい(笑)。

――デビューした時は?

さと:うれしかったです。でも少し調子に乗ってましたね(笑)。それまでの人生でちやほやされたことなかったから「マンガ家になれたんだ!」と当時は思ったりしていました。でも力不足を感じたので、マンガ業を頑張るのは、卒業してからのほうがいいなって。

――影響を受けたマンガ家の方はいますか?

さと:いっぱいいますけど、『りぼん』や『なかよし』など少女マンガ誌を読んでいて、『こどものおもちゃ』が好きでしたね。
 

『フラグタイム』の3分間時間を止めるの発想は意外なきっかけ!?

――『フラグタイム』はどのような構想から誕生したのでしょうか?

さと:マンガを描くためには資料を撮影しにいかないといけないんですよね。本来、しっかりと許可をとったり、菓子折りを持っていって撮影させてもらうんですけど、なかなか勇気がいるじゃないですか。なのでこっそり遠くから撮影できないかなと思っちゃうんですよね。絶対、悪い事をしないから3分だけ時間を止めて、写真を撮影したいなとよく思っていたのがひとつのきっかけです。

菅原:そういうときは編集者に頼んで撮影してきてもらう手もあるよ。

さと:そうですね。でも歩いていてたまたまいいなと思うときもあるんですよ。3分もあったら角度も変えていろいろと撮影できると思います。

――普通、時間を止められたら私利私欲に使おうとするのに、先生は実利的というか仕事熱心というか。

さと:資料撮影の話は「やましいことには使いませんから」という気持ちですね。あと学生の頃に、いくら話しかけても1人で集中していて、まったく反応してくれない不思議な子がいて。自分の世界に入り込んじゃって時が止まっちゃう人もいるんだなと感心したのも覚えています。

――それらが作品誕生のきっかけだったと。あと主人公2人が学生で、舞台が学校なのは?

さと:私も学生時代にうまくやれてなくて。なるべく周りとの世界をシャットアウトして、自分の世界に入ってしまう学生だったので、その頃を思い出しながら描きました。

――作中では、ほとんど森谷と村上の会話しかないですよね。

さと:私、作品を描くとだいたい2人になっちゃうんですよね。 キャラの世界を描くのが苦手なのかもしれないです。2人のことだけ描いてしまいがちなんですけど、逆に閉塞感につながってよかったのかもしれません。自分で言うのもなんですけど……(笑)。

――2人だけだからこそ、心の揺れ動きなどリアルで濃密に描いているんでしょうね。

さと:あと私自身、マンガを読んでいると「2人の世界だけ見たいんだ!」とよく思うので、その願望の現れかも。

 
 

森谷は自分自身、村上はいじめられたい理想の女子?

――森谷と村上というキャラはどのように生まれたのでしょうか?

さと:森谷さんはただ自分を描いているだけで、村上さんはこういう女の子にいじめられたいなという理想像です(笑)。

――先生もショートカットですし、ご自身のHPにショートカットの女の子が好きと書いてありましたが森谷もショートカットですね。

さと:ショートカットの子を描くと自分っぽくなっちゃうんですよね。他人を描くには髪の長い子じゃないと。

――村上にはモデルがいたりするのでしょうか?

さと:特にこの子というのはなくて、私がかわいいと思った子を結集して描きました。

――村上は美少女で頭もいいけどクラスメイトとも、打ち解ける気さくさもあって、誰もが憧れる優等生という感じですね。

さと:クラスにも村上さんみたいな子がいて、仲良くなりたいなと思っていた願望もあります。

――2人を描いていくなかで、ご自身も予想しなかった変化はありましたか?

さと:村上さんは何を考えているのか、わからないようにしていたので、私自身も「どんな子なんだろうな?」と思いながら描いていました。そして意外にかわいいなと思ったり、新たな発見があったり、お話が進んでいくなかで人間らしい面が出てきたり、変わっていったんじゃないかなと思います。森谷は特に変わらず、ずっとめちゃくちゃだし、コミュ障のままで作品が進んでいきました(笑)。

 

森谷を描くと自然に暗めなトーンに。こだわったのは短く凝縮すること

――作中で描かれる高校生活はリアルだなと。それでいて懐かしさや甘酸っぱさ、そしていろいろな思い出もふつふつとよみがえってきて(笑)。

さと:私の学生生活はこんなに嫌なことばかり起こらなかった気もしますけど(笑)、森谷が閉じている子なので、感情移入して描くと暗めな部分ばかり思い出されて。

――この作品を描いていくうえで、こだわったところは?

さと:短くしたかったんです。本当は1巻分でまとめたくて。あまり長くすると薄まってしまうし、2人以外の話になってしまいそうだったので、できるだけ凝縮して2巻に。

――コミックスの2巻が1巻に比べると分厚くて。

さと:ちょっとページ数の調整をミスしてしまって、もう少し長くしてもらえませんかと。

菅原:3巻にはならないんですけどって(笑)。


 

作品を描くとどんどん暗い気持ちに……

――作品を描いていくなかで苦労した点は?

