声優
そらる原作『小説 嘘つき魔女と灰色の虹』前日譚を描いた朗読劇レポート

そらるさん原作小説の前日譚を島﨑信長さん、佐倉綾音さん、佐藤拓也さん、伊藤美紀さんが表情と言葉で魅せた朗読劇『嘘つき魔女と灰色の虹 前日譚』レポート

2022年1月15日(土)・16日(日)に、朗読劇『嘘つき魔女と灰色の虹 前日譚』がところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールAにて開催されました。

本作は、ニコニコ動画発のシンガーソングライター・そらるさんが自身初のボーカロイド曲「嘘つき魔女と灰色の虹」をノベライズした『小説 嘘つき魔女と灰色の虹』の前日譚となる朗読劇です。

舞台は全てが灰色に染まった“イロ”のない世界。今回の朗読劇では、鮮やかな世界に憧れる少年・ルーマと、星と会話ができ“イロ”が見える魔女・イリアの別れから4年が経ち、それぞれの生活の中で、お互いのことを想い、会えないことへの悩みとどのように向き合ったのかが描かれます。

島﨑信長さん(ルーマ役)、佐倉綾音さん(イリア役)、佐藤拓也さん(フランツ役)、伊藤美紀さん(アズリー役)の4名の声優陣で彩られる朗読劇『嘘つき魔女と灰色の虹 前日譚』の千秋楽レポートをお届けします。

【STORY】
原作⼩説では描かれなかった、ルーマとイリアが再会するまでの8年の間の物語を描く。少年ルーマと、ルーマの亡き⽗の友⼈であり、職場の上司であるフランツ、魔女イリアとその祖母、それぞれの暮らしや成⻑の物語。

“諦めたくない気持ち”を信じさせてくれる物語

大きな本棚が中央に置かれている舞台。今回のストーリーは、この本棚にある“本”を軸に進んでいきます。

鳴り響く教会の鐘を合図に、ルーマ(演:島﨑信長)の語りから朗読劇がスタート。4年前、ルーマが「魔女に会いに行きます」と書き置きを残していなくなった事件の話題になると、真剣な様子でフランツ(演:佐藤拓也)に当時のことを話し始めます。

一方、イリア(演:佐倉綾音)もルーマに“イロ”を初めて見せたときのことを思い出します。ルーマと初めて会ってからすでに4年。再び会える日を待ち遠しく思うイリアの気持ちにそっと優しく寄り添う祖母・アズリー(演:伊藤美紀)がとても印象的でした。

イリアに出会い、これまで聞かされていた魔女とは全く違うことに気づいたルーマは、なぜ間違った解釈で魔女が嘘つき呼ばわりされたのか調べるために図書館へ。そこで、イリアに似た人物が登場する絵本を見つけ、懐かしさを覚えます。

イリアも自宅の図書室でルーマにそっくりな人物が登場する本を発見。お互いを想いながらそれぞれの場所で見つけた本を手に取り、夢中で読み始める2人。今何をしているのか、寂しい思いをしていないのか……“君に会えなくて寂しい”とルーマもイリアも本音をこぼします。

純粋でまっすぐなルーマ、優しくも強い芯を持っているイリア。離れているからこそお互いの存在が強くなる。大切に想い合っている2人の様子が、島﨑さんと佐倉さんのお芝居でひしひしと伝わってきました。


本を通してルーマと会話しているように感じ、嬉しい気持ちになるイリア。ですが、想像力の魔法が悪い方向に働いてしまい、魔女である自分と一緒にいたことが街の人に知られ、ルーマが困っていたらどうしよう、と不安な気持ちからパニックになってしまいます。

そんなイリアに対して、想像力を悪い方向に暴走させて実際に起きたか分からないことに対して不安になってはいけないと優しく諭すアズリー。ルーマの話をしっかりと聞いてくれるフランツもそうですが、2人の側には“支え”となる大人がいてくれるからこそ、本編で無事に再会できるのでしょう。


まだ子供の彼らに寄り添い、正しい道へと導いてくれる包容力と優しさが、佐藤さんと伊藤さんから紡がれる言葉によって沁み渡ります。“こんな大人になりたい”と思わずにはいられません。

そうして本を読み進めていくイリアは、ルーマに自分を忘れてほしくないと思う一方で、街の人たちを大切にしてほしい、魔女である自分のせいでルーマが傷つくことがもっと嫌だと自分の心と向き合い始めます。そしてルーマの実際の気持ちや状況がわからない不安に打ち勝ち、自分自身がルーマを信じて待ちたいのだから、信じて待ち続けるのだと決意します。

“ルーマに会いたい”という自分の気持ちを大事にしていきたいと笑顔でアズリーに話すイリアの表情はどこかスッキリしたかのよう。知らなかった景色を見るためにいろいろな人たちの言葉に耳を傾けていきたいと目を輝かせます。

また、ルーマも図書館で出会った絵本を通して、嘘を悪いものにしてしまうのも良いものにするのも自分次第だと気づきます。いろいろなことを確かめるためにもイリアに会いたい、イリアが忘れてしまったとしても初めからやり直せばいいと話すルーマの笑顔が本当に眩しい。

会えなくても離れていても1人ぼっちじゃない、この世界のどこかであなたを大切に想ってくれている人がいるんだと、自分の心と向き合うルーマとイリアの姿はとても美しく、心に残りました。

最後は、朗読劇で語られた12歳のルーマが16歳になり、イリアに会いに行くためにルーマが旅立つところで閉幕。そらるさんが歌う「嘘つき魔女と灰色の虹」が流れました。物語はここから2人が再会を果たす本編へと続いていきます。

1冊の本を通して自分自身と向き合ったルーマとイリアのように、この「嘘つき魔女と灰色の虹」を通して自分の世界が大きく変わる方もいるはず。たくさんの人に触れてほしい、“諦めたくない気持ち”を信じさせてくれる温かい物語でした。

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