さと:作品に悩んでいるシーンが多いので描いていると気持ちが暗くなることでしょうか。「これからの人生、どうしていこう」とか「村上さんはどうしたら救われるんだろうか」とか陰鬱としてました。とは言え作品全体の雰囲気としてはあまり暗くならないようにと注意していました。なのでふたりが楽しそうにしているシーンはこちらも描いていて楽しかったです。

――くすりとしたり、ほっこりする部分も結構あると思いますよ。菅原さんが担当編集として先生にオーダーしたことは?

菅原:ないです(笑)。思うままに描いていただきました。

さと:菅原さんは好きにやらせてくれるんです。

菅原:終わりが近づいた頃に、村上さんの裏設定を急に出してきた時はすごくビックリしましたけど、新鮮に驚けてよかったです。

――菅原さんは先生から本作のアイデアを伝えられた時、どう思われたのでしょうか?

菅原:おもしろいですねって。1話目載せましょうと。3話まで載せたところで当時の「もっと!」という掲載紙が休刊になってしまったんですが、すぐにWEBで連載が始まりました。「もっと!」は元々、季刊誌で年に4回しか発行されないので、WEBに移って毎月読めるようになって。

さと:1話が12ページだったから、もしそのままだったらいつ終われたかわからないし、コミックになるのにもどれだけ時間がかかるか分からなかったので、結果、良かったのかなと思います。

 

担当編集から見た本作の魅力。そしてさと先生が3分間止められたらしたいことは?

――担当編集から見たこの作品の魅力とは?

菅原:学生生活を描いているので、誰でも共感できるし、いつの時代になっても楽しめるところでしょうか。アニメ化にあたって時代感的な部分を調整することもありませんでした。

さと:でも気になっているのは、今の女子学生の流行りは靴下が短いと思うんです。大丈夫かな?

菅原:むしろスタンダードだから全然大丈夫!

――作品のファン層的には男女どちらが多いんですか?

さと:この作品で初めて女性からファンレターをもらったし、女性も見てくれているなと感じます。新鮮だしありがたかったです。

――ちなみに先生が3分間、時間を止める能力があったらしたいことは? 実利的なこと以外で。

さと:写真を撮るとのと一緒のベクトルなんですけど、人のカバンの中を見たいんですよね。スケジュール帳や携帯って人となりがわかるし。いろいろな人を知りたいけど、人を知るのって時間がかかるじゃないですか? だからカバンの中身を見るしかないなと。

あと、人が寄贈したたくさんの手帳が見られる「手帳類図書館」という施設があって、行った時は女子高生同士の交換日記を読んだんですけど、情報量が多過ぎて、頭がパンクしそうになりました。そういう施設では、3分間時間を止めずに人のことを知れますね(笑)。

 

アニメでは2人以外止まった世界の描写に期待!

――ちなみに現在のアニメの進行状況は?

菅原:シナリオもキャラクターデザインも上がって、既に先生に見ていただきました。

さと:内容的にはすごく上手に原作をくみ取っていただいていると思っています。ですので私自身も映像を楽しみにしています。

菅原:時間が止まっている表現がアニメはアニメで難しいと思うのですが、そうした部分もどういった形になっていくのか楽しみです。

――そして森谷と村上を誰が演じ、どんな掛け合いが繰り広げられるかも。

さと:この取材の時点ではまだ決まっていませんが、私もふたりに声が付くのが楽しみです。皆さんにも「誰が演じるのかな?」など想像しながら読み直していただけたらうれしいです。


 

生きづらい人と学生の方に読んでほしい。マンガと違う視点のアニメをお楽しみに!

――アニメの完成を楽しみにしています。では最後に先生から皆さんへメッセージをお願いします。

さと:まだ『フラグタイム』に触れたことがない方にまず読んでほしいです。特に生きづらい人に。あとどんな人に読んでもらいたいですか?

菅原:私は女子中学生に読んでほしい。

さと:今、学生で悩んだり、人付き合いがうまくできない人も。あとプロデューサーの方が心中ものが好きだそうなので、心中ものが好きな人にも。

菅原:確かにある種の心中ものっぽさもあると思うんですよね。ちょっと厭世的で、世界に背を向けて、2人だけで何かやるところとか。

さと:そうかもしれないですね。あとはアニメ好きな私にとって、アニメ化されるのはうれしいし、マンガと違う視点になると思うので、そこも楽しみにしてほしいです。これまでキャラクターデザインやシナリオを見させていただいて、きっと素敵なアニメになるんだろうなという期待に胸を膨らませています。一緒にアニメの完成を楽しみに待っていただけるとうれしいです。


 

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アニメ『フラグタイム』公式サイト
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